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その日は、帰りに千恵と一緒にお茶屋さんへ行って抹茶と茶筅を買って帰った。 お抹茶ください、と言うと店の人はレジの横にある冷蔵庫を指して、どれにしましょうかと言った。 2、300円くらいかなと思っていたら、小さい缶に入っていて2600円!!(た、高っ!!) 店の人は、これは濃茶用ですよと笑って、薄茶用の一缶800円のを勧めてくれた。(それでも高い…と思った) 洋服や雑貨以外でお小遣いを使ったのは随分久しぶりだ。 夕食後の一時。
お父さんと弟の和也はテレビを見ている。 洗い物をしているお母さんの後ろで、食器棚の中を物色する。 「なにさがしてんの?」 と、お母さん。 「う〜ん、抹茶茶碗の代わりになるようなものないかと思って・・・あっ、これ!これでいいや。」 真希が奥から出したのは、ミスドでもらった小振りの陶器どんぶり。 「お父さん、抹茶点てたげる!」 お湯を沸かし、抹茶の缶を開け、抹茶をスプーンでどんぶりに2杯入れる。 箱から出したての真新しい茶筅でお茶を点てると・・・なかなかいい感じだ。(まだきれいな泡はたたないけど。) 「はい、どうぞ。」 「おお〜。真希が父さんに抹茶点ててくれるとはなぁ・・・!娘を産んで良かった!」 「産んだのはお母さんでしょ。」 横から和也がつっこみを入れる。 お父さん、2回まわして一口。 「・・・どう?」 「・・・うんまい!美味い!ああ〜幸せだなぁ・・」 「おおげさだよ、お父さん。」 なんだか背中辺りがかゆいような気がして照れくさいけど、お父さんの幸せそうな顔を見ると嬉しい。 「もう一杯、欲しいなあ。」 全部飲み干して渡された茶碗を見ると、底の方にお茶の固まりがごろっと残っていた。 「あ〜あ・・・つぶつぶが残ってるなあ〜。悔しいっ」 お母さんがキッチンの引き出しをのぞき込みながら、 「お抹茶を家で点てるときにこれ使ったらいいってこないだテレビで言ってたわよ?えぇと・・あった。 これ。茶こし。」 小さな茶漉し器を出してくれた。 「あぁ、そう言えば最初に準備の時、お茶を漉してたっけ。」 きれいに拭いたどんぶりの上に今度は茶漉し器を渡し、抹茶をスプーンで漉してから点ててみた。 今度はきれいに点てられた(ような気がする)。 「おっ!今度のはなめらかな味だなあ、おい。」 お父さんも満足げ。 「お父さん、そんなこと言ってホントにわかってんの?姉ちゃん、俺にもいれてよ。」 「わ〜かったよ。和也、あんた勉強しなくてもいいの!?」 「お茶飲んだらする。」 もう受験生なのにこの弟はのんきなものだ。 「ね、お父さん」 弟のためにお茶を点てる準備をしながら、真希はさりげなく聞いた。 「男の人って、やっぱり出るとこ出て引っ込むとこ引っ込んでる女の人が好きなのかなあ?」 父はぶっと吹き出した。(さっきの抹茶が出てこなくてよかった!) 「なんだよ急に・・・いや、ま、その、女の魅力は身体だけじゃないぞ?」 お父さんはお母さんの視線をちらちら気にしながら答えた。 「当たり前じゃん、メリハリボディの方がいいに決まってるだろ!姉ちゃんと正反た〜い!」 …この弟は。お茶、頭からぶっかけたろか! 口の悪い弟にげんこつでグリグリしながら、お母さんが言った。 「お子ちゃまにはまだ本当の女の魅力がわかってないのよ。ね、お父さん。いい女って、いろんな所に魅力を持っているものよ。お母さんもお抹茶頂きたいな。」 う〜ん・・・大学生は、はたしてお子ちゃまなんだろうか。それとも、もう大人なんだろうか。 少々乱暴に茶筅を振りながら、真希はしばらく考えてしまった。 |

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