cAt rAdio…心遊びのラビリンス

*******時の花びら降る中で。。*******

☆●☆猫なお話

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          「僕は水の匂いを感じ取れる。さあ行こう」



          そこには見渡す限りの蓮が輝く緑色の丸い葉を

          無数に広げていました。

          淡いピンク色の蕾や咲き匂う花弁がゆらゆらと

          柔らかな風に揺れ騒ぎ

          澄んだ水は明るい空に染まっています。

          「これが……蓮の泉!!」

          MIUは叫びました。

          「やっと…やっと辿り着いたのね!!」

          「いや、ちょっと違うんだけどね…」

          蟻とロンがかたわらですまなさそうに言いました。

          一体どういう事なのでしょうか。

          「よく見てごらん、蓮の葉っぱを」

          沢山の光る水玉がキラキラコロコロと転がっています。

          それが葉の中心でひとつになった時。

          「ホラ、これがもう少ししたら…」蟻が囁きます。

          やがて綺麗な水玉に透ける

          葉っぱの中心の小さな穴からはプクプクプクプク…

          まるで真珠の首飾りの様な泡が立ち昇り始めたではありませんか。

          「なんて美しい…」

          MIUは目を輝かせながらじっと見入りました。

          「お天道様があたためた空気がね、長い茎の中から湧いて来るんだよ。

          まるで小さな泉さ」

          しかつめらしくロンが締めくくります。

          そしてそこそが探し求めていた

          「蓮の泉」だったのです。

          「MIU、小さくなって」蟻が言いました。

          「その泉に飛び込んで葉っぱの穴に入るんだ」

          けれども溺れた事のあるMIUは深い水が

          ひどく怖いのです。

          「MIU、ここからは一人だ。LUNAに会いたいんだろ、さあ

          勇気を出して!!」

          ロンが力強く言いました。

          小さくなったMIUは思い切って水の玉に飛び込みました。

          鼻をつまんで。

          必死の思いで穴に入ると…。それはまるで

          緑いろの長い長い滑り台でした。

          ずっとずっと…ずーっと滑ったMIUの体はふわりと

          広い空間に投げ出されました。



          そこは見渡す限り…

          遥かな天空まで淡い虹色に光る雲が渦巻く中、無数の

          煌めくカケラがゆったりと行き交う不思議な世界でした。

          そのカケラのひとつに子猫のLUNAを発見して

          MIUは叫びました。

          「待って…待ってよLUNA!!」

          MIUがカケラを追って走り出そうとした時です。

          後ろで優しい声が響きました。

          「ボクはここにいるよMIU、とても元気そうだね…」

          振り向くとそこに立っているのは…

          懐かしいLUNAでした。

          「ずいぶん歩いたんだね」

          その声はあたたかいいたわりに満ちています。

          「LUNA…!!」

          彼らはしっかりと抱き合いました。

          あの幸せな午後の様に。

          「MIU、ここは記憶の星雲だよ。過去のすべてがあるんだ」

          星の様に煌めくカケラには確かに様々な

          LUNAが見えます……。



          迷い猫だったLUNA。

          まだ慣れない部屋である夜、遠く響いた

          子猫を呼ぶ母猫の声に向かって走って行きました。

          壁をジグザグに走る忍者になったり

          いつの間にか「おすわり」を覚えていたり

          お隣から煙草の吸殻をくわえて帰ったり

          外出帰りのMIUの胸に飛びついて来たり

          入浴中のMIUを真冬の

          冷たい洗濯機の上で待っていたり

          新しいサイフを猫パンチで迎えたり

          去勢手術の麻酔でしっぽがススキになったり

          来訪者が手渡す物を夢中で受取ろうとしたり

          MIUがため息をつくと彼もため息をつき


          それから…

          数え切れない記憶のカケラが

