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ETV特集「シリーズ・チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告 第二回 ウクライナは訴える」(2012.9.23
 
 
旧ソビエトのウクライナ。首都キエフの北、およそ100キロにあるチェルノブイリ原発に向かいます。
 
原子炉が爆発し、大量の放射性物質がまき散らされたのは26年前。
30キロ圏内は、今も立ち入りが制限されています。
 
去年から、政府が許可し始めた見学ツアー。手続きをすれば、事故現場の近くまで行けるようになりました。
(チェルノブイリ原発4号炉)
 
「皆さん、今からチェルノブイリ原発の原子炉の違いについて説明します」
「およそ90トンの放射線を発する微粒子が、周辺の環境に放出されました」
 
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(チェルノブイリツアーの4号機周辺の空間線量)
 
原発事故から4半世紀経った今も、この国に残された爪痕。
その実態を調査した報告書が、去年、公表されました。
「ウクライナ政府報告書」。
この報告書で、ウクライナ政府は、原発事故の被災者の間に、深刻な健康被害が発生していると訴えています。
甲状腺疾患、白内障、心筋梗塞、脳血管障害等が増えており、その原因の一つが放射線であるという見解を示しました。
その根拠とされたのは、被災者230万人以上の健康状態を追跡して得られたデータです。
原発事故の前から現在まで、被災地で診療してきた現場の医師たちの声が、報告書に反映されたといいます。
 
「膠原病の患者は事故前6人だったのに、2004年・22人、2011年・45人です」
「がんは事故前が10万人あたり200人、現在は10万人あたり310人です」
 
そして今、最も危惧されているのが、子どもたちです。
事故の後に生まれ、汚染地域で育った子どもたち。報告書によれば、その78%に慢性疾患が見られるといいます。
 
「7年生の時から時々意識を失います。高血圧で上が160です」
「生まれつき慢性気管支炎です。それと、朝起きてすぐは関節が痛いです」
 
しかし、国際機関は、甲状腺がんなど、わずかな病気しか放射線の影響と認めず、ウクライナ政府の主張を受け入れていません。
 
「私たち現場の医師たちは、甲状腺がんだけではなく、他の疾患もチェルノブイリの影響かもしれないと思っています」
 
原発事故の後、人々の健康に何が起きているのか。ウクライナの訴えです。
 
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チェルノブイリ原発事故が起きたのは4月。新緑の季節でした。
ウクライナには、ヨーロッパでもっとも肥沃と言われる穀倉地帯が広がっています。
事故の後も、汚染地帯には、およそ500万人が暮らしてきました。
 
「これが黒土よ。この土地が私たちを養ってくれているのよ」
「小麦が育ったら緑できれいになるわ。
 でも、みんな病気をしている。ガンで、若い人も年寄りも死んでいくわ」
 
事故の後数年間は、汚染に関する詳しい情報は与えられませんでした。
人々は、放射線が病気を引き起こすのではないかという不安の中で暮らしてきました。
 
キエフ国際科学会議(2011年4月)。
去年4月、チェルノブイリ事故25年に際してウクライナで開かれた国際会議。
その会議の席上、ウクライナ政府は、一冊の報告書を公表しました。
「未来のための安全」と題された「ウクライナ政府報告書」です。
チェルノブイリ原発の現状や、事故がもたらした様々な影響がまとめられています。
中でも、最も多くのページが割かれたのが、住民の健康に関する部分でした。
25年にわたって汚染地帯の住民を診続けてきた医師たち35人によって執筆されました。
(「第3章「事故による放射線学的影響と健康影響」」)
 
現場の医師たちが見てきた、汚染地帯の人々の健康状態はどのようなものだったのか。
首都キエフに、その情報を取りまとめている国の機関があります。
被災者の情報を一括管理する巨大データベース「国立記録センター」です。
事故処理作業者(1)、避難民(2)、汚染地帯に住み続ける住民(3)、そして(1)〜(3)の子ども(4)。被災者の情報が、4つのカテゴリーに分類され、集められています。
 
「現時点で236万4538人が登録されています」
「これはその被災者が検査機関に来た日付です。病院コードとカルテ番号です。
 ここは、患者の名前と生年月日です。
 病名と既往歴です」
 
236万人の健康状態と被曝との関係を、ウクライナ政府は検討しました。
こうして作られた「ウクライナ政府報告書」は、一つの注目すべき問題提起をしています。
多くの被災者が、心筋梗塞や脳血管障害など、様々な慢性疾患を発症しているという訴えでした。
 
しかし、IAEAなど国際機関の見解では、科学的には、こうした病気は、原発事故による放射線の影響であるとは認められないとしています。
「ウクライナ政府報告書」と、国連で被曝の影響を評価する「国連科学委員会」との見解の相違です。
報告書が、放射線との関係がある病気を多く明記するのに対し、国連科学委員会は、事故直後に原発で働いていた人の白血病と白内障、汚染されたミルクを飲んだ子どもに起きた甲状腺がんのみを指摘しています。
 
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