GIRLS, CHA CHA!

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高校の茶道部で指導されている方のブログからインスパイアされました(笑)!!茶道版「スウィングガールズ」!?
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28

イメージ 1

その日は、帰りに千恵と一緒にお茶屋さんへ行って抹茶と茶筅を買って帰った。
お抹茶ください、と言うと店の人はレジの横にある冷蔵庫を指して、どれにしましょうかと言った。
2、300円くらいかなと思っていたら、小さい缶に入っていて2600円!!(た、高っ!!)
店の人は、これは濃茶用ですよと笑って、薄茶用の一缶800円のを勧めてくれた。(それでも高い…と思った)
洋服や雑貨以外でお小遣いを使ったのは随分久しぶりだ。

夕食後の一時。
お父さんと弟の和也はテレビを見ている。
洗い物をしているお母さんの後ろで、食器棚の中を物色する。
「なにさがしてんの?」
と、お母さん。
「う〜ん、抹茶茶碗の代わりになるようなものないかと思って・・・あっ、これ!これでいいや。」
真希が奥から出したのは、ミスドでもらった小振りの陶器どんぶり。
「お父さん、抹茶点てたげる!」
お湯を沸かし、抹茶の缶を開け、抹茶をスプーンでどんぶりに2杯入れる。
箱から出したての真新しい茶筅でお茶を点てると・・・なかなかいい感じだ。(まだきれいな泡はたたないけど。)
「はい、どうぞ。」
「おお〜。真希が父さんに抹茶点ててくれるとはなぁ・・・!娘を産んで良かった!」
「産んだのはお母さんでしょ。」
横から和也がつっこみを入れる。
お父さん、2回まわして一口。
「・・・どう?」
「・・・うんまい!美味い!ああ〜幸せだなぁ・・」
「おおげさだよ、お父さん。」
なんだか背中辺りがかゆいような気がして照れくさいけど、お父さんの幸せそうな顔を見ると嬉しい。
「もう一杯、欲しいなあ。」
全部飲み干して渡された茶碗を見ると、底の方にお茶の固まりがごろっと残っていた。
「あ〜あ・・・つぶつぶが残ってるなあ〜。悔しいっ」
お母さんがキッチンの引き出しをのぞき込みながら、
「お抹茶を家で点てるときにこれ使ったらいいってこないだテレビで言ってたわよ?えぇと・・あった。
これ。茶こし。」
小さな茶漉し器を出してくれた。
「あぁ、そう言えば最初に準備の時、お茶を漉してたっけ。」
きれいに拭いたどんぶりの上に今度は茶漉し器を渡し、抹茶をスプーンで漉してから点ててみた。
今度はきれいに点てられた(ような気がする)。
「おっ!今度のはなめらかな味だなあ、おい。」
お父さんも満足げ。
「お父さん、そんなこと言ってホントにわかってんの?姉ちゃん、俺にもいれてよ。」
「わ〜かったよ。和也、あんた勉強しなくてもいいの!?」
「お茶飲んだらする。」
もう受験生なのにこの弟はのんきなものだ。
「ね、お父さん」
弟のためにお茶を点てる準備をしながら、真希はさりげなく聞いた。
「男の人って、やっぱり出るとこ出て引っ込むとこ引っ込んでる女の人が好きなのかなあ?」
父はぶっと吹き出した。(さっきの抹茶が出てこなくてよかった!)
「なんだよ急に・・・いや、ま、その、女の魅力は身体だけじゃないぞ?」
お父さんはお母さんの視線をちらちら気にしながら答えた。
「当たり前じゃん、メリハリボディの方がいいに決まってるだろ!姉ちゃんと正反た〜い!」
…この弟は。お茶、頭からぶっかけたろか!
口の悪い弟にげんこつでグリグリしながら、お母さんが言った。
「お子ちゃまにはまだ本当の女の魅力がわかってないのよ。ね、お父さん。いい女って、いろんな所に魅力を持っているものよ。お母さんもお抹茶頂きたいな。」
う〜ん・・・大学生は、はたしてお子ちゃまなんだろうか。それとも、もう大人なんだろうか。
少々乱暴に茶筅を振りながら、真希はしばらく考えてしまった。

