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■ 蜘蛛の糸 ■ 会期:2016.10.15-12.25 ■ 豊田市美術館公式HP 昨年の12月において、豊田市美術館で開催されていた特別展へ訪れました。 「蜘蛛の糸」と名付けられたこの展覧会では、時に妖しく時に不気味な存在として扱われてきた蜘蛛と、その蜘蛛によって作り出された不思議な力を持った糸などをテーマやモチーフとした描いた絵画や造形作品が展示されていました。その中で印象に残った作品や、写真撮影可能であった作品の一部を紹介してみたいと思います。 ※ 今回の展覧会は、一部作品のみ写真撮影が許可されていました。 ■ 夢のあと / 塩田千春 / 2016年 私の好きな現代アートの作家、塩田千春のインスタレーションが展示されていました。豊田市美術館で最も大きな第一展示室(床面積:288.10m2 天井高:9.6m)に張り巡らされた無数の黒い糸と、その糸によって宙に浮かぶように吊るされた10着の白いドレスによって構成された作品です。ドレスを着ていた人達(または、着る事となる人達)を取り囲む、様々なしがらみ・宿命・圧力・因果のようなものを連想してしまいますね。 正直なところ、素材やモチーフは彼女の作品に今まで何度も使われてきたものであり、特に目立った目新しさはなかったかもしれません。でも、それだけに(良い意味で)いかにも塩田千春らしい作品だったと思います。というか、こうした構成要素の作品を見ただけで「塩田千春の作品だ」と直感させてしまうのは、ある意味凄い事ですよね。草間彌生の水玉のように、作風が個人に定着しているのを感じます。 また、この作品は、ドレスを囲むようなかたちで部屋の隅に空間が設けられており、その中を歩きながら作品を見学する事が可能になっていました。それは、糸で囲まれた通路を歩くかたちになるため、ドレスと同様に異空間の中に入り込んだかのような感覚も味わう事が出来ました。 ■ 虫魚画巻 / 小茂田青樹 / 1931年 非常に緻密で繊細、かつ色彩感覚に優れていた夭折の画家である小茂田青樹。一巻の長い巻物で様々な虫や魚を描いた虫魚画巻は小茂田氏の代表作の一つです。 その巻物は、一定の区間ごとに描かれているモチーフが異なり、その対象に合わせて色彩・技法もガラリと変化しています。非常に色鮮やかで幻想的なものもあれば、モノクロで非常に地味なものもあり、その表現手法の多彩さに関心するだけでなく、それぞれの手法が非常に高度で巧みなものである事から、そのセンスと技術の凄さに感心せずにいられませんでした。 ちなみにこの作品の一部は、東京の国立近代美術館で拝見した事があります。今回、東京で拝見しきれていなかった部分を、運よく拝見する事が出来たのが嬉しかったです。 ※ 画像はありません。 ■ 雷神-09 / 戸谷成雄 / 2009年 得体の知れないオブジェです。作品名は雷神と名付けられていますが、どの部分に雷を感じてよいのかは、私では分かりません。展覧会のテーマである「蜘蛛の糸」との関連性もよく判りません。でも、非常に大きな作品であったため、インパクトはありました。 正直なところ、植樹を行う前の樹木(木の幹と根っこ)を連想してしまうといいますか。その根っこのようなモジャモジャしてる部分が糸の塊で、そこから細長い糸が伸びているかのようなイメージを抱く事が出来る・・・という感じでしょうか? ■ 空相-布と石 / 関根伸夫 / 1973年 これは、別館である「高橋節郎館」の方で展示されていた作品の一部をクローズアップで撮影したものです。 キャンバスに貼られた布をロープで括った作品なのですが、見ようによっては、シワの部分が、蜘蛛の巣?のようなイメージを持つことが出来るかもしれませんね・・・。 ■ 悲劇の誕生 / 小泉明郎 / 2013年 これは、BMWテイト・ライブ・パフォーマンス・ルーム(世界中の人に同時公開されるオンラインライブパフォーマンス。BMWがスポンサー)の様子を録画したものを、同館の展示室においてスクリーン上映したものだそうです。 とある男性がニーチェの「悲劇の誕生」という本を音読しようとするも、何故かその背後の暗闇から伸び出てくる無数の手足(その手足の主たちの顔は全く見えない)によって、阻止されてしまう様子が延々と映し出される、理不尽極まりない映像作品でした。 その謎の手足の動きは、最初はちょっとだけ本を引っ張ったりする程度の冗談めいたものでした。コントなどに出てくるユーモラスさを感じるくらいのものだったわけです。しかしながら、妨害行為は次第にエスカレートしてゆきます。テーブルを大きな音で叩いたり、音読する男のメガネを取り上げたり、その男の頬を殴ったり、力づくで本を取り上げてページを引き裂いたりと、かなり暴力的なものとなってゆくのです。 次第に「なぜ、この謎の手足はその行為を妨害するのか」「何故この男はここまでの妨害を受けながらも本を読もうとするのか」という疑問がわいてきます。それほどまでに、ニーチェの書物を読む事は尊い事なのか。人が人として生きる上で、本を読むという事はかけがえない事だと伝えたいのだろうか?と思ったりするわけです。 しかし、明確な回答が得られないどころか、その妨害行為はかなりハードなものへとエスカレートしてゆくので、疑問を感じる状態を通り過ぎて、「不快感」や「恐怖感」のみが募ってゆくのです。しかも最後には、本を読んでいた男性は、謎の手足によって背後の暗闇に引きずり込まれてしまうかたちで作品の上映は終了してしまいました。まるで不可解なホラーでも見ているかのようです。にも拘わらず、強く印象に残ってしまう作品でした。 ※ 画像はありません。 ■ 全体に対する感想 「蜘蛛」というと、グロテスクな外観や、変わった習性があったりするため、毛嫌いする人も多い生き物。そうした一風変わった生物を美術の世界の括りで取り扱った展覧会だったわけですが、私は楽しく拝見する事ができました。 (ちなみに私個人は、蜘蛛の事はそんなに嫌いではありません。彼らは木々の生い茂る森だけでなく、水の中を含む色々な場所に生息し、糸を使って空を飛んだりできるので、凄いと感じてるくらいです。) それこそ、上記に紹介しきれなかった作品においても、面白かったものや興味深かったものは幾つもありました。江戸時代の工芸作品、芥川龍之介によるの児童向け短編小説「蜘蛛の糸」と、その影響を受けた映像作品やからくり時計、現代アート作品に至るまで、非常に幅広いジャンルの作品が展示されていました。ともすれば、「蜘蛛の糸」とは関連性を見いだせない作品もなかったわけではありませんが、アートの表現の幅の広さを感じる事は出来たのではないかと思います。 それにしても、この美術館で塩田千春のインスタレーション作品を見れたのは嬉しかったですね。私は2008年に国立国際美術館でこの方の個展を見て以来、塩田作品のファンだったからです。それこそ、同館のアンケートに対し、この方の個展を開催してほしいと何度も書いてきたくらいです。それゆえに、これだけ大きな作品を見る事が出来たのは嬉しかったです。もしも可能ならば、今度は全ての展示室を使用した個展を開いて欲しいですね。 |
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2017年01月21日
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