還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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「寒がり」の冬

私は、「寒がり」である。
望んでなったわけではなく、恐らく親から遺伝したものだろう。
70近い今でも、冬になると「あかぎれ」に悩まされている。
物の本によれば、「幼児や主婦に多く見られる」とあるから、一層情けない。
この「あかぎれ」は、どういう訳か手の爪の際によく発生する。
痛みを軽減するためにバンドエイドを貼るのだが、あまり役に立たない。
とにかく頻繁に使用する部分だから、ゆっくり治る暇もないということらしい。

「主婦に頻発」とあるのは、恐らく水仕事の関係だと思う。
私の場合も、「水仕事」の所為だろう。
と言って、別にそれを生業にしているのではない。
ただ、水に触れる機会が多い、ということ。
それも単純に、「喰いたい一心」から。

ニューヨークでも、たまには「活きの良い魚」が手に入ることがある。
中国系でも韓国系でも、別に古い魚を選んで仕入れてはいないから、良い物も店頭に並ぶ。
それを買えば良いわけだが、その先がある。
彼らだって、鱗を引き腹を出すことはやれるようだ。
だがそれをして貰うと、結果はかなり無残なことになってしまう。
彼らの手にかかった魚は、どうも喰う気が起こらない。
だから持ち帰って、自分で捌くことになる。

魚を捌くには、冷たい流水が不可欠。
ものの5分も経たないうちに、手の先はかじかんで来る。
それを堪えながら、三枚におろし「あら」を始末して終了。
その頃は、両手の指はほとんど痺れていることが多い。
「そんなにまでして、魚を食べる必要があるの?」
そう聞かれそうだが、
「ある」、と答えるしかない。
「喰いたい」気持ちが、先に立つわけだ。

更に冬には、もうひとつ食べたいものがある。
「白菜漬け」という代物。
私の人生では、これが切れた年は数えるほどしかない。
昔は、母が山ほどの白菜を漬け込むのを手伝ったりしていた。
今は、それを自分ひとりでやる。
「奥さんはやらないの?」
そう尋ねる人もいるが、私は答えない。
「自分ひとりが食べるものは、自分で作る」のが、我が家のルールなのである。

家人は、漬物ファンではない。
あればちょっと摘むが、「なくてはならない」とは考えてもいないだろう。
そういう人に作らせた漬物が、旨いかどうか。
だから自分で作る、ということを数十年やり続けて来た。
これも結構水に触れる作業、といえるだろう。
二人家族だが、食べるのは一人だから、白菜は一つあれば充分。
白菜は、中国系韓国系スーパーどちらにも山と積んである。
有難いことに、安い。
見ていると、韓国人は7つ8つを一度に買い込んでいる。
「キムチ」という、民族存続に不可欠なものを拵えるのだから、量も多い。
一つしか買わない私は、「けちな奴」と思われているかも知れない。

買ってきた白菜は、六つ割りにしてざっと水で洗う。
それを大きな盆に載せて、ベランダに置く。
日当たりの良い時間にほとんど半日ほど干せば、夕刻にはしんなりとしている。
「漬物用」のプラスチックのバケツの底に、荒塩を軽く撒く。
それから六つに割った白菜を一つづつ、葉の間に塩をすり込みながら、バケツに並べて行く。
六つだからそれほど時間はかからないが、下手すると「あかぎれ」に塩を擦りこんでしまう。
その痛さは、経験したものにしか分からない。
並べ終わったら、更に上から塩を撒いて、中蓋を載せる。
これは日本から買ってきたもので、プラスチック製。
その中蓋の上に、「漬物石」を注意しながら置く。
この「漬物石」は、なかなか重たい。
7,8kgはあるだろう。
夜道に車を走らせていて、路傍に見つけたものだ。
急いで停車して、さっと抱えて車に積み込んだ。
持ち主があったのかどうか、未だに不明。
以来、大変重宝している。

「漬物石」を載せても、未だ足りない。
で、亜鈴を二つその上に載せる。
この亜鈴は、トレーニング用に購入したもの。
トレーニングはとっくに止めて、今は冬場のみ活躍している。
一つ6ポンド(2.7kg)が二つ。
それを乗っけて、仕上げに私がその上に乗る。
68kgの重石だから、これは効くだろう。
と言っても、そう長時間乗っているわけには行かない。
4,5分で降りて、バケツに上蓋をする。
後は、水が上がるのを待つだけ。

翌日見ると、白菜すれすれまで水が上がっている。
で、先ず亜鈴2個を下ろし、次いで「漬物石」も取り去る。
中蓋も外して、しんなりした白菜を全て取り出す。
この時、指は「塩水」に漬かることになるわけだ。
取り出した六つの白菜を軽く搾り、再びバケツの底に並べる。
きっちり並べ、再び軽く塩を振り撒く。
これで、「二度漬け」完了。
中蓋を載せて、「漬物石」だけを上に積む。
上蓋をして、ベランダの隅に納める。
まあ2日もすれば、喰べられるようになるだろう。

こういう作業を終えて、私は両手をぬるま湯で丁寧に洗う。
乾いたタオルで水気を拭き取る。
そして改めて、バンドエイドを貼ることになる。
冷水と塩で痛めつけられているから、貼るだけでも結構痛い。
この「あかぎれ」という奴は、年を取るとならなくなると聞いた覚えがある。
そういえば悩まされた「口内炎」も、ここ10年以上現れない。
「あかぎれ」も、そのうち消えるだろうと考えていたのだ。
待てよ、とすると未だ「年をとっていない」ということなのだろうか。
若しそうなら、「あかぎれ」を嘆くこともない、ということにならないか。
冬場の一刻を我慢すれば良い、だけのこと。

だが待てよ、「年寄りにも出るあかぎれ」も存在するのではないだろうか。
考えていると、思いは千々に乱れてしまう。
まあ良いか、少なくとも「白菜漬」は2,3日のうちに喰えることだし。

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