映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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外景 修道院の屋根 夜

リプリーの良い方の足が、脱出船の周りの燃える板切れを蹴り落としていく。リプリーが脱出船に乗り込み、ジョンとマティアスはその後ろに立っている。ジョンは周囲を見回す。

修道院のある階層は荒れ果てている。空気は煙でいっぱいだ。
修道院は燃えている。図書館も炎に包まれている。

ジョンは医療品の入った袋を見下ろす。
破れ、血にまみれ、焼け焦げているが、袋はまだ彼の肩からぶら下がっている。
中にあるのは、唯一残った本だ。

リプリー
(声のみ)
中に入って!

ジョンとマティアスは中に入る…


内景 スラコの四号脱出艇 夜

リプリーが照明のスイッチを入れる。
ジョンがマティアスを抱えてハッチをくぐらせる。

ジョン
図書館が…

リプリー
言ったでしょう…地球はまだあるのよ…

リプリーはある計器をチェックする。航海の経過時間だ。
彼女の眉がひそめられる。彼女は計器を指でこつこつ叩く。

リプリー
作動していないわ。

ジョン
どういうことだい?

リプリー
つまり、私がどのくらい長く冷凍睡眠していたかわからない、ということよ。

ジョン
つまり、院長が正しかったかもしれない、ということだ…

リプリー
時計が止まっている、というだけのことよ。ここから脱出しないと。もし院長が正しかったとしても、この船の搭載コンピューターには人類の知識が満ちているわ。

ジョン
全てじゃない。永遠に失われるものもある。

リプリー
そうなら人類がまたやり直すわ。前にもそうしたのよ。

彼女はいくつかボタンを押す。床下のどこかで推進源がブーンと音を立てて生き返る。ジョンの靴底を通じて振動が伝わってくる。リプリーは作業に没頭している。

リプリー
オーケー。気密は破られていないから、私たちはたぶん大丈夫よ。でも外にあるあの修道士たちの死体からは、すぐに卵が孵りはじめるわ。離陸の準備をしましょう。

ジョン
私は何ができる?

リプリー
さあ、あの区画から圧縮タンクを運んできて。

彼女は開いたドアの方を手で指す。
ジョンはその区画へ入っていく。
シューッ…ガチャン!
彼の背後でドアが閉じる。

ジョン
おい!何だ!

彼はドアにある窓から外を見る。

リプリーが彼を見つめて、ドアのそばにあるキーパッドに数字を打ち込んでいる。

ジョン
なあ…私は閉じ込められてしまったぞ。

マティアスがドアを引っ掻いている。

リプリー
わかってるわ。私が閉じ込めたの。

ジョン
何だって?

リプリー
私は一緒には行かない。私の身体の中に一匹いるのよ。

ジョン
何だって!?君は…

彼女は自分の腹のあたりに指を走らせる。

リプリー
私にはわかったの。だからあいつは私を殺さなかったのよ。彼は私が冷凍睡眠チューブにいる間に卵を産みつけた。
(あの悪夢を思い出して)
私が何も食べなかったから、あいつはまだ外に出てきていない。まだ休眠状態なのよ。だから私が食べればあいつは私を殺すし、私は食べなければ飢え死にしてしまう。どちらにしろ私は死ぬわ。

ジョンは医療品の袋から中世の大きな本を引っぱり出す。

ジョン
私の本に…どうすればいいかわかるんだ…

リプリー
何よ、悪魔祓い?役に立たないわ。

ジョン
こんなことしちゃ駄目だ。リプリー、聞いてくれ…君は罪の意識で混乱しているんだ。僕なら助けられる…

リプリー
(無視して)
タイム・ロックをセットしたわ。脱出艇がこの衛星の引力圏を脱出したら、この区画のドアが開く。後はマティアスと冷凍睡眠チューブに入って、青いボタンを押すだけでいい。運があれば貨物船か何かがあなたを拾ってくれるでしょう。幸運を祈るわ。

