The mysterious world

不思議な話です。自己満足ですのでのんびり行きます。

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怖い話:死の連鎖

 この話は自衛官だったころ、私がいた営内班の先任士長(A士長)が体験
した話です。

彼は人柄が良く下っ端からは慕われていました。ただ、今でいうアニメ・
漫画オタクであり、外見(オタ)も自衛隊員には見えなかったので、上の
人からは異色な人材として見られていたように思います。
他にもグルメ評論、戦史、映画、写真撮影、車を語らせると、あっという
間に2〜3時間過ぎてしまうほど雑学博士でもあったので、稼業外は彼の
話を聞くのが楽しみでもありました。


また、演習においての指揮能力も他の先任士長に引けをとらないので、私
はいい上官だと思っていました。


しかし、彼だけ糧食班に出向させられる事が多く、部下である私たちは
内心不満を持っていた。分隊で活躍すべき人材になんで飯炊きばかりさ
せるのか。。。

そんな愚痴を彼にもらしたら
「いいんだよ。君たちには悪いが僕は料理が好きだ。泥まみれで銃を撃つ
より、シチューの隠し味を考えていた方が性にあっている。」

たしかに演習でこの人が炊事車で作った戦闘糧食(温飯)は評判が良か
った。



ある日、荷造りしているA士長を見たのでどこに行くのか聞いてみた。


炊事車を使った戦闘糧食の講習会だか研究会だかがあるようで、また、
出向を命じられたようでした。内容については詳しく知りませんが、
どうも田舎の方の小さな駐屯地で幹部相手に臨時で行われるらしく
本人は公費で旅行が出来ると嬉しそうだった。

イメージ 1



3週間後、A士長は戻ってきた。少々、お疲れ気味のご様子。

土産話が聞けたのは、数日後の野営中の時だった。



偽装を施したトラックの荷台でA士長は不味いCレーションで創作
料理に挑戦していた。今回は一緒の分隊だったので我々も楽しみに料理
を見ながら待っていた。


すると
「君たちは超常現象を信じるか?」とおもむろにA士長が呟いた。


私たちは苦笑して、
「UFOは有りますよね。この間、大騒ぎになりましたし・・・」
http://blogs.yahoo.co.jp/umizaru_63/12260485.html


「しかし、自然現象か見間違えとか、思いこみがほとんどではないでしょうか
・・・」
と誰かが言った。

「う〜ん・・・だといいんだが・・・実は研究会に行ったとき少々怖いおも
いをしてねぇ」




以下A士長の視点


講習会に参加していたのは他の駐屯地からの選抜で10人程度が来ていた。
我々、展示説明係りの隊員は全員同じ時期に来たのではないようだ。
したがって、帰る時期もそれぞれ違う。
僕がついたのは最後から2番目だった。
全員が揃っていた期間は一週間程度で、次々に先に来た順から原隊に帰って
いった。

短期間の班編成とは言え、送別会はあるようで、多すぎる酒は好きではない
が、そのたびに付き合った。会場は普段使われていない隊舎を宿舎としてい
たので、二階の一番奥にある空き居室を使っていた。

いよいよ、残りが自分を含め5人になったとき、気心が知れたのか宴会は遅
くまで続いた。22時以降は消灯だが、この駐屯地の当直は送別会を中止させ
に来るような無粋な真似はしないようだ。

自分の御国自慢や女の話等で盛り上がり5人の酔いがピークに達したとき、
主賓である隊員がトイレに立った。古い木造隊舎で普段使われていないので、
寝床のある二階のトイレは使用できず、一階まで下りて行く必要があった。

数分で次の日に帰る主賓の隊員がまた笑いながら宴の席に戻ってきた。


「まったく、みなさん私を脅かしたいのはわかりますけど、あんなものを
トイレに持ち込んだら怒られますよ。」

「あんなものって何?」

「大きな頭のオブジェですよ。何時用意したんですか?いきなり後ろにある
もんだから、びっくりして手にひっかけるとこでしたよ。」


その時はみんな頭のオブジェに関しては触れず、主賓の隊員のリアクション
が楽しくて自分を含めかなり酔っていたのか忘れてしまったようでした。



そして、2〜3日後、二人目の帰る日が来て、前日の夜、恒例と化していた
ので4人で宴会となりました。人数的には寂しい宴ですが、皆明るく時間の
過ぎていくのを忘れるほど盛り上がっていました。すると、今回の主賓も
途中でトイレに立ち一人で一階に下りて行きました。

そして、数分後、笑いながら戻ってきました。
「だれだれ?こおいうの俺はぜんぜん平気だからねぇ〜」

「何がです?」

「頭のオブジェ!良く出来てるねぇ腕組んで観察しちゃったよ。ははは」

「どこにあったんですか?」

「え?一階の廊下だけど・・あれ?君たちじゃないの?」

この時、はじめて自分もおかしいと思った。

そして、更に2〜3日後、3人目が帰る日の前日、やはり帰る隊員にとって
は最後の締めなので3人でも宴会は実施したのです。


しかし、宴会当日の昼、カメラが趣味である自分は撮った写真を帰隊した
仲間に送ろうと始めに帰った隊員の駐屯地に電話を掛けてみた。
すると、電話回線を中隊に繋いでは貰ったが、なかなか、本人を呼んでもら
えない。昼休み中なので問題はない筈なのだが、電話に出た相手は君は誰なの
か、どんな関係なのかをしつこく聞いてくる。



