還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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お久しぶり バッテラ

此処数ヶ月、近在のスーパーの魚売り場に活気が見られない。
鮮度の良いものが少なくなり、魚のサイズも小さくなっているようだ。
アメリカの沿岸漁業は日本と異なり、狙いを定めて出漁する船は少ない。
勿論その魚の需要が高く高値が期待出来れば多少の無理は冒すだろうが、市場の成り行きで売られるのであれば近場で獲れる魚で間に合わせる連中も少なくない。
それでも幾種類かは必ず毎日入荷する魚もあるらしい。
ニューヨーク周辺であれば、ひらめ、シーバス、サバ、ヤリイカ、タラなどが一応の常連。
マグロやカジキのような大型魚は日持ちが良いから、遠方から飛行機やトラック便で入って来る。
最近ではヨーロッパから鮮度の良いイワシ、タコに混じって、ブランジーノとかドラドと呼ぶ新種も定期的に入荷するようになり、レストランのメニューにも載るほどになった。
私が買い物をする中華系のスーパーには、そういった魚が入ることもあり、姿を見ないこともある。
結局中国系の人たちが欲しがる魚が中心となるのだから、文句を言っても始まらない。
彼らはほとんど加熱して食べるから、多少の鮮度落ちは気にしないらしい。
寿司や刺身の材料を求める人は先ずいないから、私は孤立無援というわけだ。

マンハッタンには数軒の高級鮮魚店がある。
それこそキャビアからイワシまで驚くほどの高値で売っており、固定客もついているようだ。
日本人でも、こういう店に行って「刺身クォリティ」と称する魚を買い求めているという。
とは言え、魚の捌き方が異なるから、刺身や煮付け、塩焼きなどには向いていない。
あくまでも西欧風なソテェやフライ用の仕込みが為されていると考えた方が良いだろう。
勿論、自分で魚を卸す客はいないから、丸ごとで売ることもない。
考えても分ることだが、ニューヨークに精々10万足らずの日本人向けの仕様はあり得ないのだ。
そういうわけで、私も儚い期待を抱いて中華系スーパーの魚売り場を逍遥しているわけだ。
ただ日本人には、中華系や韓国系のスーパーを毛嫌いしている人が多い。
「食べたら危険だ」とか「何が入っているか分らない」などと思っているらしい。
まあ確かに、彼らの母国で加工した冷凍食品などは、怖くて私にも手は出せない。
だが生鮮産品に関しては、彼らはそのまま並べて売るだけだ。
ただ、今日売れなければ明日売り、明日売れなければ明後日売るから注意が必要になる。
指が生臭くなることを覚悟で鰓を覗かなければならないし、腹を押さえることも必要。
5回に4回はハズレだが、たまには「これは」と思うものにぶつかる。

今日見つけた「サバ」がその手だった。
型といい身の張りといい、そり具合といいなかなかの逸物。
手に持って見たところ、1kgとは行かないが800gはありそうだ。
日本でも、800gあれば立派なサバと呼べるだろう。
脂の乗りは未だ分らないが、これくらい身が張っていればそこそこに違いない。
彼らはそれを秤で計って、値札をつけてくれるわけだ。
黙っていれば腹を出し、頭も刎ねてしまい、もう原型は止めない。
そこで、「No cut (手出し無用)」のひと言が重要になるわけだ。
「$2.99/LB」の計算で$4.50と出たから、1.5ポンド(700g)といったところか。
予想より少々小さめだが、それでもここ数ヶ月では出色のサバと言えそうだ。
用意したアイスパック入りのバッグに入れ、一も二も無く帰路につく。
真夏の炎天下、少しでも早く帰宅して捌かなければならない。

