還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

もうひとつの「正月」

ブログを中断したまま2月に入り、何となく街が賑やかだと気づくと、これが「春節」である。
世界のほとんどの国が「太陽暦」(所謂「西暦」)を使用している現在だが、それでも「太陰暦」で生活している国や人は決して少なくない。
ただ、世界は経済を無視出来ないので、多くの国はその辺りでは上手く調整しているらしい。
「太陰暦」とひと口に言うが、季節のずれを調整する「太陰太陽暦」を取り入れている中国や東南アジアの国々と、そういうずれを修正せずに押し通す「純粋太陰暦」を墨守しているイスラムの国々があるという。
だが考えてみると、中国を含む東南アジアの「太陰太陽暦」で生活している人々と、「純粋太陰暦」を使うイスラム系の人々だけでも、恐らく世界の人口の半数近いのではないか。
つまり「太陰暦」派は、決して少数民族ではないのだ。
もっとも現在ではイスラム系の人たちは「純粋太陰暦」を専ら宗教行事にのみ使うようで、それ以外の日常では西欧諸国と同様に「太陽暦」を使いこなしているらしい。
思い出せば、日本でも太平洋戦争以前は「太陰暦(旧暦とも言う)」が生活の根本であり、戦後駐留して来た米軍に併せて「太陽暦(新暦)」が一般化されたのだろう。
それでも私が子供の頃、農村ではこの旧暦がごく当たり前に使われていたし、今でも「盆」や祭りなどには旧暦のままという地域もけっして少なくはない。

それでも新年を「春節」として大々的に祝うのは中国や東南アジアの国々に多く、中でも中国は世界の動向を気にかける風もなく、彼ら独自の新年を祝っている。
この「春節」を「太陽暦」に当て嵌めると、毎年正月が異なる日付で現れて来る。
今年は2月16日に当たっているらしいが、来年はまた違う日になるだろう。
彼らも日本人と同じように正月(春節)には大勢集まって祝うらしく、買い込む食料品も半端ではない。
言ってみれば、この時期はスーパーをはじめ食料品店の書き入れ時ということになる。
世界で15億の民を擁する民族だから、正月料理も出身の地方によって色々異なるようだ。
中でも有名なのは北京地方の人々が正月用に拵える「餃子」で、大晦日に大量に作って家族で食べる。
日本では「餃子」は「焼き餃子」が一般的だが、彼らは「水餃子」で食べるのが普通のようだ。
「焼き餃子」は「鍋貼(クォテル)」と呼ばれ、餃子が残った時に食べる調理法らしい。
材料も「白菜」「にら」「豚肉」が一般的だという。
正月料理に「餃子」では些か淋しい感がないでもないが、米の採れなかった当時の北京地方では小麦粉は貴重品であり、それを腹一杯食べるのは正月ならではのご馳走だったのだろう。
確かに手造りの皮の出来たて餃子の美味は、街のレストランでは味わえない。

「春節」に、中国の人たちは「新年快楽(チンネンクヮイラー)と挨拶しあう。
「あけましておめでとう」とほぼ同意だと考えていいのだろうが、何となく違和感があるようだ。
まあ中国人は言葉の印象までは気にしないらしいから、レストランのメニューに「小腸」などとその食材をストレートに表示していたりするが、やはりオーダーするのは躊躇ってしまう。
また「ひらがな」という連結媒介が無いから、全てを漢字で綴らなければならない。
漢字という世界に誇る大発明を成し遂げたが、その先へと続かなかったのが惜しい。
しかしその漢字だけで数多の詩文を残した李白、杜甫、蘇東坡を生んだのもまた中国なのだ。
その詩人の後裔たちは、「春節」の買い物に血道を上げている(ようだ)。
彼らは「見た目」を気にすることはないらしく、スーパーの真っ赤な袋を結び合わせて所謂「振り分け」にして、両肩に引っかけて平気な顔をしている。
較べて見ると韓国系の人たちは、外見は中国系と似ているが身なりには結構気を使っているようだ。
どちらかと言えば、かなり日本人に似ていると言っても良いのではないか。
彼らには不満かも知れないが、流行や嗜好も似通ったところが多いように見受けられる。

仔細に観察したわけではないが、韓国人は中国人にあまり関心はないようだ。
価格的にははるかに安い中華系スーパーにも、滅多に行かないらしい。
中国と日本という2つの国の狭間で辛酸を舐めて来た歴史が、彼らの隣国に対する感情をひと口に言い切れない複雑なものにしているのだろう。
フラッシングという街の人口は中国系が圧倒的に多い。
中華系スーパーは目抜き通りに沢山あるが、韓国系の店は3,4軒街外れにある程度。
「春節」に売り出しをかけたいところだろうが、何故か頑なに普段通りの営業を続けている。
確かに価格的にも、中華系スーパー相手に勝ち目はない。
だがそれよりも、中華系を一段下に見ている韓国系顧客の反応が怖いのだろう。
だから、客で溢れかえっている中華系の店を余所目に、韓国系の店はひっそりとしている。

2月16日の「春節」には、日本と似通った演し物が街を練り歩く。
日本の「獅子舞」を思わせる煌びやかな被り物が先頭に立ち、爆竹を鳴らしながらそれを子供が追う。
正月の日本の家庭に獅子舞がやって来ていたのは、一体何時頃のことだったか。
私が小学生の頃はごく稀に冬場に現れる程度だったから、もう風前の灯だったのだろう。
こういう風習は、恐らく中国から始まって東南アジアの各国に伝播していったと思われる。
恐ろしい形相の想像上の怪物は獅子舞やねぷたとして、今でも日本にも僅かに生き残っているようだ。
その点、中国人の社会では「春節」には必ずこういう賑やかしが現れる。
ニューヨークでさえ、マンハッタン、フラッシング、ブルックリンの3ヶ所に中国人街があるのだから、全米なら結構な数の獅子舞が「春節」を彩っているということになりそうだ。

考えてみれば、私はもう40年も彼らの「新年」にお付き合いしていることになる。
爆竹の大騒ぎや新年早々盛り場に繰り出す人の波には辟易するが、慣れればそれほどでもない。
私が子供の頃、正月の朝は静まり返っているものだったが、今ではそんな「静謐」は望めないだろう。
今年はどんな「春節」が繰り広げられるか、怖いもの見たさで出かけるとしようか。

全1ページ

[1]


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事