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ライトノベルで何が悪い!!

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『このライトノベルがすごい!2007』ランキング第1位作品!!

1巻の発売が今年の2月というピカピカの一年生が、2位の『涼宮ハルヒ』、3位の『戯言』など人気シリーズひしめく中、颯爽と首位を奪取した。

さすが1位だけあって、ブログなどを周遊していると人気のほどがうかがえる。
私は名前すら知らなかったので、ランキング誌さまさまの出会いである。
ちなみにベスト10は以下のようになっていて、
1位『狼と香辛料』
2位『涼宮ハルヒの憂鬱』
3位『戯言シリーズ』
4位『半分の月がのぼる空』
5位『キノの旅』
6位『とらドラ!』
7位『終わりのクロニクル』
8位『「文学少女」シリーズ』
9位『空ノ鐘の響く惑星で、』
9位『ある日、爆弾が落ちてきて』
ラインナップを見ても、読んだことがあるのは2,3,5位くらい。
名前も知らない作品がほとんどで、どれ折角“オススメ”されているのだから、どう「面白い」のか確かめてみようじゃない、とウズウズ、でもなんとなく「ランキング誌に踊らされすぎだろ」と思わなくもなく(ミステリのランキングも然り)、とはいえ「売れている物は一応、読んでおかないとね」と誰にともなく言い訳しながら読んでみた次第である。


「中世ヨーロッパ的世界」で繰り広げられる「商人たちの、騙し騙され悪知恵渦巻く頭脳戦」足すことの「美少女の姿をした狼神との珍道中」。

「なに、俺も駆け出しの頃は行商人全部が化け物に見えた。今でも半分以上が化け物だ。それでもなんとか食っていける。頑張ることだ」

主人公・ロレンスは中堅の行商人――25歳だが、「町の人間なら妻を貰って子供と共に教会の説教に行く年頃で、人生も半ばを過ぎている」。
少しずつ、独り身での町から町の行商に寂しさを感じ始めているそんな矢先――、
ひょんなことから狼の化身・ホロ(狼耳としっぽ付)と出会う。
ロレンスは戸惑い、やや否定的な態度を示しながらも受け入れ、共に彼女の故郷である北の街を目指すことになるのであった。
「これも時代の移り変わりかの。この分だとだいぶ変わっていそうじゃ」
「お前自身は変わったのか?」
「・・・・・・」
ホロは無言で首を振る。こんな仕草はとても子供っぽい。
「なら故郷も変わっていないだろ」
その道すがら、雨宿りに訪れた教会でロレンスとホロは、ある儲け話をもちかけられる。
即座にホロはその話が「嘘」だと見破るのだが――、

「嘘をつく時、大事なのはその嘘の内容ではなく、なぜ嘘をつくかというその状況じゃ」

ロレンスは、9割9分「嘘」だと判断しながらも、その「儲け話」に乗ることにする。
なぜなら、「真であればそのまま儲けに乗ればよく、嘘であれば誰かが何かを企んでいるということだから、そういう時は、注意深く裏を突けば大抵儲け話になるはずだからだ」

商人の人からの“見られ方”――人の“見方”に対する哲学も興味深い。
金のために様々な「騙し合い」が行われる中、自分の「人」を、「物」を、「世の動き」を見る“目”だけを武器に生き抜く商人たちのマネーゲームが面白い。
とても、自分じゃこうはうまく商売できないなと思わせる、やり取りの妙である。


そして、本作が支持を得た最大の理由は「賢狼ホロのキャラクター設定」にあると言っても過言ではないだろう。
やや狙いすぎな感もあるが、なんだかんだでキュンとしてしまうのだから作者の勝ちである。
口調からしてこんな感じ。

「……ふう。良い月じゃ。酒などないかや」

……「かや」?
な、なるほどぉ、と萌えを実感しながら読み進めると、

「わっちは神と呼ばれて長いことこの土地に縛られていたがよ、神なんてほど偉いもんじゃありんせん。わっちゃあホロ以外の何者でもない」

今度は「わっち」である。相手のことは「ぬし」と呼ぶ。困ったときは「困りんす」。語尾に「じゃ」がくることも多い。
とどめに、小首をかしげ、すがるような目で「助けて……くりゃれ?」と言われれば、いかにロレンスといえどイチコロなのであった。

しかし、少女の姿とはいえ、そこは神様。
実際は長い年月を生きている。
そのため、話術は老獪、人生経験も豊富、なかなか含蓄のある発言をしてくれる。
だが、「土地に縛られている」間にホロもまた独りになっていた。
「ホロは、一人は嫌だといった」
商人として独りで生きてきた男と、長年の「封印」によって独りになってしまった「老獪さ」と「弱さ」を同居させる賢狼――。

