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芸術起業論 村上隆


■ 芸術起業論 村上隆 




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今や、(良くも悪くも)日本を代表する現代アーティストとなった村上隆氏。正直言って、私はこの方の作品には、全くと言って良いほど惹かれません・・・。

私個人のアートの趣味に合わないというのは勿論、彼の作品には、コピー作品と言われても可笑しくないような図柄が多のに、自身の著作権管理に非常に厳しいという事にも、疑問を感じたりもしています。また、一見するとポルノまがいのヲタクチックな等身大フィギュアが、オークション会場で億単位という値段で競り落とされたれた事で有名ですが、何故にあれだけ高額で落札されたのだろう?と今でも不思議に感じてしまう程です。 今年の9月に、フランスのベルサイユ宮殿で彼の個展が開催された際、各方面から抗議を受けたというのも理解出来る話です。(もっとも、その抗議は主催者側に向けられるべきものだとは思いますが。) 実際、彼は日本のアートシーンのみならず、彼自身がルーツであると語るヲタク業界からも強い批判を浴びる事は少なくありません。

それだけに、何故にこれだけ海外で高い評価を得ているのだろう?海外で受ける現代アートの日本人作家というのは、一体どういう人物なのだろう?何故、他のアーティストではなく、彼がウケるようになったのだろう?という関心も持つようになり、本書に目を通してみる事にしました。(といっても、実はGW頃に読んだ本だったりしていますが・・・。)




● 世界のアート市場とは


世界のアート市場を知るには、世界のアート市場の顧客というものはどういう人達なのか認識する事から始めなければならない。世界の富豪(欧米・中東・など)は日本のお金持ちとは、あまりにもスケールが違う。オークション会場で、何十億というお金が飛び交った後に作品を手にするコレクターの個人ギャラリーというものは、今回入手した作品のみが珍重されて展示されているようなレべルの世界ではない。下手な美術館など足元にも及ばない程のコレクションが平然と並べられ、そこに集う賓客もまた、それに見合う階層の人達であるという。

そうした階層の人達が、世界的なギャラリーや、オークションでの「お客様」だという。良くも悪くも、それが現実であり、アートというのは、今も昔も富豪によって支えられている世界に代わりは無いという。



● 世界の中の日本のアート

彼らにとって日本とは、未だに東アジア地域の一部に属する小さな国の一つ。その国におけるアートに対する関心は、オリエンタルな辺境の地に対して抱く物珍しさの枠を超える事は滅多に無いという。そんな国から、西洋の長い歴史をかけて発展してきた現代アートの最先の世界で戦えるような作品が生まれてくるとは思われていない。(日本人が、発展途上国から現代アートが生まれるとは想像出来ない・・・と感じているのと同じ。)

ちなみに浮世絵が世界的に高い評価を得ているのは、彼らにとって強いオリエンタル情緒を感じさせるだけでなく、印象派に強い影響を与えた作品群であるから。(彼らのアートの文脈に加わりやすいから)である。
近代から現代にかけて日本画壇を代表とする作品は、全くと言っていいほど、海外のギャラリーやオークションで取上げられる事はない。



● アートの世界といえど、食っていかなければならない

そんなアートの世界で、村上氏はどうにかして生きる術を探してきたという。彼は高校卒業後、元々はアニメーターを志していたのだという。しかし、その道での才能やセンスが無いことを感じ、もう一つの興味を抱いていた日本画の世界へ進む事を選んだという。(日本画の世界が芸大入試の際、最も人気が無く、入りやすい世界だと思った。と、語っていた事もある) そんな彼は、1993年に同大学日本画科で初めての博士号取得者となった程の人物だが、1988年における大学院修士課程の修了制作作品が次席であったために、日本画家への道を断念し、現代アートへの道へ進むようになったという。 彼は様々なオブジェやインスタレーション表現を初期の頃から行い、国内において評価を得るようになた事で、海外での美術研修の機会を得る事になった。

