映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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外景 ミラフロレスの街路 (前回からの続きです)

怪獣は長い蜘蛛のような脚を打ち振って、剛毛の塊を飛ばしてくる。その多くはトゲとなってイェーガーの装甲にびっしり突き刺さる。

剛毛の雲の一部はイェーガーを外れ、我々の方へ流れてくる。それは一見すると害のない、漂う毛のもやにしか見えない。

だが近くに落ちてくると、それは毛のもやには見えない。むしろ濃密な矢の束だ。

フリック
気をつけて!

毛の雲は混みあう街路に、ギザギザの恐ろしい生きた矢となって降ってくる…ザクザクザクッ…歩道に突き刺さり、車のフードを貫き、そこにいた者をその場に串刺しにする。

ニュートは落ちてくる矢の間を不器用に縫って走り、何本かをきわどい所でかわす。

前方で、串刺しになった車からパニックを起こした男が降りてくる。眼には動物的な恐怖がむき出しになっている。男はニュートにピストルを向ける。ニュートはスクーターを止めるしかない。

パニックを起こした男は片言のスペイン語で叫び、銃を突きつける。ニュートはもっとおぼつかないスペイン語で彼をなだめようとする。だが男はもう爆発寸前だ。

フリック(続けて)
走って!いいから行くのよ!

ニュートはフリックを引っぱって、男にスクーターを渡す。男は勢いよく走って行き、ニュートとフリックは徒歩で逃げるしかなくなる。

フリック(続けて)
どうしてあんなことをしたの?

ニュートは彼女を連れて大混乱の街路を進んでいき、二人は歩きながら大声で話す。

ニュート
死ぬところだったんだぞ!

フリック
今だってそうよ!

ニュートが彼女を引っぱって行き、フリックは肩ごしに後ろを振り返る。彼女はピューマ・リアルと通りの間にゆっくり回りこんでくるデングーと、そして群衆をじっと見る。前よりも1ブロックか2ブロック近づいて来ている。

彼女は死体につまずいて転びそうになり、前を見ざるを得なくなる。彼女はイェーガーがミサイルを一斉発射するのを見ていない。

怪獣の身体でいくつか爆発が起きる。残りのミサイルは道路の上を飛んでいき、2マイルほど先のマンションの最上階を吹き飛ばす。

フリックは走りながら、また振り返る。

ピューマ・リアルが怪獣の頭蓋を激しく殴りつけ、ドーンという轟音とともに細かい血のしぶきが飛び散る。

細かい血のしぶきが漂い、眼下の通りに激しく降ってくる。ニュートとフリック、そして彼らの周りのすべてが血でずぶ濡れになる。

デングーが後ろへよろめき、さっきまでフリックが中にいたホテルを破壊する。崩れ落ちる瓦礫が、この戦闘がどれだけ近くまで来ているかを彼女に思い知らせる。

フリック(続けて)
近づいて来てるわ!

ニュートは振り返って立ち止まり、戦闘の近さにショックを受ける。彼は崖の縁へ走り、フリックに手招きする。

空気は騒音でいっぱいだ。悲鳴、鳴り響く車の警報アラーム、イェーガーの巨大な可動部が上げる唸り、窓を震わす怪獣の唸り声。

ニュート
来るんだ!

彼は彼女を連れて、崖を途中まで滑り降りる。広いコンクリートのパイプが口を開けている所でニュートはフリックの手を取り、下水管の中へ引き入れる。

二人は数え切れないほどの人々がコンクリートの洞窟の中に群がり、暗闇ですし詰めになっているのを見つける。

下水管は震え、揺れ、継ぎ目から埃が落ちてくる。暗闇に怯えた悲鳴が響き、頭上で行われている戦いの想像もつかない騒音がそれを圧する。

自殺的な好奇心でフリックは下水管の出口へ行き、首を伸ばして真上を見上げる。ありえないほど巨大な戦いが少しだけ見える。

機械と怪物。はるかにそびえている。まるで神のようだ。あまりにも近くにある彼らの足が、通りの車を踏みつぶす。

彼女はあまりに近くにいるので、そびえ立つ蜘蛛のような脚に海藻やプラスチックのゴミが絡まっているのさえ見える。

頭上はるか高く、デングーは天に届くような顎を開き、ナイアガラの滝のように吠える。ピューマ・リアルは怪獣の喉に大砲の狙いをつけ、サンダークラック・ショットを撃ち込む。

