GIRLS, CHA CHA!

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高校の茶道部で指導されている方のブログからインスパイアされました(笑)!!茶道版「スウィングガールズ」!?
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開発先生のお家は、かなり広くて古い家だった。古いけど、庭や部屋の中まで掃除や手入れが隅々まで良く行き届いていて、先生のきっちりした性格をそのまま表しているように見えた。
廊下をぞろぞろと歩きながら、真希は小さな声で若様に聞いた。
「あの・・・隆史さん・・あのお茶碗、誰かからの贈り物って聞いたんですけど・・・」
「ん?うん・・・あれな、うちの師匠が昔ばあちゃんにくれたものらしいんだな。」
「師匠?・・・てことは、吉川さんのおじいちゃん?あのお二人、やっぱり昔なにか・・」
「・・まあ、うちのばあちゃんも昔のことは語りたがらないからね。」
若様は、そっと人差し指を自分の口に持ってきて、それ以上は話さなかった。
もしかして、ガイコツ先生と吉川師匠、昔は。
それならなおさら、そんな大事な思い出のお茶碗を割られてしまったと聞いて、先生はどんな気持ちだっただろう。
真希はますます気分が沈み込んでいくのを感じた。

「さて。茶杓削りと言っても、そんなに難しいことじゃない。初めての人でも2時間もあればできるからね。ただ、今日は初心者向けにあらかじめタメを作ってある『荒曲げ』の竹を用意してある。撓めを作るのが一番やっかいで失敗しやすいからね。ここから2時間。そんじゃ、この中から自分の気に入ったのを一つ選んで。」
テーブルの上には、先っちょが曲げてある竹片が何本か置いてあった。これを削るらしい。
高校生達は各自一つずつそれを取って、小刀とともに自分の席の前に置いた。
「真ん中に筋が通ってるだろ。これを‘樋(ひ)’と言うんだ。この樋を中心にして、少しずつ幅を整えていく。基本的には中心から左右6mm位ずつかな。最初にえんぴつで印つけて。・・うん、そうそう。
で、下は7mm位になるように、印をつけて。あとは小刀で慎重に削っていく!」
若様は簡単そうに自分でやって見せながら説明した。
・・って、いかにも簡単そうだけど、小刀なんて小学校の図工で使って以来。こんな固い竹、削れるの!?
まわりを見ると、みんな早速削り始めている。
ええい、考えていてもしょうがない!
ざくっ。と竹に刀を入れる。
か、かた〜っ!!
「なんだかみんな危なっかしいなあ。イマドキの若者は小刀って使わないからなぁ。」
「隆史さんだって、イマドキの若者でしょ?」
若様のつぶやきにヤマタクが返す。口ではそう言いながらも、視線は自分の手元に真剣に注がれている。
「真希・・・どうだった?先生・・・」
横で千恵が、やはり視線を手元に注意深く注ぎながらつぶやいた。
「うん・・・お元気なかったけど、とりあえず謝らせてもらった・・・」
部のみんなにも迷惑をかけてしまった。そう思うと思わず手が止まってしまう。
「過ぎたことを悔やんでも、仕方ないよ。先生も仰ったように、今回の件で私達が学んだことをこれからのお稽古に生かして行かなきゃ。」
浅井さんも、自分に言い聞かせるように竹に小刀を入れながら言った。
「そうだよ、お道具を扱う以上、いつか誰かがそういう失敗をするかもしれないし、たまたまそれが真希さんだったと言うことかもしれないでしょ。俺らは今回の件でもいい勉強させてもらったんだよ。言い方変だけど・・・」
ヤマタクはヤマタクなりに慰めてくれているらしい。
「うん・・ありがとう。」
削っていくうちに、だんだん小刀の滑りが良くなってきた。

