映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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95 外景 セバスチャンのアパート 夜

薄暗い夜間照明の中、デッカードが建物の正面にある中庭に入ってきて立ち止まる。彼は周囲を見回す。誰もいない。ただ、静寂だけだ。

彼は建物に近づいて、入口の片側の陰の中に立つ。

ガラスの砕ける音がして、彼の頭がさっと上を向く。

セバスチャンがまっすぐ落ちてきて、30フィート下の歩道にぶつかって破裂する。
(訳注 この後の記述を見る限り、「30フィート」ではなく「300フィート」の誤りだと思います。)

デッカードは、セバスチャンが落ちてきた軌道を上にたどっていく。割れた窓は最上階の一つ下にある。


96 内景 セバスチャンのアパート ロビー 夜

あまり見るべき物はないが、デッカードは一つも見逃さずに進み、できるだけ姿を見られない位置を取っている。彼は周囲を見回す。エレベーターと、吹き抜けになっている階段がある。

彼は壁際から離れず、吹き抜け階段のドアから目を離さずに、エレベーターの方へ進んでいく。

片側に身体を寄せながら彼はボタンを押す。エレベーターのドアがスライドして開く。彼は中に手を伸ばしてボタンを押す。ドアはスライドして閉まるが、デッカードがドアの間にペンをさし込んでエレベーターを使えなくする。

デッカードは音を立てずにすばやくロビーを横断する。階段の吹き抜けに通じるドアの前で彼はしばらく動きを止め、それからドアを押し開ける。


97 内景 セバスチャンのアパートの階段の吹き抜け 夜

階段は突き当りで暗闇に続いている。突然、デッカードがくるりと回って床に伏せ、左に浮かぶ人影に三回発砲する。

その男は両腕を手すりに縛られ、首を折られてぶら下がっている…胸に穴を三つ開けられて…だが、彼はもうすでに死んでいたのだ。

デッカードはじっと死体を見る。それは年老いた警備員のディーチャムさんだ。彼をかじっていたネズミたちが隠れ場所を探して走り回る、かすかな音がする。デッカードは立ち上がる。

階段の吹き抜けは長方形をして十階まで続いている。デッカードの足が最初の段に触れたとき、生々しい恐怖の悲鳴が空気を切り裂く。その悲鳴は階下から聞こえる。それは若い女の悲鳴で…鋭い金切り声に変わっていき、出しぬけに消える。デッカードはレーザー銃から使いかけのカートリッジを捨て、新しいものを装填し、地下室への階段を静かに降りていく。


98 内景 地下室 夜

階段の一番下は廊下に続いている。突き当たりにある両開きの扉の向こうから、機械が立てるブーンというかすかな音が聞こえている。彼が扉まで近づいて来たときには、そのブーンという音はガタゴトいう騒音に変わっている。ドアにはそれぞれ小さな窓がついており、デッカードは片側に寄って、窓をのぞきこむ。


99 内景 ジム 夜

ドアの向こうはジムだ。鏡張りの壁は壊れ、変色してしまっている。ジムの機材は長く使われていないために老朽化している。重たいバーベルは床に沈み込んでいる。減量マシンが二台、馬鹿みたいにバタバタと動いている。デッカードの視線が女に止まる。

その女は天井からぶら下がった吊り輪に両肩を通してぶら下げられ、床の二、三フィート上で揺れている。彼女の頭は前へうなだれ、身体はぐったりしてわずかに揺れている。

デッカードはドアの片方を壁に触れるまで押し開ける。彼はぶら下がった人影の方へゆっくりと進んでいく。背後のドアからの奇襲に備えて、壁の鏡から目を離さない。彼の息は乱れてはいない。心臓も激しく打ってはいない。デッカードはただ冷静だ。

彼女の顔を見上げることのできる距離まで近づき、彼は立ち止まる。彼の眼の中に反応があったのは、むごたらしい死のためではない。彼女の天使のような顔の純真さのためだ。

彼にはそれについて考える時間はない。背後にある鏡で、彼はドアが開き始めるのを見る。彼は振り返る。そうするべきではなかった。プリスの両脚が跳ね上がって彼のレーザー銃を弾き飛ばし、首をはさみつける。

ゆっくりとドアが閉まる。だがデッカードは気づかない。彼の頸動脈はもう脳へ血液を送っていないのだ。彼は片脚を上げて手を伸ばす。彼の指が足首のレーザー銃を握るが、プリスの指が彼の手首を締めつける。デッカードの手は花のように開いてしまう。レーザー銃が床に落ち、彼は白目をむく。

プリス
いけない子、いけない子。

彼女はデッカードを放す。だが彼が床に倒れる前に、その背中を強く蹴る。彼は部屋の反対側へ15フィートも飛ばされ機械にぶつかって床に倒れる。プリスは吊り輪から飛び降り、彼に近づいてくる。

デッカードは手を伸ばして身体を起こそうとするが、彼女はもうそこにいる。彼女は強すぎないように、かつ正確にデッカードの腹を蹴る。彼はまた床に倒れ、呼吸ができずに喉をつまらせる。彼女は長い人差し指を正確に伸ばして、機械のスイッチを入れる。

それは振動するベルトのついた、贅肉を落とすための機械だ。普通なら無害なものだが、この機械はモーターのカバーが外されている。たくさんの金属部品がギリギリと回転している。肉と骨のためにはよくない場所だ。

だがデッカードの手はそこへ引っ張られて行く。八歳児と完全にダウンした男の戦い。あと二秒もすれば彼の手は粉々にひき潰されてしまうだろう。彼は手を引っ込めようとする。彼女は離さない。彼は強く引っ張るが、彼の手はまるで彼女の手に溶接されているかのように動かない。