しかし、海外では全く受けない。日本では新しい表現としてそこそこ受けていたはずものが、海外のギャラリーでは全く振り向いてもらえない。その際、自分の表現が日本画壇の古い権力や表現に対する、単なる当てこすりになってしまっていたのではないかと悟ったという。

とはいえ、アートの世界に踏み込んだ以上、その世界で食っていくしかない。自分達が作りたいものを作って、彼らに受け入れられないというのであれば、視点を変えてゆかなければならない。つまり、彼らに認められ受け入れてもらえるには、彼らが欲している作品を作り出さなければならない。彼らは自分の価値観だけでなく、欧米におけるアートの文脈において、(自身のコレクションの中で)その作品がどのような位置にあるのか、どのような主張を持ち、どのような価値があるのか?という事を我々日本人が想像する以上に重視するという。

であれば、マーケティング(市場調査)を行って彼らのニーズやウオンツを把握し、それに合せて自らの商品(作品)をブランディングし、マーケットを開拓して、彼らに振り向いてもらえれるようにしなければならない。彼はそのブランディングを行う際、自らの出生国である日本の文化に目を向けた。そして、彼にとって幼い頃から親しみ、憧れを描いていたアニメや漫画などの2次元表現が、自らのルーツであると改めて認識したという。



● スーパーフラット

日本のアニメは、アメリカのディズニーのコピーではない。手塚治虫などの漫画の天才の存在あって生まれたものである。その手塚治虫も、古き日本絵画の影響を多大に受けて育ってきた。現代のアキバ系と言われる2次元ヲタクもその延長線上に存在する。一見すると別々の文化として育ってきたようなものだが、実は繋がっている部分は多分にある。自分のような存在は、時代が生んだ落とし子のようなものであると捉えるようになった。

また、日本の鬱屈としたヲタクカルチャーは、敗戦によって去勢され、温室でぬくぬくと肥えつづけた環境ゆえに派生した奇形文化と定義。 日本独自で発達してきた2次元表現から発達してきた自らの表現を 「スーパーフラット」 と命名し、自分の表現は、それらの文化に興味を持ちながらも、理解しきれないでいる外国人に対する橋渡しのような存在になれるのではないかと考えるようになり、自身や同世代の日本のアーティストのみならず、日本のサブカルチャーなどを紹介する展覧会をアメリカで展開した。 実際にその考えは、海外のキュレーターや、美術愛好家の関心を見事に掴み、現在の地位を獲得するようになっていった。

ちなみに彼は、特定のアニメーター達の独特な表現方法に対して、その偉業を称えるだけでなく、自らはその延長線上にいるものとして捉え、様々な形で引用しながら作品作りを行っている。さらに、高い作品クオリティを保ちつつ、海外から多数寄せられるオーダーをこなす目的から、工房カイカイキキを構えるようになり、多人数で制作をこなすようになっている。



● 芸術起業論

自らの表現欲求にのみ従って作品を制作しているようでは、100年に1度現れるかどうかといった天才でない限り、世界的に受け入れられる芸術家として成功する可能性は、限りなく低い。 それとは逆に、顧客を知り、マーケティング、ブランディングをし、彼らに判る言葉で巧みにプレゼンテーションを行えば、誰でも自分位のレベルで世界に受け入れられるくらいのアーティストにはなれる可能性はある。(彼はプレゼンを成功させるために、通訳や、カタログの英訳に非常に気を使い、コストも掛けている。) それこそ、アートの世界も、一般のビジネスと同様の部分が多分にある。 その事に気付かずに、自分の作りたいものだけ作っていて、成功しない事を羨むのは筋違い。寧ろそれでは、マスターベーションと代わりはない。 それは何も、特別な事ではない。現に、ウオーホールにせよ、ピカソにせよ、やって来た事である。としている。

