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この1月以降、テレビでスポーツ中継を観ることが多くなった。
以前から相撲は結構熱心に観ていたのだが、久々に野球への関心も昂って来たようだ。
ヤンキースのファン歴は長いのだが、松井が去って以後中継を観ることも少なくなっている。
田中将大がエースとしてそれなりの成績を挙げていた時期は良かったが、昨年の彼は信じられないほど良い時と悪い時の波が激しく、ヤンキース自体の成績の悪さもあってたまにしか観なくなっていた。
にも拘らずネットでスポーツの野球欄に目を配るようになったのは、日本から来た一人の若手ゆえ。
大谷翔平という選手が日本で二刀流で活躍していることは知っていたが、多くの評論家同様私もそんなに長くは続かないだろうと考えていた。
ただ160kmを越える快速球はやはり魅力があり、メジャーに来ればおそらく投手に固定され野茂やダルビッシュ、田中などと同様に一線級投手として活躍出来るだろう、と思っていた。
そして他の投手同様日本でも人気があるヤンキースかドジャースと契約するだろうとも予測していた。
しかし、大リーグがまるで大谷を狙い撃ちするかのようにポスティングの最高額を20ミリオンまで下げ、その上25歳以下の選手の年俸の規定額を設けたため、恐らく2.6億円程度だろうと推定されている。
若し彼が25歳まで日本に留まってからメジャーに来れば20億程度を手にすることが出来たらしい。
だが大谷本人は金額のことはほとんど気にしていなかったと聞く。
世界最高の舞台で野球がやりたい、という一心だったとすれば頷けないことではない。
大谷がメジャー入りの前提でアメリカに来たとき、多くのメディアやファン(私を含む)は結局ヤンキースかドジャースへ行くものと考えていたし、大谷以前に彼の代理人がそうさせるだろうと思っていた。
大谷が彼の代理人をどういう経緯で決めたかは知らないが、アメリカでは代理人とは契約を法的に正しいかどうかを精査し出来るだけ高額な契約金を勝ち取る役割と看做している。
スコット ボラスと言えば選手からは信頼が厚く、球団からは蛇蝎の如く嫌われている存在だ。
ボラスは交渉相手のチームの弱点を見つけ出し、彼の依頼人である選手をあの手この手を駆使して少しでも高く売りつけることで知られている。
だが今回の大谷の交渉は過去に見られなかった過程を経たようだ。
先ず西海岸の7チームに絞り込んだことで、ヤンキースが脱落した。
又残った7チームのうち4チームは指名打者制度を採らないナショナルリーグに所属していることから、最終的にはアメリカンリーグの3チームになり、当初本命視されたチームは全て姿を消してしまう。
そして、最後にロスアンゼルス エンジェルスに決まった時、驚いた人も多かっただろう。
大谷がどの辺りでエンジェルスを選択したかは分らないが、少なくとも日本を発った段階では限りなく白紙に近い状態だったのではないか、と私は思う。
「二刀流」を契約条件に考えていた大谷にとって、チームの一員になってからごねることはしたくない。
だが一癖も二癖もある大リーガーたちを束ねている監督からみれば、選手の起用方法に制約を設けられることはなるべく避けたいに違いない。
支配化選手になってしまえば、起用するしないは監督の胸三寸にある。
大谷だってそれくらいは分っていただろうし、その一点が彼の最大の関心事だったのではないか。
エンジェルスのマイク ソシェ監督と面談した時、大谷にこの監督を信じる気持ちが湧いたのだろう。
またそれ故にヤンキースは真っ先にリストから消されたのだろう、とも私は思う。
ソシェはドジャースでプレーし、エンジェルスの監督として3度ワールドシリーズを制している。
言うならば生粋のロスアンゼルス育ちであり、エンジェルスの監督としても実績は充分。
その彼が「投打共に戦力として看做す」と言ったのであれば、その言葉の重みは千金に等しい。