          MIUの周りでグルグルと飛び交いました。

          無数の季節の流れの中

          彼は太陽と月の光の様に…大自然の一部の様にいつも

          そこにいたのです。


          それから…

          それから突然具合を悪くして。

          「あと数日」の宣告を

          宇宙の果てまで蹴っ飛ばしたかったMIU。

          病院からの帰り道

          冷たく凍った風の固まりを全身で受け止め

          LUNAをしっかりと胸に抱えながら夕陽に染まる長い橋を渡りました。

          逝こうとする彼に

          夕焼けやコスモスや光るさざ波や一番星や

          もっともっと沢山の美しい「今」を見せたかったから。

          その美しい瞬間を一緒に生きて欲しかったから。

          少しでも長く抱き締めていたかったから。

          「もっと……」

          「もっと一緒にいようよ…」

          じっと見上げるLUNAをの温もりを感じながら

          ポロポロ涙がこぼれ落ちます。

          何も出来ない無力な自分がそこにいました。



          「LUNA…」

          MIUはそっと言葉をつなぎます。

          「どうしても…

          どうしても謝りたかったんだよ」

          「…なぜ?」

          柔らかくLUNAが問います。

          「あの点滴をしなければもっと自然に…

          眠る様に逝けたんだと思う。あれがLUNAの苦しみを

          長引かせたんだと思う」

          「…点滴で少しは元気になったボクを

          もっと元気にしたかったんだろ」

          「そう。きっと良くなると信じてた、でも」

          MIUは気付いていたのです。

          もっと生きて欲しい、ここから離れないで。

          それはつまり私の身勝手な願いであり

          押し付けがましい愛だったんだ。


          4日目の朝。

          溢れる朝の白い光にくるまれてLUNAはMIUの膝から

          静かに旅立って行きました。


          「…何が正しいかなんて誰にも分からない。

          信じて選ぶしかないんだ。

          どんな結果だって自分を責めちゃいけない。

          きちんと受け止めて

          また前に進むしかないんだ。

          それに。

          完璧な愛なんて……神様でなきゃ無理だよ」

          LUNAはMIUの顔をのぞき込みました。

          「さあ、笑って」

          そして彼は続けます。

          「ボクはいつでも側にいるよ。なぜなら

          記憶の星雲は誰の心にもあるものだからね」

          MIUは驚きました。

          「じゃあここは…私の心?」

          答える変わりにLUNAは静かに微笑みました。

          アリスの猫より

          チャーミングな笑顔でした……。




          MIUが出会った彼らは

          実のところ

          生まれ持った強さがあります。

          たとえ何が起ころうと、そして突然終わりの時が来たとしても

          その身ですべてを受け入れる強さ。

          もう庭に

          あの雀たちは来なくなりました。

          チューリップは枯れ、花の季節は終わってしまったからです。

          大自然に寄り添い、彼らはいつも逞しく生きています。

          「もっと強くならなくちゃね。

          きりりと生きるキミたちみたいに」



          MIUは透明な夕空の茜を見上げました。

          天の深みで輝き始めた星の一つひとつに

          LUNAとそして

          蟻やヤギのプチ、猫のシロ、水色のインコ、それから

          ハツカネズミに犬のロン、彼らの姿が淡く

          重なって見えます。

          LUNA、そしてみんな……

          ありがとう。


          すると天空の彼らはキラキラと

          優しく瞬きました。








                             ( 完 )

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          その洞窟はポッカリと不気味に真っ暗闇の口を開けていました。

