cAt rAdio…心遊びのラビリンス

*******時の花びら降る中で。。*******

☆ストーリーたち。

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                 (どうぞお任せ下さい……)


                 「奴は悪魔に取り入って

                 とうとう恐ろしい力を手にしちまったんだ。それからというもの

                 その力を存分に利用して

                 剣から銃、それから大砲と様々な武器を人間達に造らせ

                 ますます身を太らせる事になる。

                 (あの国、なんとか手に入れたいものだ…)

                 (そうです、我が国、我が王こそ世界を支配すべきなのです!)

                 なんて人間達の

                 身勝手な権力欲もあいつにとっちゃ全く都合が良かったさ。

                 何しろ元々人間ってのは…えらく欲張りに出来てるからな」


                 男は口を歪めて少し笑ってみせた。

                 木漏れ陽にその硝子の目がキラリと光った。

                 まだ幼い少女には少しばかり難しい話もあったが

                 彼女は懸命に耳をすましていた。幼いながらも

                 両親を奪い去って行った者の正体を知りたかったのだ。


                 ほんのちょっと手を貸すだけで事は足りた。

                 果てしない欲に目の眩んだ人間を

                 思いのままに操るのはすこぶる簡単な事だったのである。


                 そんなわけで

                 モンスターの心臓が炎から火薬へと進化した頃から

                 武器も爆発的にその種類と数を増やし続けた。

                 自らの力に自身を深める一方の人間達の支配欲は

                 とめどなく大きくなり…


                 しかし皮肉にもその裏で

                 強大なライバルに襲われ支配されるのでは、という不安が

                 疑心暗鬼となってつきまとう。その結果

                 世界のどこかで戦いの無い日は見当たらない位だった。


                 長い歴史に磨かれた美しい村や街がいとも簡単に破壊され

                 無数の人々がその下に埋もれた。

                 そして
                 
                 無数の涙も又廃墟に深く滲み込んで行った。


                 「やられればやり返す。

                 やり返された方も又仕返しする…。

                 いつまでたってもその繰り返しなもんだから

                 奴の大好物の“憎しみ”って代物はまあ

                 永遠に生まれ続けるって事だな。



                 そしてある日。



                 人間達はとうとう造り出しちまったんだ……。

                 世にも恐ろしい禁断の武器、

                 核爆弾をな。


                 つまりモンスターは狙い通り悪魔の心臓を手に入れたわけさ。


                 奴が人類を完全支配して

                 この世界を破滅に導く日は近いって事だ」


                 「…もうどうすることもできないの?」

                 小さな少女の声は悲しみに震える。


                 「ああすっかり怖がらせちまった様だ、悪かったな……。

                 大丈夫、希望はあるんだ」

                 男は引き締まった頬をゆるませて柔らかく微笑みながら

                 少女の痩せた肩に大きな手をそっと置いた。

                 それから力強く言った。

                 「実は奴にはな、ひどく苦手なものがある。

                 それは……

                 子供等のみずみずしい心とそれから…明るい笑い声だ」

                 「わらいごえ?」

                 「そうだ、笑い声だよ」

                 そう言って男はもう一度微笑んだ。




                 凍てつく路上をさまよってひとかけらの食べ物を探す子供や


                 見渡す限りの地雷の海に小さな足を奪われた子供や


                 酷い暑さに耐えながらゴミ山から商いの種を探す子供や


                 獣の様に売り買いされる子供や。


                 モンスター・WORに心を奪われた大人達の影で彼等は必死に

                 生き抜いている。

                 「例えどんなに過酷な世界にいようと……子供等は

                 小さな笑顔を忘れちゃいない。

                 そして

                 知ってるんだ。

                 戦争で幸せになる者など誰一人いないって事を」


                 二人は黙ったまま

                 生い茂る葉の間からのぞく青空を見上げた。

                 流れる雲が眩い白を散らす。


                 「……世界のあちこちで

                 モンスター・ウォーに貢がれる莫大な金はな。

                 実のところ

                 井戸や緑や学校や病院や船や橋や…それから沢山の家を生み出す

                 真の力を秘めてるんだ。

                 そしてその力で

