GIRLS, CHA CHA!

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高校の茶道部で指導されている方のブログからインスパイアされました(笑)!!茶道版「スウィングガールズ」!?
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38

難しいよねえ・・・
一緒にいてドキドキする人か、一緒にいて楽な人か・・・。
「とにかく、しばらく自分で考えてみるよ。いつかは、けじめつけなきゃ。ね。」
半幅帯を一文字の形に整えながら、千恵はいつになく大人びた表情で言った。
「さ、これで出来た。意外と簡単に着付けられるでしょ?あとは練習あるのみ、かな。」
千恵に細かいところを直してもらって鏡を見ると、我ながらそれなりに着付けられているようだ。
「うん。ありがとう、千恵。」
「どういたしまして。真希も隆史さんとうまくいくといいね。」
ドキッとした。
そうなんだ。なんだかんだ言って、私は何もしていない。まあ、初めて会ったときから見ると今の関係は格段の進歩だけど・・・。
そこへ、お茶とケーキを持ってきた千恵のママが入ってきた。
「どう?具合は・・・あらあ!二人とも可愛く着れたわねぇ!」
千恵ママはうきうきとお茶を淹れてくれた。
「そう言えば・・・さっき週間天気予報見てたら、来週は雨になりそうよ。お茶会、大丈夫かしらね!?」
「ええ〜っ!?」

悪い予感というのに限って、当たってしまう。
案の定、天気予報通りに次の週は雨が降ってしまった。
茶道部員達も、明日の茶会の準備をしながら、元気がない。
「天気予報だと、明日は晴れるって言ってるし、それにかけましょ!みんな、今日は家でてるてるぼうずを作ること〜!!」
浅井部長は、わざと明るく大きな声で部員達に声を掛けた。
当日は晴れることを期待して、棚、お道具、水屋の幕・・・全てすぐに取り出せるように、部室の入り口に用意した。
もちろん、残念ながら室内で行うことになった時のためにも、どちらでも対応できるようにはしてあるけど。
せっかく外で茶会を開こうと思って、みんなで一生懸命準備してきたんだから、明日は絶対絶対晴れて欲しい!
真希は、部室の窓辺にも、特大のてるてる坊主を作ってぶら下げた。
(織り姫と彦星のためにも、いいお天気にしてよ〜!?)
バスタオルで作られたそのてるてる坊主は、まかせとけ!と言うようにくるんと一回りまわった。

