映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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118 内景 十階の廊下 夜

デッカードはバッティを引きずったまま廊下を進んでいく。彼は倒れ、片足で立ち上がり、また倒れて、階段への最後の2フィートほどを這って進む。


119 内景 十階の階段 夜

唸り声を上げながら、彼はバッティの死体を必死に引っぱって踊り場の縁へ運んでくる。彼は息をつき、それから仰向けに寝て、バッティの肩に足を当てて押す。死体は少しずつ踊り場の縁を越えていく。そして一度に落ちる。だが手は外れず、死体の重さでデッカードは引っぱられる。デッカードは滑って踊り場の縁を越え、彼は手すりにつかまる。

デッカードは地上から300フィートにぶら下がり、自分とバッティの死体の重さを支えている…約400ポンドが彼の指にかかっているのだ。        

彼は自由な方の足で、バッティの手を蹴ってほどこうとする。だが効果はない。デッカードの指が滑り始める。

苦痛に満ちた表情で、彼はバッティの親指にかかとを押し入れる。重力と、右脚のすべての力を使って、彼は押す。バッティの親指が外れる。バッティは落ちていく。

バッティの死体が地面にぶつかる音はすばらしいが、デッカードは気づかない。彼はまだ困った状態にある。彼は身体を持ち上げて、踊り場の上に戻らねばならないのだ。彼は右手を放して左手の上へ回し、それから左手を回して、順手で手すりを握る。

今までできなかった、懸垂の最後の一回をやっている男のようにデッカードは身体を引き上げ、踊り場の縁に足をかけ、もがき、身をくねらせて、階段の踊り場の冷たい金属の上へよじ登る。

そしてそこに横たわり、身体をけいれんさせ、硬直した手をゆっくりと曲げ伸ばしする。だが彼が一番強く感じているのは、冷たい金属に触れている頬の熱さだ。

目を回し、興奮し、肺が燃えるようだと感じながら彼は立ち上がる…そして足をもう片方の足の前に置きながら、デッカードは階段を降りていく。


120 外景 セバスチャンのアパート 夜明け

ゆっくりとドアを押し開けて、デッカードが朝の空気の中へ出てくる。まだ陽は昇っていないが、空は青く変わり始めている。雲の垂れこめた灰色の夜明けはあまり綺麗なものではないが、それでもデッカードは見上げずにはいられない。デッカードはこの空を見れることを嬉しく感じる。

しばらくの間、彼は頭をのけぞらせて息を吸い、中庭を街路の方へ横切っていく。彼の足はもう限界で、彼には倒れるだけの気力も残っていない。

デッカードは自分の車の中に倒れこむ。そしてフロントシートに崩れ落ちる。


121 内景 デッカードの部屋 夜明け

隅の暗がりで、デッカードは窓から差し込む灰色の光の方を向いて、ぐったりと椅子に座っている。部屋の中は、柔らかく規則的な寝息がベッドから聞こえるだけだ。

彼は静かに立ち上がって、彼女に近づく。レイチェルは繊細な腕をシーツから出して眠っている。

デッカードは回復し、厳しい表情でそこに立って、彼女を見下ろしている。

少し時間が経ち、彼はとうとうベッドの端にそっと腰かける。

レイチェルの眼が開き、彼を見上げて、彼女が微笑む。


122 外景 山野(モンタージュで) 昼間

デッカードの車が細いハイウェイを縫って走っていく。フロント・シートには彼とレイチェルが座っている。冷たい夢のような陽射しの中、ときおり視線を交わす他は、二人の表情は硬く静かだ。

頭上の雲は柔らかく、疾く流れていく。

デッカード(声のみ)
彼女は俺が知っている場所へ行きたがった。街を離れて。彼女が見た写真のような所へ。ビルではなく、木々のある所だ。

レイチェルは窓の方を向いて、通り過ぎていく木々を見つめている。

デッカード(声のみ)
俺たちは楽しく過ごした。彼女は俺に面白い話をし、俺は彼女に歌を教えた。サルとゾウの歌だ。その歌で笑いすぎて、俺たちは歌っていられなくなるほどだった。


123 外景 森(モンタージュ)昼間

デッカードとレイチェルが歩いている。目の前の大地は真っ白で、静かだ。

カエデとブナの林の中にある道を歩いて行く。すっかり葉の落ちた木々の枝が、冷たい陽射しを遮っている。

足元ではパリパリ音を立てる青白い雪がところどころで溶けて、湿った豊かな茶色の大地がのぞいている。

レイチェルが立ち止まり、彼の方を向く。彼女の唇は少し開き、温かな吐息が冷たい空気を白く水蒸気に変えている。不毛な根を張った木々のそばに立って、彼女は繊細ではかなげに見える。彼女は固く白い雪の上に立ってデッカードを見ている。彼女は逃げない。今でもなお、彼女の眼は「わかっている」と主張している。


124 外景 森 昼間

デッカードが雪の上を歩いている。一人だ。彼は冷たい空気の中をゆっくりと機械的に歩いている。寒さも気にしていない。青白い頬を涙が流れているだけで、彼のやつれた顔には何の表情もない。

彼の濡れた靴が凍った雪を踏むきゅっ、きゅっという音を除けば、あたりは静かだ。そしてデッカードは白く凍った風景の静寂の中へ消えていく。


125 外景 ハイウェイ 夜

デッカードの車が鉄の獣のように、猛スピードで走っていく。ヘッドライトが長く平滑な道路の闇を貫いている。空気が立てる甲高い音と、タイヤのゴツゴツ言う音。それ以外には何も聞こえない。そしてその沈黙が、銃声で破られる。


126 内景 車 夜

デッカードが運転席にいる。顔は陰になり、両眼がまっすぐ前を見つめている。

デッカード(声のみ)
俺は何度も何度も自分に言い聞かせた。もし俺がやらなかったら、奴らがやっただろうと。

俺は街へは戻らなかった。あの街へは。仕事など欲しくはなかった。

生きていることのすばらしさは、選択をすることだと彼女は言った。そして彼女は選択をしたんだ。俺はどこかで、ほとんど喜んでもいた。彼女が死んでしまったからではない。こうすれば奴らは彼女に触れられなかったからだ。

タイレルに関して言えば…彼は殺されたが、死んではいない。俺はずっと彼を殺したかった。だが何を変えられただろう?あまりにもたくさんのタイレルがいた。だがレイチェルは一人しかいなかった。現実と非現実は分けることのできないものかもしれない。その秘密は見つからなかった。だがそれが何か思い当たるほど、俺は彼女の近くにいた。彼女はずっと俺と一緒にいた。たぶん俺たちは、お互いを現実にしたんだ。

そして、デッカードの車の赤い光が暗闇の中へ消えていく。        
      


 

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