                 メチャメチャに破壊し尽くされたすべての戦場が元の

                 美しい姿を取り戻して

                 人々がまともに暮らせる様になったなら…


                 もう戦う理由なんかどこにも無くなるのさ」


                 少女は子供らしい笑顔を見せて大きくうなずいた。


                 「やっと笑ってくれたな…」

                 濃い眉を上げ嬉しそうに微笑むと男は

                 幼い少女の頭を優しく撫で、その華奢な手を自分の温かい両手で

                 しっかりと包み込んだ。



                 その時


                 森の奥から吹いて来た緑色に光る風が

                 瓦礫だらけの村を静かに巡り

                 少女と男をまるでいたわる様にそうっとくるみ込んでから

                 遥かな空へと去って行った。



                 すると不思議なことに……


                 男の姿は朝霧の様に消えていた。



                 驚く少女に傾いた家の陰から語りかけたのは一人の老婆だ。


                 「あの男はな。

                 森に残された地雷を踏んでひと月前に死んだのじゃ。

                 きっとお前を哀れんで

                 大事なことを伝えに来たのじゃろう。


                 悲しまんでええ。


                 この先もずうっとお前を見守ってくれるよ」

                 老婆は穏やかに微笑んだ。





                 人々が憎しみを大河に投げ捨て

                 子供たちが笑顔を爆発させるとき

                 モンスター・ウォーはバラバラに飛び散り、人々を操るパワーを

                 すっかり失うだろう。


                 けれど。

                 残念ながらその心臓を消滅させることはできない。


                 ひとたび生み出された核爆弾という存在は遠い未来まで

                 人類を脅かす。



                 それはこの大宇宙のタブーだったのだ。



                 心を失った大人達が残したその悪魔の心臓のゆくえは

                 子供たちにゆだねるしかない。


                 そして人類の未来も又彼等に託される。


                 たとえ遅過ぎたとしても。

                 一刻も早く

                 モンスター・ウォーに操られる愚かさに気づかねばならない。






                 いちばん大切なもの。


                 子供たちの笑顔。


                 遥かな先へと翔て行く者。


                 そして未来を紡ぎ出す者。



                 彼らに悲しみの涙

                 苦しみの涙を強いてその透明な心の奥底に

                 憎しみの種を植えつけるなら



                 人類の未来は塵となって消え去るだろう。



                 そしてその時


                 「宇宙の奇跡」は静かに幕を閉じる。











                                      (完)

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              超巨大モンスター・ウォー。

              その体は銃、大砲、戦車、爆撃機、戦艦、その他ありとあらゆる武器で

              形づくられる。

              不気味に光る両の目は殺人レーザー、そして心臓(コア)は

              核爆弾だ。








              「奴のエネルギー源は2つ。なんだと思う?…つまり

              憎しみ、そして金だ」



              低い、しかし力強い声で語り始めた一人の男。

              淡い光を秘めるその片目は硝子の義眼、両足は木の義足だった。

              枝を大きく広げた古木の逞しい幹にもたれ彼は

              チラチラと一面に踊る木漏れ陽を浴びながら

              ゆっくりと座り直す。



              「リーダーの命令で俺たちは

              一気に駆け出した。そして派手に吹っ飛んだ、

              地雷を踏んだんだ…。


              ひどい痛みで目覚めたらこのざまさ」




              そこで彼は

              フッとひとつ大きな吐息をついた。

              透明な義眼は一瞬、雲の彼方の何かを見つめたようだった。





              暫くの沈黙のあと再びその口は開かれた。





              「それより…


              あいつは世界中に溢れかえる憎しみと莫大な金とを

              永遠に喰らい続ける。

              何しろ奴の胃袋と来たら底無しだからな」



              「モンスターに操られ

              リーダーはやみくもに戦いの号令を下す。そして兵士らは

              何も考えず、ただひたすら銃を撃ち続けるんだ」





              「…なぜ考えないの」

        


              悲しげに尋ねた幼い少女。

              激しい戦いに巻き込まれた村で心優しい父と母を

              失ったばかりだ。


              小さな心を襲った余りに大きな試練。突然すぎ

              まだ充分理解できずにいる。

  