          「こ…怖い、でも進まなければ」

          おそるおそる手探りで歩き出したMIUは

          すぐに何かにつまづき、思いっきり転んでしまいました。

          「なんとかしてあげたいけど小さなボクじゃ無理だしなあ…」

          蟻がそう言って頭を掻いたその時。

          暗闇でピカリと2つの光が動きました。

          「な…なんなの?」

          MIUは震え上がります。

          「やあ、ずいぶんと久しぶりだねえ」

          光の主はおっとりと

          親し気に話しかけて来ました。

          目を凝らすとそれは真っ白い猫です。

          「僕はシロさ。満開の桜の木の下にとっても可愛いお墓を

          作ってくれたよね」

          MIUは驚きました。

          しばらく面倒を見た通い猫の彼はとても穏やかな猫でしたが

          ケンカ傷が元で旅立ってしまったのです。

          「まあドジしちゃったけどさ、なんだかんだお世話になったね!」

          彼は明るく言いました。

          「ここは境界のトンネル。滅多に来れない場所さ。

          こんな暗闇じゃMIUは一歩も進めないだろ、でも

          僕のこの目ならライトになるよ」

          シロの目が照らし出したのは、神秘的な輝きを秘めた

          淡いエメラルドグリーンの大きな洞窟でした。

          見渡す限りの水晶が

          色とりどりの透明な煌めきを放ちながら地面を覆っています。

          遥かな天井からはたくさんの輝く柱が伸び落ち

          青水晶の様に澄んだ水がチリチリチリチリ…

          柔らかな音色を辺りに響かせながら涼し気に流れています。

          MIUが両手にすくい取った冷たい水は

          キラキラと燐光を放ち、そっと飲んでみると

          ほのかに甘く、

          とても幸せな気分になるのでした。

          「さあ、進まなきゃ」

          洞窟の美しさにうっとり見とれているMIUをシロが

          促します。

          「LUNAのことはよく知ってる。

          僕はたったの1年だけど彼とは20年も一緒だったよね。

          会いたい気持ちはよ〜く分かるよ」

          彼は優しく言いました。

          壁のあちこちで柔らかく光る水晶の花が

          MIUたちを見守っているようでした。




          洞窟を抜けるとそこには

          青く煌めく大海原が広がっていました。

          蟻が肩で叫びます。

          「こんな海ボクの葉っぱじゃとても渡れないよ!!」

          「じゃあどうすれば…」

          「それなら僕に乗るといい」

          絶え間なく打ち寄せる波音に混じっていきなり

          声が降って来ました。

          驚くMIUが見上げると吹きつける海風に揺らぐ大木の枝に、水色の

          綺麗なインコが止まっています。

          「僕をあのとき助けてくれたね。ほら

          ベランダに落っこってバタバタしてた…

          「思い出した、あの青い鳥なのね!!」

          海外旅行2時間前のベランダに突然飛び込んで来た

          水色の美しい鳥。

          「よりに寄って何でこんな時に…」

          ママはおろおろしながら叫んだものです。

          放っておくわけにも行かず餌を買いに走りLUNAのカゴに入れ、仲のいい

          お隣さんに世話を頼んであたふたと出発しました。

          「あの騒ぎで着替えを忘れて不自由したっけ…」

          「それは悪かったね…何しろさ、おなかが空いてもうどうにもこうにも

          力が抜けちゃって」

          帰国後しばらく彼は家族の一員でしたが結局

          鳥好きの知人にもらわれて行きました。

          「実はあの時ね。

          LUNAとは仲良しだったんだ。お互いじっくり身の上話をしてさ。

          迷い猫と迷い鳥の似た者同士と分かって

          すっかり意気投合したってわけ。

          とにかく助けてもらって嬉しかったよ。どうしてもお礼が言いたかったんだ」

          「さあMIU、小さくなりなよ」

          蟻が言いました。

          吹き渡るシトリン色の潮風に乗ってキラキラ輝く広い海を超えるのは

          例えようもなく素晴らしい気分です。

          「ねえ、このままずーっと飛んでいたい…」

