還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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晴釣晴旅(?)

私は日本を離れて40数年、ニューヨークに住んで来た。
だから私の日本に関する知識は、そのほとんどはコンピューターのウエブサイトやテレビ、若しくは日本に帰国した短期間に友人知己から得た耳学問に拠るものだ。
だから見当外れに憶えこんだ情報もあれば、自分に都合よく解釈してしまった噂話もある。
その幾つかは、今でも私の脳裏の抽斗に間違ったまま仕舞いこまれているかも知れないし、その前に私から誰かに伝わってしまっているかも知れない。
自分では日本のことは良く分っているつもりであっても、実はその理解は実際とは大きくずれてしまっていることもあり得るわけで、何処かでそれが曝け出されて赤面しなければならない時がある可能性も否定出来ない。
そう考えてみると、今まで訪ねて来た世界の国々に関する私の知識や理解などは、ほんの上っ面を撫でた程度のものだと考えた方が間違いないだろう。
言い換えれば、団体で行く「点と線旅行」と大した違いはない、と言うことかも知れない。

とは言っても、知らない土地を訪ねるのは楽しい。
私のようにほとんどが仕事で行った処であっても、チリの最南端フエゴ島、最北のアイスランド、カナダの東端ニューファンドランド、短い滞在ばかりだったが未知の地を見ることの興趣は小さくない。
仮に其処にはビジネスとの関わりが大部分を占めているとしても、初めて接する事物は好奇心を刺激してくれることは間違いない。
そしてそこで知り合う人たちとは、仕事を通じてではあっても触れ合う部分は確かにあった。
夜、テーブルを囲んでワイングラスを傾けるのも、仕事絡みであっても悪いものではない。
ただ残念なことに、味覚という点では驚きや満足感を感じたことはほとんどない。
何処をとっても水産だけが産業のような田舎町であり、観光客を惹きつけるような見所もなければ食通を唸らせるような珍味佳肴ももともとない。
僅かな救いは放し飼いにされている鶏とその卵くらいだが、これは何処の田舎町に行っても旨かった。
ブロイラーを飼育するほどの需要も無いことが、そういう旨い肉や卵を育てると言う皮肉。
だが何の楽しみも無い僻地であれば、せめてそういう口腹の楽しみがあれば救われると言うもの。
実はフエゴ島のプンタ アレナスは日本の「タラバガニ」に良く似た蟹が捕れるのだが、現地で消費されることはまずない。
また「メロ」と呼ばれるシーバスの種はその美味で知られているが、これもほとんどが輸出用であり、さらに押し寄せる他国の密漁船の乱獲によって絶滅の危機に瀕しているという。
残念ながら、私はその美味を人づてに聞いただけで、味わうには至っていない。
僅かにニューヨークの高級食料品店で売られている値札を見て、その旨さを想像するだけだ。

日本に帰ることが出来れば、私はこの小さな島国の未知の町や村を訪ねたいと考えている。
数十年前に、仕事で多くの県や町に足を踏み入れてはいるのだが、如何せんそれこそ点でしかない。
だからある意味では、他国人に近い新鮮な感覚で接することが出来るのではないかと思ってもいる。
行きたい町は数あるが、その中でも魚市場は真っ先に訪れてみたい。
魚市場と言えば「築地〜豊洲」を思い浮かべるだろうが、日本には各県に少なくとも一つは魚市場や青物市場、さらには肉市場があってそれぞれに競り場を持って営業している。
と言っても、その何れもがかつての「築地」のように各種の食堂があったりするわけではない。
小さい市場ならそれに相応しいささやかな食堂があるだろうし、メニューもうどんや定食程度かも知れない。
「競り」にしても、競り人が床に置かれたトロ箱をひとつづつ示しながら彼を囲んだ買い付け人たちが根付けをして、その場で売買が成立するわけだ。
競り人を先頭に大勢がぞろぞろ競り歩く様は、「競り」の原型はこうだったのだろうと思いを致してしまう。
田舎の市場には、船が着いたらすぐ「競り」を始めるところもあり、買い付け人はそれに合わせて市場に来る。
私も数軒の地方市場を見て来たが、知らないところがほとんど。
「競り」も面白いが、競られて市場の店に並ぶ魚たちも興味深い。
近年、以前は「猫跨ぎ」扱いされていた魚が脚光を浴びている。
もともと決して不味い魚ではなかったのだが、漁獲量が少ないので「色物」の範疇に入れられてしまっていた。
「色物」とは数に入らない魚を一箱にして「競り」にかける時に用いる名称だが、食べられないわけではない。
ただ、所要時間の問題もあって、少量の種類は慣習的に半端物扱いにされて来たようだ。
「歯ガツオ」とか「鷹の羽鯛」、そして一昔前の「馬面カワハギ」などがそれに当たるだろう。
「馬面カワハギ」などは、磯釣りで釣れてもそのまま海に放られたものだが、今ではすし屋の水槽で泳ぎまわって「カワハギ」の代役を立派に務めている。
ないがしろにされていた魚たちが認められて来たのは魚不足の所為もあるが、決して悪いことではない。
「歯ガツオ」などは長い間冷遇されて来たが、今では「カツオ」よりも高値の場合もある。
これからも色々な魚が「幻の魚」扱いされるようになるのではないだろうか。
「ベラ」などは長い間関東では「外道(漁の対象魚ではない)」扱いされて来たが、以前から関西方面では好んで食べられていたようだ。
つまり、「食わず嫌い」や「料理人の先入観」が、ちゃんと食べられる魚をなおざりにして来たということだろう。
それが今では無視するわけには行かなくなったわけで、魚に取っては祝すべきことではないか。
何を喰わされて来たか分らないような「養殖魚」などより、遥かに出自がはっきりしているのだし。

勿論魚市場だけを見て廻るわけではない。
アメリカの地方都市は、町や村を形成してから日が浅い所為か、どれもこれも同じように見える。
その点日本の集落は長い歴史を経てきたこともあり、独自の匂いや風貌を造り上げて来た。
つまり小さな町や村でも他処とは異なる風格が感じられるのだ。
その辺りを多少の時間をかけて見聞き出来るのであれば、かなり興味深い旅になるだろう。
私に残された時間がどの程度か知る術もないが、道半ばで終えてもそれはそれで良しとしよう。
40数年間の空白の後に訪れた機会を濃密に過ごせれば、本懐と考えても間違いではない。
まあ、それに折々の釣の成果が加わってくれれば万々歳と言えそうだ。

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