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突然足を引かれ滑り落ちてしまった。
ぼんやり目覚める。
辺りはもう茜。
ええと…そうだ、月山に登って。
高原は紅グラデーションで
見下ろす斜面でどんどんシャッターを切ってそれから…
頭を打って…
「だいじょうぶ?」
澄む声を見上げるとひとりの可憐な少女だった。
瞳は月山の泉のように青みがかった緑をたたえている。
綺麗な紫いろの着物。
え、こんな山の中で…?
「いきなり足を引かれて…」
「それは山ん子の仕業」
「やまんご?」
「そう。お山の子どもたち。
はい、リュック。山ん子が持って来てくれたわ。
ほんとうはいい子、ただお山を守りたいだけ」
少女はふわりと微笑む。
「怖いのは山鬼。お山を荒らして怒らせたら命だって獲られる」
いつしか三日月だ。
月光にうるむ夜の底で
一面のミヤマリンドウはほのかに揺れりんりんと鳴りさざめく。
「…あれは?」
「会話よ、リンドウと星の」
少女は夜を見あげる。
「この花はね、昔この辺りに棲んだ竜の鱗なの。
天に昇って星になった恋人と今もこうやって語り合うのよ…」
りんりんの音色は月光に共鳴し無数の燐鱗光と変じて高原に散りそそぎ
少女もミヤマリンドウも深く煌めく。
ぼうと時を忘れる。
「少し明るむまでじっとしてた方がいいわ。
ほら、山ん子も歌ってる」
“晩げは山鬼かけめぐる
おっかね山鬼かけめぐる
悪さする者いねえだか
荒しする者いねえだか“
可愛い歌声が月光の森にこだまする。
少女は私の撮影話を聞きたがった。
下界をあまり知らず海はことに少女を喜ばせた。
「珊瑚礁。そんなに綺麗な世界なのね…海なんてちっとも知らない」
「良かったら案内するよ」
「ありがとう、でも」
三日月を映す瞳にひとひら哀しみが消える。
「そろそろ行きましょう」
三日月が裏舞台へと急ぐころ少女は告げた。
もうそんな時間。
「…できれば一枚撮らせてもらえないか」
思わず言ってしまった。きっと断られる。
「…いいわ。あなたなら」
思いがけない言葉とともにはにかんだ笑みがこぼれた。
少女が摘み取ったミヤマリンドウはちらちら光を放ちはじめる。
「竜の鱗はね、月光で満たされると光るの」
森の入り口に緑いろの長い髪をなびかせ小さな男の子が立っていた。
ムッとした目つきで私を見つめる。
「ここからは山ん子が案内してくれるわ」
少女はリンドウを私に手渡した。
「…とても楽しかった」
リンドウの光で細道を下った。
ときおり巨木の上からバサバサと得体の知れない羽音が降る。
「ね、山鬼ってのは羽がある?」
山ん子は何を聞いても押し黙ったままだ。
侵入者なんぞ金輪際しゃべってやるものか、と固く決心した風だった。
そう言えば少女に名を聞きそびれた。
「その…さっきの女の人はとても優しいね」
一瞬やわらぐ山ん子の表情に私は温かな気持ちになった。
樹々の間に遠く里が見えるころ
リンドウの光は絶えてしまった。
そしてふり向くと山ん子も道も夜のように消え失せていた。
私はときめきながらフィルムを現像し焼き付けた。
もういちどあの少女に逢える。
驚いた。
最後の一枚に浮かびあがった姿…それは
燐鱗光の紫をまとう
ミヤマリンドウの花だった。
*
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昔話で、山姥!とか雪女!だとか、天狗!や鬼!
怖いものがたくさんいたな〜〜^^
あれって、本当の正体は何だったんだろうか??
2012/10/21(日) 午後 0:38
お久しぶりです
やさしぃ月明かりに照らされて・・反射するような・・素敵な色合い。。
見ハマっているうちに・・吸い込まれていきそう〜。。
朝晩、冷えるようになって来ましたね。御自愛くださいね〜。
2012/10/21(日) 午後 4:58
☆KAZUE☆さん
確かに。。昔話にはちょい怖い系がいっぱいですね〜(-∀-
遠いあの時代ならホントにいてもおかしくない気もしますが。
壊れゆく自然とともにみんな消えて行ったのかも。。
こんな世界じゃ彼らも住みにくいだろうし^^
いつもありがとうです♪♪
2012/10/22(月) 午後 6:14
☆みわさん
お久しぶりです♪
明るい街中では神秘的な月明かりもなかなか体験できませんね。
いつもじっくり見ていただけて嬉しいです^u^
夜とかもう冬の気配がしそうな勢いで。。気づけばもう今年もあと2ヶ月です;
みわさんもご家族も風邪などお気をつけくださいませ。
どうもありがとうございます♪♪
2012/10/22(月) 午後 6:17
にん❢❢
お元気でしたか?
ずっと昔の「昔話」のような、そんなお話でしたネ
水の精、花の精、山の精が本当にいるような
そんな気持ちになりました
2012/10/22(月) 午後 8:31
☆おプーさん
すっかりご無沙汰してしまいました^u^ゞ
ミヤマリンドウも月山もすご〜く神秘的なイメージがあります。
山形県だしおプーさんは行ったことあるかもですね。
水好きなのでいつか月山の湧水にお目にかかりたいです♪
地上と違って山奥にはまだこんなフシギ世界が残ってそうな気もします。
覗いてもらえてありがとうございます♪♪
2012/10/24(水) 午前 1:06
りんどうと星の会話が聞こえてくるような気がしました。
読み終えると不思議な気持ちになりました。
星猫さんワールドはいつも素敵ですね。
2012/10/26(金) 午後 8:55
☆はなさん
リンドウって星みたいな形をしていて
あの紫色もとても神秘的だし
広大な高原に群れて咲くリンドウと満天の星。。
想像するだけで澄んだ音色が響いて来そうです。
実際にそんな世界に浸ってみたいですね^u^
いつもありがとうございます♪♪
2012/10/28(日) 午前 1:33