サバという魚はボラと並んで世界中に棲息しているらしく、南米でもヨーロッパでも見かけた。
それでも背中の模様が少しづつ異なっているから、築地に出て来てもすぐ見分けがつくらしい。
身が柔らかいのも世界共通らしく、手入れの悪い国では安魚の代名詞のようだ。
日本でも「関鯖」「松輪鯖」「金華鯖」などは、ブランド物として値がつくから手入れも良い。
ブランドではないからそんなに味が悪いということはないようだが、値が付かなければ漁法も網などに替わり、網の中で魚体がぶつかり合って身が崩れることになる。
この「市場の原理」という奴は年月を経て確立されるので、一朝一夕には変わりようがない。
妙な話だが、ブランド物と同じ漁場で獲っても、隣の港に揚げれば価格はぐんと下がる。
「大間のマグロ」が年中途切れないのも、そういう細工が働いているのだろう。

持ち帰った鯖の、先ず頭を落とす。
身に張りがあるから、庖丁に手応えを感じる。
尻尾も落とし、三枚に下ろす。
日本の鮮度が良いサバなら、このアラで「潮汁」を作るところだが、流石にそれは諦めた。
角笊に載せ、荒塩をたっぷり被せてやる。
放り出して置くこと約3,4時間で、魚体は結構な量の水分を放出するのだ。
塩を洗い流して、サバをバットに並べ酢で浸して行く。
ちょっと贅沢だが、昆布を上から被せればもっと良い。
これで、大体2,3時間。
その間に、米を洗って仕込んでおく。
塩と酢で約5時間以上かかるから、夕刻に魚を見つけてもその日には間に合わない。
そこら辺が、異国で生魚を調理する苦労とでも言えそうだ。

小型の飯台に水を張り、晒の布も1枚水に浸しておく。
無理に晒でなくとも良いのだが、やはり形から入りたいという心理が動く。
少々口幅ったいが、こういうものは形式を守る方が気分の良いものだ。
酢締めが終わるころ炊き上がるように、炊飯器のスイッチを入れておく。
炊き上がった飯を飯台に移し、寿司酢を上から掛けまわして杓文字で切りつけるように混ぜて行く。
「酢飯を切る」という言い方をするが、それはこの動作を意味しているのだろう。
少し摘んで味をみたら、堅く絞った晒をかけて暫く置く。
酢で締めたサバを水洗いし、ペーパータオルで水気を拭き取り、中骨を抜いて行く。
その後、爪先で薄皮を摘み一気に剥がす。
背を下に置き、丁度真ん中に刺身庖丁を入れて両側の身を切り広げてやる。
巻簾にラップを拡げ、切り拡げたサバを真横に置き、丁度良く冷めた酢飯を両手で抱え持つ。
真ん中辺りに飯の塊を置き、左右に押し広げて行く。
ラップの両端を摘んで飯とサバを包み込み、巻簾で暫く押さえて形を馴染ませる。

身は2枚あるから、2本のバッテラが出来るのだが、今日は新しい試みを用意している。
先日帰国した折に買い込んだ、「炙り用バーナー」を試そうというわけだ。
ピストル状の器具を調理用に使うカセットに組み合わせ、尖端から出る炎で炙るという仕組み。
寿司屋では本来はガスで炙っていたのだが、この器具を使えばあっという間。
多少はショー的な要素もあって、客も喜ぶらしい。
まあ私は一人でやるのだから喜ぶべくもないが、先ずはお試しというところ。
1本のバッテラを俎板に置いて、バーナーに火を点けた。
炎の量を控えめにしてバッテラに翳すと、それでもなかなかの火力。
サバの脂が焦げた匂いを発しながら、焼き目がついて行く。
時間にすれば、ほんの数秒というところか。
もっと試したいが、生憎2本しかない。
1本は炙り、1本は旧態依然のバッテラ、都合2本が出来上がったわけだ。
サバが大きいから、出来上がりも大きめになった。
ニューヨークでバッテラを拵えるのは、1年ぶりくらいではないだろうか。
しかも今日は、初見参の「炙りサバ」が加わっている。
その「炙り」から先ず試してみよう。
その前に、こういう時のための「大吟醸」の栓を抜かねば。
形式から入るのも結構手間がかかるものだ。

まあその手間は、喰う楽しみで相殺されて行くのだが…。

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