実際、彼はその理念を用いて、今まで美大などにおける正規の教育を受けて来なかった人達を、世界に通用するアーティストに育てようとするプロジェクトや、芸大生の作品発表の機会を作るイベントなども行っている。 また、オークションで高額落札されようとも、アーティストに還元される事がない現在のアート市場のあり方にも疑問を抱いており、新しい取引手法に関する模索も行っているという。




■ 感想

彼がいかにして今の表現に至るようになったのか良く判りました。 それと同時に、彼の主張というか考え方に対して、共感とは言いませんが、その行動原理となった考え方に理解出来る部分はあるなあと感じるようにはなりました。実際、アーティストと言えど、食っていけなければ、生活は出来ませんし、可能であるならば、世間に受けて多少なりとも良い生活をしたいと願うのは人の子として判る話です。 また、彼自身も、クライアント、キュレーターや、批評家などの嗜好性やニーズなどのマーケティングを行うといっても、言いなりになるというのではなく、そこに自らの表現欲求をぶつけてもいるので、魂を売っているというわけではないと思います。

とはいえ、この本を読んだからといって、彼の作品に興味を抱く事になったかというと、全くならなかったといいますか・・・。つまるところ、彼のアートは、頭で考えて造られた「作品」という感じがしてしまうといいますか・・・。でも、その割に何かヒネリが利いているようなタイプでもないわけで・・・。 なんと言うか、別に衝動や感性によってのみ生み出されたものでなければアートと呼べないと言う気などないのですが、どうにもこうにも私の心が動かされる事は無いようでして・・・。 また、彼のロジックに反発を覚え、詐欺師とすら呼ぶ人達がいても可笑しくもないな・・・と、改めて感じた部分も無かったわけではありませんでした。

そんな彼が、ユーストリームとニコニコ動画で、自身の芸術論を展開する番組を配信しているのを何本か拝見した時に興味深い事を言っていました。彼は、フィギュアスケートの世界は、アートの世界に良く似ていると言っていたのです。(個人的な要約を書かせていただきます。)

「オリンピックで浅田真央がキム・ヨナに破れた際、日本の人は、キム・ヨナはずるいと言った。オリンピックの新採点基準は彼女に有利だったと。しかし、それは違うと思う。キム・ヨナはオリンピックの新採点基準に最大限合うようなプログラムを作ってきた。真央の滑りもプログラムも素晴らしかったと思うが、採点基準とのマッチングは、ベストとは言い切れなかった。海外におけるアートの価値基準というものも同様である。欧米は、こちらの基準に合せてくれる事は決して無い。例え日本で評価を得ていても、海外で受けないという事はザラである。その世界で評価を得たいと思うのであれば、その世界の価値基準や、採点基準といったものを認識しなければならない。そしてそれに合わせる努力をしなければならない。」

成る程、この意見は凄く良く判る話ですよね。それと同時に、この人はアーティストというより、プロデューサーというか、日本と海外を繋ぐキュレーターとして活躍した方が、日本でも受け入れられ易い方なのではないか。そんな気がしてしまいました。








■ 進化するアートマネジメント




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■ 林容子



何度も美術館や展覧会に訪れたりしていると、そのうち、この美術館って、どのような運営になっているんだろうって気になった事ってありませんか?

例えば、収支のバランスとか、市民からの要望とか、どうなっているんだろう?最近は箱モノ行政って、厳しい目に曝されているし、地方に限らず弱小美術館はどんどん閉鎖されたり、展覧会の規模が縮小してしまっているけど大丈夫なのだろうか?それに比べて、関東方面では、大型の美術館の建設ラッシュになっていたり、世界の美術展来場者数、日本開催が上位独占なんて事がニュースになっていたりして、この地方格差は何なのだろうって感じたりしませんか?