その訳は
「・・・大変不幸な事故に逢い・・・殉職したのだ・・・もうご家族のとこ
ろに帰って葬儀もすんだ・・・」
ということだった。



つい先日まで一緒に勤務していただけに落胆した。
そして、言い知れぬ不安が過ぎり、二人目の隊員の駐屯地にも電話をかけた。



「・・・特外(特別外出・・・泊まりOK)中に交通事故に逢い・・・残念
な事に・・お亡くなりになりました。」



偶然なのか・・・何かが作用しているのか・・・
もし、後者であるならば・・・あれに間違いない。



その日の晩、二人の冥福を祈りつつ酒を酌み交わすが、酔いがまわると
三人とも陽気になっていった。

飲みすぎだ・・・

宴会の前に今回の主賓に「けして一人でトイレに行かない様に・・・」
と釘を刺しておいたが・・・

気がつくと自分ともう一人がテーブルに伏せていた・・・
主賓の隊員がいない・・・

あわててもう一人を起こそうとしたとき、主賓の隊員が戻ってきた。

「ひょっとして・・君も見たのかい?」

「ああ・・・まさかな・・・信じていなかったんだけど・・・」

「どこで・・・?」

「今度は階段の踊り場にいたよ・・ひょっとして奴は・・・」

「僕たちは大丈夫だよ。心配しないでくれ。この講習会も・・・
すぐ終わるから」


次の日の朝、明るく見送ったが言い知れぬ不安は多かった。

講習会が閉会し、最後は二人とも同時に帰れるようだった。
自分ともう一人はそんなに酒が好きというわけではないので、宴会ではなく
自分たちの居室で軽く飲んで終わりにすることにした。



頭のオブジェについての話題は極力避けていたが、やはり気になったので
今までの経緯を二人で整理してみると
奥の居室で飲んでいる時に帰る人間にだけ見えて・・・そして、二階に近づ
いてきている・・・見た人間は死んでいる・・・
まさか・・・この居室にも・・・どうやって移動しているんだ。

とにかく、今夜はこの居室から一歩も出ないようにしよう。
そして、絶対に見ないこと。
そのように二人で決めた。消灯ラッパと同時に床につく。
賑やかだった広い居室も今や二人だけ、とても静かだった。



浅い眠りについたが、ガタガタとベッドの軋む音で目が覚めた。
もう一人の隊員が布団を頭から被り廊下側に背を向けて落ち着かない様子
だった。


「どうした?」小声で聞くと

「静かに、いいな絶対に見るなよ」と小声で返してきた。

廊下側の壁は天井に近いところがガラスになっていて誰かが通過すると影
が見える。

あれは頭のオブジェなんかじゃない。



生首そのものだ。



横切る陰でそう判断した。しかも空中に浮かんでいる。


なにかを捜しているのか、行ったり来たり気配は消えなかった。

自分も廊下側の壁に背を向け、しっかりと目を閉じた。



「ちくしょう・・・」


もう一人の隊員が恐怖からか、呟くとその声に反応したのか。
居室のドア静かに開いた。



居室内の天井近くを何かが飛び回っている。



「ゥウゥ・・・ワワワ・・・」


笑っているのか泣いているのか・・・息が漏れているのか
気味の悪い声が聞こえる。


ひたすら無視して耐えた。


気がつくと、朝日が居室内を照らしていた。起床ラッパが軽快に放送され
ている。


安心して布団から出て、もう一人の隊員と目を合わせた。


「ゥウゥ・・・ワワワ・・・」
しかし、またこの声が聞こえた。


二人ともベッドの陰に隠れた。


まだいるのか・・・


そう絶望しかけたとき、窓の外の電線でかわいらしい鳩がお尻を向け
鳴いていた。

以上がA士長の体験でした。




三人目の隊員はどうなったかと聞きましたが、このときはまだ生きてい
たそうです。

しかし、その後、生死は不明ですが音信不通になり、
しばらくしてから電話をかけたら退職したとだけ言われたそうです。



・・・この反応はたぶん自殺だ・・・とA士長は言っていました。



たしかにその時期、地方紙の片隅に自衛官の自殺体が発見されたと
あったそうです。


私は退職した後、一度だけA士長に会いました。それも偶然、千葉県内の
国道で渋滞にハマっているとき、隣同士になった為です。

特に用事も無かったのでランチを御馳走になりました。
この話を蒸し返して、もう一人の隊員について聞くと、


「ああ、やっぱり俺たちは間違っていなかったよ。彼は今でも元気だ。」


そお笑顔で答えた。

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