映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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64 内景 楽屋 夜

かび臭くて狭苦しい。ポータブル・シャワーが一台と化粧台が一台、他にはほとんど何もない。サロメは肩からヘビを下ろして化粧台の上に置く。デッカードはヘビが身をよじってライトの熱の方へ行くのをじっと見ている。

デッカード
こいつは本物なんですか?

サロメ
もちろん本物じゃないわ。本物のヘビを買う余裕があったら、こんなところで働いていると思う?

デッカード
いい仕事だ。

サロメ
ヘビのことを言っているのよね。

デッカードはうなずく。彼女は衣装を脱いでいる…衣装はあまり多くないが。

サロメ
最高の出来よ。

デッカード
餌も食べるんですか?

サロメ
そんな訳ないでしょ。

彼は手を伸ばしてヘビに触れる。指先が触れると電気的なパチッという音がする。彼はショックで手を引っ込める。

サロメ
ちょっと!

デッカード
すいません。

サロメ
ねえ!あたしの仕事を台無しにするんじゃなくて自分の仕事をしてよね?

彼女はついたての向こうへするりと入り込み、シャワーのスイッチを入れる。デッカードはさも壁を調べているかのように、部屋の中をゆっくり歩き回り始める。

デッカード
あいつらには、被害者に何も知られずに汚いことをするやり方があるんですよ。

彼の視線は彼女の持ち物すべての上を動いている。

デッカード
男どもが美しい体を一目見るためにどれだけのことをするか知ったら、あなたは驚くでしょうなあ。

サロメ
そうでしょうね。

デッカード
ゲス野郎どもは女性の着替えを覗けるように、壁に小さな穴を開けるんです。

驚いたことに、彼は実際に穴をひとつ見つける。穴は壁の低い位置に開いている。仕事に背を向けるのは良い考えではないが、彼は誘惑に逆らえない。

サロメ
それで、もし誰かが私を「搾取」しようとしていたら?誰のところへ行けばいいの?

デッカードは穴から、一組の太った脚をのぞき見ている。

デッカード
わたしです。

サロメ
じゃあ、あなたについては誰のところへ行けばいいの?

彼は振り返る。彼女はシャワーを出ていて、しずくの垂れる裸のままだ。彼女は黒いかつらを取る。彼女の髪は短いブロンドだ。

デッカードはモンタージュ写真から即座に彼女が誰かを悟る。彼は彼女をちょっと長く見つめすぎている。

デッカード
えーっと?

デッカードはにっこり笑い、彼女は振り返る。

彼女はテーブルからタオルを取って身体を拭き始める。ヘビは化粧品の間を通って、女主人のところへ帰ろうと舌をちらちらさせている。彼女はヘビを撫でてやろうとぼんやり手を伸ばし、急に笑い出す。

ゾーラ
物事は見た目とは違っているもの、って感じることはある?

彼女の手がヘビの頭をぎゅっと握る。デッカードにはヘビが飛んで来るのが見えたが、間に合わない。彼女はデッカードを強く殴りつけ、彼は吹っ飛んでしまう。彼が床に倒れる前に、彼女が彼の腹を蹴飛ばす。もう一度ヘビがひゅんと宙を切り裂き、デッカードは転がって避ける。激しく叩きつけられ、ヘビは床にぶつかってちぎれてしまう。デッカードはレーザー銃に手を伸ばすが、彼女はもうドアを出ている。


65 内景 通路 夜

デッカードは跳ねるように部屋を出て、ゾーラが通路の突き当りのドアを出て行くのを見る。彼は彼女を追って走り出し、そのドアに取り付いて勢いよく開ける。真っ暗だ。彼女のハイヒールが金属の階段を踏む騒々しい音がする。


66 外景 街路 オペラハウス 夜

ひどい雨が降っている。

最近ではオペラハウスの前は車の通行が禁止され、歩行者しかいない。金曜日の夜には異様な場所で、行商人や売春婦、貧しいが好奇心は旺盛な庶民が歩道や明るく照らされた露天の周りにうごめいている。レインコートだけを身につけたゾーラは、このノミの市の雰囲気になじんでいる。彼女は走らないようにしながら、できるだけ急いで群衆の中をすり抜けていく。デッカードは雨宿りの場所を求めて走る人々の波を避け、かわそうとしながら、それほど引き離されてはいない。

彼女は交差点まで来ると商店街を外れて、もう少し人通りの少ない通りへ曲がる。彼女は肩越しに後をちらりと見る。彼女は急に走り出し、二人の歩行者にまともにぶつかる。三人とも倒れる。

デッカードは群衆の外に出て、彼女がちょうど立ち上がったのを見る。彼女も彼を見て走り出す。二人の歩行者が邪魔になって撃つことはできない。彼は二人のそばを駆け抜けると片膝をついて、レーザー銃を水平に構える。

デッカード
止まれ、撃つぞ!

