プラグマティックな化学

”役に立つ化学”の勉強をしましょう

全体表示

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全38ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]

陽イオン界面活性剤

 衣類乾燥機がある。昔アメリカで買ったかなり大型の機械だ。出力5.4 kwで、240V仕様である。変圧器で200 Vから昇圧している。電気代が掛かるので、深夜にしか動かさない。深夜電力はかなり安いからだ。柔軟剤を浸み込ませた紙状のものを放り込んでスウィッチを入れる。大出力なので短時間で終わり、衣類の繊維は傷みにくい。日本製のものは2時間以上も廻っていることがある。必要電力量は同じでも、短時間の方が良いに決まっている。

 そのフィルタには衣類のホコリが大量に引っ掛かる。考えてみれば、このゴミは衣類から落ちて、床や家具に散らばる運命にあったものだ。その分、住居内のゴミが減るわけで、当家は掃除の頻度がかなり少ない。

 フィルタに着いたゴミは、洗面台のボウルを濡らしておき、そこにフィルタをはめ込んで表から手で取る。多少のホコリは裏側からボウルに落ちる。あとでそれを洗えばよい。この方法は、室内でホコリを立てずにゴミを外す方法で、なかなかうまく機能する。長年やっているがこれに勝る方法はなかなか見つからない。掃除機に吸わせると、中のフィルターがすぐ詰まるし、ゴミの一部はフィルターを透過して撒き散らされる。濡れたものに吸い付かせるのは、最も簡単にして、確実な方法なのだ。
イメージ 2

 そのホコリには柔軟剤が浸透している。柔軟剤やリンスは陽イオン界面活性剤だ。繊維や我々の身体表面は負電荷を持っているから、陽イオン界面活性剤は吸い付けられて、その表面に膜を作る。この電荷による反発力がファンデルワールス力より大きければ、繊維同士の付着はさまたげられ、滑りが良くなる。即ち柔軟性を感じるようになる。また、髪の毛に着けば、毛の一本一本が、独立して運動できるようになり、さらさらとした感じを与える。さらにもう一つ大きな利点がある。微生物はその表面に負電荷を持つので、陽イオン界面活性剤が集中して覆いつくし、微生物は死んだり、活動が弱まる。夏に柔軟剤をたくさん使えば、汗臭さが抑えられる理屈は、これである。
 フィルタの裏から落ちたホコリはボウル表面の負電荷に吸着されるから全く飛び散らない。
イメージ 1

 問題はそのホコリが洗面台のボウルにくっついて、水で洗っても取れないことだ。非常によく付着している。そこで、石鹸を手の中で少し溶かしてそれを塗りつけると、あっという間に流れて取れる。正電荷が中和されてしまったからだ。おそらく石鹸が取り囲んで負電荷が優ったのだろう。

 乾燥機を動かすたびに、こんな遊びをして楽しんでいる。

この記事に

開く コメント(0)

ガス爆発

 札幌のガス爆発の件には驚いた。スプレィのガスを屋内で抜いた。しかもその数200本以上というのだから参る。ガスはDME DiMethyl Etherだそうだ。これは学生時代によく使った。本には麻酔性があると書いてあったので、吸ってみたがそうでもなかった。多分、量が少なかったのだろう。今回はたくさん使っているので、麻酔が効くのではないかと思った。

 新聞の報道は、相も変わらず、科学音痴を晒している。
「音速を超える衝撃波を伴う爆轟が起きた」と書いている。どこかの大学の先生が言ったことをそのまま書いたとすれば、これはやや問題だ

 爆発により音速を超えて圧力が伝わると、その波面は高度に断熱圧縮される。急速に着火されて全体が燃焼する。このような現象を爆轟と呼ぶのだ。衝撃波は下線部で生じる。もちろん断熱圧縮されて急速燃焼することによってさらに衝撃波は強いものが生じるだろう。衝撃波は音速を超えているに決まっている。爆轟は衝撃波を生じているに決まっているのだ。馬から落ちて落馬しているわけだ。いや落馬して馬から落ちているのかな。
 一般論を言うと、このようなガス爆発では爆轟は生じない。爆燃が起きるはずだ。炭化水素で爆轟が起きるなら、自動車のエンジン内でガソリン蒸気に点火すれば、エンジンは一瞬で壊れる。水素の時は爆轟が起きることがある。だから水素自動車はいろいろと工夫が要るはずだ。

 筆者は爆轟detonationを実際に起こす場面を何度か見ている。コネティカット大学の先生が見せてくれた。その先生は火薬の研究をしていた。面白い実験室があって床、天井、壁が全て硬い樫(カシ)の木で覆われている。小さな覗き窓から様子を見るが、それもテレビカメラを通してだ。爆発によって飛び散る破片は樫の木の厚板に突き刺さる。

 ガスと言えば、年末はドライアイスの消費量が多いらしい。ドライアイスで冷やした食品を配達してくる業者は、その危険性を知っているのだろうか。保冷車の中にドライアイスがたくさんあると換気をよくしないと危ない。ドアを開けると下の方に溜まったガスは流れ出し、新しい空気が上に入るから、立っていれば安全だが、しゃがむと危ないと思う。

 我が国は国を挙げて二酸化炭素排出削減に取り組んでいるそうだが、ドライアイスは野放しだ。もっとも二酸化炭素濃度は地球温暖化には寄与していないから、どうでもいいのだけど。そろそろ、気が付いても良い時期に来ているのだが、なかなか難しそうだ。
 15年ほど前に買った本によると、ドライアイスは石油を燃やして生じる二酸化炭素を冷やしながら圧縮して作る、と図とともに説明してあった。信じられなかったが、どうも正しいことだったらしい。最近は発電所の排気ガスから回収しているらしい。回収方法は拙著プラグマティック化学の p.260 にあるので、お読み戴きたい。

