映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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103 内景 階段の吹き抜け 九階と十階の間 夜

デッカードが踊り場に出てくる。彼はゆっくり時間をかけて次の階、最後の階へと階段を登っていく。彼は踊り場に面した大きなドアの蝶番を撃ち、足で押す。ドアが大きなバーンという音を立てて倒れる。その反響が静寂に変わる。廊下には誰もいない。


104 内景 廊下 十階 夜

セバスチャンの部屋の真上だと見当をつけた部屋まで、彼は並んだドアの前を素早く、だが慎重に通り過ぎていく。彼はゆっくりとドアノブを回し、ドアを押し開ける。


105 内景 十階の部屋 夜

床の真ん中に空いた穴のほか、部屋には見るべきものがない。デッカードは背中を壁につけたまま寝室へ向かうが、物音を聞いて立ち止まる。それはフクロウがホウ、ホウと鳴く声のようで、廊下から聞こえてくる。


106 内景 十階の廊下 夜

デッカードはドアの角から廊下を見回す。突き当りにバッティがいる。局部用のサポーターと運動靴のほかは何も身につけていない。

バッティ
遊びたいか?

デッカードが撃つ。バッティは疾い。彼は身をかがめて戸口に駆け込む。そしてまたさっと現れる。

バッティ
丸腰の相手を撃つなんてあまりフェアじゃないな。おまえはいい奴だと思っていたんだがな。おまえは男じゃないのか!?

バッティは顔に、コマンチ族の戦士と服装倒錯者を合わせたような化粧をしている。彼の恐るべき傲慢さ…その身体の筋肉は膨れ上がって、興奮に震えている。

バッティ
それがここでのやり方だぞ、兄ちゃん!かかってこい!

電光のような疾さでバッティが廊下を走り、壁と壁の間をジグザグに折れながらデッカードの方へ向かってくる。バッティはあまりにも疾く、バッティの影が笑いながらデッカードの左側の壁を突き抜けるまでに、デッカードは三発しか撃つことができない。

デッカードはしばらくそこに立っている…ショックを飲み込み、そしてぎざぎざの穴が開いた壁に入っていく。バッティが彼の後ろにいる。

彼はデッカードの背中を膝で打ち、頭を叩く。デッカードは膝をつき、そして仰向けになる。バッティが彼のそばにひざまずいている。

バッティ
痛くないだろ、ええ?立ったほうがいいぞ。でないとおまえを殺さなきゃならん。おまえは生きていないと戦えない。そして戦わなければ、おまえは生きていられない。

デッカードの目は閉じられ、唇からは血が流れている。彼は息を吐いて努力する。彼は両手を胸の高さに持って行き、身体を起こし始める。

バッティ
それが根性ってもんだ。

バッティはまるで闘牛士のように歩いていく。その時までにはデッカードは立ち上がっていて、バッティはドアの一つを通って姿を消す。

デッカードは口の血を拭い、屈みこんでレーザー銃を拾い上げ、弾丸を装填する。そしてバッティの嘲るような声の出所を探して廊下を見下ろす。

バッティの声
かかってこいデッカード、おまえの力を見せてみろ!俺はこのドアの反対側にいる。だがまっすぐ撃たなきゃだめだぞ、俺は素早いからな!

デッカードはそのドアへ行き、撃ち、蹴り開けてバッティを撃つ。だがそれは鏡に写っていたバッティにすぎない。


107 内景 十階の部屋 夜

部屋の突き当りの、壁の長さいっぱいの鏡が砕ける。バッティは彼のそばにいて、デッカードの手をつかんで、歩み寄る。

バッティ
まっすぐに撃つのが上手くないらしいな。

二人は向き合う。

バッティ
お前に勝ち目はない、そうだろう?

うんざりした失望を大げさに表して、バッティは首を一方へ傾ける。

バッティ
おまえのために程度を下げてやらなきゃならんようだな。おまえにハンデをやる。俺はもう壁を突き破って走らない。それでいいか?ドアを使うと約束してやる。どうだ?

デッカードはにらみ返すが、返事をしない。バッティの中に急に怒りが巻き起こる。彼はデッカードをドアから放り出し、彼を床に転がすと、襟首をつかんで彼の頭を壁に叩きつける。

バッティ
どうした、頭を使おうぜ!