              澄み切ったその瞳は真っ直ぐに男を見つめた。




              「つまり、だ。


              まともな心をもうすっかり抜き取られたあげく

              憎むことだけ教え込まれた、奴の奴隷ってわけだな。




              ……俺も以前はそうだったさ」









              モンスター・ウォーの誕生は遥か昔。

              人類の誕生と共にこの世界に生れ出た。



              ある日。


              荒野をうろつく小さなモンスターは

              灰色に垂れた雲を引きちぎり激しく吹きすさぶ

              生暖かい風に

              岩山の向こうから漂う荒々しい気配を

              ハッキリ感じ取った。



              それはうっとりするほど魅惑的で抗い難い力を持つ

              何かだ。



              モンスターの本能は妖しくざわめいた。



              急ぎ山を越えた彼の前に現れたのは…

              生まれて初めて見る原始人たちだ。


              (オレんだ!)

              (いやオレのもんだ!!)


              まだ言葉を知らない彼ら。

              唸り声をあげ

              食べ物を激しく奪い合うその手には

              石ころや棒っ切れがしっかりと握られていた。





              「つまり

              そいつらから生まれ落ちた憎しみと素朴な武器。それが奴の

              最初の獲物だったってことだ…。


              その頃はまだ取るに足りない

              ごくちっぽけなモンスターだったのさ」




              「……それがなぜでっかくなっちゃったの」




              少女が呟いた。




              湖の碧い風が

              二人の髪に遊ぶ。

              それから古木の葉をザアッと波に変えた。




              「いい質問だ。そいつはだな。

   
              初めはそんな風に

              棍棒や石ころだけのちゃちな体に過ぎなかったが…」







              “憎しみ”の甘美な味を覚えたモンスターは

              広い世界をあちらこちらとうろつき

              人間の集落を探し歩いた。



              そして狙い通り

              人の心に次から次と芽生える憎しみを喰らって

              成長し続けた。



              皮肉な事に人間がその数を増やせば増やすほど

              争いごとは引きも切らず増え続け

              ますますモンスターを太らせたのだった。







              
              「そこら中で争い合うもんだから

              憎しみもまるで星の数だったさ。


              奴に取っちゃ…そうだな、

              言ってみりゃ

              最高のレストランってとこだ。


              何しろ、だ。


              いくら喰っても無くなるどころか

              後から後から湧いて来るんだからな…。



              武器もごく単純な

              剣や弓矢、それから投石機なんかだったが

              その数はどんどん増えるばかりで奴をすっかり喜ばせた。


              そして……」








              目に見えて大きくなったモンスターはある日ついに

              地獄の支配者である悪魔に

              目を付けられた。







              猛烈な雨風が吹き荒れる嵐の夜。



              血で血を洗う激しい戦いで廃墟と化した城をモンスターは

              彷徨っていた。



              戦いのさなか次々と生まれ落ちそこら中にころがる

              生々しい“憎しみ”を

              片っ端から掻き集め貪っていたのだ。





              その時。





              世界を引き裂き轟く凄まじい雷鳴と共に

              どす黒い雲海からひと筋

              不気味に赤い稲妻が走った。





              そして……





              赤黒く燃え煌めく廃墟に浮かび上がるその

              巨大な姿は

              かのモンスターさえも恐怖するほどの

              禍々しさだった。





              (お前か、


              近頃我が地獄界で噂の奴は…。




              フム成るほど……。




              評判通りどこからどこまで憎しみの塊ってところ。


              なかなかいい弟子になりそうだな)




              その奇妙な色に輝く眼で

              目の前のモンスターを仔細に点検しながら

              悪魔はニヤリとした。





              (わ…私も大いなる支配者のあなたに憧れておりました…、

              弟子にして頂けるとは大変な光栄です!!)