私は美術館などの施設に行くのが好きなだけでなく、こうした文化面での地方格差に疑問というか、不満を感じるクチなので、美術館のマネジメントに関心を持っていました。そんな時、この本の存在を知り、早速、図書館から借りてみました。読んでみると美大・専門学校などで教科書として十分通用する程真面目で、密度の高い内容でありながら、決して堅苦しいものではありませんでした。アート業界に少しでも関心がある人、特に業界で食べてゆきたいと考える人には必読!と評されるのも十分納得の良書でした。ホント、オススメです。(懐事情が許す状況になれば、この本は改めて購入し、再度読み直したいと感じています。)

そんな中で、面白そうな話題をちょっとピックアップしてみたいかと。



● 展覧会の裏事情

展覧会を開催するには、何年も前から計画を立てる必要がある。海外の有名作品、しかもマスターピースと言われる名作の類を借りるには、相手側の展示スケジュールの調整もさる事ながら、借り手となる美術館の知名度・信頼度・安全性といった部分の評価が十分でないと交渉の場にも立ってもらえない。無論、膨大な借用料も払う必要がある。しかし、公共の美術館は、年度予算(一年分で使い切る予算)としてしか支給されず、ストックしておく事が不可能なため、膨大な借用料など払えない。

そこで、新聞社・TV局などが、スポンサー、エージェント、プロモーターを兼務した存在として登場するようになる。(海外の美術館にとっても、国を代表とする新聞社なら、たった1つの美術館に比べれば、財源的にも、知名度的にも信頼を置きやすい。) しかし彼らとしても、ただ単に出資するほど甘くはない。文化紙面や番組内容のの充実を狙うのは勿論、入場料・図録・ノベルティグッズ・関連イベント企画などの売上の殆どは、彼らの手中に納まる。また、新聞社やTV局としても、集客効果の高いエリア(すなわち関東などのエリア)でなければ、出資はしない。また、費用の回収が見込めるような、話題性の高い企画でなければ、出資しない。(逆に言えば、人が集まると判っているので、毎年のように何かしらの印象派展は開催される)

よって、美術館側は、ハコとしての場の提供や、学芸員としての活動を行うに留まり、収入面でのメリットは、殆ど発生しない。寧ろ、新聞社や、TV局からすれば、人さえ効率よく集めれる事が出来れば、美術館という場所に拘らなくても良いと考えるケースも増えてきている。

行政側からすれば、一般企業によって文化的活動が行う事が可能ならば、それで問題はないとする節もある。
実際、国立博物館も独立行政法人となった。(これによって、年度予算のシガラミから開放され、余剰金のプールのし易さが生まれたメリットも無いわけではない・・・という事らしい・・・)とはいえ、地方施設からすれば、資金も人材も潤沢に見える、その国立博物館といえど、上記に記したようなスポンサー企業の存在なくしては、展覧会を開催する事もままならないのが現状である。結果として、、地方の弱小美術館は、どんどん見劣りし、人も費用も集まらなくなり、打つ手なく閉鎖の道を辿っている状況にある。



● 現代アートの美術館が最近増える理由

マスター・ピースと呼ばれる世界的名画は、知名度も高く、美術館のステータスを高めるだけでなく、高い集客効果も望める。しかし、借用する事すらままならないどころか、入手しようとするならば膨大な費用が必要となる。
それどころか、そうした定評ある作品は、既に世界的な美術館に収蔵されているか、名高い富豪のコレクターの手にしか存在せず、市場に出回る事すらない。では、これから出来る新しい美術館としては、どのような作品を収蔵し、展示を行う手があるだろうか。

となると、残る手は現代アートしかない。世間の評価が完全には定まっていなくとも、数十年後には、現代におけるひとつの時代を象徴する作品としての地位を獲得しているかもしれない。また、現代におけるアーティスト活動を行う者達を支援する事にもなる。こうした考えは、何も日本国内のみならず、世界的に同様の傾向がある。

(マスターピースと呼ばれる名品は滅多に市場に出回らない=モノが無い=現代アートの作品が、世に出て大して間もない内にオークション会場で思わぬ高値で取引される事がある理由でもある)



