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とんでもないものが飛び出して来た。2010年9月21日付朝日新聞朝刊(第1面他)によると、厚生労働省の局長だった村木厚子氏が2010年9月10日に無罪になった(その後、検察側が控訴を断念する方向の為、無罪が確定する見込み)郵便不正事件で、主任検事(43歳)が証拠FDのファイルのタイムスタンプを改竄した、と云うもの。不注意で上書き保存していたならばまだしも、専用ソフトで改竄した疑いが濃厚、てものだ。
タイムスタンプについちゃ、昨年だったか、小沢一郎の政治資金規正法違反事件で、検察側に押収されたデータのタイムスタンプの情報が検察側からリーク(意図的か否かは別にして)されたが、タイムスタンプの改竄なんて事が検察内部で普通に行われているとしたら、大問題(←これは、まだ可能性)。
検察当局は、捜査に乗り出す由(当然の事ながら、刑事犯に相当する為)。
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朝日新聞の伝えるところによると、
厚労省の元・係長の上村勉・被告がPCで元データ(証明書)を作成したのは、2004年6月1日午前01時20分06秒。
大阪地検特捜部が上村勉・被告を逮捕したのは、2009年5月26日。同日、「自宅から」この証拠FDを押収。
2009年6月14日、大阪地検特捜部が村木厚子氏を逮捕。
2009年6月19日、証拠FDの最終更新日付を2004年6月1日午前01時20分06秒とする捜査報告書が作成された。
2009年7月04日、村木厚子氏が容疑否認のまま、起訴。
2009年7月13日、検察内部で証拠FDの中のファイル最終更新日付を「2004年6月8日21時10分56秒」に改竄。
2009年7月16日、証拠FDを上村勉被告側に返却。
2009年秋に、村木氏側が大阪地検での公判前整理手続きの中で、証拠開示を請求し開示された資料の中に、上記の「2004年6月1日午前01時20分06秒」とする資料が含まれていた。
てな経緯。その後、村木氏の裁判はは2010年1月に後半が開始され、2010年9月10日、無罪が言い渡されるに至った。
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この件のタイムスタンプの改竄を解明された経緯は、次の様なもの。
大阪拘置所に勾留中に開示証拠をチェックしていた村木氏本人が、検察側の描いた構図と、上記の証拠FDの「2004年6月1日午前01時20分06秒」のタイムスタンプとの矛盾に気付き、弁護団に連絡。弁護団は、この齟齬を裁判で訴える事で、無罪判決へと繋がる事となった。
村木氏の無罪判決後、上村被告側弁護団の諒解の下、朝日新聞側が証拠FDのタイムスタンプを確認したところ、齟齬が判明。朝日新聞社側から大手情報セキュリティ会社に解明を依頼して、判明。
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色々問題点があるが、先ず問題にしなければならないのは、主任検事の意図。検察側関係者への取材によると、同僚に2010年2月頃「村木から上村への指示が6月上旬との見立てに合う様、インターネットから専用のソフトをダウンロードして最終更新日付を改竄した」と語っていた由。この取材と朝日新聞社からの大手情報セキュリティー会社への依頼との前後関係ははっきりとはしていない。
この件で朝日新聞社側が大阪地検に取材。取材でこの事を知った大阪地検側が主任検事に事情聴取を行ったところ、次の様に答えた由。
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上村被告宅から押収したフロッピーディスク(FD)を返す直前、被告がデータを改竄していないか確認した。その際、私用のパソコンでダウンロードしたソフトを使った。改竄は見当たらなかった為、そのソフトを使ってFDの更新日付データを書き換えて遊んでいた。USBメモリーにコピーして捜査していた積もりだったが、FD本体のデータが変わってしまった可能性がある。FDはそのまま返却した。
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「遊んでいた」の意味が曖昧だが、書き換えて、データの様相を見ていたのかも知れない。弁護団側は、「本来ならば、鑑定に出すべき件」とするが、まあ、検察にも予算と云うものがあり、何でもかんでも鑑定出来る訳でもなかろう。
が…、私用のPCに証拠を突っ込む、などとは言語道断。証拠を破壊・改竄してしまう可能性があり、今回はまさにそれが起こった訳だから。意図的でなかった場合でも、懲戒処分は免れない行為。今や、普通の会社でも、セキュリティの面から私用PCのオフィスへの持ち込みを禁ずる会社も少なくない。
検察は、時間外労働の長い部署だから、公私混同になっている危険もある。時間外労働が長いと、どうしても私用の用事などを、その時間内で多少は行わなければならない道理になって来て、私用の案件やモノがオフィスに紛れ込む道理。
まあ、怪しげなソフトを検察のネットワークに繋がったPCにダウンロードして操作出来なかったらしいところは、まだ、いいのだが…。