怪獣の頭の後ろが吹き飛ぶ…その時ニュートがフリックを捕まえて、安全なパイプの中へ引っぱり込む。

パイプの外に血と肉片が雨あられと降り注ぎ、そしてわずかな静けさがある。

死んだ怪獣が崖を落ちていき、巨大な肉の壁がパイプの口をよぎって、一瞬だけ視界をふさぐ。

それに続いて静寂が訪れる。フリックはよろよろとパイプを出て、すぐ後にニュートが続く。眼下の崖のふもとに、デングーの死体が大の字になっている。

崖の上にはピューマ・リアルが信じられないほど高くそびえ立ち、その肩と頭が陽射しをまぶしく反射している。動力が落とされ、イェーガーはまた銅像のように動かなくなる。

V-50の編隊が到着し、イェーガーの上空でホバリングして空輸の準備をしている。人々がコンクリートのパイプから震えながら姿を現す。

フリックは通りへ這い上がる。戦いの後の静寂を、サイレンとラウド・スピーカーの音声が破り始めている。

彼女はさっきまでの車が渋滞を見渡す。今はたくさんの巨大な足跡でぺしゃんこにされている。へこんで割れたコンクリートの中へ、金属が押しつぶされている。

彼女の眼が、通りぞいに破壊の跡を辿っていく。かつての美しい街並みに煙の立ち込める空白部分ができ、ねじくれた高層ビルの残骸が崩れ落ちている。

彼女は震えながら血まみれで惨状の中に立ち、都市に刻まれた、信じられないスケールの傷跡にショックを受け、呆然としている。ニュートは慰めようと、彼女の肩に手をかける。


内景 ジョージ・チャベス国際空港 夜

リマから脱出しようと必死な旅行者たちでざわめき、混みあうターミナル。どのテレビでもあの攻撃のニュースを放送している。

フリックはゲートに座り、呆然とした眼でじっと前を見つめている。彼女は清潔な服に着替えているが、髪の生え際には乾いた怪獣の血が薄くまだらに残っている。

ニュートがフリックにコーヒーを手渡し、彼女の隣りに座る。

ニュート
大丈夫かい?

フリック
えっ?ええ。大丈夫よ。

彼女は攻撃の件を話したくないし、ニュートも自分の好意をすり減らしたくない。そこで彼は口を閉じ、本を開く。フリックは首を振る。どうやら彼女は話をしたいようだ。

フリック(続けて)
なんだか…なんだか馬鹿げてるみたい…。
私は怪獣の攻撃を見たことがなかった。録画で見たことしかなかったの。攻撃の場に居合わせたこともなかった。あなたは信じられる?
(身震いする)
まるで、この世界が自分の思っていたような場所じゃなくなったみたい。

彼女の声がか細くなって消え、はるか遠くを見ているような目つきになる。彼女の注意は近くのテレビに移る。画面の中では、攻撃の急激な増加について生々しく解説をしている。

キャスター(声のみ)
…最近の前例のないほどの攻撃の多発は、次の怪獣がまたすぐに出現するのではないかと太平洋沿岸を恐怖させています…

フリック
東京はいま何時?

ニュート
朝の10時だよ…

フリックはバッグから電話を取り出して立ち上がる…彼女はこれをずっと先延ばしにしてきたが、もうこれ以上は無理だ。

フリック
私、電話をかけないと。


内景 ローリーの部屋 朝

彼の電話が鳴る。ローリーはそちらを見ずに電話を取る。

ローリー
もしもし…

フリック(フィルターのかかった声)
ローリー?

フリックとローリー カットを切り替えながら

ローリー
フリックか…どこにいるんだ?

フリック
空港よ…今、リマにいるの。

ローリー
嘘だろう…大丈夫かい?

フリック
大丈夫よ…科学者に会いにオーストラリアに行くの。
(話題を変えて)
あなたが東京に配置されたって新聞で読んだわ。中央司令部でしょう?