この他にも、様々な事が書かれていました。例えば、先日読んだ「その絵、いくら?」とかに出てくるような、ギャラリーと美術館との関係(プライマリー、セカンダリー・マーケットなど)などの話や、ボランティアやNPOなどの話題も出てきます。あと、日本と海外の美術館事情の違い(海外は、高所得者による名誉獲得と、税金対策の一環から、高額アート作品の寄贈が多い)とか、企業メセナの話とかも掲載されています。とはいえ、美術館の施設内そのもので働く、所謂キュレーターや、学芸員に関する話題はそんなに登場しないんですよね。寧ろ、アートを取り巻く業界全体の構造を判りやすく伝える事に気を配られた構成となっていました。(ちなみに私は、ボランティアに頼りすぎる最近の文化施設の運営のあり方に、色々な疑問を持っています。いずれそうした問題も記事にしてみたいと思っている程です・・・。)

無論、これらの事柄は本書で指摘されるまでもなく、現場の人々はヒシヒシと感じている事であろうと思います。というか、様々な問題点を認識していながらも、その解決策がなかなか見出せないという事は現実の世界で多いといいますか・・・。実際、上記に記した2つの項目の内容は、個人レベルではどうする事も出来ないようなものですよね。でも、その問題意識を全体として共有しているのと、共有していないとでは、今後の問題を考えるにあたって、随分と違ってくるように思いました。

また、私のような1人の美術ファンとしても、業界を見る目が随分と変わってくるものがあるように思いました。ご関心をもたれた方は、是非ご一読なさってみてください。


http://x5.nabebugyou.com/bin/ll?065414112
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■ 本当の話



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■ ソフィ・カル 著



4月に訪れた豊田市美術館で、私の心を鷲づかみにした作品 「盲目の人々」 の産みの親であるソフィ・カル。早速私は、彼女の作品が掲載された図録や、他の作品を紹介したような書籍がないかミュージアムショップに尋ねてみました。

すると、「数年前に開催したソフィ・カルの小個展のパンフレットのようなものがあったはずだが、店の在庫は既に完売。美術館側にストックがあれば、再度入手出来るが、書籍担当者が人事異動で変わり、直ぐには確認できない。」と言われました。その代わりと言って、見せてくれた洋書もあったのですが、肝心の「盲目の人」は非掲載。しかもテキストが多い分厚い本で、お値段は確か4,000円以上・・・これではなかなか手をだせません・・・。

という事で、カルの本を諦めそうになったのですが、試しに市立図書館のWebサイトで検索したら、カルが初期に出したという別の本の日本語版があるじゃないですか。という事で、早速この本「本当の話」を借りてみました。(長い説明でスミマセン)

拝見してみるとその本は、カルが、道端で出合った、全く見ず知らずの数人の男性を、自らの素性を明かさないどころか、相手の素性も判らないまま、毎日追いかけ、写真を撮るというもの。実験的な要素を狙ったのではなく、純粋に、出会った人に興味を持った事に従った・・・といった感じの事が記されてました。(また、最終的には相手に素性が伝わります。)

本人としては、軽い興味本位の行動であったものが、不審に思われぬよう、隠れて行動する事にスリルを感じたり、追いかける相手がなかなか姿を現せなかったり、パートナーと歩いている姿を見ると、妙なジェラシーすら沸いてきて、奇妙な体験であったと吐露しています。しかし・・・下手をすればストーカーまがいの行為ですよねえ・・・(^^; さらに、カルが、幼き日々の事や、別れた旦那との肉体と精神的な繋がりの事などのプライベートを明かしたエッセイのようなものが記されていました。(こちらの内容も、少々エキセントリックといいますか、自分を曝け出しすぎといいますか・・・)

確かに、そこには、嘘偽りはなく、本人いわく計算でもない「本当の話」が展開されていたのかもしれませんが、「盲目の人々」と比べて、随分と違った印象を持ちました。個人的には、実験的というか、前衛的でありながら、もっと社会性批判性や、ジャーナリズム精神があるような感じの方なのかと期待していたのですが・・・。やはり、一つの作品だけで、作家性を判断するというのは、難しいものですね。無論、他の作品や、他の本では、さらに違う展開を見せている可能性もあるわけですしね・・・。

