「地方が消える日」
コイズミソーリが「大きな政府から小さな政府へ」「官から民へ」などとのたまい「構造改革」を柱に「改革」ならぬ「大改悪」を進める中、地方では「平成の大合併」が半ば強圧的に展開されてきた。この
「平成の大合併」自体、地方の発議であれば問題はないのだが、如何せん「国家財政の赤字減らし」の一つの解決策として浮上してきたものだけに、そこには地方の事情なんて構っていられないわけで、地方への交付金などの削減ばかりに目が向いていると言ってもいいものだ。
確かに「広域連合構想」や「特区構想」などかなり以前から練られてきていた訳だが、「地方行政の効率化」「地方権限の拡充」などという「理想」の旗の下に「論理的矛盾」を抱えたまま、合併作業は着々と進められてきたわけだ。その「理念なき平成の大合併」も収束しつつある今、次の「国家財政の赤字減らし」の秘策として「道州制導入」が具体化されたものとして登場してきた。
「道州制」導入が適当、地方制度調査会が答申
首相の諮問機関の第28次地方制度調査会(会長・諸井虔太平洋セメント相談役)は28日の総会で、地方分権の推進と効率的な政府の実現に向け、都道府県を廃止・統合して国の権限を移す「道州制」の導入が適当とする答申を決定した。
道州の区域の例として、国の出先機関の管轄区域を基本に全国を9、11、13ブロックに分ける3案を示し、道州が担う事務として国道管理など40項目を例示した。
総会後、諸井会長は首相官邸で小泉首相に答申を提出した。
「道州制のあり方に関する答申」は、道州制の導入については国民的な論議の動向を踏まえて判断すべきだとの考えを示し、具体的な導入時期などには触れていない。
ただ、「国のかたち」を見直して、国は、外交、防衛、国税をはじめとする本来果たすべき役割を重点的に担い、内政は自治体が担うことを基本とする「新しい政府像」を確立するためには、道州制の導入が「適当」との判断を明示した。
具体的な制度設計では、道州の区域は、国が都道府県の意見を尊重して法律で定めるとした。全国を9、11、13ブロックに分ける3案を示すと共に、東京都を周辺県と切り離して単独で道州にする考えにも言及した。この場合は10、12、14ブロックとなる。
道州が担う事務については、有害化学物質対策、旅行業・ホテル・旅館の登録など21項目の国の事務を道州に移譲する一方、現在、都道府県が実施している事務は大幅に市町村に移すとしている。
(読売新聞) - 3月1日
この「地方制度調査会」、メンバーは学識経験者や各界代表者ら30人で構成されているのだが、残念ながら「地方からの代表者」はほんの一握りにしか過ぎない。それも地方自治体、議会の代表者つまり知事会の会長や市町村長会の会長であって、純粋に「地方の民間人」は誰もいないということなのだ。
そんな「地方制度調査会」が答申した「道州制導入」なのだが、その基盤としてあるものは明らかに「金」に纏わる部分ばかりで、「中山間地域」や「過疎地」をどうしていくかなどという「経済的効率の悪い」地域のことなどは当然隅っこに追いやられている。また、「平成の大合併」と同様に、国に財布の紐を握られたままでの「大きな国家システム」の変更には、地方は中々モノが言えないのが実情であろう。実際、毎日新聞のアンケートでは、全国の知事たちの半数近くが首を傾げているのである。
現在の都道府県に代えて、より広域な自治体を作る「道州制」をめぐり毎日新聞が全国47都道府県知事にアンケートしたところ、導入に賛成する知事が過半数の27人に上った。明確な反対は福島、兵庫両県の2人だけだったが、第28次地方制度調査会(地制調、会長=諸井虔・太平洋セメント相談役)の論議で国と地方の役割分担が具体化されていないことなどを理由に賛否を保留した知事も18人いた。地制調が例示した道州区域3案のうち支持する案を挙げた知事は青森、岡山、広島の3知事にとどまった。(毎日新聞) - 3月2日