ローリー
そうだよ。

フリック
じゃああなたの指揮官は最高司令官ね…

ローリー
(彼女の意図を察して)
なあフリック、それは無理だよ…

フリック
違うの、インタビューがしたいわけじゃないの…
(本題に入って)
ローリー、もしあなたのところに私が来て、怪獣の攻撃を止める方法を見つけた、と言ったら、あなたは信じてくれた?

ローリーは困惑している様子だ。フリックは答えを待つ。沈黙が彼女自身の中にも疑いをかき立てる。そして…

ローリー
信じたよ。


外景 高速道路 昼間

霧が濃い。早々と乗り捨てたられた車が路肩に停まっている。車のいない車線の上に、重なりあった五重のインターチェンジがある。高速道路の向こうに、大きな影が霧にかすんでぼんやり見えている。

ローリー(フィルターのかかった声)
ローマ1からロックセントへ。ジプシー・デンジャー配置についた。モーター起動、3、2、1…

カウント1で大きな影が動き出す…まるで自らを奮い立たせるように、機械的に関節が曲がる。

ペンテコスト(フィルターのかかった声)
了解、ローマ1。目標はカテゴリー3の怪獣。報告名は「スラターン(ふしだら女)」。西3マイルから接近中。目視しだい交戦を許可する。狩りの成功を祈る。


内景 コンポッド1 続き

操縦席。大量のケーブルが絡みあう中に座席がある。ショルダー・ハーネスを付けたローリーがそこに座っている。彼のドライブ・スーツには信号ケーブルが接続され、彼の身体は座席の、ジェルの詰まった対ショック・パッドの中に深く埋まっている。強度の閉所恐怖症を起こしそうな状態で、ほとんど快適そうでもある。

彼の両腕はシートの左右にある、ドラム型をした頑丈な操縦スリーブの中に深く差し込まれている。彼の耳たぶの後のポートから、光ファイバーの束がむき出しの神経のように伸びている。

彼の前方には、彼の視界が見える。まるでポッドに前面の壁がないかのように、壁一面が広く外界の映像になっている(彼の脳に直接投影されている)。

空と、数百フィート下にあるインターチェンジと高速道路。強調された現実の映像の上を、メーターやダイヤル、照準用の幾何学的な図形などの半透明なデータ表示が流れていく。

ぼんやりした声と夢の中のような反響が空気の中を行き交っている。聞き慣れたものとそうでないもの。日本語と英語。会話の断片が、一定の音量レベルで常に思考の中を漂っている。

ローリーはいらいらしながら、目を細めて霧の中をのぞき込んでいる。

ローリー
視界が悪い。まるでスープの中みたいだ。


内景 コンポッド2 続き

マコのポッドも基本的にはローリーのものとそっくりだ。彼女はローリーの言ったことをペンテコストが日本語で繰り返すのを聞いている。

ペンテコスト(フィルターのかかった声)
(字幕つきの日本語)視界が悪い。まるでスープの中みたいだ。

彼女はうなずいて、日本語で応答する(字幕なし。ペンテコストが英訳した台詞を聞くことになる。)


内景 コンポッド1 続き

ペンテコスト(フィルターのかかった声)
(マコの言ったことを訳して)熱スペクトル映像、作動。

ローリー
ありがとう。俺の心を読んだな。

壁全面の映像に赤外線フィルターがかけられ、周囲のサーモグラフィ映像が表示される。周囲はすべて暗い…だが重なりあった高速道路の入口の向こうに、明るく輝く熱源体が見える。

ローリー(続き)
奴を見つけた。車の渋滞の向こうにいる。

突然、なにか巨大なものがインターチェンジに突っ込み、重なりあった高速道路を崩壊させる。渦を巻くコンクリートの埃の向こうから、巨大な圧力がこちらへ突進してくる。ローリーの右腕が、操縦スリーブの中で緊張するのが見える。


内景 コンポッド2 続き

マコの腕も同じく緊張する…交感した反射運動だ。


外景 高速道路 続き

突進してくる怪獣がはっきり見える前に、ジプシー・デンジャーが右腕を振るって怪獣を脇へ殴り飛ばす。


内景 コンポッド2 続き

マコが、全面表示のHUDで怪物を見つめている。

スラターンは腕のないカルノサウルスのような形状をしている。肉食獣の強力な後脚に、太い、蛇のような胴体。頭はどことなくウツボに似ている。長い尻尾の先端には棘が生えている。