              バリバリと響き渡る激しい雷鳴を浴びモンスターは

              瓦礫の間にひざまずいて

              すかさず答える。




              (フム…気に入った。




              なかなかいい心がけじゃないか。では


              愚かで強欲な人間どもを


              自由に操る力を分けてやろう。期待に違わず


              これから大いに楽しませてくれよ)






              (どうぞお任せ下さい……)













                                

                                  (後編へつづく)

★ふたつめの星・後編

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                この装置を発明した人にゃ感謝だね、なんてお婆ちゃんは言う。




                学校の授業は自宅で

                先生とセットの立体メニューで自由に勉強できるから

                昔みたいに登校拒否なんて事もない。

                もちろん本物の教室で先生から直接教わる日もある。


                歴史メニューで

                再現された人や建物の中に飛び込んで色々調べるのって

                すごく面白い。

                タイムスリップした気分。


                何しろ

                あの卑弥呼さんやツタンカーメン君が生き生きと

                自分の歴史を再現してくれるんだから

                退屈してドップリ居眠り、なんて絶対あり得ないし

                変なドラマなんかよりず〜っと面白かったりするわけで。


                でも“戦争”の授業で

                あの恐ろしい原爆や戦争を経験した人達が

                生々しい体験談を語る側で

                激しい戦場や一面の焼け野原に立ったときは

                ショックだった。

                 
                平和であることの幸せがガツンと来た。

              
                普通に暮らせることが当たり前になってるから

                そういう経験ってきっと必要なんだと思う…。




                それから

                好きな映画やドラマやライブの中にも入って行けるし、

                こちらから立体映像を送りながら

                バラエティーやトーク番組に参加することもある。

         
                ピーターパンや不思議の国のアリスと手をつないで
                
                ドッキドキ体験する

                大冒険アニメメニューは大人も子供も大好きだ。

 
                バーチャルゲームなんかも


                「小癪なチビめ、ひねりつぶしてやる。これでも喰らえ!!」


                「お前なんかに負けるもんか!!ドリャ〜!!!」


                …って感じでカイや友達と一緒に

                リアルな巨大モンスターと空中対決したり、超個性的な仲間連中と

                魔法使いに弟子入りしたり豪華お宝探しの旅したり。


                体まるごとファンタジーに飛び込むって

                凄いストレス解消になるので大人も目一杯楽しんでるし

                聞くところによると

                少年犯罪も昔より減ったらしい。



                それに何と言っても満員御礼大人気なのは

                スーパーサウルスやステゴサウルス、ティラノサウルスなんかの

                巨大恐竜たちが地響き立てて走り回る世界や

                カンブリア紀の不思議生物で溢れる原始海に飛び込む

                タイムスリップ・ツアー。

                カップルでワープすればスリルたっぷりの

                デートタイムが楽しめる。






                窓の外を眺めると、珍しくいい天気。

                ずっと遠くの黄ばんだ砂山までハッキリ見渡せる。


                (いつもは目も開けられない激しい砂嵐かもしくは

                ジットリ重い酸性雨が多いんだけど)