37

その日は千恵の家に泊まらせてもらって、浴衣の着付けを教えてもらうことになっていた。
千恵の家とはお互いに何度か泊まりっこしているし、親も顔見知りなのですっかり信用され、「しっかり自分で着付けられるように教えてもらってきなさい」と諸手を挙げて送り出された。
(ていうか、ママが娘に教えてあげるんじゃないの?ふつー・・・)とは真希もチラリと思ったが、友達同士で泊まりっこは楽しいに決まっている。
千恵に似ておっとりした千恵ママも、お気に入りの真希ちゃんが遊びに来て大喜び。
豪勢な夕食を食べたあと、二人は部屋でさっそく浴衣を取り出した。
「浴衣って言っても、コツをつかめば簡単だよ。要は襟元と裾の丈を決めれば、何とか見られるようになるから。茶会の前に美容院に行ってるひまないしねえ。」
そうなのだ。
七夕茶会に着る浴衣は、部員が直前に部室で各自着付けること、と言われた。
なにしろ、人手も足りない。野外のため、始める前に準備しなければならないことは山ほどある。
準備はジャージ、その後速攻で着替えるしかない。家に帰って親に着付けてもらったり、美容院に行ったりするひまは、ない。
上級生達はみんな当然といった顔で頷いていた。きっと自分で着物を着付けることなんか、当たり前なんだろう。1年生達はさすがに戸惑った表情を浮かべていたが、親に教えてもらう子、仲間同士で練習会を開く子、など、みんなそれぞれ工夫するらしい。
千恵が浴衣は着付けられる、と言うので助かった。さすが浴衣コレクションを誇るだけある。
「襟元はこのベルトで留めるといいよ。そうすれば楽だし、ずれないし、決まりやすいから便利。」
「うん・・・あ、ちょっと待って。このおはしょりが・・・うーん、なかなかうまくのばせないな・・・男の人って、いいよね。おはしょりないから、着付けるのも早そう・・・」
「そうだねえ。でもこのおはしょりがあるから、一つの着物でも色んな背丈の人が着られるんだし・・・」
確かにそうだ。女の着物は、おはしょりで裾丈を調整するから、多少の融通は利く。
男の着物はその人の丈に合わせるから、楽は楽だけど融通は利かないわな。
ヤマタクなんか、ひょろ長いから特注だったりして・・・くすっと笑って、真希はふと思い出した。
「そう言えば、今日のヤマタク、ちょっとかっこよかったよね〜。千恵のこと全身で守ってさ!・・・ヤマタクって、もしかして千恵のこと、好きだったりして!そのうち告白されるかもよ!」
ふと、真希のおはしょりを整えていた千恵の手が止まった。
?と思って顔を見ると、千恵の顔は真っ赤になっていた。
「千恵・・?もしかして・・・もう言われちゃったとか!?」
思わず大きな声を出しそうになった真希に、千恵は慌ててしぃ〜っ!!と人差し指を立てた。
「鋭いなあ・・・真希は。実は、・・・そう。今日、あの後保健室に送っていったら、その時に言われちゃって・・・」
あら〜・・・あらあら、まあ。
確かに、この二人いいコンビだなと思っていたけど。
「で、返事したの?」
「う〜ん・・・ちょっと考えさせて欲しい、って答えた。」
まあ、ねえ。確かに千恵には細川君という想い人がいるもんなあ・・。
ん?でも、まてよ?
「でも、珍しいね。千恵、今まで色んな人から告白されても、すぐにその場で断っていたじゃない?」
千恵は、ちょっと気まずそうな顔をした。
「うん・・・なんだかね、わかんないのよ。自分の気持ちが。ヤマタクはいい子だし、今までの人達みたいに、私のうわべだけ見てるんじゃないってことはわかるの。一緒に話していても飾らないで過ごせるし、すごく楽なんだよね。告白されて、なんか嬉しかったのも事実だし・・・。でも、やっぱり細川君のことを考えるとドキドキして、好きだなあって思うのよねえ・・・。」

