ライトノベルで何が悪い!!
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ストレートな題名、表紙の絵。 ――かめくん。 ほのぼのとした装丁だが、中身まで侮ってはいけない。 私がこの本に出会ったのは、『STUDIO VOICE』の06年3月号――第一特集は、「今最も面白い小説150冊!」だった。 『かめくん』の紹介文には、 と書かれている。 「かめとSF?」と、まず私は思った。 「かめと実存?」と、ついで私は思った。 そして、読中「かめとSF!」と私は思い、 「かめと実存!」と読後に思うこととなった。 「かめくんは、自分がほんもののカメではないことを知っている。ほんものではないが、ほんもののカメに姿が似ているから、ヒトはかめくんたちのような存在をカメと呼んでいるだけなのだ。だからカメではなくレプリカメと呼ばれたりもする」(裏表紙の説明書き)舞台は、近未来の日本――作者の言葉を借りれば「「オバケのQ太郎」とか「ドラえもん」と同じやり方」である。「ああいうものが普通に街を歩いていて、なんとなく認知されている世界ですね」 レプリカメの甲羅はシリコンとセラミックで出来ており、メモリーの増殖と同時に骨や皮膚のように成長することができる。 「だから、大きくて重い甲羅には思い出がたくさん詰まっている」のだが、かめくんは甲羅の大きさに比して、昔のことを憶えていない。「特に戦争に関することは――」 どうやら、記憶(カメモリー)にプロテクトがかけられているらしい。 かめくんの過去とは? かめくんの正体とは? 少しずつ、かめくんの謎が明らかになっていく。 「木星戦争」とは? かめくんが仕事で撃退する「ザリガニ型の怪獣」とは? 少しずつ、狂った世界の全貌が判明していく。
これが、「かめくんの世界観」である。 「甲羅の取替え」によって、「記憶」を自由に交換――つまり、自分の甲羅を違うレプリカメに背負わせることによって、自分のメモリーを他のレプリカメに移植――できる「レプリカメ」たるかめくんは考える。 「自分が背負っているこの甲羅が、自分以外の誰かの甲羅だったことはあるのだろうか。もし、そうだとしたら、こんなふうに再生されたりする記憶というのは、自分のものなのか、それとも誰かのものなのか。こんなことを考えているこの自分というのは、はたして甲羅のなかにあるのか、それとも甲羅以外のどこかにあるのか」「世界=意識」は、どこに存在しているのだろうか? 「甲羅=脳」なのか、それとも「肉体」なのか……。 かめくんは考える。推論する。推察する。 記憶(カメモリー)のプロテクト解除によって、かめくんはレプリカメとは「どのような存在なのか」を理解していく――私たちもまた理解していく。 そして、かめくんの思考がデカルトの「我思うゆえに我あり」的な「こころの在り方」に辿りついたとき、「記憶」に「従属するもの」としての「思考」の交換可能性が仮説されるのである。 「私は、何をもって私たるのだろうか」、と。 SF世界の、かめくんの――それはつまり、「私たち」の――実存のお話。 傑作である。 |
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