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■ 物語 上野動物園の歴史 / 小宮輝之 著 先日、愛知牧場で動物達の姿に癒された私は、そうした動物達を飼育している人達の事を改めて知りたいと思い、図書館で動物園や水族園の本を借りてきました。(最初は牧場関連の本も探したのですが、読んでみたいと思うような面白そうな本を見つけれなかったのです。それに、私は動物園や水族園も大好きですしね。) ■ 感想 著者の小宮氏は、東京の上野動物園の現役園長。本書は、タイトルが示すように、日本を代表する上野動物園の歴史を紹介する内容となっています。 その内容を読んで改めて関心したのですが、上野動物園って、開園から130年も経過しているんですね(開園は1882年3月)。それだけの期間において飼育されてきた動物に様々な遍歴があるだけでなく、動物園を管轄する省庁や、施設の規模も時代の移り変わりによって様々に遷り変わってきたのだと知りました。 でも、本書を読んでいて最も印象に残ったのは、「動物園で死んでいった動物の数」です。動物園の歴史として「何年何月にどこぞこの国から○○○という珍しい動物を何頭購入。」とか、何年何月に来場者100万人を突破、などいう記録に目が奪われがちですが、その数と比例するように動物達が亡くなっているわけですね。そうした事実も淡々と記述されているのですが、その数が半端なかったのです。 特に動物園の設立して間もない頃は珍しい動物を連れてきても、飼育に関する知識や技術の不足・不十分な飼育環境(狭い獣舎・温度管理の至らなさ・他)などの要因によって、病気になってしまったりして、寿命を真っ当する前にその命を終えてしまう事が少なくなかったわけですね。 それどころか、戦時中の1943年には脱走などの未然防止や、餌代などの問題などから折角育てられるようになってきた動物達まで東京都の命令で「猛獣処分」として殺してしまわなければならない状況もあったと聞くと、いたたまれない気持ちになりました。 ちなみに戦時中の餌集めには、動物園で飼われていた蒙古馬が、都内の緑地から草や木の葉、海軍から残飯を得るために運搬役を担っていたそうです。無論、戦争が終わっても食糧危機は続いており、カボチャの種一合を入場券一枚と引き換えるというアイデアを実行した事もあったのだそうです。動物が減ってしまった戦後の動物園に最初に猛獣を寄贈したのは、対戦国であったアメリカであるというのも興味深いものがありました。 また、以前何処かで聞いた事があった話ではありますが、動物園で飼育する上で「ゾウ」が最も危険な動物であるというのも印象的でした。それこそ、観客が投げたアンパンを拾おうとしたゾウをインド人の調教師が叱ったところ、かえってゾウが怒ってしまい、肋骨を折る怪我を負わされてしまったのだとか。それだけでなく、日本人の調教師が反抗的なゾウに対してヤリで突付いて制しようとしたところ、牙で突かれて出血死してしまった事もあるそうです・・・。 実際、世界中の動物園においてもゾウの飼育は難しいとされているようですね。(特にオスは気性が荒く超がつくほど難しいそうです。)一説によるとゾウ飼育員の死亡率は飛行機のテストパイロットよりも高く、アメリカだと生命保険に加入できないとの話もあるのだとか。(日本でも加入できないのかは私ではわかりません。)それこそ、昨日の朝、某動物園で飼育員の方がゾウに殺されてしまったというニュースが流れていましたね・・・。 そもそもそういう事故が起きてしまうのも、野生で生きてきた動物達を無理に異国の閉じた世界に連れて来ている事に要因が無いとは言い切れません。それこそ動物園というのは、人間のエゴの象徴であるとも言えるわけで。現代において、絶滅が危惧されるような動物達の研究・保護・飼育・繁殖・環境教育などといった名目があろうとも、それらは後付の理由のように感じてしまう部分もあるわけです。また、保護すべき動物が増えたという事は、それだけ人間による自然破壊が進んでしまっている証拠とも言えるわけです。 それに、大切な命を宿しているのは、何も動物園の中にいるような動物達ばかりではありません。身の回りに生きている全ての生物が、尊い命を宿しているわけですから。そのような目で見ると、動物園の存在は何処まで許されるのだろう・・・という気持ちも抱いてしまう部分があります。いや、動物園に限った話ではなく、我々人間はどこまで動物や自然に干渉して良いものなのだろうか?と言うべきでしょうか。 無論、こうした矛盾や悩みは、我々よりも飼育や運営に携わる人達の方が痛い程感じ、苦しみながらも、真摯に動物達に向き合っているのではないかと思います・・・。それこそ、れらの保護・飼育・繁殖などの職務に従事している方々は、大変な努力をされていらっしゃると思いますしね。 動物園と聞くと、北海道にある某動物園のように、ついつい新しい行動展示の手法や、来場者数の記録更新などといった話題に目が行きがちですが、その裏側にある苦悩を通じて、我々人間がどのように動物や自然と向き合っていくべきなのか考えてゆく必要があるのかもしれませんね。 |

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