36

次の週明けからは、茶道部員は学校の近くに流れる川の河川敷で毎日のように土方仕事を繰り広げていた。つまり、水屋作りを、だ。
客席と点前座を置くにしても、まさか裏からお茶を出す「点てだし」を校舎からはるばる運ぶわけにもいかない。裏方が全員ちゃんと隠れる大きさの水屋は、角材と布で手作りすることになった。
知らない人が見たら、「何部?」と、首をかしげていただろう。
ジャージ姿に首からタオル、軍手をはめて男も女もトンカチ片手にあれやこれやと動き回っている。
しかしみんなで一つのイベントに向かって準備を進めていくというのは、なんにしろメンバーの中に連帯感とちょっとした高揚感を生み出すものだ。
真希も、久しぶりに忙しく身体を動かしながら気持ちのいい汗をかいていた。
真希の隣に、吉川奈緒がすっと腰をおろし、作業をしながらさりげなく話しかけてきた。
「あのお茶碗、なんとかうまくつながりそうよ。もうしばらくかかるけど。」
「本当!?・・よかったぁ!ありがとうね。吉川さん。」
結局、例の絵唐津の茶碗の代わりには、きれいな京焼の茶碗が登場することになっていた。
「うん・・・まぁ、私が金継ぎするわけじゃないしね。おじいちゃんの弟さんが・・私の大叔父さん?に当たるのかな?塗師をやってるから、昔からそういう仕事も見せてもらってたのよ。で、快く引き受けてくれて。」
「吉川師匠の弟さん・・・ヌシ?」
「ヌシ。塗り師、ね。漆で工芸品を作ったりする人。かなりお年だけど、結構有名みたいよ。」
ふうん・・・。
真希は、ずっと頭に引っかかっていたことを思い切って奈緒に聞いてみた。
「ねえ。聞いてもいいかな・・・あのお茶碗、師匠が開発先生にあげたものなんでしょ。師匠と先生って、昔・・・」
奈緒は一瞬手を止めて、真希の方を見た。
「隆史さんから聞いたの?・・・うーん、まぁ、もう時効かなぁ。・・・」
奈緒も前からうすうすは気づいていたが、今回の件で大叔父さんから聞いたらしい。
奈緒の話はこうだった。
開発先生と吉川師匠が昔、同じ社中でともに茶道を学んでいた頃。
二人は、将来を誓い合った若い恋人同士だった。
あの茶碗は、師匠が唐津へ旅行した時に、開発先生にと、自分で絵付けをして焼いてもらった茶碗だという。
ところが何があったのか、二人の間にどうしようもない亀裂が生じ、開発先生はその当時の教室を去って別れてしまった。
その時のすれ違いは結局誤解だったと言うことがわかったのは、何年か後に二人が再会した時。だけどすでにお互いにはそれぞれの所帯が出来ていた・・・と。
「武田さんを信用して話したのよ。これは。だからあんまり他には言わないでね。」
「・・そうだったんだ・・・」
そういう話を聞くと、なおさらあの日の和室の、後ろを向いていた開発先生の寂しそうな肩を思い出して、胸がきゅっと痛くなる。
「なんで牛だったのかなあ・・・」
唐津の茶碗の胴に、奔放に描いてあった優しげな牛の絵。なにか思い出があったんだろうか。
「さあ?・・開発先生の干支だからじゃない?」
「干支?・・ってことは、うーんと、先生70歳?」
「じゃないわよ。今年で82歳!おじいちゃんは84歳!」
「ええ〜っ!?」
そんなお年だったとは!!お茶の先生って、みんな元気なんだなあ・・・
おーい!そこ、危ないっ!!
近くの方から大きな怒鳴り声が聞こえた。
とっさに真希と奈緒は首をすくめたが、現場は少し離れたところで、立てていた角材が倒れそうになっていた。その先にいるのは・・・千恵!!
ガラン、ガラン!!
「ちえっ!!」
角材がゆらりと大きな音を立てて倒れた。
千恵はその下敷きに・・・と思ったら。
千恵の身体に覆い被さるようにして守っている、ひょろりと長い身体。
「ヤマタク!?」
まわりのみんなは一瞬呆然としたが、やがて何人かの男子が千恵とヤマタクの上から角材を取り除こうと走り寄った。
どうやらヤマタクの身体には怪我もなさそうで、へらっと笑っている。
よかった。
ホッと胸をなで下ろす真希の横で、奈緒がぽつりとつぶやいた。
「ヤマタク・・・あっちの方にいなかったっけ?えらい遠くから助けに行ったんだね。」

35

櫂先を仕上げると、あとはヤスリをかけて最後の仕上げ。
「切り止め」と呼ばれる、一番下の切り口を小刀でスパッと切り落とすと、一応完成。
ふう。
真希は出来たての自分の茶杓を眺めてみた。
大分手直ししてもらったのもあるけど、うん、なかなか茶杓らしくできたじゃない?
満足、満足。
不思議なもので、できあがった茶杓が妙に愛おしく見えてくる。
みんなも、自分や他の者の作った茶杓を眺めている。
一片の竹の棒なのに、それぞれ個性が出てくるから面白いものだ。
浅井さんが明るい声で言った。
「さて、じゃあこの5本の中から、隆史さんに選んでもらおうか。」
「なにを?」
「やだなぁ、何のために茶杓削りに来たって、七夕茶会に使うためでしょ?織り姫席には隆史さんの削られた茶杓を出すとして、彦星席はこのうちのどれか。さ、隆史さん、選んでください。」
・・と言うことは、選ばれた茶杓は、若様の茶杓とペアってこと!?
どうしよう、私のが選ばれちゃったら・・・
真希はドキドキしながら若様の真剣な顔をそおっと見た。
「う〜ん、どれにしようかな・・・どれも結構いい出来だぞ・・」
若様は一つ一つの茶杓を丁寧に手にとりながら、しばらく迷っていた。
「・・・よし。これにしよう!」
若様が手に取った一本の茶杓は。
櫂先から節、切り止めまで、すうっと伸びやかな線を描いている、
細川君の削った茶杓だった。