「俺、いや、俺達は商人だ。儲かればなんでもいい。笑うのは金が入ってから、泣くのは破産してからだ。そして、俺達は笑うんだ」

孤独感を共通させながら、お互いを支え合う2人(1人と1匹?)の関係が、本作にまた違った趣を与えている。


読了し、さすが1位と合点がいった。
キャラクターもいいし、商人たちの騙し合いも読ませる。
人気があるのも頷ける面白さであった。

今年1年間で3巻まで出ているというのだから、ラノベ作家の筆の速さには驚かされるものがある。
1巻の段階では、話は「続きそう」だが「発展しそうにない」といった印象。
今度どうなっていくのか気になるところだ。
こうやって――『ハルヒ』のときと同じように――2巻、3巻と読んでしまうのだろうか。
ライトノベルの引力とは、げに恐ろしいものである。


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ストレートな題名、表紙の絵。
――かめくん。
ほのぼのとした装丁だが、中身まで侮ってはいけない。

私がこの本に出会ったのは、『STUDIO VOICE』の06年3月号――第一特集は、「今最も面白い小説150冊!」だった。
『かめくん』の紹介文には、
「P・K・ディックやカート・ヴォネガットらのニューウェーブSF的な朧げな実存の不安を軽やかに、しかし鮮やかに切り取って見せた作品」
と書かれている。

「かめとSF?」と、まず私は思った。
「かめと実存?」と、ついで私は思った。
そして、読中「かめとSF!」と私は思い、
「かめと実存!」と読後に思うこととなった。


「かめくんは、自分がほんもののカメではないことを知っている。ほんものではないが、ほんもののカメに姿が似ているから、ヒトはかめくんたちのような存在をカメと呼んでいるだけなのだ。だからカメではなくレプリカメと呼ばれたりもする」(裏表紙の説明書き)

かめくんは「木星(で行われているらしい)戦争」に投入するために開発されたカメ型ヒューマノイドである。
舞台は、近未来の日本――作者の言葉を借りれば「「オバケのQ太郎」とか「ドラえもん」と同じやり方」である。「ああいうものが普通に街を歩いていて、なんとなく認知されている世界ですね」

レプリカメの甲羅はシリコンとセラミックで出来ており、メモリーの増殖と同時に骨や皮膚のように成長することができる。
「だから、大きくて重い甲羅には思い出がたくさん詰まっている」のだが、かめくんは甲羅の大きさに比して、昔のことを憶えていない。「特に戦争に関することは――」
どうやら、記憶(カメモリー)にプロテクトがかけられているらしい。

かめくんの過去とは?
かめくんの正体とは?
少しずつ、かめくんの謎が明らかになっていく。

「木星戦争」とは?
かめくんが仕事で撃退する「ザリガニ型の怪獣」とは?
少しずつ、狂った世界の全貌が判明していく。



「この宇宙のすべてはたったふたつの言葉で表すことができる。すなわち、ひとつは、甲羅の内側。そしてもうひとつは、甲羅の外側」

これが、「かめくんの世界観」である。
「甲羅の取替え」によって、「記憶」を自由に交換――つまり、自分の甲羅を違うレプリカメに背負わせることによって、自分のメモリーを他のレプリカメに移植――できる「レプリカメ」たるかめくんは考える。

「自分が背負っているこの甲羅が、自分以外の誰かの甲羅だったことはあるのだろうか。もし、そうだとしたら、こんなふうに再生されたりする記憶というのは、自分のものなのか、それとも誰かのものなのか。こんなことを考えているこの自分というのは、はたして甲羅のなかにあるのか、それとも甲羅以外のどこかにあるのか」

ここでの「甲羅」は、「ハードディスク」のメタファーであると同時に、「脳」のメタファーである。
「世界=意識」は、どこに存在しているのだろうか?
「甲羅=脳」なのか、それとも「肉体」なのか……。
かめくんは考える。推論する。推察する。

記憶(カメモリー)のプロテクト解除によって、かめくんはレプリカメとは「どのような存在なのか」を理解していく――私たちもまた理解していく。
そして、かめくんの思考がデカルトの「我思うゆえに我あり」的な「こころの在り方」に辿りついたとき、「記憶」に「従属するもの」としての「思考」の交換可能性が仮説されるのである。
「私は、何をもって私たるのだろうか」、と。

それでも――、
「かめくんはかめくんでしかない」
作中でも繰り返されるこの言葉に、本作のすべてが詰まっているように思えた。

SF世界の、かめくんの――それはつまり、「私たち」の――実存のお話。
傑作である。


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