cAt rAdio…心遊びのラビリンス

*******時の花びら降る中で。。*******

^▼^)⊃秘密の告白アニマルズ

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★カバのドクター

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          澄み渡る青の水鏡。

          カバ一族がプカプカ浮かぶ。

          燃えたぎるアフリカの熱線で茹で卵になった頭を並べて

          いっせいに大アクビ。

          よっぽど退屈らしい、そんなにヒマなんだろうか……。


          いや、そうじゃない。

          大真面目に励んでるんだ。馬鹿でかい口のストレッチにね。







          熱い静寂を破ってバシャバシャ大きな水音が響いた。


          2頭の若カバがあんぐり口を開け

          にらみ合ってる。


          その開き具合と来たら!!まあ半端じゃあない、ありゃ胃袋の

          ずうっと奥までのぞけるね。

          もちろん虫歯の見せっこじゃないし、アクビが止まらなくなっちゃった…なんて

          ことでもない。


          つまり競ってるんだな。口のでっかさ、牙の長さを。


          その大きさと迫力でもって

          キッチリ上下のハンコが押されてしまうのさ。


          首尾よく「上」を勝ち取ったら

          水辺の草場で余裕しゃくしゃく、優越感たっぷりの

          グルメな食事ができる。


          けど「下」の烙印を押された奴ははるか彼方、陸の奥までトボトボと寂しく

          出張しなくちゃならない。


          それにそこら辺りじゃ「猛ライオンに注意!!」の看板までついて来る。


          カバの世界はなかなかに厳しいんだ。

          だからこれでもかと目いっぱい大口を開ける。なにしろ…

          運命がかかってるからね。





          大口全開会話不可の都合上カバたちは、小さな目玉で精一杯にらみをきかせる。


          (どうだオイ!おいらの方がでっかいだろうが)


          (バカヤロ!!オレのが大きいに決まってんだよオ!!!)


          (いいや、おいらだ)


          (オレ様だ〜〜〜!!!!)


          「!!アグ!!」


          妙な声とともに突如「オレ様」は固まっちまった。

          アゴが外れたんだ。

          そしてカバのドクターの元へあたふたかつぎ込まれるはめになる。

          「やれやれ、またお前かい」





          めでたくアゴをはめてもらった若カバが帰ると初老のドクターは

          ため息まじりに呟いたね。


          「近頃の患者のえらい多いことときたら。前はこんなじゃなかったがなあ…」


          「そりゃ又どういうこと」

          水を飲みに来たシマウマがたずねた。彼は古い友達だ。


          「まあ…時代かね」


          「フフム!」


          シマウマが黒い鼻を鳴らすと

          盛大な鼻息がサワサワ青い水鏡をさざめかせたんだ。


          「つまりな」


          ドクターは若カバたちを小さな目玉でちらと見た。


          「あいつら遊びに忙しいしなにしろ…

          地味なストレッチをバカにして怠けるじゃろ」


          「うちの若いもんが蹴りのトレーニングしたがらんのと一緒だな、ブルルッ」

           シマウマが答え青空が波うつ。


          「それでしょっちゅうアゴが外れるわけだ」


          「確かにしょっちゅう脚がつる。ブルッ」


          「何度言って聞かせてもダメ」


          「何度となくね!!」


          「まあいわゆる若気の至りって奴かね」


          「………」

          カバのひと言で急に押し黙ったシマウマ。

          長い睫毛をパチパチとせわしくしばたたかせて本物の青空を

          しみじみ見上げたのさ。


          「……若気の……」


          「若気の至りってのは…確かにあるよね……」


          遠い記憶がその時

          つぶらな黒い瞳をうるうるとメランコリーで満タンにしたんだ。





          「はずれた!!!」


          シマウマの青いセンチメンタルは突如、木っ端みじんに蹴破られた。

          蹴破ったのはカバをかついだカバであり、はずれたのは期待でも予想でもなく

          アゴだったね。


          かくして…カバのドクターがヒマを持て余す日は遠いのさ。

★孔雀の羽裏

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       孔雀は今朝もゆったりとその巨大な扇を広げる。



