還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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温帯と四季と

「言うまいと 思へど今日の 暑さかな」
「言うまいと 思へど今朝の 寒さかな」
どちらの句を読んでも、どこかで覚えのあるような気がする。
そう考えるのは、おそらく私が日本人だからだろう。
元の句は「〜今日の 暑さかな」だそうだが、どっちにも実感がある。
そして世界でも、日本人くらい気候を話題にしたがる民族も少ないのではなかろうか。
「お暑うございます」「お寒うございます」「良いお天気ですね」「生憎の雨ですね」
とに角、日本人の挨拶には必ず天気か天候が織り込まれている。
世界で一番短い詩と謂われる「俳句」でも、四季が無ければ芭蕉も蕪村も困り果てるだろう。
そして世界でも、四季のある国があらゆる分野でリーダーシップを握っているようだ。

最初に世界の文明が発達した地域はメソポタミアやエジプトであり、インドであり中国であり、それに続いたのがギリシャ、ローマであり、そして西ヨーロッパ全体に拡がって行った。
最古の文明は数千年も前の話であり、その頃の日本がどういう状況だったのか知る由も無い。
少なくとも、文明とは遠く懸け離れた状態だっただろうことは想像出来る。
誰でも気づくことだが、その中でも四季のある温帯域に人は集まり商業活動も活発になって来る。
結局、その地域がそれ以後の文化の中軸として大きく成長してイギリスやフランス、ドイツやオランダに育って行ったということなのだろう。
面白いことに、遠く離れたアジアでも四季のある温帯地方の国が着実に成長を遂げている。
中国と日本はその典型と言えそうだ。
暑い夏や寒い冬があればこそ、人間はその合間の春や秋にしっかり働くようになるのだろう。

私は四季のない国に1年半ほど暮らしたことがある。
南米の小国エクアドルは赤道の真下にあり、1年中同じような気候が続く。
朝は涼しく、日中は暖かく、夜は冷え込む。
年中同じものを着ている人も多いが、豊かな人はそれなりに着替えているようだ。
人口の半分はインディオと呼ばれる原住民であり、彼ら独自の生活を守り続けている。
一応住んでいる国の国民と看做されているが、彼ら自身はそんなことに無頓着に国境を跨いでいる。
おそらく、数百年前のインカ帝国そのままに生きているのだろう。
一応スペイン語も話すが、彼ら同士の会話は古来のケチュア語を用いている。
インカ帝国で話されていた言語が、そのまま現代に通用しているのだから面白い。
ケチュア語は話し言葉だけで字を持たなかったことで、残された文献や記録が少ない。
だが世界中にそんな言語は数多い。
話し言葉だけで、結局消えて行った言語は無数にあるだろう。
考えてみれば世界から孤立したような状況で数千年を経て、己の言語を確立した日本は奇蹟に近いことを成し遂げたといっても過言ではないかも知れない。
勿論中国から伝わった「漢語」の存在が、その奇蹟の大きな部分を占めていることは否定出来ないが、それでもなお日本人と言う民族が造り上げた「大和ことば」は偉大というほかはない。
そしてその偉業の達成には、この温暖な四季が大きく影響していると言ったら牽強付会が過ぎると言われるかも知れない。
だがこの数千年の日本が辿った軌跡は、まさしく地球上の一つの奇蹟と看做す他はないのではないか。
地球の裏側のヨーロッパで西洋文明が花開き、それとは大きく異なる日本独自の文明が極東の小さな島国で築き上げられていたという事実は、驚き以外の何物でもない。
それを助けたのは、外敵からの侵略もほとんどない環境と、極寒も灼熱もない恵まれた気候状況にあったと言っても可笑しくはないだろう。
とは言え、火山地帯の真上に住んでいる人々に天変地異の災害は少なからずあっただろうし、南から寄せてくる台風は毎年被害を与え続けて来ただろう。
それは今でも変わっていないが、繰り返す受難の経験は日本に天災に向き合う術を教えてくれたようだ。
世界でもトップクラスの天候予測の精度は、その経験の賜物としか言いようがない。

私は、日本人が四季や気候、宇宙などに持つ関心の大きさが何処から来ているのか、そして日本語という言語には他の言語に比して天然自然に関する言葉が非常に多いことが何に起因しているのか、漠然とではあるが不思議に思っていた。
各国が定めている国の祝日を見ても多くは独立記念や宗教関連であり、対して日本は「春分」「秋分」のように昼と夜の時間が丁度半分になるというような理由で休日に設定している。
言ってみれば、日本人は自然現象や月や太陽、星などの宇宙への関心が強く、日本独自の文学と呼べる和歌や俳句の題材にも頻繁に取り上げられて来た。
例を挙げると、「時雨(しぐれ)」は冬の季語であるが、敷衍して「蝉時雨」、「落葉時雨」、「虫時雨」、露時雨」、「片時雨」、「横時雨」などなどきりが無い。
初冬に降りつける雨ひとつでこれだけの類似した言葉を生み出すのだから、その雨に寄せる想いは半端ではないし、おそらく似たような言葉は幾らでも出て来るのではないか。
それにしてもこんな言葉を突きつけられたら、日本語を学ぼうとする外国人はお手上げだろう。
逆に考えれば、そういう変化形を駆使出来る日本人は大いに誇って良いのではないか。

今私はニューヨークから日本に帰ろうと考えているが、これも「温帯―温帯」の移動であって、それ以外の移住先は考えつきそうもない。
調べたこともないが、世界中にいる日本人の移住先はそのほとんど温帯で四季があるところに集中しているのではなかろうか。
暑さから寒さへ移行する合間に快適な秋があり、寒さを脱して暑さに向かう前に爽やかな春がある。
何とも上手く出来ているものだと感心するしかない。
まあ、こういうことは思っていれば良いことで、口にすれば妬みや嫉みのもとになる。
マグロだ鯨だ鰻だと、とかく世界の眼を向けられ易い日本とすれば、敢えて敵をつくることはない。
あちらこちらと行きたがる首相も、そこら辺を考えて貰いたいものだが…。

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