108 内景 十階の廊下 夜

バッティは廊下でデッカードを引きずっていき、ひざまずいてまた彼の頭を壁に叩きつける。

バッティ
考えろ!ここじゃちょっとばかり頭の柔らかさが必要だぞ!
(原文ではresilience=弾力が必要だ、と言っています。)

彼はさらにデッカードを引っぱっていき、また頭を叩きつける。

バッティ
おまえの肝っ玉はどこにあるんだ?ちっとは勇気を見せてみろ!

バッティの激情がおさまる。

デッカードは洗濯物の袋のように、バッティの手からぶら下がっている。

バッティ
ちょっと冷静さをなくしていたな…スポーツマン精神を捨てたわけじゃないんだ。もうしないよ。

彼はデッカードを放す。

バッティ
おまえの準備ができたら、廊下に来るからな。

バッティは歩いて行き、ドアの一つに入って姿を消す。

デッカードは膝をつき、しばらく壁にもたれて、それから拳で壁を殴りつける。

立ち上がった彼は少しふらついている。自分の呼吸で聞こえない音がないように、彼は息を止めて、耳を澄ませる。何の音もしない。バッティの気配はない。そばにレーザー銃が転がっている。彼は気にもとめない。

デッカードはできるだけ静かに、廊下を後ずさっていく。彼にはやるべき仕事があって、それを終わらせたかったが、正気を失っているわけではない。彼は踊り場まで来て、前を向く。

階段を一歩降りて、彼は立ち止まる。バッティが眼下の階段にいて、彼を見上げている。

バッティ
どこに行くんだ?

彼はしばらく、デッカードの返事を待つ。

バッティ
いかさまはなしだぞ。約束は約束だ。ハンデをつけてやった相手でも俺は尊敬してやるが、俺たちは最上階で戦うんだ。行ってレーザー銃を取って来い。俺が行くまで、おまえに何秒かくれてやろう。

デッカードは廊下へ振り返る。バッティは微笑む。

デッカードは廊下を走っていく。

バッティの声
いーち!

廊下の中ほどで、デッカードはレーザー銃を見つける。

バッティの声
にい!

デッカードは一番近いドアへ駆け込む。セバスチャンの部屋の真上の、床に穴が開いた部屋だ。デッカードはよく考える。

バッティの声
穴から飛び降りるのはやめろよ。そんなことをしたら怪我をするかもしれんぞ!
さん!

デッカードは廊下へ駆け戻り、別のドアを選んで中に入る。


109 十階の部屋 夜

なにか有利になるものはないかと、彼の眼があらゆるものの上を通って行く。彼はドアを開ける。そこはバスルームだ。配管は取り外され、壁が剥がされてレンガがむき出しになり、釘がつきだしている。ここは狭すぎる。


110 内景 十階の階段 夜

バッティが階段を登ってくる。

バッティ
ごお!


111 内景 十階の部屋 夜

デッカードは部屋の角を探している…射界が狭くてすむ位置を。彼はドアまで遮蔽物のない、部屋の突き当りを選ぶ。


112 内景 十階の廊下 夜

バッティがドアからの物音を聞きながら、廊下の真ん中を歩いてくる。

バッティ
ろーく!


113 内景 十階の部屋 夜

デッカードは部屋の隅に屈みこんで、狙いを付ける。彼は自分の手を見る。震えている。

バッティの声
なな!


114 十階の廊下 夜

あるドアの前にバッティが立ち、耳を澄ませている。

バッティ
ああ、彼はどこなんだろう。この中じゃないよなあ、俺はそうは思わないぞ。はーち!

彼は隣のドアへ行く。

バッティ
ここかもしれないな。でもそんな音はしないなあ。きゅう!

バッティは隣へ移る。デッカードがいる部屋のドアだ。


115 内景 十階の部屋 夜

デッカードは腰を落として息を潜めている…敏感な引き金の感覚があるだけ…静寂。バッティの足音がぎしぎし言いながら遠ざかっていくのが聞こえる。デッカードは周囲を見回す。背後の壁を手で探る。バッティの足音が戻ってくる。少しの間。

バッティ
じゅう!

ドアが吹き飛ぶ!

