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世界の天気は、西から東に廻っている、と言う。
つまり、日本が悪天候に見舞われると、ニューヨークでは大体1週間後に天気が崩れる。
100%ではないが、かなり当たっているようだ。
日本は、猛暑に喘いでいる。
で、ニューヨークも熱気に包まれ始めた。
今日は、最高温度は100度F、摂氏で37,8度になる。
明日も同じような天候だと、TVは伝えている。
もう30年くらい、日本の夏を味わっていない。
だから、私の夏の風物詩は古色蒼然としている。
昭和50年以前のセピア色の夏だ。
日本の夏は、セミの鳴き声である。
7月始めのにいにい蝉(ちーちー蝉)は、未だ可愛げがある。
その後のあぶら蝉が喧しい。
雨の日は大人しいが、晴れて暑い日には朝から鳴き始める。
暑苦しいだみ声。
それも1匹2匹ではない。
何十、何百と一斉に声を揃える。
8月ともなると、つくつく法師が加わる。
これは、それほど五月蝿くはない。
第一、数が少ない。
あぶら蝉の繁殖力は、群を抜いている。
他の10倍20倍では、きかないのではないか。
8月末から、蜩(ひぐらし)が涼やかな声で鳴く。
同じ蝉とは思えない美しさ。
共に、異性を求めているのだろうが、何故あんなにも音質が違うのか。
夕暮れ前の、
「カナカナカナカナ…。」
の鳴き声は、まさに天からの慈雨のようだ。
小学生の頃、私は夏と言えば「蝉採り」をしていた。
2,3年生時分は、訳も分からず大きな網を振り回す。
これが、4,5年生ともなれば、色々分かってくる。
誰に習うとも無く、直径15cmほどの小さな網を拵える。
それを心持ち内側に、湾曲させる。
竿は、7,8mはあろうかという、細身の竹ざお。
朝早くから、竿を持ち、腰に蝉を入れる籠を括りつけて出陣。
当時の荻窪界隈は、木が鬱蒼と繁った家が多かった。
中に入り込むわけには行かないから、外から蝉を採る。
この時、長い竹ざおが物を言う。
静かに木の下に忍び寄り、蝉の存在を確かめる。
勿論、鳴いている雄はすぐ見つけられるが、無音の雌は眼で探すしか無い。
蝉を見つけたら、下からそっと竹ざおを伸ばす。
蝉という生き物は、複眼のはずだが、下はあまり見えないらしい。
小さな網をかぶせると、蝉は驚いて袋に飛び込む。
そこで竿先を90度廻すと、一丁上がり。
静かに竿を下ろし、蝉を手で掴んで籠に移す。
幾らでも取れるあぶら蝉は、すぐ飽きて来る。
希少価値を目指す。
つくつく法師は、値打ちものだ。
ひぐらし蝉も同様。
声を追いかけて、近辺を歩き回る。
中でも極めつけは、みんみん蝉。
これが鳴きだすと、あちらこちらから蝉採り少年が集まって来る。
だが、この蝉は樹木の低いところには、滅多に止まらない。
高い枝で鳴いている。
自慢の7,8mの竿でも届かないことが多い。
集まって来た子供たちも、下でうろうろするのみ。
ぶどうを見上げる狐の如し。
夕刻には、籠は蝉で溢れている。
だが、持って帰ってもどうしようもない。
せっかく採ったひぐらしも、つくつく法師も、親には迷惑なだけ。
かと言って、放してやるのもいやだ。
で、そのまま縁側にほっておく。
一晩たてば、大抵の蝉は死んでいる。
蝉の地上での時間は、高々1週間しかない。
それ以前の6,7年間を地中で暮らす。
最後の夏、地中から這い出て、木を登る。
そこで脱皮して、成虫になる。
そして1週間。
鳴き続け、異性を探し当て、交配して一生を終る。
ニューヨークでも蝉の鳴き声を聞く。
単調で、丁度にいにい蝉とあぶら蝉の中間のような声だ。
ひねもす鳴いてはいるが、日本の蝉ほど五月蝿くない。
あの木々を揺さぶるような「蝉時雨」は聞くべくも無い。
いざ聞けば、耳を塞ぎたくなるだろうが、聞けないとなれば懐かしい。
「聞かされるこっちの身にもなってよ。」
お叱りは重々分かるのだが。
ヤンキースに、やっとエンジンがかかって来たか。
好調な、ホワイトソックスを3タテ。
それも打撃戦を打ち勝った。
6対5、14対3、6対4。
ファンには堪らない3連戦だったろう。
シカゴファンには、むなくその悪い週末だったと思う。
昨日は、クローザーのマリアノ.リベラの400セーブのおまけもついた。
1997年に正式にクローザーとなって、丁度10年。
年平均は、40セーブを上回る。
それも弱小球団での結果ではない。
常にプレーオフ出場を義務付けられているヤンキースで、である。
つけられた渾名が、「Mr. Automatic (自動クローザー)」。
リベラという投手は、それほど球種が無い。
直球、カッター、2シーム、4シームの4種類だけ。
落ちる球も投げない。
全て同じように投げ、手元で少し変化する。
「ほんの球一つ二つずれるだけなんだが、打てないんだなぁ。」
相手打者の感想である。
勿論神様ではないから、打たれることもたまにはある。
2001年のアリゾナ.ダイアモンドバックスとのワールドシリーズ。
第7戦の9回の裏、ルイス.ゴンザレスに打たれてサヨナラ負け。
「思い切り投げて打たれた。ベストを尽くしたから悔いは無い。」
リベラはさばさばした顔つきだった。
トーレ監督も、ファンも納得した。
「リベラが打たれて負けるなら、それは運命だ。」
此処まで信頼されるクローザーは、先ずいない。
逆に言えば、ヤンキースの黄金時代は彼ゆえにあった、と言える。
契約は、今年一杯。
来年は、球団のオプション(選択)。
もう一年投げて、そして引退するだろう、と言われている。
多分、トーレと一緒に。
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