還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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来年の正月?

私が南米からニューヨークに到着したのは、1976年の10月だった。
それ以来、アメリカで正月を迎えること43回目になる。
実は1980年の正月は、永住権を手にして日本に帰っていたから正確には42回だ。
そのうちのおそらく30回程度は、形ばかりではあるが正月の支度をして客を招いている。
そんな高価な物を買うことは出来なかったし、買いたくとも売っている店も無かった。
これに関しては、私は日本食料品店のビルの5階に住んでいたから、間違いはない。
どんなものを客に供していたか、最早記憶から抜け落ちてしまっているようだが、それでも下の日本食料品店から「数の子」や「きんとん」などを買っただろうし、数少ないフィッシュマーケットを廻って何とか日本人に食べられる魚を獲得して来ただろうことは覚えている。
そろそろ日本から魚が入って来た頃でもあったし、知り合いの魚卸店に依頼して「真鯛」などを航空便で取り寄せて貰ったり、アラスカからイクラや鮭を取って貰ったりしたこともあった。
始めの頃は招く人も決めていなかったしその時限りのつもりだったのだが、何時の間にか決まった顔触れが必ず集まるようになり、知らぬ間に30回近くになったような気がする。

10年ほど前までは、このまま行ったら未だ先は長いと思うようになったが、その頃から一人欠け二人欠けするようになって来、ひと頃の10人近い常連が4,5人で固まって来た。
そして4,5年ほど前に参加者2人ということがあり、それを潮に集まりを止めることにした。
考えてみれば、支度する私たちも老いて来ているのだが、客である参加者もまた年老いて来ていたのだ。
マンハッタンに住んでいた頃は気軽にタクシーで来られた道のりだが、クイーンズに引っ越してからは電車の乗り継ぎもあり、来る人たちも結構難儀をしていたのだろう。
「全てのことには終わりがある」、なかなか含蓄のある古諺ではないか。
だが、人を寄せることは止めても別に正月を祝うことを止めたわけではない。
何をする気が無くとも、大晦日が近づけばやはり餅や蒲鉾を買い込むし、つい魚屋の店先を覗いたりもする。
年越し蕎麦の準備や元日の朝に食べるものの心配は、暦年の習い性になってしまったようだ。
悪口を言いながら、半日遅れの「紅白歌合戦」を横目で観ているのも似たようなものと言えそうだ。
「紅白歌合戦」と言えば、私が物心ついた頃は未だラジオ放送だけでテレビが始まるのは数年後の1953年。
未だほとんどの家にはテレビ受像機は無かったから、これを観ていた人はほんの一握りに過ぎないはずだ。
正月の準備を終えて、家族が炬燵に入ってラジオ放送に耳を傾ける。
どんな歌手がどんな歌を歌っていたか、ほとんど記憶に無い。
またNHKのこの怪物番組に民放の各社がどのような番組をぶつけていたか、それも覚えていない。
ただ幾人かのクラシック歌手や民謡歌手が出ていたことは記憶に残っている。
それが大きく変化するのは、やはりテレビ受像機が各家庭に行き渡り始めてからだろう。
歌手は歌うだけではなく踊ったり寸劇を演じたりするようになり、「見た目」が人気に影響し始めた。
というか、歌の上手い下手より容貌やスタイルが全面に出て来た、と言えるかも知れない。
今までのように直立不動で歌えば良い、というわけには行かなくなったのだ。
それ故に消えて行った歌手もいたし、それ故に矢鱈と出番が増えた少女歌手もいた。
この年代の「紅白歌合戦」の出場歌手の顔触れを見ると、「実力」か「見かけ」かが良く分る。

私は1975年のこの番組を南米の大使館で観た覚えがある。
フィルムになった番組を各国の大使館に順番に廻したのだろう。
1月末頃、数十人の日本人が大使館に集り、「紅白歌合戦」を真面目な顔で観たのだから面白い。
ニューヨークに来て暫くしてから日本語放送が始まり、「紅白歌合戦」を自宅で観ることが出来るようになった。
それ以降40年以上、半日遅れのこの番組を観続けて来たことになる。
一応NHKの番組は毎日観ているとは言え、歌われる歌曲の関しての知識はほとんど無い。
辛うじて演歌歌手の歌は聴き覚えがあるが、と言って好んで聴いているわけではない。
結局録画して興味の無い部分は飛ばしてしまう、という手法に終始することになる。
そして最近ではその飛ばす部分がどんどん増えている。
精々小一時間程度しか聴いていないのではないか。
そして普通の家庭でも世代が異なれば好む歌もそれぞれだろうから、全員が楽しめるとは思われない。
最早この番組の存在理由は無くなったのではないか、そう言われ続けて数十年。
役目を終えて消えて行く気配は感じられない。
勿論それなりに番組作りにも工夫を凝らしているのだろうが、その生命力には驚かされる。
師走ー正月支度ー紅白歌合戦ー年越し蕎麦ー初詣
こういう一連の流れは、この数十年で完全に日本人の脳裡に刷り込まれてしまったようである。
弱小とは言え民間放送各社も、それぞれに智慧を絞って対抗しているはずだが、いまのところ成功したとは言えそうにないし、それだけの企画力があるとも思われない。
残念ながらあと数年いや数十年は、この状態が続くのだろう。

私が今年帰国するとすれば、来年は日本で正月を迎えることになる。
未だ住む所さえ正式に決まっているわけではないから、年末の計画など立つはずもない。
だが、一度くらい日本らしい正月を迎えてみたいと考えてはいる。
とは言っても、門松を立てて注連飾りを下げてなどという大袈裟なものではなく、ほんの形ばかりで構わない。
ただ贅沢を言えば、僅かで良いからホンモノを元旦の膳に飾りたい。
それは「干し数の子」であり「エソやイシモチの蒲鉾」、「丹波黒豆」そして「栗きんとん」辺り。
そして雑煮は昔懐かしい「博多風」で拵えたいものだ。
あご(飛魚)の出汁に「底引大根」「焼き鰤」そして可能なら「カツオ菜」があれば言うことなし。

「棒ほど願って 針ほど叶う」という諺もあるが、これくらいのささやかな願いであれば何とかなりそうではないか。
とは言うものの、今列記した数々がささやかな願いかどうか、今浦島には知る由も無い。
日本に腰を落ち着けたら、じっくり考えることにしよう。

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