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客船に乗る

  所用でアメリカに来ている。そのせいもあってブログの更新が遅れている。
  用事が済んだあと、フロリダの友人を訪ねた。そこにしばらく居候する予定であったが、彼が思わぬことを言い出した。
  船会社にコネクションがあるらしく、「まもなく出航する大型客船にキャンセルで出た空室が有る。一緒に行かないか?君の好きな大陸横断鉄道も見られるよ。」という、わけのわからない話であった。意外な安値であったので、賛成して同行することにした。

  港に行くと、巨大な客船が4隻泊まっていて、その中の最大の船に乗った。こういう経験は初めてで戸惑ったが、要するに動く巨大な高級ホテルである。劇場もプールもバーもあり、食堂では高級なフランス料理が自由に食べられる。食べ過ぎると健康に良くない。

  部屋はシティホテルの部屋ほどの大きさで、シャワーが付いている。その水が純水(脱イオン水)なので驚いた。30年程前に乗ったフェリィの水は臭く、顔を洗っただけで気分が悪くなった。飲み水は、ガラスタンクに入ったものを汲んで飲んだ。
  この船の水は全て海水を半透膜で濾過して作っているのだ。試しに眼鏡を洗ってそのまま乾燥した。全く水滴の跡がつかない。プールの水も同様で、それをオゾン殺菌している。
  2,100人もの乗客と800人の乗組員が必要とする水は2000トン/日ほどである。この排水も処理しなければならない。おそらく船内に巨大な汚水処理施設を装備しているのだろう。昨今の情勢から考えると、汚水をそのまま流すことは考えられないからだ。

   少量の石鹸でよく泡が立ち、顔を洗った時の感触が全く異なる。皮膚の表面には皮脂があり、それが多少加水分解されて、薄い脂肪酸の膜ができている。それと水道水中のカルシウムイオンが反応するので、微量の脂肪酸カルシウムが析出し、明らかにザラつきが生じるのをいつも感じていた。今回は違う。温水だけで顔を洗っても明らかにキレイになる。皮脂は、多少の親水性を持つので溶けるのだ。試しに、温水シャワーを数分浴びただけで、鼻の脂はどこかに行ってしまった。純水のシャワーは素晴らしい。

  実は筆者の家を建てる時、唯一失敗したのが、その水処理であった。アメリカ製のイオン交換樹脂を設置するのを忘れたのだ。アメリカでは硬水が普通なので、そういうものは安く売っていた。

  今回の経験で、急にその水処理装置が欲しくなった。

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続 シャンプーとリンス

  筆者の子供の頃は、シャンプーという物はなかった。石鹸で頭を洗っていたのだ。そのうちに粉末のシャンプーが現れ、もう少しすると、リンスという物が出て来た。
  早速混ぜてみたが、訳のわからないものができた。陽イオンと、陰イオンが結び付いて塩のようなものができたのだ。

  リンスの使用法を読むと、手桶に湯を汲み、そこにリンスを溶かす。それを頭髪に掛ける。これを二度やると良いとあった。やってみたが、一回目と二回目では差がなかった。電気的に結びつくのだから、リンス成分が十分過剰であることは今なら理解できるが、中学生の頭ではよくわからなかった。これが日本中で行われたわけで、洗剤メーカーは、二倍の売り上げを得たわけだ。いまでも2回やらなければいけないと信じている人は多いようだ。

  その後しばらく平穏であったが、例のリンス入りシャンプーの事件でいろいろな問題があぶり出されたのだ。化学の正しい知識を持っている人は、手にした瞬間に怪しいとわかるものではあったが、大半の購買者は分かるすべもない。

  その後、リンス in シャンプーというのが出て来た。流石に懲りているはずだから、インチキはないだろうとは思った。使ってみると、油は落ちるし、多少のリンス効果もあった。しかし高い。たくさん使わないと良い結果が出ない。理屈は、先回のコメントにある記事を読まれると分かるように時間差を使っているが、効率は良くない。

  どうして、シャンプーとリンスを2回に分けて使うのがそんなに嫌なのだろうか。人生の中の大切な時間であると考える人は稀なのであろうか。筆者はいつも楽しいと感じている。
  湯に溶かすよりも、少量を手に取り、広げて髪の毛になすりつけると簡単で、無駄が少ない。

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シャンプーとリンス

 最近は単純なリンスは少なくなったが、陽イオン界面活性剤が多く含まれていることには変わりはない。シャンプーは、陰イオン界面活性剤で、油汚れをよく落とすだろう。

 25年ほど前、怪しげな「リンス入りシャンプー」というものが発売された。どう考えてもおかしい。早速購入して調べてみると、よく泡の立つ陽イオン界面活性剤であった。ということは油汚れは落ちない。早速頭髪にてんぷら油を少しつけて洗ってみた。油は全体に広がり、落ちなかった。仕方がないから、よく水でそのリンス入りシャンプーを落とし、普通のシャンプーで洗い落とした。