「もうひとつの格差社会」
現在の地方自治制度においてさえ、「地方分権」「税源委譲」が官僚達の思惑の中で中々進まないのに「巨大な自治体」になったからといって、道州制導入のメリットが発揮されるのだろうか。例によって、政府は「道州制導入」に当たっての「美味しい話」ばかりを口にすることだろうが、国民は騙されてはいけない。国民の生活感覚は「そんな巨大化した自治体」にはついていけるはずがないし、一極集中や周辺地との不均衡を生むことは誰の目から見ても明らかなのだ。大きな「地域間格差」を生じさせる「道州制導入」は、今以上に「過疎」を生み出し、「荒廃した環境」を作りだしてしまう。都市部の電力や水道を維持している地域が荒れ果ててしまうのだ。現在でも「高齢化」「過疎」の波は地方を襲い続けているにも拘わらず、「少子化」「人口減」社会を迎えた今、何をかいわんやである。
そして、登場するのが「コイズミ劇場」型政治で、竹中ヘーゾークンは次のように述べている。
「道州制総裁選論点に」 竹中総務相
竹中平蔵総務相は三日、閣議後の記者会見で、地方制度調査会が道州制導入を答申したのを踏まえ、「今後の政策体系全体を考えていく上で、国と地方の役割をどのようにしていくかは中心テーマの一つ。道州制を(ポスト小泉の)各候補の方々がどのように位置付けていくか、非常に大きな論点の一つになる」と指摘。秋の自民党総裁選で、道州制が政策論争の大きなテーマになるとの認識を示した。
総務相は道州制に対し「地制調の答申の通り、まさに方向として適切だと思っている」と語り、導入に前向きな姿勢を表明。その上で「国民の議論が進まなければいけない。制度設計そのものは大変難しい問題」と話し、国民的な議論を深めるため、総務省として答申の広報活動などに積極的に取り組む方針を明らかにした。(西日本新聞) - 3月4日
「政局」と「道州制論議」を結びつけるのは正に劇場型政治の演出であり、そこには「地方で暮らす生活者」の視点は微塵も存在していない。荒れ果てる山林、放置された農地、ゴーストタウンとなった山間地域や小さな漁村。現在の道州制導入議論からは、哀しい地獄絵図しか見えてこないのだ。
さらに毎日新聞では次のような記事が掲載された。
◇枠組み論議だけの独り歩きに警戒感も
道州制をめぐる毎日新聞のアンケートでは、都道府県知事の期待感の高さが示された半面、国からの権限、税源移譲の具体論を欠いたまま枠組み論議だけが独り歩きすることへの警戒感も浮き彫りになった。地方制度調査会は2月28日、小泉純一郎首相に道州制導入を求める答申を提出したが、新しい「国のかたち」をめぐる国民的議論を中央省庁も巻き込む形で提起していくことが、今後の課題になりそうだ。
知事らが道州制論議の「上滑り」を懸念する根底には「三位一体の改革」で税源移譲への抵抗に終始する中央省庁への不信感もある。2月21日に開かれた全国知事会(会長、麻生渡・福岡県知事)の道州制特別委員会では、道州制を「必要」とする素案が示されたものの、反対派だけでなく、中央省庁の協力に不安を抱く富山県(代理出席)などからも慎重論が噴出。委員長を務める木村良樹・和歌山県知事は「夏の知事会総会も両論併記になるかもしれない」と先行きを心配する。
(毎日新聞) - 3月2日
最後に、私は「道州制導入」に絶対反対というわけではない。その導入に至るプロセスが問題なのだ。山間部や過疎地への対策を十分に考え、「効率」という言葉だけでひとくくりにモノゴトを判断しない。「非効率な地域」が、この日本の国土で重要な役割を果たしていることを政府も、国民も再認識する。そのような「暮らしの視点」からの論議を確実に押さえながら、十分な時間をかけた中での「地方からの発議」で以って「道州制」に移行するのであれば異議は無いのである。