そういえば、作品によって方向性が全然違うように見える人って、現代アートには多いような気がします。特に若い世代に。最近の私は、現代アートを取り扱うギャラリーなどにも覗きに行ったりするようになったのですが、そこで出会う作品や、アーティストを見ていると、そのように感じる事が多いんですよね・・・・。

オりジナルの表現を画策する上で、色々な事を試したいという事なのかもしれませんし、それだけ感性や感受性が高いという事かもしれませんが、それだけに、一つ一つの作品というか、表現が浅はかというか、気まぐれ的に作っているような感じて・・・それが悪いとは言いませんが、昔のアーティストとはそのスタンスが随分と変わってきているような気がします・・・。(カルがそうだと断定しているわけではないですよ)

さて・・・冒頭で話題に出した小個展のパンフレットは、幸運にも入手する事が出来ました。しかも1冊300円!(その分、モノクロで数ページしかないものなのですが、一時は手に入らない可能性が高かった物なので、嬉しいですね。ショップの方、美術館の方、お手数をおかけいたしました。でも、中身を見てみると、私が気に入った作品は、掲載から漏れていました・・・折角なのに、残念です・・・。




現代アートの舞台裏


 現代アートの舞台裏




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-5カ国6都市を巡る7日間- 
サラ・ソーントン著



この本は、社会学者であり、フリーランスのライターでもある著者が、世界5カ国6都市へ直接赴き、コレクター、美術学校生、ディーラー・ギャラリスト、美術館関係者、アート賞の審査員、マスコミ、アート誌編集者、批評家、アーティスト、キュレーター、展示会関係者、等に直接インタビューを行う事で、現代アートの最前線で何が繰り広げられているのか伝えようとするものでした。


1 ・ニューヨーク「クリスティーズ」のオークション
2 ・ロサンゼルス「カリフォルニア芸術大学」で行われる教師と学生同士によるクリット(批評会)授業
3 ・世界的なアート・フェア(新作の展示・販売会の)「アート・バーゼル」の現場の様子
4 ・ロンドン「ターナー賞」の選考と受賞までの経緯、世界的アート雑誌「アートフォーラム」の編集者
5 ・日本の現代アーティスト「村上隆」のファクトリー(工房)訪問
6 ・アートの祭典「ヴェネツィア・ヴィエンナーレ」


現代アートに関心がある方であれば、これら各章の見出しだを見ただけで興味をそそられますよね。実際、その内容はかなり刺激的。それこそ、アートフェア、ターナー賞、ヴェネツィア・ヴィエンナーレなどで繰り広げられる世界(特に、メディアで大々的に取上げられ、高値で取引されるような類のアート)は、エゴ、権力、お金、名声・・・そんなものが、やはり支配している世界なんだな・・・と思わずにはいられないという感じでした。

それは、まるで映画のヴェネツィア国際映画祭や、アカデミー賞や、プレタ・ポルテの派手なファッションショーのように演出されているだけでなく、複雑な利害関係が交錯する世界でした。(まあ、アートは基本は1点モノなので、プレタ・ポルテではなく、オートクチュールの世界の方が近いわけですが・・・)そんな世界に生きる人々の言葉で、印象に残ったものを幾つかピックアップしてみたいかと思います。


・アート・バーゼル(アートフェア)会場で出会った、とあるギャラリストの言葉
「早い者順や、最高価格をつけた客に、作品を譲ろうとは夢にも思わない。関係者のリストをまとめたうえで、最も名声が高い人物の手に、その作品が渡るようにする。自分が取り扱うアーティストへの世間の認知を管理するためには、こうする事が欠かせない。相手の名前も知らないし、誰が描いてになってもかまわない他業界とは異なり、この業界では、だれが作品を所有するかによって、アーティストの評価が高められたり、汚される。」
(アート作品は、誰の手にどのように渡ったかという来歴で、価値が変動する。同様に、作品を販売するギャラリーや、展示する美術館の評価も、その企画力のみならず、その作品の来歴がしっかりしたものを、きちんと展示・販売できるかによって大きく影響する。)


