映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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80 内景 セバスチャンのアパート 昼間

バッティとプリス、メアリーはテーブルについて、彼らの主人を見つめている。セバスチャンは口元へ持っていったフォークを止め、一人ずつ見つめ返している。口に出しては言わないが、彼らと一緒に家にいるのは、人造動物たちと一緒にいるのと同じぐらい快適だ。

バッティ
どうして俺たちをじろじろ見ているんだ?

セバスチャン
君たちはみんな…すごく変わってる。

バッティは微笑み、うなずいて彼に事実を伝える。セバスチャンは確かにそれを理解する。

バッティ
何がだ、セバスチャン?

セバスチャン
君たちはアンドロイドだね。

長い間がある。

プリス
どうしてそう思うの?

セバスチャン
君たちはみんな、すごく完璧だ。

セバスチャンはにっこり笑う。

セバスチャン
君たちはどの世代なんだい?

バッティ
ネクサス6だ。
        
セバスチャンが口笛を吹く。メアリーの頭がわずかに揺れている。プリスは立ち上がって、カウチの方へ行く。バッティはこれ以上ないほどに嬉しそうだ。

バッティ
淑女のみなさん、セバスチャンは信用できるぞ。彼はずっと機械を相手にしてきた。彼は天才で、とても鋭い男なんだ。

セバスチャンはクリスマス・イブの男の子のようだ。

セバスチャン
お願いがあるんだけど…

彼の声は震えている。

セバスチャン
なにか見せてくれないか?

バッティ
どんなものを?

セバスチャン
そうだな…

見たいものはいくらでもあるが、彼は興奮しすぎていて、一つを考えることができない。

バッティ
セバスチャン、俺たちはコンピューターじゃない。生きているんだぞ。

プリスが誇らしげに元気づく。

プリス
我思う、ゆえに我あり、よ。

バッティ
いいぞ、プリス。さあ、どうしてかを彼に教えてやれ。

それは命令で、プリスは喜んで従う。彼女はしばらくの間、手を膝に組んで行儀よく静かに座っている。メアリーはこんな風に見せびらかすのは好きではないが、バッティは喜んでいる。

プリスが膝に組んだ手が眼で見えないほどすばやく動き、セバスチャンが飛び上がるような激しさで、彼女の両側のカウチの表面へ突き立てられる。彼女は腕を肘までカウチの中へ突き入れ、スプリングと詰め物を引きずり出す。くいしばった歯を除けば、彼女はまるで天使のように微笑んでいる。

セバスチャンはたった今悪魔を見たかのように両眼を見開き、仰天して、動くこともできない。彼はその悪魔が友人でよかった、と神経質に笑う。

バッティ
俺たちには共通点がたくさんある。

セバスチャン
君たちは地球に来れないし、僕は宇宙に行けないってことかい?

バッティ
それだけじゃないが、俺たちは共通の問題を抱えている。老化が早すぎるってことだ。だが、俺たちはまだ死にたいと思っていない。

セバスチャン
もちろんそうさ。

バッティ
君は俺たちを助けられるかもしれない。

セバスチャン
ロイ、僕は生体工学には詳しくないんだ。詳しければよかったと思うけれど、君たちは僕の専門外なんだ。

バッティ
すぐに救いが見つからないと、プリスは長く生きられないんだぞ。

セバスチャンはちらりと盗み見する。プリスは子供のような大きな眼で彼を見つめていてる。セバスチャンはバッティに視線を戻す。心を動かされはしたが、手助けできることはない。

バッティ
君の友人はどうだ、この建物を持っている男は?

セバスチャン
タイレル博士かい?

バッティはうなずく。

セバスチャン
彼は僕の友達というわけじゃないよ。たまに彼の仕事をしているだけで。

バッティ
セバスチャン、タイレルなら俺たちを助けられるかもしれない。

セバスチャン
彼ならできる?

バッティ
彼の会社が俺たちを作ったんだ。

セバスチャン
彼に伝えておいてあげるよ。

バッティ
彼に直接会えればもっといいんだがな。だが彼は簡単に近づける人間じゃない。

セバスチャン
そうだね。

バッティ
いつ、君が手がけているものを届けるんだ?

セバスチャン
今日の午後だよ。

バッティは身を乗り出して、セバスチャンの眼をまっすぐに覗きこむ。

バッティ
君は俺たちを助けてくれるか?

もしセバスチャンがそうしたかったとしても、彼には断ることはできない。

セバスチャン
わかったよ。

プリスは微笑みながら座っている。メアリーは安堵の溜息をつき、バッティは感謝を込めてうなずきながら椅子にもたれる。

バッティ
セバスチャン、君が俺たちを見つけてくれて本当によかったよ。君はどう思う、メアリー?

メアリー
私たちを助けてくれた人間が、この世界にもう一人いるとは思えないわ。

バッティ
プリスは?

プリスは立ち上がってセバスチャンに近づき、キスをする。

それは強い衝撃を与える。セバスチャンは涙をこらえようと周囲を見回す。

バッティ
君は俺たちにとって唯一の、そして最高の友人だよ。

セバスチャン
ありがとう。


81 内景 デッカードのアパート 寝室 昼間

レイチェルはデッカードのシーツの一枚にくるまって、ベッドに横たわっている。彼女はシーツから顔を出していて、眼が部屋の中を見回している。デッカードは彼女の隣に横たわっている。腹上死した男のようだ。

レイチェル
最後にここを掃除したのはいつなの?