この主任検事は、43歳との由。特捜部だから、エリートコースを歩んできたと想定して24歳(大学卒業22歳+司法研修2年)で検事任官(まあ、最初の10年間は検事補な訳だが…)とすると、その年は、1991年頃。当時は、IT関連に関しては、検事(検事補でも)には全権が認められており、検事の申請したPCは自由に購入出来た。よく検事が「今使ってるのはPCだけど、マックも使ってみたいから…」なんて言っていたのを思い出す。普通の会社よりは遅れていて(ネットワーク未整備)、検事の自由裁量の幅は大きかった。が、当時の雰囲気・意識のままでIT関連で全能感を持ったままでは困る。
権限を持った者が、不埒な意図を以て操作を行った場合、それを解明するのには、結構な時間と労力が掛かる。
今回、検察が証明しようとした事は、まさに、この「権限を持った者が、不埒な意図を以て操作を行った場合」に当たるのだ。これが、厚生労働省内で行われた、てのが、検察側の証明したかった事だが、もともと、この郵便不正事件は、構図からして不思議な事件だった。
それは、許可権限を持つ村木厚子・局長が、自らの権限を行使せずに、部下の上村勉・係長に「文書偽造」を命じた、って構図。自分が許可すれば、その許可の妥当性を問われる事はあっても、形式上は(一応は)問題の無い許可となる。が、それをせずに、許可があったかの様に装う「文書偽造」を命じた、ってのが検察側の考えた構図。全てが合理的に行われるとは限らないのが犯罪でもあるのだが、この事件の場合、「構図」からしても当初から、「不思議」な事件だった(この事は、村木厚子氏も当初から言っていた事)。
共犯構造を持つ場合、犯人が自らの罪を他人になすりつける事が多いのは、証拠法上の常識(刑事訴訟法の学生向け教科書でも、マトモな本なら書いてある)。ましてや、その共犯たる相手方を自らの直ぐ上の課長ではなく、「局長」にした時点で、そうした疑いを判断すべく捜査しておかなければならないのは、仕事の上の「普通の事」。それをせずに、証拠捏造にまで至るとは…徹底的な捜査を望む。
更には、どこか無理のありそうな事に拘泥する様は…一応、「覚醒剤」の反応(尿反応など)を疑って検査してみては貰えないだろうか?こうした長時間労働の職種には、眠気覚ましとして「覚醒剤」の入り込む余地が出て来るものだから(芸能人が「覚醒剤」に手を出すのにも、同じ様な構造が隠れている場合も多い。かつてヒロポンが合法だった時代、多くの芸能人がそうした背景からヒロポン依存症となった)。
そうでない場合、深刻な(精神障害レベルの)鬱か、双極性障害って可能性もある。鬱(うつ)は、アクセルとブレーキを同時に踏んでいる様な状態で、それで精神エネルギーを消耗する様な状態なんだが、いずれかが外れると双極性障害となり、双極性障害の躁(そう)状態では、自らの力を過信し違法性への意識が飛ぶ事がある。また、覚醒剤などから、そうした精神障害に至る場合も…。通常、遺伝的要因無しでは精神障害レベルにまで達する事はあり得ない(遺伝的要因が無い場合、「精神病」レベルではなく「神経症」レベルで留まる、と言われる。まあ、今から30年程度前の知見しか私は知らないのだが…)とされるが、遺伝的要因を検査する方法は今のところ、親族にそうした状態が現れているか否か、くらいしか無いのが現実な訳で…。
自分達の描いた構図が証拠で支えられない場合、構図自体を見直す、てのは、どんな仕事でもやるべき当たり前のプロセスなんだが…。
こんな主任検事の下では、捜査を担当する検事や副検事(検察事務官の中から経験を重視して登用。司法試験の合格は不要)、検察事務官が、無理な事情聴取や捜査をしないとも限らない訳で…東京地検特捜部でも、若い検事たちの無理や「不法」な事情聴取が漏れ聞こえて来るのは、そんな事と無縁ではないかも知れない。
<追記>
主任検事が前田恒彦氏であるのは、間違いない模様(前田克彦との名前もウェブ上にはあるが、恒彦氏が正しいものと思う)。他に担当した検事(事情聴取に当たった副検事は他にもいる)は、国井弘樹氏と林谷浩二(はやしだに・こうじ)氏。
前田恒彦氏ならば、年齢的にも、符合する。
前田恒彦氏の場合、東京地検特捜部で西松建設問題で大久保秘書を事情聴取し調書を作った検事でもあり、問題は更に波及する(更に、不可思議な事件として記憶に残る朝鮮総連本部売却を巡る詐欺事件の捜査にも参加。元・広島高検検事長の緒方重威氏の共犯者とされた、満井忠男氏の取り調べを担当)。下手をすると、西村真吾(弁護士、前・衆院議員)を飛び越えて、鬼頭史郎・元判事補以来のスキャンダルに発展する可能性も…(これは単なる「構図」だが、こうした構図をことさら重視して来たのが、ここで問題になっている捜査だったりする訳で…)。
前田恒彦
1990年 広島大学法学部卒(広島地検時代の1996年11月21日、広島大学法学部で「検事の仕事−学生時代の夢と現実」と題する特別講義を行っている)
広島地方検察庁検事→東京地検特捜部応援→大阪地検特捜部(この経歴は、ウェブにあるものをそのまま頂いたが、通常検事の一任地での勤務は2〜3年であり、4年を超える事は稀なので、途中が抜けている可能性大)
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