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「竹内力」――、
という単語は、あなたにどのような印象をもたらすだろうか?
恐らくは、「力也」に次ぐ強面イメージ、反則スレスレ、人間凶器、借金取りにきたら間違いなく払ってしまう、などなど。
少なくとも、「俳優界のうさぎちゃん」ってなイメージの人はいないはずだ。
そんな竹内力が、
「はよ出せや。竹内力をなめたらあかんど〜。お腹と背中くっつけちゃろか〜!!!!!」
と、画面上でブチ切れる。
そりゃもう、放送コードぎりっぎりの表情である。
しかし、次の瞬間、私たちは「本当の恐怖」がそんなものではなかったことを知る。
シャクっと、アイスを食べたかと思うと、「竹内力もうっとり」とナレーション。
アイスを食べた竹内力の表情は、「孫を見るおじいちゃん」とでもいおうか、「ライオンと接するムツゴロウさん」とでもいおうか、例えようのないほど破顔し、目なんかもう「とろ〜ん」ととろけるよう。(ここらへん、「アイス」と「とろける目」をかけたのだろうか?)
そのバックに「旨チョコミルクいちご〜!!!!」と親の仇でもつかまえたような口調で商品名を叫び、CMは終了する。
思わず、目を釘付けにして、「え?なに?」と半ば放心しながら見入ってしまった。
「ガリガリくん」で知られるアイス食品メーカー・「アカギ」の商品『旨チョコミルク』のCMである。
百聞は一見にしかずなので、HP(http://www.akagi.com/)を見てほしい(サイトではCMも見ることが出来る)。
竹内力の表情は、これはもう、俳優冥利につきるとでもいおうか、アカデミー賞ものの「顔芸」である。
大学で広告に関する授業があり、特に「CM」の話に及ぶと、「最近のCMはよくない」と先生は言う。
日本におけるCMは、7割8割以上が芸能人を使って作られている。
カンヌのCM祭など国際的CM評価の場での、日本CMの劣勢はこのような現状にも端を発しているという。
芸能人を使ったCMは、そのほとんどがイメージ戦略である。
日本のCMは、15秒ほどしかない。
商品の良さを伝えるにはあまりにも時間が少ないのである。
(海外のCMは、もう少し尺があると聞く。)
「旨チョコミルク」は、この「竹内力もうっとり」というCMを利用して「あの竹内力ですらうっとりするほどうまいですよ〜」とアピールした。
竹内力とは、「強面」という「記号」である。
私たちは、CMを見る前から、竹内力の「記号内容」というものを知っている。
芸能人CMは、前提条件(「あの竹内力が」の「あの」の部分)をショートカットすることができる。
放送時間の短い日本のCMにおいて、芸能人CMが跋扈するのも当然の帰結である。
まあ、個人的にはCMがつまらなくなった(といえるほど、CMを意識してみていないだけかもしれないが)とは思わない。
ごちゃごちゃ言わずにただ面白けりゃいいじゃん、というのが私のスタイルである。
このCMでは、同時に「竹内力自身も」CMのイメージを利用して、いつもとは違った面を引き出そうとしているような気がする。
竹内力に「ここまでさせたのか!!」というギャップは、商品と俳優両方へのインパクトとなる。
その点が、例えば、芸能人が出てきて「商品説明をするだけ」のCM、いってしまえば俳優のイメージを「裏切らない」CMとは違って秀逸なのではないかと思う。
笑いとはギャップだ。
にしても、竹内力の「あの」表情!!
反則技だよ、「アカギ」。
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