       溢れる陽光を受け

       完璧な美曲線を描く羽の一枚一枚が

       青や緑や虹色の炎を激しく煌めかせ燃え立たせて

       華麗交響楽を奏でる。

       そして彼は誇らしげにグイと首をそらす。
       美の王者の絵姿完成、の瞬間だ。

       
       日々恒例の

       朝のチェックが滞りなく終わって絢爛たる扇をたたむ頃ふっと

       頭をよぎる影がある。

       数日前突然浮かんだひとつの疑問。

       そいつは悪魔の囁きにも似てここのところ彼を悩ませるのだ。

       「後ろ姿」である。

       
       ある日ライバルの後ろ姿を垣間見た彼は
       愕然とした。
       目も眩む前面の華やかさに引き換えそれはやけに地味であり、間抜けである。

       「むしろ酷くみすぼらしい」
       と彼は思う。

       まるで美しいステージの背後、塵芥に埋まる舞台裏だ。

       だがそれは奴の羽が三流だからに違いない。

       私の羽は超一流だ、後ろ姿だって完璧な筈だ。



       しかし。

       残念ながらそれを確かめる術はない。

       さりげなく水面に映してみるが、咲き匂う睡蓮の花の間に見えるのは

       きらびやかな前面ばかり。



       「後ろ姿に今一つ、確たる自信が持てない」しかし認めたくはない。



       誇り高き孔雀は今日も
       燦然と広げた七色のプライドの羽裏に不安を
       ぶら下げている。

★ペリカンの後悔

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             あの日。

             オレならきっとラッキーボーイになれたのになあ……。

              ペリカンはつくづくそう思うのでした。
             赤ちゃんが生まれると人々は喜々として言います。
             「コウノトリが運んで来てくれたんだよ!」



 
             実はあの役目、きっちりオーディションがあったんだ。神様のね。

              ペリカンは記憶の糸をググッと
              たぐり寄せます。

             まあ実にいろんな奴が世界中から…わんさか集まって来た。

             ずうっとずうっと遠くのゴールまでベビードール抱えて

             競争するんだ……。




              「オイラ誰より器用だもんね!!」


             自信たっぷりに宣言したのはサルさ。

             またやけに器用な両手でしっかりベビーを抱けるもんで

             オレたちライバル、実のところひどく焦ったんだけど。


              「もうみんなあきらめた方がいいって!!」


             そう叫んで元気いっぱいスタートした割にはじき固まっちまったよ。

             やっと気づいたんだな、

             2本の足だけじゃあ長く走れないってことに。




              「フフッあなたたちってば…」


             カンガルー娘はなんたって

             ホッカホカのあったかポケットが自慢の種なんだ。


              「こ〜〜んなゴージャスなポケットなんか…ウフフ、無いものねぇ」


             けどしばらく跳ねてから

             ポケットがすっかり空っぽなのを発見することになる。

             張り切りすぎた大ジャンプのせいで肝心のベビーはどこかに

             吹っ飛んじまったのさ。




              「この長〜〜〜い鼻なら」


             低い声をビリビリ響かせて象が言ったね。


              「そりゃあもう何だって運べる、小さなベビーを運ぶなんぞ

             アサメシ前、まかせてもらおうじゃないか」


             それからのしのし歩き始めたが……。なにしろでっか過ぎるその体じゃあ

             ゴールインは一体いつになるんだか、鼻なんかよりずっと

             気の長い話さ。




              「…まあなんと言っても、ですう」


             モジモジしながら妙なビブラート入りで呟いたのは

             丸っこい羊だった。


              「ワタシのウールマーク付き背中なら寝心地最高、ベビーちゃんも

             グッスリですう!!」


             あのフワフワの毛、なるほど

             今すぐにでも昼寝したくなるよね。

             けどあいつ、なぜだか急にそわそわうろたえ始めたのさ。


              「リ…リーダーは何処!?」


             うっかり忘れてたんだ。

             リーダー無しでは何処へも行けない、悲しい羊の性をね。





              「他にも」

             ペリカンは続けます。


             数えきれない動物たちが参加したけど結局のところ…

             どんな高い山もそれから深い海だって自由に渡ってゆけるオレたち

             鳥が残ったのさ。

             中でもとびっきり丈夫なくちばしのコウノトリとオレとで

             最後のテストを受けることになったんだ。


             オレには自信があったね。

             なぜかって?


