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日本ハムがドラフト一位で指名した大谷翔平という高校生が、入団を発表した。
ドラフト会議前には、「大リーグに行く」と言っていたため、日本ハムの単独指名になったという。
1,2回の交渉で決意がぐらつき始め、3回目で日本ハム入団を決めたらしい。
まあ、その経緯はどうでも良いのだが、幾つか疑問点がある。
先ず、どういう約束を提示されて決意を翻したか、であろう。
又、「投打二本立てで行く」と日本ハム側は言ったらしいが、本気なのか。
仮に、「5年後にポスティングで、大リーグに行かせる」と言ったとすれば、道義に外れる。
それは、自分たちで作った「ドラフトシステム」を、破壊する行為だろう。
「何、どうせそこまでの選手になれないから、その時の話だ」
そう考えているとすれば、大谷選手への裏切りとも言える。
実は現行のポスティングシステムには、幾つかの欠陥がある。
西武の中島の例が、そのひとつ。
高額なポスティングフィーで交渉権をとり、安い年俸を提示する。
選手側が拒否すれば、話は終って選手は日本残留になってしまう。
「何のためにそんなことを?」
そう思いがちだが、他球団にその選手を渡さないためだけでも、そういう手段はあり得る。
欠陥のその2だが、日本球団はポスティングフィーを拒否出来る。
球団が拒否すれば、やはり話は壊れて選手は日本に戻らなければならない。
日本ハムが大谷を出したくなければ、そういう手段も考えられるわけだ。
その場合、大谷はフリーエージェントになる9年を待つことになる。
次に、「投手と打者の二本立て」だが、とても本気とは思われない。
確かに、多くの超高校級の投手は、バッティングでも群を抜いていることが多い。
松坂大輔も、高校時代は水準を抜くバッターだった。
古くは巨人の堀内は、ノーヒットノーランを果たした試合で3本塁打を放っている。
とは言え、二人とも本業は投手であり、打撃はほんの付け足し。
長い歴史の大リーグでも、投手で好打者と言えば「ベーブ.ルース」くらいしか思いつかない。
ボストンレッドソックスのエースであり、ワールドシリーズの無得点回数の記録を持っていた。
そのルースにしても、ヤンキースに移籍してからは、打者に専念している。
「投手でありながら、打者としても一流」というケースは、日本のプロ野球の歴史にもない。
つまり、投手と打者は色々な面で、異なるトレーニングや調整法が必要なのだ。
日本ハムの首脳陣が、それを知らないはずはない。
「大谷君には『二刀流』を目指して、やって貰いたい」
この言葉は、まやかしでなければ単なる社交辞令ということだろう。
「まあ所詮は子供だ、入れてしまえばどうにでもなる」
そこら辺が、球団の真意だとしか思われない。
若し球団と大谷君の両親に、事前の合意がなかったとすれば、だが。
その疑いは、恐らく今でも消えていないだろう。
彼の両親は、最初から大リーグ挑戦に不安を抱いていたように見える。
まあ、それが普通の親の感覚ではないだろうか。
その親の不安に気づいたのは、日本ハムのスカウトだけだったのだろうか。
練達のスカウトであれば、当然見抜いていて不思議ではない。
高校生のドラフトで、実際の交渉相手は両親か野球部の監督というのは半ば常識。
「大リーグに行きたい」と言った言葉を、100%真に受けて諦めたとすれば、プロのスカウトではない。
スカウトたちを諦めさせるだけの下準備を、日本ハムと両親や監督たちは張り巡らせていたのではないか。
疑ってかかれば、そういう推論も成り立つ。
「大リーグの新人育成は、日本よりずっとお粗末だ」
日本ハムのスカウトは、そう説明して親を説き伏せた、という。
「毎日バスで移動し、飯はハンバーガーだけ」
「とても耐えられるような環境ではない」
大リーグ通と言われる幾人かが、そう語っていた。
そういう人たちは、現実にそういう場面を見て来たのだろうか。
大リーグだって、新人は大事な財産だ。
ドラフト上位で獲得した選手には、高額の契約金を支払う。
その育成現場が、まるでタコ部屋のようであるはずがない。
確かに幾つかの新人リーグには、荒削りの選手が多い。
場合によっては、中南米の国々から送り込まれて来る「未知数」も混じる。
そんな選手と、ドラフトで獲った選手を十把ひとからげにするだろうか。
大リーグの選手育成は、緻密であり計画的だ。
投手の球数は決められ、打者の打撃練習も分刻みで行われる。
ドラフト上位の選手の成長状態は、頻繁に大リーグに報告されるシステム。
マイナーの好選手は、大リーグでチーム間のトレードにも大いに役立つ。
良いファームシステムを持つ球団は、トレードの材料を多く持っていることになる。
数多くマイナーの選手をメジャーに送り込むことは、マイナー球団のコーチ陣の実績。
好選手を育てて、その実績で上位チームへ行く。
それがマイナーのコーチたちの目標になっている。
大リーグには、4段階のマイナーシステムがある。
教育リーグ、1A, 2A, 3Aそしてメジャー。
当然、ものにならずに去って行く選手も多い。
それを「過酷」と呼ぶなら、確かに「過酷」な世界だ。
だが、そこを生き抜ける体力と根性がなければ、大リーグで生き残ることは出来ない。
多くの日本人選手が、大リーグで挫折するのはその「体力と根性」の不足が理由だろう。
そこに気づいて大谷選手が日本でのスタートを選んだのなら、それはそれで正解と言える。
野茂、イチロー、松井くらいが、やっと合格点をもらえるメジャーの世界。
なまなかな覚悟や技量では、挑戦しても返り討ちになるのがおち。
一応日本ハムで合格点を貰ってから、ゆっくり考えた方が良い。
そう考えるのは、私だけではないだろう。
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