・イギリスのターナー賞授賞式を目前に、パーティ会場で出会った、とあるアーティスト(コンセプチュアル・アーティストのマーティン・クリード)の言葉
「アーティストが作品をつくり出すように、審査員が勝者を作り出すんです。だれが選ばれたって、そのアーティストは審査員の分身ですよ。」
(賞は受賞するアーティストの人生を左右するものだが、決してそれだけのものではない。それは賞を授与する選考委員の評価にも繋がるものであり、単に優れた作品に賞が授与されるのではなく、賞の価値、方向性を維持していく上でベストなものが受賞する。)


・アートフォーラム(世界的アート雑誌)に寄稿する、とある女性アート評論家(ライター)の言葉
彼女は、評論を行うには誠実さが欠かせないという。「作品を自分で買っちゃいけないし、親友を取上げてもいけない。そしてアートという本題から、目を離してもいけない。」「自分の立場より、自分の目を優先する覚悟がいる。」「ものを書いていると、雑音がいっぱいはいってくる。疑問は知性の大事な要素だし、疑いだしたらきりがない。だから、私は先に書いてしまって、自分への問いかけは後回しにしている。それで締め切りのあとにささやかな慰め会を開いて、あれが気に食わないとか、もっと上手く書けたのにとか、明日になったらあの人に嫌われちゃうとか、愚痴をこぼすの。」
(それは決して心穏やかな事ばかりではないが、それができなければ、読者のみならず、アート業界に対する誠実さを失い影響力を失ってしまうだろうと、この評論家は考えている)


ホント、有名俳優を起用したとか、金獅子賞やオスカー賞を捕った・捕らないとか、有名批評家達の賛同を得た・得なかったとかで、良作である無しに関わらず市場における作品の優劣に多大な影響を与えてしまう映画産業と、どこか似ていますよね。その世界は、貧乏生活を強いられながら理想を追い求めて作品を生み出してゆく学生(下積み)時代とは、まるで別の世界という感じなわけです。別の言い方をすると、アーティストとして市場に受け入れてもらうには、ただ単に自分の表現したいものを打ち出したり、新しいsomethingを打ち出すだけでなく、コレクターや、批評家達の批評に耐え、受け入れてもらえれるsomethingでなければならないという事なわけで・・・。

無論、本当に自分の表現したいものだけを追及する生き方もあるのでしょうが、そのやり方で生きている内に世間からの評価を得る事は、本当に稀であるわけですよね。この本の紹介文に、「傑作とは、ただ「生まれる」ものではない。アートの世界を棲家とする多くの関係者たちの手によって「つくられる」ものだった・・・。」とあるのですが、純粋表現とみられやすい「アート」においても、そうした市場原理から外れる事は無いと言えるのかもしれませんね。そしてその事に多くの者が気づいていながらも、もはや誰も変えられない。いや、元々アートというものはパトロンによって育てられてきた側面があり、そうした要素は今に始まったわけではないと言えるのかもしれません。そして、そうした世界のルールで生きているのは、公的な美術館のキュレーターですら例外では無かったりするわけです・・・。

とはいえ、そうした世界であっても、本当に稀に「自らでは想像(創造)出来ない世界」を提示してくれる作品にめぐり合える事があるのも事実。故に、こうした世界に惹かれてしまった者は、その魅力から抜け出せないでいるのかもしれませんね。




最近読んだアートの本


■ 最近読んだアートの本




● 「現代アート、超入門!」 藤井令伊

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近代から、現代アートに関する大まかな歴史的背景を紹介した本。
実際の絵をサンプルに上げながら、その絵を見た感想や、何故その絵が評価されるようになったと思うか、読者に問いかけながら、その歴史的背景を解説するというもの。