             コウノトリはわざわざスカーフを用意しなきゃならないけどオレならこの

             伸び縮み自由な自慢のくちばしにベビーを入れられる。

             もう勝ったも同じさ!!



              「………」


              目をキラキラさせすっかり
              興奮気味だったペリカンはそこで急にシン、と沈黙しました。


             ……それなのにさ。


             ゴール寸前の海面に魚の大群を見つけてオレ、いつものクセで

             一気に魚をすくい捕ったんだ。

             で、そのまんまゴールに飛び込んだけど…


             なんとコウノトリの奴も同時だった。

             魚をスルーしてればオレは勝ってたってわけよ。



             おまけに。


              「はあ〜」

             (実に大きなため息)


             神様は宣言したもんさ。


              「そのように食い意地が張っていてはしょっちゅう道草を食いそうだな、

             大事なベビーを預けるわけにはいかぬ」


             (ひときわ悔しそうに)

              「そしてコウノトリが選ばれた」



             今じゃオレらは

             でかいばかりの食いしんぼのくちばし!!なんてこき下ろされるのさ。

             全くドジだったよ、ホント。




              ――ペリカンの大きく膨らんだくちばしには
              魚と一緒に後悔も
              ギッシリ詰まっているのです。

★カメランナー

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         のろいと言えばカメ。
         異議を唱えるのはまあナマケモノぐらいのもんさ。
         だがね。
         かつてカメはぶっちぎりのスピードランナーだったんだ。
         とても信じがたい話だけど。
         それはもうずうっと昔のことだ。




         その頃カメは「カメ」じゃなく「ハヤテ」と呼ばれてた。

         「新記録、今日こそ作ってやるぜぇ!!」

         ハヤテはその朝気合い充分だった。

         そして走り出す、猛スピードで。


         重い甲羅が邪魔になりそうなものだがその頃のあいつにそんなものはなく

         ずいぶんと身軽だった。

         なにしろ生まれついてのスピードランナー、その速さで皆を驚かせるのが

         三度の飯より大好きなんだ。


         走るあいつの巻き起こす風と来たらもう竜巻と言ってもいい。

         バリバリ恐ろしい音でたくさんの大木が裂けると

         カッコウやフクロウ、キツツキなんかが慌てふためいて飛び立った。


         「!!!」


         無論それだけじゃあすまない。

         ハヤテはさらにスピードを上げ突き進む。

         お茶を楽しんでたウサギ老夫婦は薔薇の花やスプーンや

         椅子やテーブルや、もうまるでいっしょくたに吹き飛ばされたね。


         「!!!〜!!!!!」


         さらにそこらじゅうの家がメリメリ傾く。

         「ハッハッハッ、どうよ、この素晴らしいスピード!!」

         ハヤテは得意満面自慢絶頂。

         もう誰もあいつの暴走を止められない。


         やがてハヤテ竜巻は大きな湖のそばにさしかかる。

         そこには熊一家が暮らしてた。

         花いっぱいの庭で熊ママは、よちよち歩きのベビーをブランコに

         乗せてるところだ。

         そしてあっと思う間もなく可愛いベビーは吹っ飛んだ。

         「!?!?!!!!!!!!!!!!!!!!」

         物凄い熊ママの悲鳴で家から飛び出した熊パパは、みるみる飛んで行くわが子に

         びっくり仰天、夢中で後を追っかけたさ。


         湖でせっせとダム作りのビーバーたちも空飛ぶ小熊に

          「!!、これは一大事!」

         短い脚をフル回転させて走り出すし

         長いしっぽでのんびり釣りのキツネは

         食いついたでっかい魚を引きずり引きずり追っかけるし

         せせらぎに真っ赤なリンゴをほっぽり投げて

         アライグマがあたふたあとに続くし


         ロバや羊や牛やウマやカワウソや山猫や白鳥やその他わけもわからず走り出す者、

         あげく狼まで参加して

         行列はどんどんどんどん伸びていった。



         長い長い行列を従えた熊ベビーは湖の

         ずうっとずうっと南の方でようやく落下し始めたんだ。


         「オイ、大変だ!」

         「落ちるぞ!!」

         「受け止めろ!!!」

         「そっちよそっち!!!!」

         「モタモタすんなー!!!!!!」


         一同入り乱れての大混乱、熊ベビーが落ちたのは…。なんと

         カバの口の中!


