映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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93 内景 デッカードの寝室 夜

ベッドの上に本が散らばっている。レイチェルがその一冊を手に胡座をかいて座り、美しい自然の写真を次々に見ている。デッカードは彼女の隣りに座り、恋人のように、父親のように彼女を見守っている。

デッカード(声のみ)
彼女は自然の風景を見たことがなかった。それに関する本を読んだことさえなかった。彼女は俺が持っているものを全て読み、そして俺たちは話し合った。俺たちが話し合わなかった話題があり、俺たちが口にしなかった、口にできなかった言葉があった。死、未来、現実といった言葉だ。だがそうすることは難しかった。彼女は好奇心が強く、聞きたいことで一杯だったからだ。彼女は俺が知っていた誰よりも生気にあふれていた。

彼女は写真の美しさに打たれて顔を上げる。だが言葉にすることはない。それは彼女の眼の中にある。彼女が新たに知ったことが形を成していき、彼女はデッカードをじっと見つめている。

レイチェル
あなたと私はいい友だちよね?

彼はそのことをよく考え、彼女はそのことの不思議さに微笑みながら、彼を見つめている。

レイチェル
それ、すごく気楽だわ。

確信があるかどうかわからぬまま、彼はうなずく。彼女はその真面目くさった様子に笑う。レイチェルは魅力的だ。デッカード自身もなかなか魅力的だ。

レイチェル
今まで誰かと長く付き合ったことあるの?

デッカード
女と、ってことかい?

レイチェル
そうよ。

デッカード
長い間ってどのくらいだ?

レイチェル
十年ね。

デッカード
ないね。俺のことをそんなに我慢できた女はいなかったよ。

ベッドの隣にある電話のベルが鳴り出す。彼は手を伸ばし、受話器を耳に当てる。

デッカード
もしもし。

ブライアント
ブライアントだ。おまえ一人か?

デッカード
ああ。

ブライアント
彼女は一緒じゃないのか?

デッカード
誰のことだよ。

少しの間。

ブライアント
番地を書き留めろ。オリンピア・サウス、ビラ・ビータ地区、カナプト1700の十階だ。

デッカード
書いたよ。

ブライアント
よし、状況はこうだ。エルドン・タイレルと彼の家族、それに使用人の半分が惨殺された。この件は外部に漏れようとしている。すごい圧力がかかってる。ネクサス計画は抹消される。そこが終わったら、レイチェルという名前のネクサスを探して「引退」させるんだ。

デッカードは何も言わない。

ブライアント
おまえがやらないなら、俺たちがやる。これは絶対なんだ、デッカード。上層部からの命令なんだ。わかったな?

デッカード
ああ。わかった。

ブライアント
行け。

彼は受話器を置いて立ち上がる。彼女はベッドからじっと彼を見ている。彼は銃をベルトに差す。アンクル・ホルスターにも銃を差し、足首に巻き付ける。彼女はその行動をすべて見ている。

レイチェル
どうして「引退」と呼ぶの?どうして「殺人」と呼ばないの?

デッカード
殺人じゃないからさ。

レイチェル
苦しむかもしれない側のことも考えられるべきだと思わない?

デッカード
アンドロイドは苦しむふりをするだけだ…もしそうプログラムされていればだがね。

レイチェル
私たちの間に起きたことも、私がそのふりをしていると思うの?

デッカード
いや、そうは思わない。

彼女を見ることなく、彼は上着を着る。
彼は彼女に背中を向けて、部屋の真ん中に立っている。彼が振り返り、二人は向き合う。二人とも身動きしない。

デッカード
ここから出るなよ。ドアを開けるな。電話にも出るな。

レイチェル
それで何か違いがあるの?

デッカード
いいからここで待つんだ。

彼はドアの方へ行く。

レイチェル
私が考えていることがわかる?

デッカード
何だい?

レイチェル
この辺りにはね、私よりもっとプログラムで動いている人たちがいるってことよ。

彼は笑わざるをえない。

レイチェル
私がもう一つ考えていることがわかる?

デッカード
何だい?

レイチェル
今日は、私の人生で最高の日だった。

彼は背を向けて、ドアを出て行く。


94 内景 セバスチャンのアパート 夜

セバスチャンは作業卓を整理している。だが彼は心ここにあらずで、両手は震えている。

バッティとプリス、メアリーは部屋の反対側で話をしている。彼らの声は低い。

メアリー
まだ時間があるうちに逃げましょう。

バッティ
どこへ?

メアリー
どこでもいいわ。

バッティは微笑む。

バッティ
何が言いたいんだ?

メアリー
罠にはまらないようにしないと。

バッティ
メアリー、君は罠というものを甘く見ているよ。

セバスチャンが、ドアまでもう少しの所まで来ている。

バッティ
どこへ行くんだ、セバスチャン?

セバスチャン
僕はちょっと…

バッティ
だめだ、君は俺たちとここにいるんだ。俺たちの最後の夜を一緒にな。

彼らはじっと見つめている。

セバスチャンはドアから離れる。

バッティ
自分自身を明かりだと考えるんだよ、メアリー。消される前に、輝くんだ。

メアリーはそう考えるにはあまりに気弱すぎる。だがこの考え方はプリスには訴えるものがある。彼女とバッティは燃えるような視線を交わす。

セバスチャンは窓のそばにいる。

セバスチャン
誰かここに来るよ。

バッティは窓のそばへ行き、見下ろす。

バッティ
一人だ。
(彼は微笑む)
腕ききに違いない。

メアリー
なら、行って彼を殺して。

バッティ
それはあまりフェアじゃないな。

セバスチャンは今にも逃げ出しそうだ。バッティは彼を腕に抱く。

プリス
私がやりたいわ。

バッティ
いいだろう、だが彼を殺すなよ。みんなのために少し残してやるんだ。「代表作」としてな。

少しの間。

バッティ
明かりを消すんだ、プリス。

 

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