                今地球は

                どこもかしこもカラッカラに乾いた砂漠だらけで、すごく暑い。

                あの不思議と魅惑に満ちた熱帯雨林なんてもう

                とっくの昔に消滅してしまったので

                酸素も少し薄くなったし…。


                何しろ

                穴ボコだらけのボロボロオゾン層のせいで

                無防備じゃ外出もできない。

                UVスーツやUVカー無しでウロウロしようものならたちまち

                ヤケド状態になってしまうんだ。

           
                いつでも体ひとつで自由に出歩けたなんていう

                夢の様な時代がホント、うらやましい。




                ホログラムで会える野生動物の殆どが現実には

                いなくなってしまった今…

                実際お目にかかれるのは砂漠と紫外線に強い

                ごく限られた昆虫達とネズミ系の小さなほ乳類、それに

                棘まみれのトカゲやサソリくらいだ。


                大きな動物ほど環境の変化に弱かったらしい。


                ただ

                砂漠が大好きなサボテン達は生き生きと巨大に育っている。

                太陽を浴びたカラフルな花は

                乾燥し切った砂だらけの世界を瑞々しく

                明るく彩ってくれる。




                あとは…


                海に潜っても全く寂しい。

                あの竜宮城みたいな珊瑚やカラフルな魚ももう殆どいない。

       
                「森林が次々と開発され失われた為に

                木の根っこで維持されなくなった土砂が一気に海へと流れ込み、

                あっという間に珊瑚が死んで行ったんだ。

                それに

                温暖化で異常繁殖したオニヒトデが珊瑚を猛スピードで

                食い荒らしたのも原因らしい。

                何しろその繁殖力と来たら笑えるくらい凄いからね。

                海の悪魔なんて呼ばれたみたいだけど

                元はと言えば人間が自然界のバランスを狂わせたからなんだ…。

                奴らも元々食物連鎖のひとかけらで

                ごくフツーの存在だったのさ。

                そして

                珊瑚に集まるキュートな魚達もいなくなったってわけだ」


                …カイのトークが炸裂する。


                一番ハバを利かせてるのはクラゲ一族…。

                その種類と来たらかなりのものだ。

                何しろ天敵のウミガメや魚達がいなくなったもんだから

                もともと大量生産タイプの彼等は増えるばかり。

                海は今やすっかりクラゲ天国だ。

                ただし

                個性的すぎて殆どモンスターみたいな深海魚族は

                しっかり生き残ってるけど。




                環境の悪化は

                数え切れない命の灯を吹き消してしまったんだ。






                でも。


                “地球再生プロジェクト”が始まっている。


                残された種から

                苗木を育ててちょっとづつ森を増やして行くこと。

                冷凍保存された遺伝子で動物達を

                昔の様に蘇らせること。

                それぞれの家庭でも木を植え、動物のベビーを

                大切に育てている。


                かつての大自然を夢見ながら。




                (いつか緑色のテルペンに満ちた本物の森で

                あの魅力的な動物達に遇えるだろうか…)







                星から星へ


                渡り続ける宇宙船。

                (光の速さで)



                もう飛び発って何万年、

       
                水や森や生命を抱えた星には出遇えない。


                ふたつめの星には


                出遇えない。




  








                                      (完)