34

「幅を整えたら、裏もしっかり削って。節の裏は棗に乗るようにしないと意味がないからね。ああ、初心者はくれぐれも削りすぎには注意!」
若様は順番にまわりながら、1人1人の竹片をチェックしていた。
2、30分ほど握っていると、小刀の感覚も大分わかってきたような気がする。それでも、ふっと手のひらを見てみると刀の柄を握った跡が、しっかり赤く残っていた。肩にも力が入っていたらしく、随分固くなっていた。
あ、痛っ!
突然悲鳴を挙げたのは、ヤマタク。
左手の人差し指から、鮮明な血をたらしている。
「今日の第1号だな。小刀は、慣れた頃が一番怪我しやすいんだ。ちょっと待ってて。傷バン持ってきてやる。」
若様がニヤニヤしながら部屋を出ようとした。
「あ、持ってきてます。」
絆創膏をバッグから取り出したのは細川君。
「へえ、さすがね。細川君。切らずとも傷バンの用意、だね。」
浅井さんも自分のバッグを手にしながら言った。その様子だと彼女も持ってきているらしい。
「ありがとうございます・・・」
絆創膏をもらいながら、ヤマタクも照れ笑い。
もたもたしているうちに、千恵が絆創膏を取り上げてささっとヤマタクの指に巻いてあげていた。
「あんたもちょっとは口を開くのをやめて作業に集中しなさい!」
小言を言いながら世話している千恵に、ヤマタクは頭をかきながら手を預けている。
「よっしゃ。第2号、3号が出ないように、みんなも気をつけて。さて、あとは櫂先と面取りかな。櫂先には色んな形があるけど、みんなは初めてだから丸形がやりやすいと思うよ。えんぴつで大体の形を描いた方がいいな。拝見されるときにもじっくり見られるから、特に念入りにゆっくり削ってな。」
若様は何本かの茶杓をテーブルの中央に示しながら言った。
なるほど、いままで意識して見ていなかったけど、茶杓の先の形って、色んな形があるんだ。丸いの、平べったいの、尖っているの・・・。
ヤマタクの二の舞をしないように慎重に小刀を動かしながら、真希はぼんやり考えていた。
みんな、すごいな・・。
「なんか、私みたいなガサツな女、お茶に向いてないような気がしてきた・・・」
気が付くと、ぽつりと口に出していた。
千恵が何か言おうと口を開いたとき、
「そんなこと言うモンじゃないよ。」
若様が、きっぱりとした口調で真希に言った。
「向いている、向いていないって、誰が決めるの。気持ちが後ろ向きになったら、どんどんネガティブな方へ行っちゃうよ。武田さん…真希ちゃんは、お茶を嫌いになったわけじゃないでしょ?誰かにお茶を点ててあげたとき、美味しいって言われて嬉しかった覚えはない?」
若様はまっすぐ真希の目を見て語りかけた。
お父さんに抹茶を点ててあげたとき、「美味しい」と喜んでもらえたあの笑顔。細川君に飲まれるとき、美味しいかな?とドキドキして、飲んでもらったときのホッとした気持ち。
「お茶・・・嫌いになったんじゃないです・・・。お父さんにも美味しいって言ってもらえたとき、嬉しかった・・・。」
「その気持ちを持っていれば十分。立派なお茶人だよ。」
若様は真希の目に光る涙に気づかないふりをしながら、真希の茶杓を取って小刀で手直しし始めた。

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