デッカード
んんー?

レイチェル
今まであなたのアパートを掃除したことはあるの?

デッカード
見た目にだまされちゃいけない。

レイチェル
見た目が汚いのよ…どうして人を頼まないの?

彼は寝返りを打ち、彼女の脚を眺める。

デッカード
物の配置をめちゃくちゃにされちまうからさ。

彼は彼女の太ももの裏にキスをする。

レイチェル
その配置の周りをきれいにしてくれるかもしれないわ。

デッカード
自分の持ち物をひっかき回されるのは好きじゃないんだ。

彼は彼女のもう一方の太ももにキスすると、立ち上がって浴室へ向かう。

デッカードの声
君がやってみたいんなら、居間のクローゼットに掃除機があるよ。

レイチェルはしばらくそのまま横になっているが、立ち上がって居間へ行き、クローゼットのドアを開ける。掃除機は簡単には取り出せないが、彼女はやっとのことで掃除機を引きずり出す。彼女がコンセントを差そうとすると…

デッカード
おいダメだよ、やめてくれ。

彼はシーツを身体に巻いて、戸口から彼女を見ている。

レイチェル
でもコンセントを差さないで、どうやって…

デッカード
コンセントを差さないで、身ぶりだけやってみるんだ。

レイチェル
じゃあ、あなたはどうして…

デッカード
あの音が嫌いなんだ。練習するだけにしてくれ。「練習が完全をもたらす」だよ。

彼女は、この人は頭がおかしいとでもいうように彼を見つめている。

デッカード
俺は真剣だよ。さあやれよ。どんな風に掃除機をかけるのか見せてくれ。

彼女は気乗りしない様子で、掃除機を使う手つきをしてみせる。

デッカード
そのカウチの下はどうしたんだ。さあ。

彼女は前屈みになってカウチの下へ手を伸ばす。デッカードは椅子を引っぱって来て、座って頬杖をつく。彼女が彼を振り返る。

レイチェル
これ、ばかみたいな気がするわ。

デッカード
ばかみたいと感じるのも賢い女の子には良いことさ。君への教育の一部だよ。

彼女は掃除機を捨てて床に座り込む。デッカードは立ち上がって彼女の方へ行く。彼女の視線が彼が身体に巻いたシーツの中ほどまで来て、彼女は立ち去る。

レイチェル
デッカード、あなたどうかしてるわ。

デッカード
俺は最高の気分なんだけどね。


82 外景 タイレルの動物保護地 夕暮れ

大邸宅と豪華な庭園がある。セバスチャンのくたびれたトラックが、より高価な車に囲まれて停まっている。そこにはスピナーと、1928年型のデューセンバーグも混じっている。


83 外景 タイレルの邸宅 夕方

書斎。狩りの戦利品である獲物の首がずらりと並んでいる。その中にセバスチャンが、バスケットボールほどの大きさの「卵」を膝に乗せて、行儀よく背筋を伸ばして座っている。

ハンニバル・チュー爺さんは正しかった。金持ちはあなたを待たせる。セバスチャンは立ち上がり、獲物たちの間を慎重に通って、庭園が見える窓へ近づく。


84 外景 タイレルの邸宅のプール 夕方

タイレルの若い妻が飛び込み板に座って、一番下の息子とプールにいる夫を見ている。年長の息子二人は、父親の目をひこうと競争で泳いでいる。

プールのそばに年老いた使用人がいて、楽しげな様子をじっと見ている。そしてカップを載せた盆を持って屋敷の方へ向かう。


85 外景 高台 夕暮れ

庭園を見渡す高台の向こうに人影が一つ立ち、じっと見張っている。猛禽のように待ちながら。


86 外景 タイレルの動物保護地 夕暮れ

ウインター・ローズの低木の間にある砂利敷の小道でタイレルは振り返り、彼の王国を照らす静かな最後の光をじっと見る。動物の一頭が低く悲しげに鳴く声が、その瞬間を気持ちのよいものにしてくれる。

彼は年取った庭師のそばをぶらぶら歩いて行く。庭師は帽子に手をやって挨拶する。タイレルは階段を登って邸宅へ入っていく。


87 内景 タイレルの書斎 夜

クッキーとミルクを載せた盆のそばで、セバスチャンは膝に「卵」を載せて辛抱強く座っている。ドアが開き、彼は期待して立ち上がる。入ってきたのはタイレルのボディガードのスタイルズだ。彼は「ジャックと豆の木」の巨人役を演じられそうな男だ。

スタイルズ
よし、そいつを今もらうよ。

セバスチャンは卵を直接ボスに手渡したかったが、スタイルズは卵を持ってドアを出ようとする。その時、セバスチャンが彼を呼び止める。

セバスチャン
待って!

彼はほとんど忘れていたのだ。

セバスチャン
誰かが操縦しなくちゃ、飛べないよ。

セバスチャンは彼に小さな箱を手渡す。スタイルズはそれをポケットに突っ込み、後ろ手にドアを閉める。


88 外景 タイレルの動物保護地 夜

草地に六頭のバッファローが、堂々とした様子で銅像のように身動きもせず立っている。彼らの毛むくじゃらの頭が急に動いて、誰かが通るのをじっと見る。

暗闇と静寂の中、バッティは好奇心の強い動物たちを見て足を止め、それから音を立てずに邸宅の方へ向かう。

 

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