この記事に

開く コメント(1)

5員環と6員環

 自然界には5員環(five-membered ring)が多い。単結合だけで環を作ろうと思うと、結合角が108度に近いので、自然にそうなる。キレートも同じだ。金属元素を含んで五角になるものが大半だ。
 6員環はベンゼンがあるから有名だが、単結合なら平面構造は無理である。キレートを作るときに一部に二重結合を持てば、自然に六角の平面ができるだろう。しかし六角は少ない。
イメージ 2


 多座配位子を英語ではpolydentateという。"dent"は歯医者に関係がある。噛み付くという意味だ。単座(二座) 配位子はmonodentate (bidentate)だ。30年ほど前だが、入れ歯を安定させて外れにくくする補助材が売り出されたとき、ポリデントという商品名を聞いて混乱したことを覚えている。

 EDTAという薬品は六座配位子だ。酒石酸イオンは二座ないし四座配位子となる。アルカリ性の条件ではアルコールも解離して配位したくなるからだ。ここでは絵を描かないが、自分で調べて形を知っておかねばならない。配位結合を作るときには立体的に対称的な形を作り易いのだ。

 10年以上も前になるが、ある参考書を生徒さんが持って来て、筆者に示す。説明してくれというのだ。その絵を見て仰天した。よく売れている参考書だそうだが、あまりにひどい。その一部をコピーする。赤いバツ印は無視して戴きたい。
イメージ 1

 ありえない構造をしている。この著者は全くの素人であることがすぐ分かった。何も理解していない。推定とは書いてあるが、能力ある人の推定は当たるが、そうでないと悲惨なことになる実例である。
 実はこの絵が、筆者にプラグマティック化学を執筆させる原動力になったのである。そういう意味では感謝している。最近の本は調べていないが、きっと直っているだろう。

 プラグマティック化学のコバルトのところ(p.237) にこれに関した設問がある。筆者の予備校講師時代に作問した約2千題中、最良の問題と自負しているものである。問題だけ読んでじっくり答を出して戴きたい。自力で解ければ、頭の中のすべてがつながるはずである。解くのに、2週間掛かったという話はよく聞く。それで良いのだ。

この記事に

開く コメント(0)

キレート剤

 亜鉛に関してはいくつか連絡を戴いた。薬学関係の方からは、細かいところまで教えてくださっている。一部を紹介する。
 
亜鉛欠乏になるのはキレート作用のある薬剤を長期服用したときに特に問題です。
亜鉛欠乏による味覚障害をきたす薬剤で主なものは、
D-ペニシラミン、L-ドーパがあげられます。
D-ペニシラミンを例に挙げると、
チオール基、カルボキシル基、アミノ基を持っていますが、
亜鉛とはチオール基、アミノ基と結合し、2座配位子となるようです。 
血液中の亜鉛は約8割が赤血球、約2割が血清中、約3%が血小板白血球にあるため、亜鉛欠乏していても溶血血清では見かけ上値は高値になるようです。

 少々難しい言葉があるが、言わんとするところは分かるだろう。

 キレートは複数の配位能力のある配位子で、たいていは5員環を作る。金属イオンを挟むように結合する。配位能力のある部分が4つあれば4座、6つあれば6座という。

 このあたりの言葉は古さを感じさせる。もう英語で化学を勉強する時期が来ているのに、日本ではなかなか進まない。中国、韓国、台湾などでは自国語で化学を勉強する人は既に少なくなってきた。先日台湾に行ったとき、本屋で化学のセクションに行って、それを強く感じた。最近の高等学校の教科書には単語だけ英語で書いてあるが、教える人がそれを理解しているかどうかは怪しい。しばらく前に書いたテレフタル酸の”テレ”に気が付くだろうか。

この記事に

開く コメント(0)

亜鉛の効用

 先日医師の友人たちと会った。その時出た話題である。

 亜鉛欠乏症が起こるとどうなるか、ということだった。日本は海に囲まれていて、海産物を取るので、あまりこの種の話には縁がないのだそうだ。しかし諸外国では、亜鉛がほとんど含まれない土壌を持つ地域がある。そこでは亜鉛欠乏症が起こる。身長が伸びなかったり、ありとあらゆる点で異常を起こすのだそうだ。

 作物の生育にも影響がある。特にマメ科の植物には大切らしい。筆者がアメリカの農家で聞いた話である。このことは筆者の本にも書いてある。
 灌漑用水を送るパイプを鉄管からプラスティック製に取り替えたのだそうだ。そうしたら、大豆が全くの不作で、収穫できなかったらしい。その次も同じであった。そこで農夫は考えた。その前の年と何が違ったのだろうと。

 どう考えても違いは、配水パイプだけだ。そこで再度古い鉄管に水を通し、灌漑した。すると大豆は例年通りの収穫であったそうだ。鉄管には亜鉛メッキが施してあった。亜鉛が溶けて、鉄の腐食を防いでいた。いわゆる犠牲電極である。
 ずいぶん錆びていたので、再度プラスティック製に戻し、塩化亜鉛の水溶液を灌漑用水に足して、散布した。その年の収穫は例年通りになった。

 亜鉛は、タンパク質の合成に大きな影響を持つ酵素の、活性点にある元素らしい。海水には多少含まれているので、海産物を食べていれば、あまりその補給には注意を払う必要はない。但し、何かの薬を飲むとこの症状が出ることがある。その薬が、金属イオンとキレートを作り易い場合だ。このあたりのことは、最近分かってきたことらしい。

この記事に

開く コメント(1)

全38ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事