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全国交通安全週間に入りました。
また余分な業務が増えます(-_-;)
お年寄りと二輪車の事故が相変わらず多いようです。
この話は初めて死亡事故の現場を扱った時のエピソードです。
前職について間もないころ、研修も終わり大事件に飢えていました。
私が当時いたのは首都高速の江○橋ICを境に東側と湾岸線を担当する部署でした。
ある日、この部署の発足当時から勤めているベテランの先輩隊員とコンビを組んで有事出動業務を
行っていました。
その時は無線交信も覚えたてで事件事故なんでも来いと青島刑事ばりに血気盛んに意気まえており
ました。その日金曜夕方から有事も軽微なものばかり退屈な泊まり勤務なるはずでした。
明け方の5時半を少し回った頃、分駐所内のホットライン用黒電話がけたたましく鳴り響きました。
「6号の上り江○橋IC外方向のカーブでなんかITVにうつってんだよ。緊急でちょっと見てきてよ」
ということなので、重たいヘルメットをいやいやかぶり助手席(無線担当)に座りました。
運転と無線は出動のたび交代していました。分駐所から江○橋まではほんの目と鼻の先、サイレンを
鳴らすこともなく、直ぐに現着できました。しかし、現場は楽観できない大変な事になっていました。
▼{至急、至急、200から第二あて、本件は二輪の単独・・〇運については路上にうつ伏せ
大量の出血あり・・意識は・・ない模様、大至急救急の要請を願いたい。}
私はそのとき完全にパニックを起こしており無線のプレストークを握る手は震えていました。
先輩隊員はIC分流外回り方向を全止めし、パトカーに戻って来るなり私の状況にすぐ気付いたらしく、
「しっかりしろ!男だろ・・当事者の人定を確認しろ。ポーチを着けていないから、免許証はケツの
ポケットだろう。特異事案になるぞ!今のうちに確認しろ!」
「え!?死んでますかね・・・?」
「生きてたら化けもんだよ。ありゃ首が折れてるよ。」と言い残し先輩隊員は道路を塞いでいる
二輪車に駆けていきました。
うつ伏せに倒れている当事者は体つきから若い女性であることが、はっきりわかりました。
黄色のファクトリーベアーの真新しいブルゾンにスリムジーンズという服装で、傷だらけになった
新品の白いフルフェイスヘルメットをかぶっていました。
顔面から噴出したと思われる血液は左カーブの当事者の頭部がある右車線から左側路肩にある
排水口に流れていました。
おしりのポケットに手を入れてみるとかわいらしいカード入れに取得したばかりの免許証が入って
いました。ショートカットの19歳きれいな子でした。
開けなければよかったのですが、ヘルメットのバイザーを開けてみると・・・
あの顔は表現できません。
私はショックでしばらく動くことができませんでした。
そうこうしている間に現場は、赤色回転灯を点灯している応援車で賑やかになっていました。
当事者を見分して救急隊員は「それでは、うちは扱い無しってことで・・」と言い残し
帰っていきました。
JAFが破損したVT250の吊り上げの検討をしていると、二輪車が2台規制内に入ってきました。
彼らの話で事故の経緯があきらかになりました。
単純な原因としては速度を出しすぎ左カーブに進入したため曲がりきれず、右側高欄と防音板支柱に
激突死したものという事ですが、二輪の初心運転者が早朝、首都高速に単独で進入することは
不自然です。その行動には理由があったのです。
彼女はバイクを購入したショップのツーリングツアーに連れ出された事が不幸の始まりでした。
首都高速に侵入した途端、運転になれた仲間が殿(集団の最後の走行者)を含め先にいってしまった
為、追いつこうとしていたのです。
高速隊の班長は激怒し「ばかやろう!何で殿が先にいくんだ!仏さんの顔見て来い。おまえらが殺し
たようなものだ!」無責任な彼らにもあの死に顔はショックだったのでしょう。
男の悲鳴と泣き声、かっこいいものではありません。置かれた状況が理解出来たようでした。
彼らが起こした事故ではありませんが、遺族に対して一生背負わなければならない罪です。
集合場所を決めていたとは言え初心者には不安なこと、まして初めての首都高速で一人にされては
測り知れないものがあったことでしょう。
私はその時、黙っていられませんでした。
先頭は店長、殿は店員だったようです。
2人に聞きました。
「どうして、彼女を置き去りにしたんですか?」
「・・・ちっと・・・熱くなっちゃって・・・」
「あのVT買って・・・嬉しかったはず・・・ですよね?バイクの楽しさ少しでも伝えられましたか?」
「すいませんすいませんすいません・・・」
このバイクショップ店員は、たぶん死んだ子に謝っていたんだと思います。
店長は黙って頭を下げていました。
なにが・・・熱くなっただ・・・
死んでしまっては話も聞けませんでしたが、あの死に顔と施設破損被害が恐怖の瞬間を物語って
おりました。他人の身になって考えるとは簡単なようでかなり難しい事ですね。
どうしても私事都合が優先してしまいがちで最悪の結果が出て初めてわかることが多いように
思います。
今の私たちの仕事は初心運転者になる前の段階の人達を扱っています。
他人を思いやる心を理解させるには相手の立場に立って考えることが、必要不可欠だと思います。
身勝手が許されてきた環境で育った子と路上教習に出るとこの事故の店員を思い出します。
そして、職責の重さを痛感します。
私も先輩隊員も、当時、バイク乗りでしたので、その日は遅くまで飲み明かしました。
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