★ふたつめの星・中編

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                 もっとも

                 美しい大自然や魅力的な動物たちの殆どは

                 遠い過去のデータで再現するしかない。

                 すごく残念だけど…

                 今残っているのはごく限られたものだけなんだ。

                 多くの動物たち、それから花や樹々も

                 ほんのわずかな時間であっという間に絶滅してしまった。



                 「それはさ。

                 あのビッグバン!から91億年過ぎた宇宙で

                 地球という奇跡の星がめでたく誕生し…

                 それから8億年経った頃

                 遥か遠くからはるばる飛んで来た彗星のカケラから

                 海の中で原始生命が生まれ

                 シアノバクテリアが光合成という実に地道な努力で酸素を増やし

                 20数億年前に生命史上最大最悪の巨大隕石大衝突で

                 地球はなんと1年もの間超高熱地獄となったけど

                 奇跡的にもしぶとくも小さな生命は生き延び

                 6億年前頃のカンブリア紀には爆発的にその種を増やし
                 
                 やがて動物の祖先が大胆にも

                 その頃の奴等に取っては猛毒だった酸素だらけの地上へ進出し

                 数え切れないほどの試行錯誤を繰り返しながら

                 あの超巨大で実に素晴らしい恐竜たちの黄金時代を経て

                 多種多様な植物や動物の

                 完璧なまでに美しいフォルムが完成されるまでの
                 
                 長い長いプロセスに比べたら……

                 絶滅への道のりはもうとても

                 信じられないくらいの猛スピードだったらしいね」


                 その分野にやけに詳しい

                 ボーイフレンドのカイは目をキラキラさせながら熱心に語る。
                 
                 ハッキリ言って長いのは自分の話なんだけど。

                 こうなるとまるで点火されたロケットみたいなカイ。

                 ケーキを食べながらひたすら聞くしかない。


                 「まあ知ってるとは思うけど…

                 原因の殆どはいわゆる温暖化現象って奴だね。
                 
                 とても信じられないことに

                 世界が機械文明化されてからほんの…ほんの100年でだよ、

                 あの10億年もかけてコツコツと地球をくるんで

                 有害な紫外線から生物を優しく優しく守って来た

                 大恩人のオゾン層に恩知らずにもボコボコ穴を開けてしまうし

                 それだけじゃなく

                 二酸化炭素を好き放題、思いっきり放出し続けた結果

                 大気の温度はじわじわ上がり始めて

                 ある時期からまるでもう加速度的に上昇して行き…

                 地球規模の気候変動で自然災害が年々激しくなるし

                 極地の氷は一気に溶け始めるし

                 海水位が上がってたくさんの都市や島が沈んでゆくし

                 永久凍土の溶解で

                 遥か昔から閉じ込められていたメタンガスが解き放たれて

                 ますます温暖化が進むという悪循環を招くし

                 高山の氷河の速すぎる溶け方は洪水を引き起こし
                 
                 何万年もかけてゆっくりと大地に滲み込んでいた水が減って

                 灌漑に頼り切った平地は水不足になってしまうし

                 雨が降りにくくなって世界中大干ばつに襲われるし

                 人々は慢性的な食料不足に悩むし

                 動物や植物も環境の急激すぎる変化で

                 同じく加速度的に絶滅し始めるし…」


                 「………。

                 ねえ、そこら辺で冷めたコーヒー、飲んでもいいかも」

                 「あ…ああ、そうだったね」

                 「このコーヒーって随分昔からあるらしいよね」

                 「つまり…

                 この味は刷り込まれたんだ。

                 人間の味覚って昔も今もそう変わらないから

                 好きな味ってのはずうっと伝わってるのさ」

                 分析の言葉と一緒に

                 一気にコーヒーを流し込むと速攻、続きは始まる。


                 「まあそんなわけで。

                 次々と絶滅してゆく動物たちの惨状を見て

                 さすがに慌てた人々は突然、声高に「エコ」を叫んで

                 あらゆる知恵を絞り思いつく限りの色んな手を打ったけど

                 当然の事ながらその時はもうすでに手遅れで…

                 今と違ってその頃は何しろ国の数も多くて

                 色んな国のそれぞれの思惑があるもんだから

                 なかなか前に進まなくて

                 すっかりタイミングを逃しちゃったみたいだね。

                 まあ…

                 エゴって奴はどうしようもないところがあるから」

                 彼はそこで物優げに頬杖を突きながら唇の端で

                 目一杯クールに微笑んでみせる。


                 「それってつまり

                 遺伝子はエゴイスティック…って例の奴ね」

                 すかさず私は突っ込む。

                 「そうさ。

                 エゴは遺伝子にしっかりと組み込まれてるんだ…

                 良いとか悪いとかの次元じゃなく。

                 だから利害を忘れて一つの方向を目指すっていうのは

                 余計に難しかったんだろうね。

                 とにかく…

                 一度加速がついた絶滅への勢いはもう

                 どうにも止められなかったそうだ。

                 それは人間だっておんなじなんだけどね。

                 今エネルギー革命のおかげで温暖化は取りあえず止まってるけど

                 いつ又バランスが崩れるかわからない。

                 自然はとても繊細に出来てるから…」


                 「フーン……まるで私みたいに?」

                 「ハハッ…そうだね」

                 「何が可笑しいのよ、失礼な奴ね!!」

                

                 ホログラムワールドは

                 地球のメニューだけでなく

                 宇宙船から定期的に送られて来るデータ仕様もあるから

                 遥かな宇宙にだって飛んで行ける。

                 それに

                 好きな星や星雲を組み合わせて

                 オリジナルの宇宙が作れるし

                 星や宇宙から届く電波を素敵な音楽に変える装置もあるので

                 そんなメロディーをBGMにしながら眠りにつけば

                 もう最高の夢が見れるんだ。

                 今この瞬間にも

                 広い宇宙空間をいくつもの宇宙船が光速で

                 飛び続けている。



                 それから

                 小さな体感ワールド、つまり人や動物専用の携帯タイプもある。

                 3年前に大往生したお爺ちゃんや

                 兄弟分の今は亡き猫のルナとだっていつでも抱き合える!

                 「おお、久しぶりじゃな。元気かい」

                 「うん、お爺ちゃんも変わんないね」

                 って感じで何しろ話すことも出来るし

                 「ミャ〜オ…」

                 「ルナ!」

                 フワフワのあったかい手触りまで感じられるんだから

                 ものすごく癒される。

                 この装置を発明した人にゃ感謝だね、なんてお婆ちゃんは言う。

                          
                                       (つづく)













                                      

★ふたつめの星・前編

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                星から星へ渡ってゆく宇宙船。

                (光の速さで)

                そのカメラに流れ込むのは

                無限空間へと立ち上がる妖しくも美しい星雲や

                ゴージャスな燐光にくるまれた無数の星々。










                夜。


                銀河星楽団が奏でる交響曲の

                不思議で柔らかなメロディーに包まれて

                今夜は

                淡いピンク色の艶やかな薔薇星雲に見守られながら眠りにつこう。


                (明日はあの夜王シリウス、

                煌めく天狼と語り合うのもいいかも知れないな)