その言を重く受け止めて、大谷は自分をエンジェルスに預けることにしたのではないか。
恐らく、この決断に代理人はほとんど介入していないように思われる。
まあ様々な制約下の契約だから、代理人にとってそれほど美味しいはずはない。
果実が熟するには、最低あと3年は待たなければならない。
もっとも大谷が契約したエージェント「CAA (Creative Artists Agency)」は全米でも最大クラスの代理店であって、芸能関係からスポーツまで多岐に亘っている。
芸能関係ではレオナード ディカプリオ、ジョージ クルーニー、トム ハンクスなどが所属しているが、後発のスポーツ部門でもデビッド ベッカム、ペイトン マニング、デレク ジーターなども専属している。
日本の有力選手の調査にも力を入れているようで、西武の菊地雄星も既に傘下に納めているという。
シーズン開幕以前、大谷の評価は決して高くはなかった。
打率も低く投げれば滅多打ちで、アメリカのメディアはそれまでの評価とは打って変わり、「2軍いや3軍でスタートしたら良い」とか、「所詮日本の野球は高校並みだったということ」など、言わばぼろくそ。
だが3試合連続でホームランを打った辺りから口調が改まり、「自分は間違っていた、謹んで誤りたい」などと署名入りで長文を新聞に掲載した記者も出て来た。
投手としても7回を投げて1安打12三振という快刀乱麻を断つワンマンショーに、褒めるしかなくなってしまった感さえあり、逆にこの後大谷が不調に陥ったときどうなるのか、予測もつかない。
本当のところ、実際に二刀流で1シーズンを過ごした選手が過去にいないだけに、どの程度の数字なら成功なのかまた不成功なのか判断のしようがない、と言えるのではないだろうか。
「15勝、本塁打20本」といった数字も散見するが、それが大谷の目指す目標なのかどうかさえ分らない。
さらに、中7,8日で先発し、その間指名代打で3,4試合に先発しても最終数字はそれほど高くはならない。
メジャーではエースの先発投手を評価するのに「Stopper ストッパー」という呼び方をする。
そのチームが連敗して暫く勝星から見放されたときに、ぴしゃりと相手を押さえ込める投手を意味するようだ。
また打者であれば「Clutch hitter クラッチヒッター」と呼ばれ所謂チャンスに強いことを指す。
レジー ジャクソンはワールドシリーズで1試合3本のホームランを打ち、「MR. October ミスターオクトーバー」なる異名を得、長嶋茂雄は「燃える男」と呼ばれた。
では大谷はどういう選手になろうとしているのか。
私が子供の頃、草野球のチームには一人か二人は抜きん出た選手がいた。
投げれば快速球、打てば豪打、まさしく大谷翔平だったと思う。
大谷は、数十年前の野球少年そのものなのではないだろうか。
ただただ速い球を投げ、打球を遠くに飛ばす。
実に分り易いのだが、さて現代に当て嵌まるかどうか。
テレビで観ていると、ホームランを打ってベンチに戻って来る大谷の眼はきらきらと輝いて見える。
上手く打てて嬉しくて仕方がない、といった風情。
そういう表情を何時までも見せて欲しいものだ。
だが何十億円という年俸が、そこに濁りを与えてしまうのだろう。
大谷の活躍もだが、もう一人さらに若い大スターが生まれていた。
まだ15歳だから、若者というより少年と呼ぶに相応しい。
だがあれよあれよと言う間に、この間4段だったのに早くも7段を窺っている。
この藤井聡太少年も、ブームは暫くの間だろうと私は考えていた。
だが負けを挟んではいるが、ほとんど連敗はしていない。
何と言っても、第一人者羽生義治に2勝無敗が光っている。
羽生は自他共に許す最強の棋士だが、その彼が7段になったのは20歳のとき。
それだけで単純に比較することは出来ないだろうが、羽生を凌ぐ可能性は充分ある。
何となく楽しみな2018年になりそうではないか…。
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