27

真希の通う高校は、大きな川のそばにある。
県内の中央を流れ、一級河川というだけあって川幅も広い悠々とした流れの川だ。
もう大分下流に来ているため、その川の両側には広い河川敷が広がっている。高校側の河川敷では運動部や応援団やブラスバンドがいつも賑やかに練習し、反対側の河川敷では一般人の散歩する姿やテニスに興じる姿が見える。
ぱっと思いついた真希のアイディアだったが、野点席を設置するには十分な広さもある場所だった。
ミーティングで出されたその案にはみんなが賛成してくれ、来週道具組の相談なども含めて大学の何人かと打ち合わせをすることになった。
「楽しみだね、七夕茶会!どの浴衣着ていこうかな。」
部室から出てくる時刻になると大分日も落ちてくる。
廊下を歩く真希と千恵の影が長くなって見えた。
千恵の浴衣コレクションは真希も知っている。去年も何回一緒に花火を見に行ったことか。
「そうだね・・・でも千恵、あの、レースのふりふりが襟元に付いているヤツはさすがにやめた方がいいと思うよ?」
「いやねえ、それくらいは私にだってジョーシキあるよ〜!」
私は2,3着ぐらいしか持ってないなあ・・・どれ着ていこう。
玄関の方に近づいたとき、「上杉千恵が・・・」と言う言葉が聞こえてきた。下足箱の向こう側から?

「いいよなぁ、茶道部に入ったんだろ。てことは近くで見れるってことだよなあ。あの足・・・。」
どうやらこの声は隣のクラスの男子らしい。真希と千恵は思わず下足箱の陰に隠れた。
「知ってるか?こないだもB組の最上、上杉に告ってふられたらしいぜ。もったいぶってんのかなあ。あんな可愛い顔して、いい身体してんだから男好きするタイプに見えるけどな。頭軽そうに見えるけど案外カタいのな」
あいつ・・・!
勇んで飛び出そうとする真希の腕を、千恵は急いで引き留めた。
「(いいよ、真希。私は慣れてるから・・・)」
小声で言う千恵の顔には、しかし悔しさが滲んでいる。
「くだらない。上杉に失礼だろ。」
にべもなくすっぱりと言い切ったこの声は、・・・細川君だ!
「容姿と中身は別だろ。おまえ、井戸端会議でうわさ話喜んでるおばちゃんみたいだぞ。」
「お、おいっ。待てよ、細川・・・」
・・・・。
行ったらしい。
へぇ〜、細川君てば、いいこと言うじゃない。
千恵にそう言おうとして振り向くと、千恵は真希の腕をぎゅっとにぎったまま、真っ赤な顔をしてうっすらと目に涙を溜めていた。