影がひとつ飛び込んでくる。デッカードは身体を回し、その影を追って速射を撃ち込んでいく。それはただのテレビだ。デッカードは振り返る。だがバッティはもう彼のそばにいる。彼の手をバッティがつかむ前に、デッカードは一発だけ発砲できる。バッティの右眼に穴が開く。血が彼の顔を流れて、デッカードに滴る。バッティの顔の右側はうまく機能していない。口の端が完全には閉まらなくなっていて、彼の声は聞き取りにくく、少しうつろだ。

バッティ
おまえが一点獲得だ。

傷を負わせたことも彼の高い能力を損ないはせず、ただ悪意を増しただけだ。彼はデッカードを部屋の奥の壁へ放り出す。デッカードが撃つ。バッティの肩に命中する。

バッティ
どうしたどうした!もう一回やってみろ!

彼は身体を前後に揺らし、コブラのような素早い動きでフェイントをかけ、ジグザグにステップし、興奮に歓声を上げながらデッカードに近づいてくる。デッカードは発砲するが、レーザー銃が空になるまで撃っても弾丸は当たらない。血まみれで狂乱したバッティが彼を突き飛ばす。

バッティ
どうしたんだ?俺のことが好きじゃないのか?俺は人間が作ったんだぞ!


116 内景 十階の廊下 夜

彼はデッカードをドアから突き出す。デッカードは足を滑らせて倒れる。彼の顔には恐怖がある。彼の強さは失われてしまった。何かが壊れ始めている。

バッティ
どうした?おまえらはより速くて、でかくて、優秀な奴が好きなんじゃないのか?

デッカードは床を足で蹴りながら、後ずさっていく。

バッティ
死ぬ時だ。

デッカードはレーザー銃を彼に投げつける。当たらない。バッティは頭をのけぞらせて笑う。一つ目の巨人が世界を喰おうとしている。急に彼が立ち止まる。彼の眼が壁をたどっていく。

バッティ
そうだ!

彼は手を伸ばして、何かをつまむ。唇をつぼめて、彼はそれを壁から引き抜く。それは長さ三インチの釘だ。

彼は釘をデッカードに差し出し、落とす。デッカードはそれを受け取る。

バッティ
おまえにやるよ。

バッティの顔の片側が残忍に微笑む。

バッティ
おまえの耳にそいつを入れて、押し込むんだ。もし駄目なら、眼でやってみろ。

デッカードは手の中の釘を見つめる。そして自分の死刑執行人を見上げる。

バッティ
信じろよ、俺がやろうとしていることよりも、そっちの方がましだぞ。

バッティはこの激励で、自分の獲物がもっと行動をかき立てられるかもしれないと期待しながら彼を見つめている。だがそうではないらしい。

バッティ
どうする?

デッカードはぱっと立ち上がって走りだす。だが階段へ向かうのではなく一番手近なドアへ曲がる。


117 内景 十階の部屋#2 夜

挑発はうまく行った。バッティは微笑み、楽しそうにドアへ歩いて行く。デッカードの怯えた悲鳴とガラスの割れる音がして、彼は立ち止まる。バッティは歩調を速めてその部屋へ向かう。

窓のガラスが粉々に割れている。カーテンが外に吸いだされて風にはためいている。

バッティ
クズめ。

バッティが窓に歩み寄る。デッカードが壁際から離れる。レーザー銃を両手で構え、バッティの頭蓋骨の付根に狙いをつけて、彼の背後にゆっくり近づいていく。バッティは身を乗り出しかけるが、眼下の歩道を見る前に、彼は気づく。彼は振り返る。

デッカードがもう一度撃つ。今度は狙い通りに命中する。バッティは失神したかのように崩れ落ち、どさりと床に倒れる。

デッカードは震えはじめる。彼の腕がだらりと伸び、彼は頭をのけぞらせて、眼を閉じる。彼はまた息ができるようになる。
        
床の上で、バッティの片手がゆっくりとデッカードの足首へ伸びていく。

バナナの皮で滑った男のような予期せぬ唐突さで、デッカードが倒れる。恐怖に満ちた顔で、彼はレーザー銃が空になるまでバッティの身体に銃弾を撃ち込む…だが手は外れない。もどかしさに金切り声を上げながら、彼はレーザー銃を捨てて、動物のようにバッティの死んだ指に爪を立てる…だがその指は溶接されたように閉じられたままだ。

デッカードは後ろにバッティを引きずったままで這い始める。彼はなんとかドアを通り抜け、よろめきながら立ち上がる。

 

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