                手が届きそうな距離に

                土星の輪っかもぼうっと光って

                幾つかの

                個性豊かな顔つきの惑星たちがフワフワ浮かんでいる。

                にぎやかなお喋りが今にも聞こえて来そうだ。


                宇宙空間の真ん中、

                小さな小さなエメラルドグリーンの煌めく泡がはじける

                冷えたドリンクを片手に

                ゆったりと横たわる私の周りで

                幾つかの星が長い尾をキラキラさせながら

                流れ去ってゆく。


                (ゆうべの様に極上の

                素敵な夢を

                楽しめそうだ……)







                朝。

  
                溢れる光を受け

                クリスタルの透明な柱がゆらゆらと揺らぎ立つ

                海の底…。

                虹色の光の粒もそこら中でリズミカルに踊っている。


                色とりどりに重なり合う珊瑚の林に

                心地よく埋もれながら

                まるで人魚気分のモーニングコーヒー。


                愛らしいカエルウオがピョコリと

                珊瑚の棲家から小さな体を思い切り乗り出し

                まん丸い目で

                いつもの様に挨拶してくれる。


                すると

                興味津々の顔つきで悠然と上から覗き込んだのは

                かなり太めの

                巨大なナポレオンフィッシュ。

                なんだか忙しそうにキョロキョロするその目玉は

                盛大な野次馬精神で輝いている。


                イソギンチャクの悩ましげなフリフリスローダンスを無視して

                手足の生えた岩みたいなイザリウオも

                目を点にしながら

                白い砂の上をじわりじわりとにじり寄って来る。

   
                (なんてファンキーなキミたち、

                見てるだけで楽しくなるよ)







                昼。


                今日もクラクラする様な酷い暑さだ。


                そう、こんな時は…。

                ヒマラヤの天高く聳える峰にひとっ飛び、

                雪豹親子の傍らで仲間達と楽しいランチタイム。


                白い雪の残る岩場で

                生き生きと遊ぶブチ模様の彼等はまるで特大サイズの

                フワフワ猫,といったところだ。

                ついギュッと抱き締めたくなってしまう。

                ベビーと来たらもう連れて帰りたいくらいキュートだし。


                そして

                蒼明度無限大の天空を溶かした大氷河。

                その一滴から生まれた

                神秘的な芥子。


                吹き渡る透明な風に揺れる薄い

                花弁に滲むブルーには

                青い惑星が透けて見えるみたいだ……。


                こんなにも美しい花があったとはとても

                信じられない。


                なんて素晴らしい時代だったんだろう!!



                (そうそう、週末は

                恐竜の群れに飛び込むジュラシック・ツアーが待っている。

                楽しみだなあ、

                大好きなトリケラトプスや

                恐怖の帝王ティラノサウルスに遇えるなんて!!)







                「まあね、とにかくビックリしたそうだよ」


                お婆ちゃんはよく話してくれる。

                曾お婆ちゃんや曾お爺ちゃんの事だ。


                「まだ十代の頃

                生まれて初めてこれを体験した時はさ、

                もう腰が抜ける程…いや実際腰が抜けちゃってね。

                しばらくの間どうにも立てなかったらしいよ。


                まあわかる気もするけど…

                それまでは何しろ

                単なるホログラムしかなかったそうだからね」

 

                そういってお婆ちゃんは

                楽しそうに笑った。







                世界中から次々と送られて来る

                数え切れない程の映像が

                各家庭や

                街のあちこちに備え付けられた広い体感ルームの中で

                実物と全く同じ超立体映像、

                ホログラムワールドとなって現れる。


                曾お婆ちゃんの時代に

                初代のそれは作られたのだ。

  
                で、後に香りと手触り、コミュニケーションが取れる

                会話機能なんかが少しずつプラスされた。


                そして今では

                多種多様なメニューから選び出せばいつでも

                好きな世界にジャンプできる。

     
                ほんの一瞬で深い海の底や

                ジャングルや雪山の頂上や……広い地球のどこにでも。







                もっとも…













                                    (つづく)

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