怪獣はこちらの周囲を、肉食獣のように辛抱強く回っている。ヒョウのように頭を下げ、力に満ちている。霧の中の光を受けて、鱗の色が黒と玉虫のような青の間を変化する。

怪獣の動きはかすんで見えるほど速い。あまりにも動きが早く、これほどの大きさだとは考えられない。ハイウェイや乗り捨てられた車のおもちゃのような小ささが、怪獣の大きさを思い出させてくれる。

マコはじっと見つめ、彼女の心はさまよっている。ぼんやりした声が高まる。


外景 「アシッド・ゲイシャ」の残骸 昼間(ドリフト)

(注記:以下はポンズのヘッドスペースの中で起きている。ドリフト…二人のイェーガー搭乗員の間で共有される、過去の記憶か、夢に似た虚構の場面だ。これらは思考と同時進行で発生するが、独自の時間で展開していく。ドリフトの映像は脱色処理をするか、もしくは銀塩写真のようにぼやけさせて「現実世界」の動きとは違って見えなければならない。)

マコは、最初のニュース放送で我々が見たように、離脱したコン・ポッドから彼女を引き出す男たちを押しのけ、破壊されたイェーガーに必死で手を伸ばそうとしている。

その映像に、無線交信の音声が重ねられる。

マコ(声のみ)
(日本語で)格納容器が破損!炉心が危険だわ!

アキ(声のみ)
(日本語で)あいつは僕がやる!脱出しろ!これは命令だぞ、マコ!

マコ(声のみ)
(日本語で)あなたを置いては行かないわ!

アキ(声のみ)
緊急強制操作を開始。コン・ポッド2を射出しろ…

彼女の顔を涙が流れ落ちる。彼女の口が開いて、音もなく泣き叫んでいる。


内景 コン・ポッド1 続き

ローリーはまばたきして、無関係な感情の高まりを打ち消す。

ローリー
ブルーザー(射撃手)、集中しろ。こいつを倒すんだ。


内景 コン・ポッド2 続き

マコ
(日本語で)偉そうにしないで。

ペンテコスト(フィルターのかかった声)
(日本語で)抑えろ、ローマ2。

ローリー(フィルターのかかった声)
彼女は何て言ったんだ?


内景 コン・ポッド1 続き

ペンテコスト(フィルターのかかった声)
何でもない。集中しろ、ローマ1。

ローリー
了解、マコ、赤外線照射の体勢を取る。準備しろ。

マコ(フィルターのかかった声)
準備よし。


外景 高速道路 続き

イェーガーの腰からミサイルが一斉発射され、スラターンの足元の地面に命中する。もうもうと煙が上がり、埃が舞い上がって怪物を包んでしまう。


内景 コン・ポッド1 続き

ローリーは濃い煙を唖然として見ている。

ローリー
マコ、何をやってるんだ?赤外線だ!ミサイルじゃない!赤外線だ!


内景 コン・ポッド2 続き

マコが怒り、彼に日本語で叫ぶ。ペンテコストがより冷静な口調でローリーに通訳する。

ペンテコスト(フィルターのかかった声)
君が彼女にミサイルの発射を指示した。


内景 コン・ポッド1 続き

ローリー
俺がやらせただと!

ペンテコスト(フィルターのかかった声)
ローマ1、記録でもそうなっている。

彼は首を振って、ロックオンができずに煙の壁の上をむなしく動いている照準用のマーカーを見つめる。

ローリー
奴を見失った…くそっ…


内景 コン・ポッド2 続き

ローリー(フィルターのかかった声)
微粒子による画像ノイズが多すぎる。

マコはミサイルによって引き起こされた暗闇をじっと見つめている。油っぽい黒い煙が霧の中で渦巻き、うねり、形の定まらないカーテンが巨大な怪獣を覆い隠している。

ローリー(フィルターのかかった声)(続けて)
気をゆるめるなよ。奴はこっちに突っ込んでくるぞ。俺は感じるんだ。

マコはペンテコストの通訳を聞き、彼女の見開かれた目が恐怖で呆然とする。速まった心臓の鼓動と、前に彼女が言った、何かの記憶が聞こえてくる。

マコ(声のみ)
(日本語で)私たち、死ぬんだわ。

 

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