彼は拳でドアを殴りつける。

ジョン
だめだ!絶対にだめだ…こんなことをしてはいけない。あいつに勝たせてはいけないんだ。

彼女はドアに背を向ける。

リプリー
いつだってあいつが勝つのよ。私たちはあいつを殺した、でもまだ私の中にいる…あなたが最後のチャンスなの。あなたを死なせずにすめば、私が失ってきた全てに埋め合わせがつくわ。

ジョン
話を聞くんだ!私にやらせてくれなくちゃ駄目だ!リプリー、君が唯一のチャンスなんだ!

彼女は聞いている…

ジョン
アンセルム神父が私を育ててくれたと話しただろう。彼は私を育ててくれたのに、彼が死ぬとき、私は彼を救うために何もできなかった。充分な知識がなかったんだ。彼が死んだのは私のせいなんだ。もし私に君を助けさせてくれないなら、私の肉体は生きても魂は死んでしまう。

リプリーは振り返り、彼をじっと見つめる。

ジョン
お願いだ。

カット替わって 

本のページ

中世のエッチング版画だ。
一人の修道僧が悪魔を吐き出している。

カメラ引いて、ジョンがリプリーを脱出艇の床に寝かせる。
ジョンが彼女の目を閉じる。
本を閉じる。

彼は小さなプラスチックのカップに水を注ぐ。
薬草の入った小さな袋を取り出す。袋を開ける。
鼻にしわを寄せる…薬草が匂う…
彼はその古代の薬を、宇宙時代のカップに注ぎ込む。

リプリー
この薬は何なの?

ジョン
(力強く)
君を健康にするものでもあるし、君を病気にするものでもある。

リプリー
私は…

ジョン
黙って飲むんだ。

彼はリプリーの後頭部を持ち上げて…
薬を彼女の喉へ流し込む。

ジョンは彼女の胴体をまたぐ。彼女に馬乗りになる。
祈るように両方の手を合わせる。
そして両手を一つに組む。
準備運動に深い呼吸をして…

リプリーが喉を詰まらせ始め…咳き込む。
彼女の身体が痙攣を始め…

ジョンは拳を彼女の腹へ打ち下ろす…
ドスン!!

リプリーが激しく身体を震わせて…空えずきをする…

ドスン!ドスン!
ジョンがリプリーの横隔膜を殴りつける!

彼女が唾を飛ばす…濃い粘液状のものを吐く…
胸が波打って…

リプリーの背中が弓なりに反り…
彼女は腸をねじ切られるような悲鳴を上げる…
怪物が上へ押し上げられ、胴体が膨らむ。

ジョンは彼女を押さえつけて…
彼女の肋骨の下を押し上げる…
チェスト・バスターを彼女の喉へ押し上げていく…

エイリアンが食道の途中にいるため、彼女は空気を求めて喘ぐ…彼女は窒息しつつある…

ジョンは十字を切る…深く息をする…
彼はリプリーに口を近づけて…
空気を吸う。空気を吹き込む。人工呼吸だ。

エイリアンのチェスト・バスター

リプリーの口から這い出してきて…

ジョンの口の中へ入っていく!!
爬虫類のような尾が振り回されて、ジョンの食道の奥へ消える。

ジョンは後ろのコンピューター・コンソールに倒れる。
喉を詰まらせている。必死で喋ろうとする。

リプリーは肘をついて身体を起こす。
エイリアンの粘液が彼女の顎に垂れている。
額で髪の毛がもつれている。

リプリー
どうして?

