映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

全体表示

[ リスト ]

 
77 内景 病院の廊下と病室 昼間

ホールデンは「鉄の肺」を思わせる装置の中に横たわっている。彼の頭のすぐ上には、肉体の機能を表示する生体反応ランプの列が彼の方へ向けて取り付けられている。

デッカードは友人のそばで、椅子に腰掛けている。

ホールデンはやつれ、灰色の顔をして、頭を動かすことができない。だが彼はカナリアを食べたネコのようににこにこしている。

デッカード
具合はどうだい、じいさん?

ホールデンの声はただのささやきだ…クラスの一番後ろの席のいたずら者から聞こえるようなささやき声。

ホールデン
いいよ。まあ、本当にいい調子じゃないとはわかっているが、気分はいい。俺の新しい服はどうだい?

デッカード
そうだな、シワが寄ってしまう心配はしなくていいな。

ホールデンの目が閉じ、彼の微笑みが大きくなって、けいれんのような笑い声が口から押し出されてくる。

ホールデン
笑わせないでくれ。小便が出ちまうんだ。

デッカード
すまない。

ホールデン
おい、いいんだよ。小便するのは好きだ。それで、おまえの方はどうなんだ?

デッカード
うまくやってるよ。

ホールデン
聞くところでは、おまえはよくやっているらしいな。ブライアントはおまえが一人で神の軍団みたいにやっていると言ってたよ。ずいぶん金も稼いでるんだろ、ええ?

デッカード
ああ。
(少しの間)
だけど、そのことであんたと話がしたかったんだ。

ホールデン
金のことか?

デッカード
違うよ。ちょっと問題があってね。

ホールデン
聞かせてもらおうじゃないか。

デッカード
俺は、このネクサス6たちに同情し始めているらしいんだ。

ホールデンはクスクス笑う。そしてまた笑い出す。パネル上の青いライトが一つ、強く輝きはじめる。二人はそれに気づく。

デッカード
それ、何だ?

ホールデン
小便が出ているんだ。

二人はライトが消えるのを待つ。

ホールデン
デック、ちょっと聞かせてくれ。おまえはあのアンドロイドたちの一人と身体の関係を持ってるのか?

デッカードは否定しない。ホールデンは天使みたいにニコニコ笑う。

ホールデン
思ったとおりだ…商売を危うくするものの一つだな…旧友よ、おまえは自分の獲物とセックスしたんだ。そいつは問題を引き起こすぞ。おまえがそいつを殺さない限りな。

デッカードは彼のクスクス笑いが止まるまで待たなければならない。

デッカード
セックスじゃなく…愛だ、というのはどうだ?

ホールデンは声に笑いが混じるのをこらえようと下唇を噛むが、こらえきれない。

ホールデン
愛はセックスの別名にすぎないんだよ。愛はセックスでもあり、セックスは愛でもある…おまえがそれをどう呼んでも構わないが、それはアンドロイドには持つことができないものだよ。

デッカード
彼らはそんな…

ホールデン
デック、俺にはあいつらが何なのかわかってるんだ…いいか、あいつらは何かを感じるふりをすることはできるかもしれん。だが古い心にむき出しの熱い感情を載せても…無理なんだよ。

ホールデンは息を整えようと、話すのを少し止める。

ホールデン
信じろよ、ベテランから学ぶんだ。どれだけ技術が進んでも、人間は何かを感じることのできるものを作り出すことはできないんだ。それは矛盾することなんだよ。おまえは食器洗浄機とも同じようにファックするかもしれないがね。

ホールデンは笑うが、デッカードは笑わない。

ホールデン
いいから外に出て、良い仕事を続けるんだ。

ホールデンの囁きは聞き取れなくなっていく。

ホールデン
それを忘れるなよ、デック。俺は眠くなってきた。おまえと話せてよかったよ。

デッカードは立ち上がる。

デッカード
ありがとう。

だがホールデンはもう眠っている。彼はそこに立ったまましばらく彼を見て、そして出て行く。


78 内景 デッカードのアパート 昼間

彼はむっつりと、瞑想するかのようにカウチに座っている。物音がする。彼の視線がドアへ向けられる。またドアの錠が開いている。レイチェルが入ってくる。彼を見て驚いた様子だ。彼も同じく驚いている。

レイチェル
私は戻ってくるって言ったでしょう。

デッカード
そんなこと言ったか?

レイチェル
あなたは聞いていなかったのよ。眠っていたのね。

どうもそうらしい。

レイチェル
私が来て、嬉しい?

彼は嬉しい。彼女は元気だ。昼間にこの部屋を見たことがないのだ。彼は彼女が散らかった部屋を歩き回るのを、嬉しそうにじっと見ている。彼女は小さな額に入った写真を見つける。それを拾い上げる。写真には猟銃を持った男と、ウズラを掲げた少年が写っている。

レイチェル
これ、誰なの?

デッカード
俺と、俺の親父だ。

レイチェル
お父さんはどこにいるの?

デッカード
死んだよ。

レイチェル
そうなの。

彼女は写真を置いて、彼のところへ来る。

レイチェル
どうして仕事をしていないの?

デッカード
しているよ。カウチに座って推理をするのも仕事のうちさ。

レイチェル
調子はどうなの?

デッカード
あまりよくはないね。

彼女はデッカードの隣りに座る。

二人ともひどく嬉しそうに、そこに座ってまっすぐ前を見ている。彼は彼女を見る。彼女は彼を見る。

レイチェル
みんな午後には何をするの?

デッカード
頭の良い奴なら、昼寝をするね。


79 デッカードの寝室 昼間

二人はシーツをかぶっている。レイチェルは仰向けになって天井を見ている。髪が海藻のように枕の上に広がっている。デッカードは彼女の隣に横たわって、自分の宝物をじっと見ている。

レイチェル
あなたは夢を見る?

デッカード
ああ。ときどきね。

レイチェル
私も夢を見れればいいのに。

彼は彼女の肩に手をやる。

デッカード
そうやって願うことも、夢を見るようなものだよ。

彼の手がシーツの下に入る。

レイチェル
私が言いたいのは、眠っているときに、ってこと。

彼女はいい気分だ。彼は身体を寄せる。

レイチェル
お父さまが亡くなったとき、あなたは泣いた?

デッカード
ああ。

レイチェル
それも私にはできないわ。

彼は彼女の頬に軽くキスする。

レイチェル
夢を見ている時ほどに自由な者はいない。本でそう読んだわ。

デッカード
ゆうべはあまり良くなかったんだろう?

レイチェル
わからないわ、比べるものがないから。もっと何かあるんだと思っていたみたい。

デッカード
何を?

レイチェル
わからない…何かを見落としたみたい。

デッカード
どんな?

レイチェル
はっきりしないわ。秘密があるの?

彼女の顔が近い。彼女はデッカードをまっすぐ見ている。彼女の唇がすぐそこにある。

デッカード
知らないよ。もしあるなら、見つけてみたいね。

ゆっくりと彼女の唇が触れて、彼の腕が彼女の身体を抱く。

 

閉じる コメント(0)

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

開く トラックバック(0)


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事