26

「いや、ごめんごめん、武田さん。これ、うちの部の伝統なのよねぇ。」
浅井さんは、細川君の飲んだ茶碗にお湯を入れ、建水に捨てて茶巾で器用に拭くと、2杯目のお茶を点て始めた。さっきの真希の手付きとは段違いに素早い動きで茶筅をふり、あっという間に茶碗の中にクリーミーな泡がたった。
「いいですけど。・・・ちょっとびっくりしましたよぉ。」
真希の前にどうぞと置かれた茶碗を手に持って、ちょっとすねてみせた。
でも、あの瞬間から何となくだけど、それまで感じていた部員のみんなとの「うすい壁」のようなものが一気に取り払われたような・・・そんな気分にもなっていた。
向こうで練習している細川君の横顔をみると、もういつもの真面目な顔になっている。
「ね、ところで武田さんと上杉さんのフレッシュな頭でちょっと知恵を貸して欲しいんだけど。
もうすぐ7月に茶道部としての大きい茶会が一つあるんだよね。例年この和室か近くの公民館を借りてやってるんだけど・・・マンネリなのか、客足がちょっと芳しくなくてねぇ。なんかいいアイディア、ないかなあ?」
そんなお茶会、やってたんだ。去年も全然知らなかったなぁ・・・。
抹茶を一口飲んだ。ふわっとしたお茶の香りと苦みがだんだん美味しいと思うようになってきた。
「4月からみんなでいろいろと考えてはいるんだけど。」
横で吉川奈緒も思案顔。
ふむ。
「7月ですよね・・・。みんなで、浴衣着ておもてなしするって言うのは?」
「うん、それいいと思うでしょ?上杉さん。過去にも何度か浴衣で茶会をした年があるらしいの。今年も浴衣は着たいと思ってるのよ。」
「そうなんですかぁ。・・・う〜ん、でも楽しみ!なに着ようかな?」
千恵はもうすっかり衣装のことで頭がいっぱいのようだ。
7月・・・浴衣・・・七夕・・・
「七夕の季節ですよね・・・」
「うん、そう。道具組なんかは七夕をテーマにしようと思っているんだけど・・・」
「ロマンチックですよね〜・・・織り姫と彦星、川を挟んで年に一度の逢瀬・・」
真希の頭の中には、川を挟んで見つめ合っている、彦星の恰好をした若様と織り姫の恰好の自分がいた。
「川のそばの河川敷に茶席を作るっていうのはどうですか?」
ふと、思いついた。川の両側に二つの茶席。
「河川敷、かあ・・」
「そう、川の両側にそれぞれ一つずつ!」
「野点ってことになるわよね・・・それに2席も用意するとなると、人数が・・・」
「大学の方に応援に来てもらえばどうですか?」
千恵、ナイス!
真希は小さくガッツポーズをした。
「いいかもしれませんよ、浅井さん。河川敷でやれば人も集まるだろうし。」
奈緒が横から賛成してくれた。
「ふむ・・・考えてみる価値はありそうね!後から部員に提案してみようか。」

25

「武田さん、お茶点ててみる?」
浅井さんが丸いお盆の上にお茶セットのような物をいろいろ乗せて真希の前に持ってきた。
「え?お茶点てるって、あのシャカシャカやるヤツ?いいんですか?」
「何事も、経験、経験!」
浅井部長はうきうきした様子で、お盆の上にある物を説明し始めた。
隣には千恵が吉川奈緒にやはりお茶の点て方を教えてもらっている。
「お茶碗はわかるよね。これは、棗。薄茶を入れる入れ物ね。そんでこれが、茶杓。お茶をすくうスプーンのような物ね。それに茶巾と、茶筅、建水。建水は汚れたお湯を入れる入れ物よ。
はい、お湯。」
浅井さんはてきぱきと説明し、近くにあった電気ポットからお湯を茶碗に入れて真希に渡した。
「最初にお湯で茶碗をあっためたら、建水に捨てて。そう。それを貸して。
そしたら茶巾でこうやって拭いてね。はいどうぞ。お茶はこれくらい…茶杓で大盛り2杯ほど入れて、と。」
真希の膝の前に茶碗が置かれ、浅井さんによって抹茶とお湯が入れられた。
「さあ、茶筅でお茶を点ててみよう!」
さあ、・・・って言われても・・・。
とりあえず、見よう見まねで、左手で茶碗を押さえ、茶筅を前後に振ってみる。
「あれ・・・?」
イメージでは、シャカシャカやってるうちに抹茶があわあわ〜っと泡立ってくるはずなのに?
「ふっふっふ。なかなか難しいでしょ?手首のスナップを効かせるようにして、もっと軽やかに振る!」
か、軽やかにって・・・あぁ、だめだ、闇雲に振ってもこぼれそうになるし、やればやるほど泡が消えていく〜!
「はい、ストップ。あんまり振っても意味ないしね。これからまた練習しましょう。」
浅井部長はにこやかに言い、くるりと辺りを見回した。
「おっ!細川君。ちょっと、こっち来て武田さんのお茶、飲んでやって!」
えぇ〜っ!?この、出来損ないの緑の液体を、飲まれるの!?
「イヤ、浅井さん、いいですいいです!私自分で飲みますから!」
慌てて言ったが、もう遅い。細川君が真希の目の前にすとんと座った。
「武田さん、観念して。お茶碗を2回まわして、相手の前に置いて、どうぞ。」
しぶしぶ言われた通りにお茶碗を差しだし、どうぞ、と一礼。
細川君は一礼し、「ちょうだい致します。」と茶碗を捧げ持って2回まわして口へ運んだ。
「・・・・。」
「・・・ど、どう?」
「武田さん。」
「はい。」
「これ、初めて点てたお茶?」
「うん。」
「生まれて初めて?」
「?・・・そうだけど。」
その言葉を聞くと細川君は一呼吸おき、やがて重々しく口を開いた。
「うちの部のジンクスがあってね、生まれて初めてお茶を点てた人とそれを飲んだ人とは、やがて結ばれるそうだよ。」
うそっ!!
真希と千恵、二人の声がシンクロした。
「うそ。」
あっさりと細川君が言った。
ニヤニヤしている。
浅井さんも、笑いをこらえているような顔をしている。
気づいたら、和室のみんなも!
「真希さん、それ、俺もやられた!」
ヤマタクが一言言うのと、みんなが爆笑するのとほぼ同時だった!
「なによ、それ〜!!」
真希と千恵も、思わずつられて笑い出した。