          「だろ?空は最高さ!!」




          降り立ったのは遥か南の小さな島でした。

          インコに別れを告げ

          「エルエルエル!」で元に戻ったものの、いったい

          どっちに行けばいいのか。

          「ボクもこの島のことはよく知らないんだ」

          「…まあとにかく歩くしかないわね」

          燃えさかる太陽はこれでもかと容赦なく熱線を撒き散らかします。

          「なんて暑いの…!」

          蟻はというと葉っぱをかぶっています。

          「家宝」は何かと役に立つ道具のようです…。

          やがていくつもの実を付けた大きなヤシの木が現れました。

          「MIU、あの実で喉を潤せるし食事にだってなるよ!」

          蟻が叫びましたがとてもMIUが登れる高さではありません。

          かといって小さな蟻には無理な仕事です。

          その時。足元で愛らしい声が

          「アタシなら登って落っことすことが出来るわ」

          それは小さな白いハツカネズミでした。彼女は綺麗なルビー色の目を

          パチパチさせて続けました。

          「アタシもあなたと暮らしたの。覚えてる?」

          そう言えバパが庭先で…。

          「カラスに襲われかけたのを助けてもらったのよ」

          それからほんの1週間くらい世話をしたのです。

          実のところ、命を縮めた原因は猫のシロでした。

          「あの時アタシ、シロにじゃれつかれて

          もうビックリし過ぎて心臓が止まっちゃったの」

          「ごめんね、もう少し早く気がつけば…」

          「いいえ、あれは猫の本能なんだし。

          歓迎はしないけど恨んでもいないわ」

          白ネズミは素早くヤシに駆け上ると幾つかの実を

          かじり落とし、それから穴を開けてくれました。

          その夜。

          澄み渡る夜空から密やかに

          優しく優しく響いて来るのは…星劇団の不思議な歌声です。

          深い蒼の底で

          煌めき流れる銀河を見つめながらMIUは思いました。

          「あの銀河を渡れば

          LUNAに会えるかもしれない…」

          「あれを渡るのはまだ早いさ」

          そう囁いたのは蟻のようでもあり

          違う声だったような気もしたのです。




          夜が明けて白く流れる朝もやの中を出発しました。

          そして…

          どれだけ歩いたのか。足がもつれます。

          こんなに歩いた事が今迄あったでしょうか。

          もう限界かも知れない、クラクラする………。

          何だか温かい…。

          MIUはハッと目覚めました。

          いつの間にか気を失っていたようです。

          「よく頑張ったねMIU。ここからは僕が案内するよ」

          目の前にクリクリした瞳が並んでいます。

          頬を優しく舐めて起こしてくれたのは凛々しい茶色の犬でした。

          「あなたは…」

          「ほら学校帰り、子犬の僕を拾ってくれたよね」

          子供の頃そんな事が確かにありました。

          フワフワの愛らしい子犬、そう、ロンです。

          「ほんの3日でよそに行ったけど

          でもキミはとっても優しくしてくれたんだ」

          ロンは言いました。

          「僕は水の匂いを感じ取れる。さあ行こう」




          そこには……。







                                (つづく)

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          「蓮の泉を知ってる?」

          小さな雀は囁きました。

          そのまん丸い目をぱっちりと見開きながら。



          猫のLUNAが突然旅立ってから

          数ヶ月が過ぎ…。

          MIUの心にも似たモノトーンの庭に

          芽生えたチューリップたち。

          蕾は日に日にふくよかになってゆきます。

          ころりと太った球根を興味津々で転がしていたLUNAを

          懐かしく哀しく思い出しながら彼女は

          ふと気づいたのです。

          わらわらと蕾たちに群がる恐怖のアブラムシ団!!
        