ジョン
君は窒息しかけていた。他にどうしようもなかった。

彼は開いたままの本を彼女の前に放る。
彼女はあのエッチング版画を見る。

ジョン

流れ出る粘液を飲み下す。
なんとか立ち上がろうとする。

ジョン
彼らは知っていたんだ。

リプリー
でも、あなたは…

リプリーは立ち上がろうとする…彼を追うために…
彼女は身体を起こすことができない…肋骨が粉々に砕けているように感じる

リプリー
あなたは死んでしまう…

ジョンはよろめきながら脱出艇の床に立つ。背中を向ける。

ジョン
そのつもりだった。兄弟たちの…ところへ行くよ。もし私たちが正しかったなら、天国行きだ。もし間違っていたなら…いずれにせよ、ふさわしい場所へ行くだけだ。本の世界へ。ページの中へ。

彼は袋から羊皮紙を取り出す。
床にそれを落とす。

ジョン
君は…現実の世界の人だ。

彼はドアを通り抜けようとする…
マティアスが付いていこうとする。

ジョン
来るな…君たち両方ともだ。

彼は脱出艇から出て行く。

リプリーは床の上を這っていく。

リプリー
駄目よ…待って!ジョン!

ドアまで這ってくる。外を見て、

ブラザー・ジョン

打ち壊された天井から夜明けの光が差し込んでいる。ジョンは煙の立ち込める屋根をゆっくりと歩いて行く。
炎上する修道院の地獄へと。

リプリーが見守る中、ジョンと彼の体内にいるエイリアンの恐怖は焼き尽くされる。

炎が発する熱が強くなる。
彼女は後ろに下がらざるをえない…
ドア・ハンドルに手を伸ばす。
ドアはドスンと音を立てて閉じる。

彼女は転がって仰向けになる。
彼女はすすり泣く。この数年で初めてのことだ。
彼女は赦されたのだ。

ギイイイイ!
脱出艇が傾く。
リプリーの両眼がぱっと開く…

脱出艇の下の屋根が崩壊し始めている。

リプリーは転がって腹這いになり、操縦士の席へ這っていく。身体をシートの上に引き上げる。安全ベルトを締めて…

スラコの四号脱出艇

人工衛星アルケオンの木製の外殻を突き破る。
轟音を上げながらこちらへ飛んできて…頭上を通り過ぎる。


内景 スラコの四号脱出艇 昼間

リプリーはマティアスを冷凍睡眠チューブに寝かせる。
彼の顎の下をくすぐってやる。彼と一緒にチューブに入ろうとしたとき、彼女は床に何か落ちているのを見つける…

ジョンの羊皮紙だ。

リプリーはそれを拾い上げ、広げる。
彼女にはジョンの声が聞こえる。

ジョンの声
私、人工衛星アルケオンの修道士にして囚人であるブラザー・ジョン・ゴールドマンは、修道院長が間違っていたと知っています。ここには大いなる邪悪がありました。私はそれを見ました。この疫病を防ぐために書き残しますが…この怪物のために手が進みません。私は仲間たちに警告し、リプリーという女性に会うために下階へ降りました。彼女からこの邪悪と戦う方法を学ぶため、少なくとも我が身の安全のためで、彼女を守るためではありませんでした。彼女は地球がまだあるものと信じており、私も彼女が正しいことを祈っています。彼女が地球を見つけられることを祈っています。彼女を苦しめる悪魔から、彼女がわずかでも安らぎを得られることを祈っています。

リプリーは指令コンソールにある、経過時間のカウンターを見る。ホルダーからペンを取る。彼女は文章を書き加える。

リプリーの声
地球が存在していようといまいと、最後が天国であろうと地獄であろうと、あるいは宇宙の冷たい真空であろうと、彼女は、安らぎを得ました。

彼女は航路をセットする。
自分の冷凍睡眠チューブへ戻る。
チューブの蓋を閉じる。

深宇宙

脱出艇は真っ黒な虚空の中を飛んで行く…

アルケオン

彼女の背後で暗黒の中に小さくなっていく。煙を上げ、ゆっくりと消えていく残り火だ…

スクリーン、暗転

エンドクレジットが流れて…

映画館の後方にいる十代の若者が叫ぶ。
「犬の中にいるんだぜ!」

 

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