         湖の岸でひどい眠気に襲われてちょうど大アクビをしたところだ。

         カバの方はまあ死ぬほど驚いたんだが

         熊パパはじめ全員が

         ホウッと実に大きな安堵のため息をついた。

         ため息はなんと1キロ四方の花を一気に吹き飛ばして


         ハラハラハラハラ……


         綺麗な花吹雪がそこらじゅう降りそそいださ。


         熊ベビーはというと

         ポカンと開いたカバの口の中で、何ごともなかったように

         キャッキャと喜んでる。

         どうやら皆の心配をよそに、空中大冒険旅行がよほど気に入ったらしいね。


         「……」


         一瞬の沈黙のあと湖の岸に大爆笑が巻き起こった。


         花吹雪が舞い上がり、舞い散る。


         「ありがとう、ありがとう」

         ようやくベビーを抱きしめることができた熊夫婦、もう

         グシャグシャのうれし泣きだ。

         それから皆でガヤガヤと家路についたんだ。





         翌朝。


         「なんだい、やけに騒がしいぜ」

         ハヤテが出てみると、怒りに燃える熊を先頭に

         包帯だらけの連中が集まってる。

         「ヘッ何か用かい、これからトレーニングだから邪魔しないでくれよな!」

         しでかしたことに気づかぬそぶりのその横柄な態度、

         熊の怒りはますます燃え上がった。

         「しばらく大人しくしてもらおう」

         熊はそばにあった水瓶を抱え上げると、ハヤテにすっぽりと

         かぶせてしまったのさ。

         「オ…オイ、何するんだよオ!!」

         ハヤテは焦ったが体は抜けない。

         顔だけ出しわめき散らすあいつを置いて、皆さっさと帰っちまった。

 
         その夜は満天の星だった。

         時おりスウッと美しい尾を引いて流れる星を見ながら、乱暴者のハヤテもさすがに

         ほんの少しだけ反省した。

         「チッとやりすぎちまったか」


         長い夜が明けた。

         キラキラと眩しい朝日の中、のしのしやって来たのは

         キツツキを肩に乗せた熊だ。

         「おい、オレや鳥の子供たちや、みーんなケガしたんだぞ!」

         キツツキが甲高い声で叫んだが意地っ張りのハヤテのことだ。

         フン、と横を向いてる。

         「どうだい、もう暴走するのはやめんか?」

         と熊の低い声。

         「嫌だね、オレ様はスピードランナーのチャンピオンだぜ、やめるなんて

         とんでもない!!」


         ハヤテの返事に熊はしばらく考えてたが、決心したように言った。

         「そうか、それなら仕方ない。その水瓶を取ることはできんな」

         「できん、できん、できん」

         キツツキがせわしなく何度もうなずく。

         熊が続けた。

         「ただしそのままでは不便だろうから…手足だけは出せるようにしておこう」

         するとキツツキがコツコツと水瓶に穴をあけた。


         そして

         重たい水瓶のおかげで、皆がハヤテの暴走に悩まされることはなくなった。

         それどころかあいつはもう

         スピードランナーはおろか、四つん這いで誰よりもゆっくりと

         歩くはめになってしまったのさ。


         瓶にはまったその姿から、皆はいつかあいつを「カメ」と

         呼ぶようになった。


         「カメ」はその後結構イイ奴になったんだが、その頃には

         水瓶と体はすっかり一体化してた。

         「甲羅付きカメ」誕生、だ。


         そしてキツツキが穴をあけるときに入ったたくさんのヒビは

         甲羅の模様になったらしい。





         それから長い刻が過ぎて行ったんだ。

         今でもカメは夢見ているのさ。

         いつか自由の身になって再びぶっちぎりのスピードランナーに

         返り咲く日の来ることをね。

★タコ踊り

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         “クリーニング中”なんて人は言うよ。

         けれどもね…

         「やっぱりあれはタコ踊り!!」


         目玉を光らせキッパリ宣言したコブ鯛。

         キングサイズのコブをのせた顔でひらりとこっちに向き直ると

         彼は続けた。


         「海の方でもダンスは人気でね。