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まさかこんな気持ちで若様の家を訪ねることになろうとは。
日曜日。菓子箱を持った浅井部長、真希、千恵、細川君、ヤマタクの5人は茶杓削りを教えてもらいに先生の家の前に立っていた。
あの日取り急ぎ電話で、貸してもらった茶碗を割ってしまったことは伝えてあるが、茶杓削りの日に改めてお詫びをさせて頂くことにした。
「開発」と表札がかかっている玄関のチャイムを浅井さんが押すと、奥から作業用エプロンをつけた若様が出てきた。
「おう。いらっしゃい。準備はしてあるよ。・・・浅井さんと武田さんは、先にばあちゃんとこ、行く?」
「・・・お願いします。」
みんなにはもう伝えてある。細川君達は頷いて、
「じゃあ、ここで待ってます。」
と言った。
「悪いね。そしたらその辺りでちょっと待ってて。じゃ、行こうか。」
若様の後ろについて歩いていく真希達を、千恵の方が泣きそうな顔で見送った。

茶碗が割れたいきさつは、浅井さんが話してくれた。
和室の真ん中に正座していた先生に、真希と浅井さんは深々と頭を下げた。
先生は、じいっと目を閉じて話をきいていたが、しばらくして静かにこう言った。
「形のあるものは壊れるものです。今回の件であなた達が得たことを忘れないようにしてくれれば、それでよいのですよ。」
「はい・・・。申し訳ありませんでした・・・。」
「それで、あのお茶碗ですが、吉川さんが親戚の方に金継ぎをしてもらえると連絡を頂いたのですが。させて頂いてよろしいでしょうか。」
「そう。・・・吉川さんが。わかりました。よろしくお願いしますよ。」
「それじゃ、ばあちゃん、そろそろ茶杓削りに行ってくるよ。」
若様が促してくれて、二人はもう一度深々と先生に頭を下げて部屋を出た。出る間際にちらりと先生を振り返ると、窓際を向いている先生の細い肩が寂しそうに小さく見えた。

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「こんにちは・・・ん?」
吉川奈緒が水屋に入ってきたときには、どよんと重い空気が漂っていた。
浅井部長も真希も、目の前の割れた茶碗を前に呆然としている。
(私ったら・・・。私ったら!)
自分の軽率さを悔やんでも、時間は元に戻せない。
「ご・・・ごめんなさい・・・」
謝って済むことではないけれど。
事情を察した奈緒も、茶碗の前に黙って座った。
「武田さんだけが悪いんじゃないよ・・気をつけなくちゃならなかったのは私も同じ。」
浅井さんもつぶやいた。
「どうしよ・・・弁償・・できるかな?」
抹茶茶碗の相場はいくらほどなのか、見当が付かない。でも、多分先生が茶会用にと出してくれたんだからきっと高価なものなんだろう。自分で、いや親に頼んでも弁償できる額かどうか。
「このお茶碗、先生がどなたかから贈られた茶碗だって聞いたんだけど・・・」
奈緒が遠慮がちに言った。
「贈り物・・・じゃあきっと思い出のあるお茶碗なのかな・・。お金の問題じゃないかも」
浅井さんも苦しそう。
先生になんてお詫びすればいいんだろう。そんな、大事な茶碗を割ってしまうなんて。
泣いても割れた茶碗は戻らない。わかっているけど、ぽろり、涙がこぼれてしまった。
「開発先生には正直に話した方がいいわね。弁償とかの問題じゃないだろうけど、その上で私達ができる精一杯の償いをさせて頂きましょう。」
浅井さんはぱっくりと割れた絵唐津の断面に視線を落としながら言った。
私達にできる精一杯の償い・・・なにができるだろう。
不意に、吉川奈緒が口を開いた。
「浅井さん、そのお茶碗、うちにしばらく預からせてもらえませんか?」