彼の顔は力み、歪んでいる。彼は足を上げて彼女の胸に押し当て、全力で押す。手首を握った手が離れる。二人とも後ろへよろける。デッカードは床に倒れ、ぜえぜえ言いながら息を吸い込む。プリスが立ち上がってまた迫ってくる。彼女はデッカードに向かってジャンプする。デッカードは脇へ転がって避け、彼女はパイル・ドライバーのように脳天から落ちる。

デッカードは身を守ろうと反射的に片腕を上げる。プリスはただ微笑み、彼の片足をつかんで床の上を引きずっていく。彼女は仕事を終わらせずに残しておくのが嫌いなのだ。二人はあの機械のところへ戻っていく。

デッカードはダンベルのウェイトを置くスタンドのそばを通り、それをしっかり握る。それでも彼の身体は止まらない。彼は床の上を、まるで氷の上のように滑っていく。後にスタンドを従えて。

プリスは機械のところまで来ると、彼の足を引っ張り上げ、カバーを外した所へ入れようとする。デッカードが5ポンドのウェイトを持って身体を起こし、彼女の背中を殴りつける。彼女はよろめくがデッカードの足を放さない。彼女は拳を固めてフックを放つが、外れる。デッカードは大振りのパンチで彼女の顔を殴りつける。

彼女は床に倒れ、デッカードは立ち上がる。頭上にダンベルを構え、振り下ろそうとする。プリスは必死で彼の胸を蹴る。彼の身体が床から浮く。彼はジムの反対側まで吹っ飛ばされ、どさりと地面に落ちる。

もうお遊びはなしだ。プリスは激怒してすばやく行動する。彼女は壁から鉄の棒をむしりとって頭上に構え、サムライのように彼に迫ってくる。必殺の鉄棒を振り下ろそうとして、彼女は凍りつく。

デッカードが落ちたのはレーザー銃の近くだったのだ。彼は銃の方へ這って行く。それには悪夢の中のように永遠とも思える時間がかかる。だが、彼はそこへたどり着く。

彼は手を伸ばしてレーザー銃をつかみ、あおむけに転がって慎重に照準する。プリスは怒りに絶叫しながら彼の方へ走ってくる。彼女が迫り、彼は撃つ。

その一撃は彼女の左腕を肩から切断するが、彼女の手は鉄棒を放さない。腕が彼女の前で狂ったようにぶらぶら揺れ、彼女は突進してくる。

彼は次の弾で彼女の首を撃ち抜く。プリスはしゃっくりするように血の奔流を噴き出し、宙を飛んでデッカードの隣に落ちる。死んでいる。

デッカードは胸を波打たせながらプリスの隣に横たわっている。ゆっくりと彼は身体を反転させ、四つん這いになる。彼はあえぎながらよろよろと立ち上がり、わずかに体を揺らして彼女の前に立つ。彼の喉から漏れてくるのはきしむ、乾いた音だ。それは勝利の雄叫びには聞こえないかもしれない。だが、そうなのだ。


100 内景 廊下 夜

レーザー銃を手に、デッカードがドアを蹴り開けて廊下に歩いてくる。一人の危険な男。


101 内景 階段の吹き抜け 夜

デッカードは一階の階段踊り場に来る。銃の残弾を確かめ、そのまま階段を上がっていく。彼は次に動くものはまず撃って、正しいか間違っていたかは後で確かめるつもりでいる。


101A 内景 階段吹き抜け 二階 夜

階段の次の踊り場で、彼はドアを勢いよく開ける。埃の中に残った痕跡はないかと彼の視線が廊下を探っていく。何もない。彼はまた階段を上がっていく。


102 内景 九階 夜

九階で彼は探しているものを見つける。廊下の中ほどにあるドアから足跡が出入りしている。彼はドアの横に立ち止まり、耳を澄ます。何も聞こえない。彼はドアに素早く三発撃ちこむ。もし誰かがドアの向こうにいるとしたら、そいつを仕留めたはずだ。

彼はドアを蹴り開けて頭から飛び込み、床に転がって部屋の突き当りの角へ撃ちまくる。だが部屋は空っぽだ。カウンター式のキッチンとクローゼットのドア、バスルームへ通じるドアがある。ドアはどちらも閉まっている。デッカードの息づかいの他は何も聞こえない。どちらのドアからも反応はない。

それは物音だったかもしれないし、ただの勘だったかもしれない。だがデッカードは急に身体を回してクローゼットへ何発か撃ち込む。煙の立つドアが軋みながらゆっくりと開く。

クローゼットの奥にメアリーがうずくまっている。彼女の片手は、ボールを捕ろうとしているがそれが怖い、とでもいうように突き出されている。彼女のもう片方の手は、ボタンの眼がついた猿のぬいぐるみをつかんでいる。彼女は当惑したような、恐怖に凍りついた表情をして、身体は穴だらけだ。疑いもなく死んでいる。デッカードは念のために彼女の首を撃ち抜く。メアリーは糸の切れた操り人形のように床に倒れる。

デッカードはクローゼットの中の哀れな死体から離れてソファに座るが、メアリーから視線を外すことができない。

デッカードはレーザー銃をそばに置き、手を出してじっと見る。震えたりはしていない。彼は手をどさりと膝に置き、目を閉じてソファに寄りかかる。

天井からこつん、と音がする。デッカードは顔を上げる。

強く叩く音が一つ。終わりによく知られたド、ドンと叩く音がつく。少しの間。天井が落ちてきてデッカードは飛びのく。彼が座っていたところへコンクリートと漆喰の大きな破片が落ちてくる。穴は直径2フィートほどあり…桁材も折れて、上階の部屋が見えている。静寂。デッカードは漆喰の粉を眼や口からぬぐい、そしてささやく。

デッカード
やあ、ロイ。

 

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