食べたいけど、食べられない…。アレルギー、そしてDIET(食事制限)
■ 食べたいけど、口に入れられない…
オーストラリアには、驚くほどの「牛乳アレルギー」の人が存在し、驚かされました。
チョコレートを食べる時さえも、「これはミルクチョコレートか?だったら食べることはできない」と、食べ物を食べる時、細心の注意を払っていました。
スーパーに豆乳がずらりと並んでいる理由もわかります。
同じように小麦粉アレルギーも多く見受けられました。
安心して、「食品」を口に入れることができない人のなんと多いことか…。
そして、肉食の弊害を知り、肉食を否定する人「ベジタリアン」そして、一切のたんぱく質をとらない「ビーガン」にいたるまで…色んな「DIET(ダイエット…食事制限)」をしている人に出会いました。
とにかく、あれがだめ、これもだめ、という話をいたるところで聞きました。
オーストラリアを含めたいわゆる「西洋的な食生活」にひずみがでてきているのか…と考えざるをえませんでした。
そんな中、それを打ち砕くような、食べ物に出会いました。
それが、醗酵食です。
醗酵食パワー
■ 醗酵すれば…
カビっカビの手作りチーズが出てきた時は、結構何でもいける私でもためらいました…。
「この赤いカビはだめ、でも緑や白は大丈夫」…。
チーズのカビ指南をしてくれたのは、エリザベスさん。
彼女の家では、ほとんどの食べものを手作りし、特に発酵食品に力を入れています。
ハム、チーズ、ワイン、ビール、パン、酢、味噌…
とにかくありとあらゆる醗酵食だけでなく、味噌は麹から、パンはイーストから、チーズも家で搾ったミルクから…という徹底ぶり。
「醗酵食」は菌が食べ物を醗酵して作られた食品です。
まず、食べ物が菌と出会い、醗酵というプロセスを経ると、アレルギーや肉食・脂肪過多のひずみを、吹き飛ばしてしまうがごとく、すごいパワーを持つようになります。
牛乳や大豆など、消化や体が受け付けることができないという点で、ある人間の体には負担になる食べものでも、菌が食べものを人間の体にやさしく調理してくれるそうです。
「牛乳は強すぎるけど、チーズなら胃にやさしくて大丈夫」そんな人にも出会いました。実は私もそうです。牛乳を飲むと即腹痛がおきます。
しかし、発酵食品であるチーズはやさしく胃に入って行きます。
また、醗酵することによって、さまざまな栄養や味わいも生まれてくるそうです。
エリザベスさんも、牛乳という一つの素材に「醗酵」という魔法をかけて、チーズ、ヨーグルト、醗酵バターと、やさしくて、食べものに変身させていました。
彼女の食卓はいつもずらりと並べられた醗酵食や保存食でいっぱいになります。
菌がはぐくむ豊かな味に、健康だとか体にいいとかそういう理屈ぬきに、今日も、かびたち…いえ、チーズを口に放り込んでしまうのでした…。
天然酵母から作られたパン作りも、のんびりしたものでした。
天気のいい日、パン種を醗酵させるためにずらりと外のテーブルの上に並べます。
干された布団のよこで気持ちよさそうに、パン種が日向ぼっこしています。
それは時間とともに日光をゆっくり、吸い込み、どんどん膨らんできます。
生き物観察みたいに、食べ物ができる過程を見るなど、忙しかった私の生活からは、想像もできないことでした。
口に放り込むだけだったパンに、命があることを知りました。
「工場が人工的に作ったイーストのパンと、わたしの天然酵母のパンの違い、分かるわよね?」
エリザベスさんの、小麦粉と水をまぜ、暖かい場所におけば、酵母菌が育ってパンが膨れる、そんなのんびりした過程を経て丁寧に作られたパンです。
それまで、加工された時点で「食べ物=生き物」じゃなくなる…と、何となく思っていました。
そもそも、生きている、生きていないなどと考えたこともなかったのかもしれません。
しかしパンやチーズなど醗酵食作りを通して、顔のない…食べものたちは実は一つ一つ表情があり、いきなり私に話しかけてきたようでした。
ここではそんな食べ物たちが本当にいとおしく、話しかけたい衝動にかられるのです。
さまざまな地域に生きている多種多様な菌が作る、醗酵食はまさに「生きている食べもの」だと、今はっきり言えます。
季節や温度、時間、微生物が働く環境などを考慮し、パンを膨らませ、チーズを熟成させ、ワインをねかせます。
「食べもの」の声に耳を傾けながら作っていく…。なんて楽しいおしゃべりでしょうか!
■ バナナ麹(こうじ)
日本人の私ですが、あるとき、麹(こうじ)を生まれて初めて作りました。
エリザベスさんは味噌も手作りしているのです!!
普通はワラなどを使って麹を作るそうですが、エリザベス式ではバナナの葉につつんで…^^
写真:右=完成した麹 左=バナナの葉で巻かれた麹
その「バナナ麹(?)」を半信半疑で台所の横の風通しがいい日陰に、つるしていく作業をしました。
オーストラリアの風景に明らかに場違いな麹達…。
毎日、台所の横の下げられた、その奇妙な^^バナナ麹を観察しました。
空気や日光が麹達を、日に日に変化させていきます。
水分を失い、ひなびて…色が変わって…とどんどん姿を変えていきます。
ついに、解禁の日。
そっとバナナの葉を開けると、ひなひなになった小さなかたまりが現れました。
菌たちがここに住んでいて、これをゆで大豆に投入すると、菌が水を得た魚のように^^はしゃいで、味噌という食べ物になります。
オーストラリアで醗酵食の素晴らしさを知りましたが、日本にも、その風土に育まれた漬物、味噌、醤油、鰹節、数え切れないくらいの先祖の知恵の結晶があります。
地域の菌とともに食べ物を創ってきた、日本人の深い知恵に、オーストラリアで出会いました。
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