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茶杓削り会は、来週の日曜日開発先生のお宅(ということは若様のお宅!)で行われることになった。
その他その日に決まったことと言えば、彦星席は御園棚を使うこと、瓜の形の水指、星をちりばめたような蒔絵の棗。
茶碗は、ガイコツ先生が貸してくれることになった。
なんとか部活が終わった後に若様と話したかったけど、他の部員とわいわい話している若様にはなかなか近づけなかった。
くう〜っ!まあいいわ、茶杓削り会の時に、リベンジしよう!と固く心に誓った。

「ふうん、これがそのお茶碗。」
真希は部長に見せてもらった茶碗を手にとって眺めてみた。
次の練習日には、早くもガイコツ先生が茶会に使うお茶碗を貸してくれたらしい。珍しく早めに部活にやってきた真希が、同じく早めに来ていた部長さんにそのお茶碗を水屋で見せてもらっていた。
絵唐津、という焼き物だと聞いた。
こっくりとした深い土色の肌に、奔放なタッチの牛が描かれている。手に取るとひんやりと冷たいが、さわっているうちになじんでくるような、不思議な温かさも感じる。
浅井さんにそう伝えると、
「なかなかいい感性をもってるね、武田さん。茶碗は一楽、二萩、三唐津、とも言われるように、唐津焼は抹茶茶碗によく似合うって昔から言われてるのよ。」
と、嬉しそうに微笑んだ。
「ヘエ、なるほど・・・これを、こう、二回まわしてお客様にだすんですね。…そう言えば、どうして二回まわすんですか?」
「最初この牛の絵を自分が見えるように、お茶碗を手に持ってみて・・・。そう。そして、二回まわしてみて?そしたら、牛の絵が相手に向いたでしょ?これは、お茶碗の正面をしっかり相手に向けて差し上げる為にまわすのよ。」
そうか。このお茶碗みたいに正面がわかりやすい絵になっていたら納得。
「お客様が飲むときに二回まわすのは、その正面を避けてへりくだる姿勢を表すためかな。」
「へりくだる?」
「う〜ん、自分のようなものがお茶碗の正面から飲むなんてもったいない、って謙遜する、という感じかしら。だから別に必ず二回まわさなければいけないと言うことでもないよね。ちょっとずらすのも間違いではないし、えらい立場の人なんかはまわさずにそのまま飲むっていう時もあるらしいけど。」
そう言う意味があるんだ。何となく、茶道の茶碗って二回まわすイメージだけあったけど。
「面白いですね。一つ一つの動作に意味が込められてるんだ。…そう言えば、茶会の水指し、なんで瓜なんですか?」
「うん、聞いた話によると、七夕の飾りに牽牛には瓜を、織女には5色の糸を捧げるんだって。瓜から生まれた瓜子姫にちなんで、織物が上達するように願いを込められているみたいね。」
「瓜子姫!初めて聞いた〜!なんだか私、日本人なのに茶道を初めてから知ったこと、たくさんあるなあ。」
さて、と立ち上がった。
勢いをつけて立ち上がってしまった。
悪いことに、足がぶつかったテーブルの上には、絵唐津の茶碗が置いてあった。
しかも、端の方に置いてあった茶碗は勢いを受けてごつ、と転がり落ちた。
はっ。
真希も浅井部長も息をのんだが、遅かった。
牛の絵が描かれている茶碗は、ぱかっと二つに割れていた。