彼女は止まらない。レーザーの光線が空気を切り裂いて光るが、彼女はもう角を曲っている。

急いで動くと痛む下唇を噛んだままで、デッカードは立ち上がって最初に来た車の前へ飛び出す。車はブレーキ音を上げて停まる。デッカードはドアを開けようとするが、運転席の男は彼を警官だとは考えない。車は猛スピードで行ってしまう。

次に来た車は彼にぶつかるまいとスピードを落としてカーブを切る。デッカードは中の老婦人がロックする前にドアのところへ行き、ドアを引き開けて中に飛び込む。老婦人が悲鳴を上げ、デッカードは彼女を助手席へ押しやると車をスピンさせて正面を向かせる。老婦人は遠心力でドアへ張り付けられ、豚のようにキーキーわめく。

デッカードは角を曲がり、スピードを上げて街路を走らせる。長く人通りのない街路が猛スピートで過ぎていく。老婦人が見たいと思うようなものはない…彼女は手で目を覆ってすすり泣きながら、死ぬ前に気絶したいと願っている。

デッカードは急ハンドルで次の角を左に曲がり、車を転覆させそうになる。車は跳ねるように角を曲がり、彼はアクセルを踏み込む。

ゾーラは百ヤード前方、街路の中ほどにいて、人通りの多い商店街へ戻ろうとしている。彼女は脚が速いが、自動車の方が速い。

デッカードは彼女を追い越すとブレーキを踏み、車は70フィートほどスリップして車体を横にして停まる。ドアが勢いよく開き、彼が撃ちながら転がり出てくる。

ゾーラは逃げ場がなく、屈みこんで銃弾を避ける。唯一の逃げ場は…

彼女は自分の左側にあるショーケースを突き破り、ガラスが粉々に砕ける。

ショーケースは商店街に正面を向けた、一つづきになっている店の端にある。デッカードは彼女が開けた穴へ駆け寄り、彼女が開けたぎざぎざのトンネルを通して撃つ。ゾーラは次から次にガラスを突き破り、身体を切り裂かれ、撃たれながらもデッカードのレーザーから逃れようとする。だがそれは叶わない。

デッカードの最後の銃弾が彼女の頭蓋の付根に穴を開ける。彼女は絶命するが、その身体は止まらない。残った身体はそのスピードで最後の二枚のガラスを突き破り、街路へ飛び出す。そこで彼女は駐車している自動車に激突する。車体の側面にめり込んでしまうほどの力で。

背中を丸め、荒い息をしながらデッカードはゆっくりと前へ進む。群衆が集まり始めている。誰もが興味を惹かれ、あらゆる方向から集まってくる。

デッカードはひと目見ようと群衆をかき分けて進む。

あまり良い眺めではない。まるでサロメと自動車が互いを喰らい合ったように見える。金属と肉の、血まみれの饗宴。

デッカードはうんざりし、疲れ果ててうなだれる。周囲の騒ぎが激しく、彼は後ろから警官が三人近づいてくるのに気づかない。

警官
銃を捨てろ!

デッカードは彼らに背中を向けている。警官たちは扇型に広がり、腰を落として銃を構えている。デッカードはレーザー銃を捨てる。警官のうち二人が駆け寄ってきて彼をぐるりと振り向かせ、三人目が彼の身体を探る。

さらに警官が二人到着し、油断のない、怒りの目つきで人々を押し返していく…ここは警官にとって良い所ではないのだ。

身体検査をする警官が、デッカードが足首に付けているレーザー銃を見つける。彼は唸り声を上げながらレーザー銃を取り上げ、この場の責任者である巡査部長に手渡す。

巡査部長
腹ばいになれ!

デッカードはそんなことをする気分ではない。

デッカード
なあいいか、巡査部長…

彼はIDに手を伸ばす。ゴムびきの警棒を持った警官が、デッカードの頭を殴りつける。

スリルからスリルへ。群衆の中の誰かが悲痛な声で叫んでいる。それが、デッカードが倒れながら最後に聞いたものだ。警官は隠している武器があるのだろうとデッカードの上着の中を探るが、その予想は外れで、出てきたのはIDだ。警官はそれをしばらく見て、そして顔を上げる。

警官
ねえ巡査部長、こいつは警官ですよ。

気まずい状況だ。

巡査部長
野次馬を追い払え。

警官たちが群衆を押し戻し始める。わずかな間だが、群衆の一人がレオンによく似ているように見える。

 

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