24

「あぁ、そうよ。うちのおじいちゃん、大学の方でも教えてるわ。」
次の火曜日、高校茶道部の水屋。
吉川奈緒は相変わらずつっけんどんに答えた。
同じ部に入ったというものの、馬が合わないというか、そりが合わない感じがするのは変わらない。
それでもこっちはなんとかコミュニケーションとろうと頑張ってるのに〜!
まったく、あの愉快なおじいちゃん師匠とこの人が家族だなんて…イメージちがうよなぁ。
「あ・・・そう言えば。開発先生と師匠って、昔お知り合いだったの?」
この間のアノ和室での雰囲気、何となく引っかかるものがあった。
「え〜っと、確か、昔同じ教場でお稽古していたって聞いたことがあるわ。あ、そのお茶碗、洗ってくれる?」
奈緒は忙しそうに箱をしまいながら、真希の横にある茶碗を指さした。
「はいはい・・・と、あれ?スポンジは?洗剤は?」
真希は、奈緒が変な顔をしているのに気づいた。
「なに?私なんか変なこと言った?」
奈緒はため息を一つついて、真希の方に身体をむけた。
「…そうよね。知らないものは教えてあげないとね。抹茶茶碗は、スポンジで洗わないの。手の指で洗うの。洗剤も使わず。結構汚れも見落としがちだから気をつけて、丁寧に洗ってね。」
そうよ、こっちは初心者なんだからちゃんと教えてよね。
真希は心の中でぶつぶつ言いながら言われたように茶碗を洗った。
「これでいい?」
真希が差し出した茶碗をじっと見て、奈緒は白いタオルを差し出した。
「これでふいてみて。」
タオルで拭くと・・・白いタオル地にうっすらと緑色が付いてしまった。
あちゃー…まだ甘かったか・・・。
「もう一回‘丁寧に’洗って。」
くっ。悔しいけど仕方ない。タオルに付いたお茶の緑が証拠だ。
真希は今度はバカ丁寧に指でくまなく洗い、そばのタオルを取った。
「あっ!ダメ!!それは建水用のタオル!端の方に『建』って書いてあるでしょ?」
「建水?ってこれ?でもこれもお湯しか入れないんでしょ?みんな一緒のタオルじゃダメなの?」
流しのスノコの上には、金属製のボウル(建水)が置いてあった。
「建水は汚い水を入れるから、他のお道具とは別に拭くの。」
真希は仕方なくさっきの白いタオルを取り、きれいにふきあげて棚に置いた。
「違う!」
「・・・今度はなに?」
「茶碗は上向きに置いて。伏せて置かないの!」
「えぇ?なんで?家ではコップとか伏せて置いてるよ?」
「抹茶茶碗は口造りの方が繊細で欠けやすいの。高台の方が安定しているし丈夫なのよ。」
「高台?」
「茶碗の底に付いている、その出っ張ったところ。あぁ、どっちにしろ、もっとそっと扱って!」
奈緒は真希の手付きをハラハラしながら見守っていた。
「は〜いはい。」
あぁ、お茶の道具って、なんだかめんどくさい・・・。

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