映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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内景 スラコ四号脱出艇(夢の中)

黄色い警告ランプが点滅している。あのいまいましいストロボ・ライトが明滅を繰り返している。頭上のパイプから蒸気が噴き出す。

火炎放射器の銃口で青く輝くパイロット・バーナーが、コンソールの向こうから慎ましげに顔を出す。火炎放射器を持ち主は用心深く進んでいく…

リプリーだ。

彼女は苦しげに息をしている。
彼女は汗びっしょりのタンクトップを着ている。
彼女の眼が左右へすばやく動く。そして上へ。そして下へ。
彼女は武器を前へ突き出したまま、冷凍睡眠チューブの方向へ進んでいく。
彼女は静かにニュートの睡眠チューブへ近づいていく。

チューブの中

ニュートが穏やかに眠っている。
リプリーは母親のような微笑を漏らし、そして思い出す。
彼女の手が火炎放射器を握りしめる。
彼女はスイッチを「高温」に切り替える。
冷凍睡眠チューブのそばを回って…

彼女の左で物音がする。
彼女はさっと振り返り…

火炎放射器の引金を引く…カチッ。何も起こらない。
彼女はもう一度引金を引く…生ぬるいガスが漏れるだけで炎は噴射されない。
彼女はパニックを起こしかけ…

エイリアンがいることを感じる。
左を見て、右を、上を見る…エイリアンはいない。
彼女は下を見る。

エイリアンの尾が彼女の脚と脚の間に入ってくる。
彼女は振り返り…

エイリアンの腕の中に捕まってしまう。
役立たずの火炎放射器は床を滑っていってしまう。
彼女は固めた拳で怪物をぽかぽか殴りつける。

リプリー
いや。いや!やっつけてやる!やっつけてやるわ、このくそったれ!!

エイリアンは彼女をくるりと回し…冷凍睡眠チューブの上に押し付ける…
まるで彼女を背後から襲おうとしているかのように!

リプリーは冷凍睡眠チューブの中を見下ろす。

ニュートはいなくなっている。
血だまりの中に、あの人形の首が転がっている。
エイリアンがリプリーの身体に腕を回す。
薄い唇が、キスを求めて後ろへ引っぱられる。

彼女は悲鳴を上げる。


内景 科学技術の部屋 現実 昼間

リプリーが眼を開ける。
ヒューッ…ヒューッ…
彼女はまだ、風車のある部屋にいる。
どうしたわけか、この部屋は彼女の夢よりも現実感がない。
彼女は辺りを見回す。

彼女の隣にはジョンが座っていて、羊皮紙に何かを書き付けている。
彼は安心したような微笑を浮かべる。

ジョン
君が死んだかと思ったよ。

リプリー
何を書いているの?

ジョン
遺言さ。
(少しの間)
冗談だよ。

彼女は自分の左を見る。
アンソニーが眼に包帯を巻かれて、仰向けに横たわっている。彼の足首は腫れあがった塊だ。配線がはみ出している。

リプリー
彼は…?

ジョン
休んでる。
(首を振って)
彼はよくなるよ。

アンソニー
いいや、ならないね。彼は嘘をつくのが下手だ。

リプリー
残念だわ。

アンソニー
皮肉なものさ。私の幻覚は結局のところ、未来の予知だったらしいね。私の人造の良心でこの件をどう解明したものだろうね?

リプリーの右で床板の軋む音がして、彼女の注意を惹く。
院長だ。彼は歩き回っている。

院長
君が我々を連れ込んだのがどこか、見えるかね?

リプリー
ええ。私があんたのケツを蹴ってやる誘惑に負けないよう、お導きを…ううっ…

リプリーは立ち上がろうとする…彼女の頭がふらつく。
ヒューッ…ヒューッ…

リプリー
ああ、くそっ。

この部屋全体が風のリズムに満ちている。

リプリー
あのデカブツはどこなの?

院長がドアを指さす。

院長
ドアの向こうだ。
我々が飢え死にするのを待っているよ。

リプリーはドアのところへ行き、その冷たい表面に触れる。

リプリー
あいつは私たちをもて遊んでいるのよ。そうしようと思えば、あいつはいつでもここへ入ってこれるのに。

院長
どうしてあいつが入ってくる必要がある?あいつはこの部屋の中の一人が自分とグルだと知っているんだぞ。

ジョン
院長、我々は同じかご船に乗っているようなものなんですよ。

院長
グルなのは一人だけじゃないかもしれんな。

リプリー
事実について話をしましょう、院長さん。

彼女は風車を見る。
ヒューッ…ヒューッ…

リプリー
これがあなたたちの科学技術なの?