● 「現代アート入門の入門」 山口裕美

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美術館、ギャラリー、オークション、アートフェア、アーティストの活動の例を挙げたりしながら、現代アートを取り巻く環境などを解説したもの。



● 「中・高生のための 現代美術入門 ●▲■の美しさって何?」 本江邦夫

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モンドリアン、カンディンスキーなど、抽象的で、非常に判りにくいとされる絵画がどのように生み出され、どのように評価を得るように到ったのか判りやすく解説したもの。



● 「Art:Art in a New World」 Midori Matsui (松井 みどり

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近代から現代に至るアートシーンを見る上で欠かす事が出来ないとされる、アメリカのアートシーンの流れや、そこで活躍してきたアーティスト達を紹介したもの。



● 「日本人は爆発しなければならない」 対談:岡本太郎・泉靖一


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大阪万博の日本館の総合プロデューサーとして就任した岡本太郎が、世界各国を支える人々(政治家や有名人ではなく、実際に社会を支える名も無き人達)や、古来の日本人が生きてきた様を見つめなおそうと、民族学者の泉靖一と数回に渡って対談した様子をまとめたもの。



自分で言うのも何なのですが、私は美術館に出向く事が結構好きです。でも、あまり美術系の入門書を積極的には読んではいません。変な先入観を持ちたくないという思いと、美術館で作品に出会った時の純粋な感動を大切にしたいという思いがあるからです。(とはいえ、アート系の雑誌はたまに立ち読みしますし、NHKやテレ東などのアート番組は結構チェックしているので、矛盾している部分が多分にあるのですが・・・(^^;)

しかし、先日読んだアート関連の2冊の本を読んで、自分の知識は偏っている部分があるというか、まだまだ一部の世界しか知らないのだなあと感じたのも事実だったりします。(美術の世界は広く深いので、当然といえば当然なんですが) 実際、抽象絵画とかになると、未だに理解し難い作品も多かったりします。それに個性を追求するあまり、難解になってゆく現代アートの歴史的な背景を、今よりも知っていて損はないのではないかと思い、数冊の入門書を手にしてみました。

1〜3冊目までは、近代から現代にかけてのアートに関する入門書といった内容のものです。特に3冊目の本は、中高生向けの本のようにタイトルが付けられてすらいます。しかし、決して子供向けの幼稚な本というのではなく、本当に抽象的な美術に対する歴史的経緯が非常に判りやすく記載されていて、とても興味深かったです。これらの3冊を読んで、私はここ最近興味を持ち出している「マークロスコ」の絵に対し、さらに興味を持つようになりました。また、以前読んだ本の内容の内容との相乗効果によって、村上隆などの、日本の現代アートの作家がどのように評価されるようになったかという経緯が、多少なりとも理解出来るようにはなりました。(決して彼の絵が好きになった訳ではないですが・・・)また、アートを取り巻く、ビジネスとしてのドロドロした部分や、コンセプチュアルアート系は、やはりちょっと行き過ぎてしまっているのではないか?という思いが、さらに強くなった部分もありました。

後、4冊目は文章としての情報量は結構凄いのですが、何せ写真などの実例が非常に少なかったため、私にはいまいちピンと来ない内容でした・・・。まあ、これらの4冊を読んでみて思った感想は、「個人として楽しむ上では、アートは自分の価値観で見て何ら問題は無い。というか、自分の感覚を大切にしてゆきたい。」と、改めて思ったといったところでしょうか。

そして、5冊目は、例によって大好きな岡本太郎による本。太郎氏の本を読むのはこれで9冊目です。これを読むと、現在も残る国立民族博物館の設立に、この2人が大きく貢献した事が判り、非常に興味深かったです。それこそ、万博開催時の太陽の塔の中に、名も無き人達の写真を展示したという彼の意向の意味が非常に良く判りました。また、時間があったら、彼の沖縄史の本などを手にしたいと思います。(とはいっても、今は未だ読めていない他のアートの本が山済みになっているので、しばらく後の事になってしまいそうです・・・)



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