          花盛りのパンジーにもすでにムシたちは侵入を開始していました。

          次の朝のこと。

          突然にぎやかな声が沸き起こりました。

          いくつもの小さなシルエットが硝子の向こうで飛び跳ねています。

          そうっと近づくとそれはたくさんの

          雀たちでした。

          「こんなに来るなんて珍しいわねえ」

          ママが後ろから囁きます。

          ひとしきりの大騒ぎの後彼らはパアッと飛び去り

          庭に出た二人は驚きました。

          アブラムシ団は明らかに数を減らしています。

          「驚いたわねMIU!あの雀たち…」

          「ムシ退治?」

          「あれだけの雀が一度に来たことなんてなかったよね。

          ひょっとするとLUNAがいなくなったからかしら」

          「でも不思議…」

          とMIUは首をかしげます。

          「アブラムシ団の存在がなぜ分かったの?」

          「ムシオーラ」を雀たちは感じ取るアンテナでも持っているのでしょうか。

          そして雀パトロール隊は毎朝訪れてくれました。

          MIUは感謝したくなります。

          その声も姿も今のMIUには最高のサプリなのです。




          そんなある朝のこと。

          「ねえ、そこで見ているのは知ってるよ」

          MIUは飛び上がりました。

          「ボクだよ。雀!」

          何とその声の主は一羽の雀だったのです。

          「猫のLUNAは気の毒だったね…。でもまあ

          それが人生ってもんさ」
     
          結構わけ知りのようです。

          「キミの気持ちはよくわかる。つまりさ。

          もう一度LUNAに会いたいんだろ」

          「そう、どうしても伝えたい事があるの!!」

          「ハスノイズミを知ってるかい」

          「ハスノ…イズミ?」

          「そう。蓮の泉。その泉でLUNAに会える」




          雀に教わった道をMIUは歩いていました。

          やがて道は二つに分かれ、迷っている彼女の目の前に

          一羽の小さな鳥が現れました。

          黒い頭にオレンジ色の胸をしたその鳥は

          まるで誘う様にクルリと舞って少し先の道に降り立ちます。

          近づくと又舞い上がりそして降りるのです。

          「案内してくれるのね?待って!!」

          懸命に追いかけましたがしばらくすると彼は

          あっさり飛び去ってしまいました。

          なんと道は行き止まり。

          「ひょっとして…からかわれただけ?」

          ガッカリしながらMIUはふと気がつきました。

          目の前に広がるのは……木イチゴの森。

          たくさんの実がずっしりと枝をしならせています。

          「すご〜い!!こんなにたくさんの木イチゴ!!」

          イチゴが大好きなMIUはもう大喜び。

          赤く熟れた実を食べると

          みずみずしく不思議な甘さが口一杯にふわりと広がりました。

          小鳥はこの森を教えてくれたのでしょうか。

          でも何のために?
       
          実をポケットに入れて辺りを見回すと…

          落ち葉に埋もれかけた細い道を見つけました。
           
          よ〜く見ると小さな何かが急ぎ足てやって来ます。

          それは一匹の蟻でした。

          なぜか背中に葉っぱをしょっています。

          そして蟻はいきなり可愛い声で喋り始めました。

          「さっきの鳥はさ、雀の従弟のススメ鳥!

          ……それはともかく。

          まあ覚えてないとは思うけど」

          蟻は葉っぱを地面に置きながら言いました。

          「ボクはさ、君が昔助けてくれたアリンコの

          ひいひいひいひい…孫なんだ」

          「助けた?私が?」

          「そう。まだ小さい頃君は水に落ちてバタバタもがいていた

          ひいひいひいひい…婆ちゃんを葉っぱに乗せてさ。

          助けてくれたんだ」

          「これはその時の葉っぱだよ。代々宝として受け継いだってわけさ。ボクを

          一緒に連れてってよ。きっと役に立つ筈さ」

          そういうわけでMIUは彼を肩に乗せ

          出発しました。

          やがてシャリシャリと澄んだ水音を奏でる川に出ましたが、橋は

          どこにも見当たりません。

          「いい事教えてあげる。この葉っぱをね、

          舟にするんだ!」

          「だってこんな小さな葉っぱじゃあ私には無理だもの」

          「ほらさっきの木イチゴ、あれを2つ食べてから

          アリアリ!!って唱えてごらん。すぐに

          体がちっちゃくなるよ」

          「……」

          どうにも信じがたい話でしたが試してみるとなんとMIUは

          蟻サイズになってしまったのです。

          「代々のお宝」で蟻とMIUは流れに乗り

          向こう岸近くの浅瀬に入りました。

          「さあ元に戻るんだ。木イチゴを三つ食べて…」

          「アリアリアリ!!なの?」

          「い、いや。今度はエルエルエル!!だよ」

 

          そこは一面の草原でした。

          MIUは深い草を掻き分けながら歩いて歩いて歩いて歩きました。

          空腹でもう倒れそうです…。

          そのとき何か白いものが目に入りました。近づくと

          一匹のヤギがのんびり草を食べています。

          「まあまあ、すっかり疲れてしまったようね。私はあなたのお婆ちゃんが

          飼ってたヤギよ」

          「ひょっとして…あのプチなの!?」

          「そう。花盛りのレンゲ畑でよく一緒に遊んだものよ」

          その頃はまるで子犬の様にピョコピョコMIUの後を追って来る

          とても可愛い子ヤギでした。

          「私のミルクを絞って飲むと元気になるわ。

          草の葉を丸めてコップにするといい」

          一杯のミルクでMIUはみるみる元気を取り戻しました。

          「ありがとう、プチ」

          「もう少し歩くと洞窟があるわ。その先にあなたの

          目指す物がある筈。じゃあ気をつけて行くのよ」



          その洞窟はポッカリと不気味に真っ暗闇の口を開けていました。






                              (つづく)