院長
これでさえ我々には禁じられているのだ。

リプリー
なるほどね、それじゃ事実は私たちが大失敗したってことね。

彼女は部屋の奥へ入っていく。一基の風車の周りを歩く。

リプリー
環境システムね。ここの空気を再生するのは植物しかない。ここで風が起こされて…
(床を見て)
地表を吹く自然の風を風車で利用して地下の車輪を回し、水を浄化するために…海の満ち引きを起こしているのね…

アンソニー
他にもある。床の下にポンプがある…その振動を感じる。

リプリー
きっと、そのポンプで空気を活性炭のフィルターに通しているんだわ。

ヒューッ…ヒューッ…

リプリー
ここはだんだん寒くなっているでしょう?

ジョンは訝しげに彼女を見る。

ジョン
そうだが…

リプリー
あなたたちが木を燃やす火が大気中に煤を放出し、太陽の光を遮る雲の層を作り…それがこの星を冷やし、また木を燃やさなければならなくなる。

ヒューッ…ヒューッ…

アンソニー
温室効果というやつだ。そのために二十世紀後半に地球は滅亡しかけたんだ。

リプリー
わからない?ここは自滅するように作られた星なのよ。十分とか二時間以内じゃないけど、じきにね。ここの大気は限られている。もし植物が死滅したら、火がすべての酸素を食い尽くしてしまい…この小惑星は死に、全員が死ぬ。

院長はまるで、マラソンの最後の数メートルで負けてしまった男のように見える。

院長
それがここという場所なのだ。私はただ、そうなる前に死にたいと望んでいた。

ジョン
何ですって?

院長
我々はここで死ぬことになっているのだ。そういうことだ。

リプリー
ちょっと待って…あなたたちは追放されたんじゃ…?

院長
私たちの罪に対する刑罰は、死刑だったのだ。

アンソニーが身体を起こす。

アンソニー
この星は、計画された衰退のすばらしい成功例なんだ。現実の環境と同じように脆弱な大気処理システムと、一定量の原始的な資材があるが、再補給をすることはできない。

院長の眼は遠くを見ている…

院長
反・科学主義者に対する因果応報だよ。企業が行った最高の仕事だ。なあ、私はかつて企業の重役だった。中級副社長さ。そのころ私の妻がスピードを出した車にはねられた。私はすべて投げ捨てて聖職に加わった。修道僧になって…世界を見ようとね。ここにいて、取締役会の会長になって…

リプリー
いいえ、私がここに着陸したわけが今わかったわ。あんたたち幸せな狂人たちと一緒に死んでいくためよ。

リプリーは歩いて行ってしまう…
ジョンは彼女を追っていこうとする。

ジョン
リプリー、待ってくれ…

院長が立って、彼の前に立ちふさがる。

院長
あの女がどこへ行ける?あの女も閉じ込められているんだ。
(少しの間)
あの女自身の牢獄の中にな。あの女の心の中にある牢獄だ。踊っている。光がきらきらして…六月の虫と踊っている…私たちの心の休憩時間に彼らが踊りに来て物陰で…

ジョンとリプリーは振り返って院長を見る。
彼の口調がさらに早口になり始める。さらに早口に。
彼は震えている。震えはどんどん細かくなり…
彼の左耳から血が流れてきて…

院長
吹き荒れる変革の風に乗って逃げ場はない逃げ場はない逃げ場はない邪悪からは邪悪からはそなたの名は女。女。彼が来る。彼が来る。おまえの所にいいいいいいいいいいい…

バシャッ…!!
院長の頭が破裂する…!!
十階から舗道へ落とされた、熟れたメロンのように。
血と骨片と頭髪と脳髄がジョンにぶちまけられる。
ジョンは悲鳴を上げる。

恐るべきエイリアンのヘッド・バスター

血をまき散らす院長の首の上にあるのはそれだけだ。
それはまだ院長の脊髄にしがみついている…院長の身体はよろよろ歩き回り、両腕は脳からの神経信号を失って機械的に痙攣している。

リプリーは悲鳴を上げる。
エイリアンの幼体を頭に載せた死体が彼女の方へ倒れてくる…
彼女は床からアンソニーの棒を拾い上げて振る…
…まるでティー・バッティングをする子供のように…
グシャッ!
チェスト/ヘッドバスター部屋の向こうへ弾き飛ばす。

怪物は這いながら床に落ちる。風車と床の境目へすばやく這いこみ、姿を消す。

 

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