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真希はホールを出ると、仲間と別れて近くの公園に向かって歩き出した。 昨夜、若様から葬儀の後公園にきて欲しい、と電話があったからだ。 風が強くなってきた。 歩いていると、紅葉した木々から葉っぱが次々と落ちてくる。 なんだか、風に舞う葉っぱが吉川師匠のお供をしているようで、ちょっと心が軽くなった。 と、ホールの角を曲がったところで立っている人とぶつかりそうになった。 立っていたのは・・・開発先生だ。 薄鼠色の色無地の着物に、黒い帯を合わせて相変わらずしゃきっと立っておられる。 「あっ・・・か、いほつ先生・・・こ、こんにちは」 真希は急いでぴょこんとお辞儀をした。 「はい。こんにちは。」 開発先生もきちんと真希の方を向いて礼をする。 「え・・っと・・この度は・・」 なんと言ったらいいのか、わからなくて真希はごにょごにょと口の中で言葉を濁した。 この度はご愁傷様なんて、師匠のお身内でもないのに言うべきじゃないだろうし・・・ でも、やっぱり昔の恋人が亡くなったりしたら、けっこう辛いんじゃないのかな・・・ 「なんて顔してるんですか。」 うつむいている真希の頭に、開発先生のビシッとした声が響いた。 思わず顔をあげた真希に、先生の言葉は続く。 「人は皆死にますよ。いずれね。形のあるものも、いつかは壊れます。 だけど・・・。残るものは必ずあります。残そうと努めなければ、それは廃れてしまうけれどね。」 先生の声は、だんだんゆっくりとなっていった。 「精神のようなものでしょうか・・」 真希も、静かに言った。 「そうかもしれませんね。私達ももうじき死ぬでしょうけれど、・・・あなた達がしっかりそれを受け継いでいってくれると思うから、安心してゆけますよ。」 「先生・・」 「まあ、まだまだ教えなければいけないことは山のようにありますけどね! さ、どこか行くんじゃなかったの?」 「あ、はい!・・それじゃ、失礼します。」 慌てて一礼してくるりと背を向けた真希の背中に、開発先生の凛とした声がやけに響いた。 「あなた方が用意してくれたこの間の席は・・・私にとって最高の一会でしたよ。」 思わず振り向いた真希の目には、今までで見た一番きれいな開発先生の笑顔があった。 「ありがとう。あなた方も、後悔しない生き方をなさい。」 真希はもう一度、開発先生に向かって深々と一礼した。 急ぎ足で公園に足を踏み入れると、ベンチに腰掛けて木を眺めている若様の後ろ姿。
真希は、深呼吸を一つして若様に向かって歩き出した。 |
GIRLS, CHA CHA!
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若様からどんな話があるのか気になりますが・・・開発先生の言葉がズシリときますねえ、カタチあるものは壊れるけれど、残るものは必ずあります!・・・自分が死ぬ時には何が心に残っているのか?また自分が死んだらあとには何が残っているのか?
2007/3/26(月) 午後 8:53 [ YUTAさん ]
こんばんは。開発先生のお言葉、本当に素晴らしいです。最後のお礼の一言は、開発先生の思いを勝手に想像して読みましたが、思わず涙が出そうになりました。形あるものはいつかは壊れる、ということは分かっていますが、いざそうした場面に遭遇すると辛いですね。でも悲しんでばかりいられないので、精神的な部分を引継ぎながら前へ進まないといけないですね。
2007/3/27(火) 午後 11:19
大切な人を失くしてしまう気持ちは私にはまだわからないけれど、開発先生の言葉は胸に響きますね。形あるものは壊れても、残るものは必ずある・・。残していきたいですね。
2007/3/28(水) 午前 9:36 [ toramama ]
YUTABONDさん>ありがとうございます。自分がこの世に生を受けた意味が、ちゃんと残るような生き方をしたいですね。
2007/3/29(木) 午後 2:06
onebridge4さん>ありがとうございます。そうですね、頭では理解しているつもりでも、いざその場に遭遇すると、なかなか・・・。茶の湯の世界でも辛い別れはたくさんありますが、太く長く引き継いで行きたいですね。
2007/3/29(木) 午後 2:08
とらままさん>ありがとうございます。形あるものも、ないものも、それが存在していたという事実を残していけるようにしたいですね。
2007/3/29(木) 午後 2:10