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 ブッダの時代の北インドには十六の大国が林立していた。いずれもヴェーダの文化を基調としていたが東西では大きな違いがあった。西部のパンジャーブ(インダス河上流域)地方にはクル王国、ドアーブ(ガンジス河上流域)にはパンチャーラ王国があった。この二国は最初のヴェーダである『リグ・ヴェーダ』が成立し、その後も残る三ヴェーダとブラーフマナなどの注釈書が編纂された地域である。

 これに対して、ガンジス河の中流域には、マガダ国、コーサラ国、ヴィッチャビ国などがあった。これらの国は新興国であった。肥沃なガンジス平原、鉄器の普及、バラモンの権威から比較的自由であったことなどから、王権の主導の下に急速に伸びてきたと考えられる。都市が成立し商業が発達した。ウパニシャッド哲学や六師外道などの多くの思想家が活躍した地域である。ブッダが生まれ、生きた場所もここである。

 ヴェーダ時代は前期と後期に分けられる。前期は『リグ・ヴェーダ』が編纂された時代である。クル国など西部がその中心となった。後期の前半には残りの三ヴェーダとブラーフマナなどの注釈書が編纂された時代である。その後半にはウパニシャッド哲学が登場した。この前半の舞台はなお西部であったが、後半のウパニシャッド哲学の展開はガンジス川中流域が舞台となった。

 ヴェーダの注釈書の編纂の目的は王権の伸張に対してバラモンの権威と富を確保するために祭式を再編することであった。その再編が成功して、バラモンの権威が確立したと思われた頃、東のガンジス川中流域でその綻び始まった。コーサラやマガダなどバラモンの権威から自由な専制君主が支配する国が急成長し、マガダ国がインドを統一し、マウリア王朝となる。

■ インダス文明

 紀元前2500年頃に、インダス河流域に都市文明が興った。この文明はインダス文明である。紀元前2000年頃から次第に衰退し始め、紀元前1800年頃に滅亡してしまった。

 土地の隆起によってインダス河の流路が変わるとともに、サラスヴァティー河(現在のガッガル・ハークラー河)の流れが寸断され、流域にあった耕地が荒れ、水上交通網も寸断されてしまったのが原因と考えられる。

■ アーリヤ人の侵入

 紀元前1500頃になって、中央アジアで遊牧生活を送っていたインド・ヨーロッパ語族のアーリア人がインドに侵入する。その侵入はこれまで二輪の戦車と鉄製の武器で武装して先住民を征服した、と説明された。しかし、鉄が普及したのは紀元前8世紀頃になってからである。侵入は100年以上の長期間にわたって断続的に行われたとみるべきである。

 断続的な侵入の過程でアーリア民族相互の主導権をめぐる戦いが行われ、その戦いに先住民も巻き込まれた。『リグ・ヴェーダ』にある十王戦争の記述がそうである。十王戦争によって最初に主導権を握ったのがクル族のクル国である。アーリア人はこのクル国を中心に緩い連合を組み、ヴェーダの神々を共通に祀ることによって一体性を保っていた。

 ヴェーダの時代は紀元前5世紀頃まで続く。アーリア人の宗教・文化はインドに大きな影響をもたらしたと思われる。とくに紀元前10世紀以降は後期ヴェーダ時代と言われ、ヴェーダの文献の数は増え、ヴェーダ文化はガンジス河の中・下流域にまで広がる。しかし、インドの土着文化に取って代わることはなかった。ヴェーダの神々の中に土着の要素をもつ神々も登場してくる。
 
■ ヒンドゥー教

 ヒンドゥー教は、バラモン教を土台に、さらにインドの民族宗教を取り込んで再構成されたものである。紀元前5世紀ごろに政治的な変化や仏教の隆盛がありバラモン教は変貌を迫られた。その結果 バラモン教は民間の宗教を受け入れてヒンドゥー教へと変化して行く。その後インドの民族宗教として民衆に信仰され続けてきた。インダス文明で行われていた沐浴やヨガの伝統もヒンドゥー教に取り入れられ現代に伝えられている。

 仏教は中国では土着の老荘思想、道教、先祖崇拝などと融合してゆく。また、日本においては神道や山岳信仰と融合してゆく。インドの仏教も滅びたというよりも、民族宗教として成立したヒンドゥー教に融合したと表現するのが正しいのではないか。

 

燃えている

 ブッダは、欲望への執着が苦の原因である、としている。それではその欲望とはいかなるものか。その内容を考える目にその激しさ、執拗さについての仏典に注目していただきたい。

 先ず、愛欲は蔦や根に譬えられる。(スッタ・ニパータ)
334 恣のふるまいをする人には愛執が蔓草のようにはびこる。
335 この世において執著のもとであるこのうずく愛欲のなすがままである人は、もろもろの憂いが増大する。──雨が降ったあとにはビーラナ草がはびこるように。
337 さあ、みんなに告げます。──ここに集まったみなさんに幸あれ。欲望の根を掘れ。
 ここで強調されているのは欲望の執拗さ、根の深さである。

 また、すべての欲望に火がついて燃えているという。
 ブッダが悟りを得たあと、三人のカッサパ兄弟が、千人の弟子をひきつれて、ブッダの弟子となり出家したという有名な出来事がありました。このときブッダの説法が「象頭山の説法」である。

