モグラのあくび

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『ギャングオブニューヨーク』、『アビエイター』のマーティン・スコセッシによる香港映画『インファナル・アフェア』のリメイク作。
香港でのオリジナルタイトルは『無間道』で、「無間」とは仏教用語で“地獄”を指す。
インタビューで、オリジナル版の監督アンドリュー・ラウは、以下のように語っている。
「我々のテーマ「無間道」には2つの意味があるのです。映画の中で言う涅槃経第8巻にある《無間地獄》は、最も苦しいのは生を超えられないことだという意味です。しかし結末に我々はまた別のテーマを提出しました。長寿は最も辛く苦しい一つの懲罰だと。不死は必ずしも快楽ではなく、死も必ずしも悪いとはいえない、死はもしかしたら長寿よりもマシなのです。」

『インファナル・アフェア』=「地獄の仕事」からもわかるように、オリジナル版のキーワードは“地獄”。
3部作の第2弾には「無間序曲」、第3弾には「終極無間」と副題がつけられており、
「無間序曲」の冒頭には「「阿者言無,鼻者名間,為無時間,為無空間,為無量受業報之界」と涅槃経からの引用が映し出されるなど、仏教的な深みを感じさせる。

リメイクタイトルは「ディパーテッド」=「死者」。

「生きること」の「苦しみ」を示すオリジナル版から、「すでに死んだ者」へとタイトルが変わっている。

いわば「現在(進行)形」から「過去形」への変化である。
この、ある種、逆転したタイトルのつけ方一つをみても、アジア映画とハリウッド映画の差が如実に表れているといえるかもしれない。


ボストンのアイルランド系移民が抱える人種問題を根底にすえて、マフィアと州警察の攻防を描き出す。
香港からアメリカに舞台を移しての、この設定変更が「なるほど!!」と思わせて、なかなか秀逸。
かつて、裕福な父と貧しい母の家を行き来していた警察のレオナルド・ディカプリオは、その二面性を変われて極秘でマフィアに潜入する任務に就く。
一方、幼少よりマフィアのボスに目をかけられたマッド・デイモンは、警察官となり内部情報をマフィアに流すスパイとなる。
それぞれトニー・レオン、アンディ・ラウが演じた警察とマフィアの複雑なクロスオーバーを、2大スターが担当している。

まず感じるのは、オリジナルとリメイクの「主役2人のイメージ」の違いだろう。

レオンの苦悩は、童顔のディカプリオによって、どこか「脆弱さ」「幼さ」に見え、
警察内でエリートとしてのし上がっていくマッド・デイモンは、ラウに比べてあまりにも「マッチョ」すぎるように思える(もちろん、それは肉体的な意味だけではない)。

なにも比べる必要はないわけで、『ディパーテッド』単作で観れば、まったく違和感のないことなのだが、ただの個人的偏見なのか、ハリウッド的な「大味さ」を感じてしまうのも確かなのであった。

その主役2人をつなぐ、マフィアのボスをジャック・ニコルソンが好演。
ディカプリオ、マッド・デイモン、ニコルソンの3者による駆け引きが手に汗にぎらせる。
ニコルソンが大きくフィーチャーされているため、ディカプリオと上司との関係はやや希薄で、スター3人に焦点を絞ったわかりやすいストーリーとなっている。


俳優陣同様、舞台の差も想像以上に作品に影響を与えている。

アジア的なカオスをみせる「湿潤」の香港に対し、ボストンは町自体がどこか「さっぱり」した「頑強さ」を感じさせる。
それはマッド・デイモンに感じた「マッチョさ」に近いものなのかもしれない。
香港とアメリカという「国」、あるいはそれらの「町」そのものの「色」の違いというものが、大きく作品のイメージを変えているように思う。

3部作の作品を1作にまとめたため、ラストはやや唐突。
「どんでん返し」どころか、無理やり話を終わらせようとしたかのような印象を受けた。
ただ、誰かが「死ぬ」ことによって「どんでん返し」へとつながっていく展開は、「ディパーデット」というタイトルを考えれば、非常に象徴的。
余韻を許さない、衝撃的な終わらせ方であった。


「地獄」のような任務(生)と、その先に待つ「死」。
幾重にも張り巡らされた罠による、「生」と「死」の戦いが、アメリカ的にリメイクされ、これでもかと描き出されている。
オリジナルと比べずに、作品そのものを味わうのがベストなのではないだろうか。
(07年 3作目○)


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