         年に一度はでっかいコンテストがあるんだ。

         つまりさ。

         タコもトロフィーが欲しくてレッスンしてるってことだね。


         今年は次の満月の夜、海藻の森にある大岩のステージで踊るんだ。面白いから

         行ってみなよ、それから」


         そこで食べごろのサザエを見つけたコブ鯛はさっさと

         行ってしまった。








         海よりも深い蒼天井を飾る星の囁きと

         磨き上げられた満月。


         溢れ落ちる黄金の光になみなみと満たされた海藻の森は今宵

         たくさんの観客でざわめいている。


         ざわざわごうごう渦巻く期待の中、月光のスポットを浴びたステージに突然

         けたたましいオープニングミュージックが鳴り響いた。


         巻貝のベースやクジラのヒゲのギター、ウニ殻のドラムなんかで演奏しているのは

         イザリ魚やオウムガイ、ウチワエビにカエル魚…と

         実にユニーク多彩な海の人気ロックバンド

         「ストレンジレンジ」である。


         そしてカラフルなイソギンチャクボンボンを派手に振り回す

         かわいい小蟹チームのアゲアゲチアーダンスでコンテストの幕はついに

         切って落とされた。




         美しいフリルをひらひらひらひらフル回転させ舞いに舞う水玉模様の海牛…

         めまいを起こす者もいる。


         やけにスロー…アンドスロー…なクラゲのフラダンス…

         催眠術のようで眠くなる。


         バッサリ切られそうな程切れのよい太刀魚の剣の舞…

         少々怖い。


         クルクルとジャンプするムツゴロウのヒップホップ…

         忙し過ぎてよく見えない。



         なんとも個性的すぎるダンスの数々、会場はわきに沸き大いに盛り上がる。

         歓声と指笛に送られいよいよタコの登場だ。

         演目は今タコ界ではやりのフラメンコ。

         薔薇の花ならぬ紅い珊瑚をくわえ、タコは思い入れたっぷりに

         踊り始める。


         貝のカスタネットを激しく打ち鳴らし猛烈な早さで踊るタコ嬢。

         目まぐるしく回転するたくさんの脚は

         絡まりそうで絡まない。


         その溢れんばかりの情熱に観客の多くは魅了されるが、中には

         笑いをこらえる者もいる。

         やっぱりそれはどうにも可笑しい“タコ踊り”に見えるからだ。


         しかし誰かがそんな野次を飛ばしたにしろ

         今や美しくも悲しいカルメンになり切っている御本人にはまったく

         聞こえない。




         その後も次々とダンスは続き、月光の黄金がサラサラと淡くなり始める頃…

         ついに噂のおおとりの登場となった。


         それは深海の大スター、ミスシーワールド

         「竜宮の使い」である。


         まさに一生お目にかかれない程の高貴な存在。

         その姿を拝めるとあって嫌が上にも皆の期待は高まり、興奮はピークに達する。


         柔らかな月光色に照らされ

         しずしずとあらわれた彼女のこの世の者とも思えぬ気品と美しさに

         一同まず息を呑む。


         そして例えようもなく優美なその踊り。

         神秘と幻惑に彩られる竜宮の天女の世界、会場は陶酔の淵に沈み

         シン、と静まり返った。


         ウミガメたちは溢れる感動の涙をどうにも抑えきれずにいるようだ。

         彼らの中に流れるご先祖の血が、伝説の遠い記憶を

         呼び覚ましたのかもしれない。





         やがて流れて来た銀色の雲が満月を覆い

         ステージが暗くなったのを潮時に会場を立ち去ろうとすると、聞き覚えのある

         声が追って来た。


         「どうだい、やっぱりタコ踊りだろ!!」

         「これはタコ娘からのお土産だよ。わざわざ見に来てくれた

         お礼だってさ」

        
         コブ鯛の巨大なコブの上に乗っているのはあの紅い珊瑚だ。


         「じゃあね。又どこかで会えるかも」







         それから幾らかの時がたち、今宵もまた蒼天井に

         黄金色の満月が昇った。


         そのシン、と透き通った光に照らされて机の上の珊瑚はひときわ紅く燃えている。


         あれは夢ではなかったのだよ、とその煌めきは

         囁いている様だ。

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