   よく見るがいい。下界は燃えている。
   下界の者たちは感覚的・物質的快楽にふけり、
   三毒の火がついて、おのれの身も心も燃えている。
   彼らを取り巻くものさえ燃えている。
   欲望に火がついて、その火に追い回され、
   背中に火を背負って逃げ回っている。
   目が燃えている。目の欲望が燃えている。
   耳・・・。鼻・・・。舌・・・。身・・・。心・・・。
   人のすべての欲望に火がついて燃えている。
(『雑阿含経』燃焼)

 ブッダが見た欲望はこのように蔦のように執拗で、火がついて燃え上がっていた。一体欲望とは何なのか。

中山元氏は「古代ギリシアに繁栄と没落をもたらした競争原理」において次のように述べる。
 欲望と社会的承認 http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20121204/240545/

 ぼくたちの欲望は他者の欲望するものを欲望するという性質をそなえている。その社会で価値が高く評価されたものであればあるほど、人々の欲望は激しくなるのである。

 ルネ・ジラールは、「欲望は本質的に模倣的である」ことを指摘した。「欲望は手本となる欲望から写し取られ、欲望はその手本と同じ対象を選びとる」のである。人々が欲望するものは、他者が欲望するものであり、「主体は、ライバルがそれを欲望するがゆえに、その対象を欲望するのである」。

 欲望というものは、生理的な欲求とは異なり、他者との関係で初めて成立する。「人間は、自分に欠けていると感じ、他の誰かが備えていると彼にみえるものを、欲望する存在」である。他者が手本となってそれを欲望することで、主体はそれが欲望すべきものであることを学ぶのである。

 狩猟採集社会における欲望は不足や欠如を補うものであった。不足や欠如が補われれば欲望は消える。しかし、農耕社会に至ってからは欲望は変質をはじめた。しかし、農耕社会にあってはその成員は農村共同体の相互扶助のもとにあるとともに共同体の厳しい掟に縛られていた。

 古代インドの場合、農村にあってもその指導層のクシャトリアやバラモンの階層の人々は農業生産力の余剰を手にし共同体の掟からの自由を確保していった。鉄器の普及によって生産力が増大し、農村共同体が規制は一気に緩やかになっていった。欲望の解放が社会全体に及んでいった。ブッダはこの欲求から変質した欲望の存在に気づいた。

 欲望は自らの中から出てくるものではなく、他人との比較から生まれる。したがって充足の基準ははじめからないのである。充足されることない欲望に苛まされる社会、ブッダが目の当たりに見た社会はそのような社会である。「苦の原因は欲望である」というとき、その欲望はこのような欲望であった。

 紀元前12世頃に成立したとされる最初期のヴェーダである『リグ・ヴェーダ』が理想とする人間像は、現世の享楽を楽しみ百歳の長寿を保った後、死の道を発見したヤマの楽園世界において死後、祖霊と楽しく交わるというものである。善人とは逆に悪人は、地底の深部にある暗黒の牢獄に落ちる。

 紀元前8世紀頃に成立したとされる『ジャイミニーヤ・ブラーフマナ』と『シャタパタ・ブラーフマナ』とは「ブリグの地獄遍歴の物語」を伝えている。この世で樹木を切り刻んでいた者、喘き叫ぶ家畜を煮焼きする者、黙して米、麦を煮る者が、あの世において逆に人間の姿を取った相手に切り刻まれて食べられる等という報いを受けるのである。

 それが、『スッタ・ニパータ』という仏教の経典になると、表現は詳細になる。『スッタ・ニパータ』は最初期に分類される経典である。

 667 (地獄に墜ちた者は)、鉄の串を突きさされるところに至り、鋭い刃のある鉄の槍に近づく。さてまた灼熱した鉄丸のような食物を食わされるが、それは、(昔つくった業に)ふさわしい当然なことである。
 668 (地獄の獄卒どもは「捕えよ」「打て」などといって)、誰もやさしいことばをかけることなく、(温顔をもって)向ってくることなく、頼りになってくれない。(地獄に墜ちた者どもは)、敷き拡げられた炭火の上に臥し、あまねく燃え盛る火炎の中に入る。

 669 またそこでは(地獄の獄卒どもは)鉄の網をもって(地獄に墜ちた者どもを)からめとり、鉄槌をもって打つ。さらに真の暗黒である闇に至るが、その闇はあたかも霧のようにひろがっている。
 670 また次に(地獄に堕ちた者どもは)火炎があまねく燃え盛っている鋼製の釜にはいる。火の燃え盛るそれらの釜の中で永いあいだ煮られて、浮き沈みする。

 673 また鋭い剣の葉のついた林があり、(地獄に墜ちた者どもが)その中に入ると、手足を切断される。(地獄の獄卒どもは)鉤を引っかけて舌をとらえ、引っ張りまわし、引っ張り廻しては叩きつける。
 674 また次に(地獄に墜ちた者どもは)、超え難いヴェータラニー河に至る。その河の流れは鋭利な剃刀の刃である。愚かな輩は、悪い事をして罪を犯しては、そこに陥る。
   (第三章 大いなる章 第十節 コーカーリヤ 紅蓮地獄)より引用

 この地獄の様相には「鉄の時代」が色濃く反映されている。ブッダの出た時代は鋼鉄を製造する技術が確立し、鋭い刃の武器や農器具などの鉄器が普及した時代である。人々は都市や農村のあちこちで鍛冶職人が仕事をする風景を日常的に見ていたと思われる。

 この鉄器の急速な普及が作り出した社会が、ウパニシャッドの哲学、六師外道、そしてブッダの登場を促したと考える。


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