★LUNAがくれたもの

イメージ 1

          MIU 3歳の誕生日。

          白い空から舞い落ちるふわふわの雪といっしょに

          小さなカゴにおさまった1匹の子猫がやってきました。

          親戚の庭に迷い込んだその子猫。

          コーヒー色した大きな耳と長ーいしっぽは明らかにシャム猫ブランドです。

          そのくせ真っ白な長手袋、こちらは日本猫ブランドに違いありません。

          彼はキラキラ光る目で、のぞき込むMIUをまっすぐに見返しました。

          (ピンクの鼻先にはポッチリとコーヒー色のチャームポイントが
          
          スタンプされています)

          その淡い水色の瞳の奥には沢山の透明な色のカケラが煌めき燃えています。

          世界中のどんな宝石も…

          星の輝きだって色褪せて見えるほどの美しさでした。そして

          一人と一匹は一瞬でお互いを認め合ったのです。


          翌日。

          「LUNA」

          右と左からMIUとママが囁きました。

          「今日からキミはLUNAなんだよ」

          重々しくパパが宣言します。

          LUNA王子誕生、です。

          そしてそれは神様からの「20年分の幸せ」のプレゼントだったのでした。


          彼はジグザグに壁を登るちび忍者です。そして突然

          イナズマのようにそこらじゅうかけめぐるチーターに変身し

          うれしそうに紙玉をくわえて来る犬にもなり

          まるで小さな魔法使いでした。

          初めて見る物体(たとえばママが買って来た新しいサイフ)には

          まず猫パンチをくらわせてみます。

          反撃する奴かどうか試しているのです。


          お隣のベランダから得意そうに大きなゴムの枯れ葉をくわえて帰ったり…

          ある日なんとタバコの吸い殻をくわえて来たLUNAに

          「まあ大変!!LUNAが不良少年になっちゃった!」

          ママは叫んだものです。

          いつのまにか「おすわり」を覚えたりあちこちの戸を器用に開けてもみせます。


          MIUと両親に数えきれない笑いと驚き…そしてやすらぎをふりまきながら

          LUNAは成長して行きました。


          たくさんの季節がキラキラ輝きながら川面に浮いて流れてゆき…

          少女になったMIUは

          春の淡い光の中から舞い降りてきた「恋心」にとまどいながら

          その甘さと苦さをLUNAと分け合いました。

          彼女は夕暮れの窓辺でほおづえをつきながら

          ふう、とため息をもらします。

          すると後ろでも小さなため息が。

          振り向くとそれはなんとLUNAでした。

          MIUは驚き、彼を両腕でしっかりと抱きしめます。

          「わかってくれるんだね、LUNA!!」

          ソファに寄りかかるMIUの脇腹をトントンと軽やかにノックするのは

          遊びたいLUNAの合図でした。

          お腹がすくとカラのお皿の前に座り

          最上級に甘い「2オクターブ高め」の声と「うるんだ大きな目でジッと見つめる」

          ダブル攻撃を繰り出してきます。

          LUNA。それは反則だよ、と

          悩ましげにママが言います。


          そして又 時は流れてゆき…。


          LUNAの耳には少しばかりのミルクが注がれましたが

          両の目の水底に透ける色のカケラたちは変わらずキラキラと燃えています。

          MIUも「花のように美しい」はたちの季節を迎えました。

          彼女はふと呟きます。

          「猫じゃないよね、キミは」

          「人間でもないし」

          LUNAは黙って聞いています。

          野山を渡ってきた優しい風がカーテンのレースを淡いみどりに染めあげます。

          ほんのり花も香りを紡ぎ

          左右に揺れるしっぽの先はパタパタと平和なリズムのメトロノームになります。

          そのリズムが永遠に続いてほしい、とMIUは思いました。



          雨上がりの庭に

          虫楽団のコーラスが響き始める季節。

          風邪ひとつ引かなかったLUNAの元気印が突然点滅しはじめたのです。


          そしてそれはたった3日のことでした。


          2日目の夜

          少し食べれたLUNAは

          不思議なくらいおだやかな寝顔をみせながらMIUの左腕で眠りました。

          最初の夜からずっとそうして来たように。

