運転免許を取得して間もない頃、意味も無く車で遠出するのが好きだった。当時の仕事は私有車の購入を公に出来ず、土日祝日や有休を利用してフリーターをしていた地元の友達を誘って短い冒険旅行によく出かけていた。
その日は私を含め3人で東北地方から北関東にかけて深夜ドライブをしていた。
午前1時を回ったころ、車中泊が出来そうな適当な停車場所を探すことになり、地図でもっとも近い温泉街に向かうことになった。山の真っ暗な峠道を走っていたので少しでも明るい場所で仮眠を取りたかった。「この有料道路なら早く着くぞ」と助手席のkが言うのでその道路に向かった。
深夜はフリーのようでゲートは解放状態だった。しかし、有料道路とは名ばかりで急なカーブが連続する初心者には厳しいコースだった。
ふと左カーブの反対車線のガードレール支柱に気を取られた。牛乳瓶に枯れた花がいけてある・・・
「誰かがこのカーブで・・・?」嫌のことは考えず運転に集中した。気がつけば視界を奪われるほどではないが、霧が出てきている。
しばらく右へ左へと続くカーブを走っていると、また左カーブのガードレール支柱に牛乳瓶が見える。
「ここでもか?」と思いつつ更に走らせると、また同じ牛乳瓶がヘッドライトに映し出された。・・・枯れた花も同じ。。あきらかに異常だと運転している私は気づいた。助手席のKも後部座席のRも気づいていないようすだったが、5度目の時、助手席のKが「あっまただ」と言い出した。その瞬間、後部座席のRが取り乱して「そんなばかな!別れ道が必ずあるはずだ!」と怒鳴った。
私は冷静さを装いつつ運転していたが、取り乱したいのは私のほうだった。
やはり、3人で目を凝らしたが分かれ道は無かった。
わずかだが燃料の針が下がって来ているのがわかった。「このままでは燃料が心配だ。一度、止まって頭を冷やそう」と私が提案し、そのコースで唯一明かりがあった建設現場のモータープール入口に車を止めた。作業が長引いているのか自動販売機が一台ぽつんと稼働していたので、3人とも同じ銘柄の缶コーヒーを購入した。頭は冷えてもいい案が出るわけでもなく途方にくれていると・・・遠くからトラックのディーゼル音が聞こえてきた。
私たちは顔を見合わせるとすぐさま車に飛び乗りトラックの通過を待った。私はその地元と思われるトラックの後ろに必死についていった。
かけ足をしているわけではないが3人とも汗まみれだった。
街灯が定期的に設置されている道路に出た。もう牛乳瓶を見ることはなかった。
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