29

次の部活の日、大学から打ち合わせに参加したのは2人、トトロ部長さんとバンビ副部長さんだった。
まあ、そんなに都合良く若様に会えるわけないか・・・と頭ではわかっていても、かなりがっかり。
「川を挟んで両側で野点ね・・・面白そうね!いっそのこと、それぞれうちとそっちで受け持つっていうのはどう?」
黒田バンビは相変わらずきびきびと気持ちのいいしゃべり方で話してくれる。
「織り姫席と、彦星席、ですか・・・それならうちも有り難いです!なにしろ、人出も道具も足りなくて。」
「ねっ!?柴田さん、オーケーですよね!浅井ちゃんはどっちの席がいい?」
柴田さん(と言うのがトトロさんの名前らしい)は大きな体に腕組みをして、ニコニコと頷いている。
どんと構えて、副部長を信頼している様子が伝わってくる。この二人、いいコンビかも。
「え、いいですか、私達に選ばせてもらっても。えと、・・・じゃ、彦星の席を担当させて頂きたいな。」
おや。意外にも浅井さんは彦星を選んだか。まさか、いくら男前だからと言って自分が彦星になるつもりじゃ・・・。
「いかがでしょうか、開発先生。」
浅井部長は横に座っているガイコツ先生の方を向いた。
「いいでしょう。学生茶道ですからね。高校と大学でお互いに勉強し合いなさい。ただしお客様のことをよく考えて、気持ちよくお茶を飲んで頂けるように。」
「はい。」
全員が頷いた。
やはり大学生がはいると具体的な話も早い。
会場の設営、水屋の設置、役割分担もさくさくと決められていく。
「問題は、天気だな。」
トトロさんが言った。
「『降らずとも雨の用意』、ね。野点の時は雨が降った場合のことも考えておかなくちゃ・・・」
バンビも頷く。
そうだ。外でやるんだから、当日雨が降ってしまったら、どうしようもない。
「うーん、・・ま、雨が降ったらここの和室でやるしかないってのが現実的かな。」
浅井さんも思案顔。
和室かぁ・・・せっかくやるんだから、どうせなら晴れて外の川沿いでできたらいいなあ。
真希が晴天の下の茶席を思い描いている間に、話題は道具の話になっていた。
「茶杓がね、適当なのが無くって・・・毎年同じものを出すのもちょっとつまらないかなと思ってるんですが・・吉川さん、茶杓のリスト持ってきてくれる?」
「はい。」
吉川奈緒が水屋から一枚の表を持ってきて、読み上げる。
「淡々斎作『天の川』、これはここ数年使っています。後は鵬雲斎作『寿山』、大徳寺○○和尚作『友の和』、大徳寺△△老師作『紅葉』・・・あんまりふさわしい銘の茶杓は無いですね・・・」
「自分たちで削ったらいかが?」
ガイコツ先生が言い出した。
「その昔は茶人達が自分で削った茶杓を用いて茶席に臨んだものですよ。この際だから自分たちで削ってみるのもいいものですよ。」
「はあ、でも削るっていっても・・・そんな簡単に?」
ガラッと入り口の戸が開いた。
「ちわす。ばあちゃん迎えに来た。」
若様だ!!
真希の背中はビン!となった。
「隆史!行儀が悪い!」
ガイコツ先生がすかさず叱咤。
「はい・・・失礼しました。皆さん、こんにちわ。」
おばあちゃんに叱られて、若様は襖の奥で正座し、一礼した。真希と目が合い、にこっと目で合図。真希は慌てて頭を下げた。
「で、どうなった?七夕茶会の方は」
にじってこちらの方へ寄ってくる若様に、先生が言った。
「隆史、おまえが茶杓削り指導してあげなさい。」
「えっ?隆史さん、茶杓削られるんですか?」
ヤマタクが素っ頓狂な声を出す。
「おう、これでも何十本かは削ってるよ。いいでしょう。お教えしますよ。で、だれに?」
すごい、若様ってば茶杓まで削れるんだ〜!
浅井さんがくるっと見回した。
「茶杓削ってみたい人?」
一瞬みんなが顔を見合わせた。そりゃ、若様直々に教えてくださるなんて、こんなチャンス滅多に無いんだろうと思うけど・・・私なんかにできるの!?どうしよう、手挙げようかな・・・。
「はい。」
手を挙げたのは、細川君、ヤマタク、そして千恵(!)。
「あっ・・私も!」
慌てて真希も手を挙げた。
浅井部長はひいふうみ・・・と数えながら
「私も削ってみたいな。全部で5人だけど、いいですか?隆史さん」
目をきらきらさせて言った。

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