          羽のようなその軽さ。

          子猫の頃に戻ったみたいだ、とMIUはせつなさを呑みます。


          再び食欲をなくした3日目が終わる頃

          深い深い夜の底でほんの2時間だけ LUNAは

          小さな唸り声で

          あまりにも巨大な敵に最後の抵抗をこころみました。

          瞳の色ガラスは

          静かに燃え尽きてゆき――。


          白くあふれる朝の光にくるまれながら

          MIUのひざの上で

          LUNAは旅立って行きました。


          小さなお葬式をすませた後でもMIUは信じられませんでした。

          LUNAがすっかり消えてしまうなんてあり得ない。

          「LUNAの魂はきっといる!!」

          MIUは探しました。

          街を飛び出し凍る山の上もそれから深い海の底も。

          けれども世界のどこにもLUNAの魂はいなかったのです。


          いつしかMIUは暗い宇宙を飛んでいました。

          火星、金星、土星と たくさんの星を訪ね歩きました。

          それでもLUNAはいません。


          どこにもいない、本当にもうどこにもいないんだ、とわかった時

          MIUは泣きました。


          泣いて泣いて泣いて泣いたのです。

          何日も何日も何日も。


          頬を流れ落ちる涙の粒は いつしか河になって暗い宇宙を流れはじめました。

          小さな星のいくつかを押し流しながら、なおも河は流れ続けます。

          そして。

          やがて遠くから ゆっくりと河をさかのぼって来る光がありました。

          近づいて来たのはまばゆく輝く舟。よく見るとそれはなんと三日月です。


          ゆらゆら浮かぶ月の光の中に

          黒いシルエットがぼんやり透けて見えます。


          見覚えのあるそのシルエットはMIUに語りかけました。

          とてもやさしく。

          「MIU、僕だよ」

          「いつまで泣いてんだよ、MIU…」

          MIUは叫びました。

          「LUNA!?」

          「LUNA!!」

          「なんで死んじゃったの!?ずっと一緒っていつも言ってたのに」

          「もっと一緒にいようよ!!帰って来てよ!!!」

          「…MIU」

          「それはできない」

          「命のカタチには限りがあるんだ。それが宇宙の約束なんだよ」

          「でもね、MIU」

          LUNAは続けました。

          「命は姿を変えて又別の命になる。それに。ずっと遠い昔

          命のはじまりは星のカケラだった。だから

          今あるたくさんの命は実はみんな星の子なんだ。

          そしてこの宇宙に浮かぶ無数の星も皆家族なんだ」

          「MIUも姿を変えた星なんだよ」

          「この宇宙がある限り命はカタチを変えて生き続ける」

          「悲しむのはもうやめて、ほら」

          LUNAは輝く舟の底から何かを取り上げるとMIUにそっと手渡しました。

          それはハートの形をした星のカケラでした。

          「これは星のココロ。僕のココロでもあるんだ。後で

          MIUの胸にあててごらん」

          「…じゃあそろそろ行くよ。そのハートは僕なんだからもう寂しくないだろ」

          「MIU、ずっとずっと一緒だよ……」

          月の舟はゆっくりと河を下って行きます。そして

          三日月いろの光は見えなくなりました。


          MIUのてのひらでハートは温かく柔らかく光っています。

          そっと胸に当てると ひときわ強く輝きながら

          ゆっくりとしみ込んで行きました。

          「LUNA…」


          気がつくとMIUは
          
          咲きこぼれる花の匂いに満たされた夜の庭に立っていました。

          LUNAと一緒に駈けまわった庭です。

          「…花も星の子、なんだね」

          「LUNA、ありがとう」

          空を見上げると、どこまでも透明な深いブルーの底で

          数え切れない星が凛々と燃えています。

          あの三日月もしん、と光っています。

          LUNAの瞳だ、とMIUは思いました。

          そしてその時、ひと粒の星がゆっくりと

          とても優しく

          流れ落ちたのでした。

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