 洗剤メーカーに警告書を送った。このまま売り続けるなら、公正取引委員会に訴えると。その警告書は無視されたので、直ちに訴えた。係官は化学はよく分からないとは言ったが、上記のてんぷら油法を教えてやったら、ひどい目に会ったらしくて、怒って電話を掛けて来た。
 筆者は「あなたが頭に来たことは、全国で起こっていることだ。これは消費者を欺いている。」と伝えると、その二週間後に新聞の第一面に「排除命令」の記事が載った。大手の洗剤メーカーが、軒並み排除命令を受けたのだ。これは大変な事態である。筆者以外に、どこかの大学の先生も訴えたらしい。
 まともな化学者なら、こういうウソはすぐ見破れるものだ。

 結局、しばらくその手のものは売り出されなかったが、最近はシャンプーみたいでリンス効果があるような製品を売っているようだ。
 筆者が理解できないのは、どうしてシャンプーを洗い流してからリンスを付けるのが面倒なのだろうということだ。簡単なことだから、二回に分けてすればよいのだ。一回きりで効果が欲しいという人がいるのは、不思議だ。

 ヒトの皮脂は、多少の水酸基を持ち、親水性がある。即ちシャンプーを使わなくても温水シャワーを使えば落ちるものである。だから、シャンプーは、はっきり言ってしまえば、なくても構わない。そういう論点では、例の怪しい「リンス入りシャンプー」でも何ら問題はなかったのだが、油汚れが付いた人には大問題だったのだ。

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界面活性剤

 先回の話は、高校生にはわかりにくかったようだ。石鹸がどうして陰イオン型でなければならないのかという説明が必要である。

 私たちの身の周りにあるものは、とういう訳か、水中で負電荷を帯びることになっている。衣類も髪の毛も皮膚もである。石鹸で洗うと、なぜ汚れが取れるのであろうか。
 これについて各種の参考書類を見てみると、油汚れは石鹸水中で細かくなって水和する(これを乳化と呼ぶ)とある。それだけではだめだ。

 どんなに細かく分散しても汚れが取れないこともある。逆性石鹸水の中に少量の油を入れて振ると見事に乳化するが、その中に指を突っ込むと手に油がへばりつく。洗っても洗ってもくっつき、這い上がってくる。これは20年ほど前、ある大学で出た問題であるが、高校の教科書、参考書はそれについての説明を付けることが無かった。これもプラグマティック化学を書く原動力の一つになった。
 分散が起きて、その粒子の一つ一つが負電荷を帯びていることが大切だ。私たちの手は負電荷を帯びているから、再付着が不可能なのである。
 事実上、どんな布地も負電荷を持つことが分かっている。したがって洗濯は有効な手段である。

 しかし人類は思わぬものを作りだした。合成繊維の中にはどういう訳か、水中で正電荷を帯びるものがあるのだ。むろん、そういうものは衣類には使えない。洗濯できないからだ。洗えば洗うほど、汚れを吸着してしまう。役立たずでうち捨てられていたが、それを使う用途を開発した人がいる。

 その種の糸で布地を作り、それを使う例を考えるのだ。
 時々起こるタンカーからの油が流出して起こる海洋汚染がある。大変な被害だが、特殊な界面活性剤を撒くと、海水中でも働いて油を乳化する。乳化すると表面積が増え、油を食べる微生物がいつかは処理してくれるだろう。しかし、漏れた油は還って来ることは無い。多大な損失だ。
 そういう時にこの布地を大量に投げ込んで、それを回収する。その布地は正電荷を持っているので、乳化剤に囲まれた油粒子は電気的に結合するだろうから、油でべとべとになった布を回収し、絞れば、いくらでも油が回収されるだろう。

 石鹸で、油の付いた手を洗うときれいになる理由は正しく書けるだろうか。電荷を含めた文章でないと正解とは言い難いのだ。

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陽イオン界面活性剤

 衣類乾燥機がある。昔アメリカで買ったかなり大型の機械だ。出力5.4 kwで、240V仕様である。変圧器で200 Vから昇圧している。電気代が掛かるので、深夜にしか動かさない。深夜電力はかなり安いからだ。柔軟剤を浸み込ませた紙状のものを放り込んでスウィッチを入れる。大出力なので短時間で終わり、衣類の繊維は傷みにくい。日本製のものは2時間以上も廻っていることがある。必要電力量は同じでも、短時間の方が良いに決まっている。

 そのフィルタには衣類のホコリが大量に引っ掛かる。考えてみれば、このゴミは衣類から落ちて、床や家具に散らばる運命にあったものだ。その分、住居内のゴミが減るわけで、当家は掃除の頻度がかなり少ない。

 フィルタに着いたゴミは、洗面台のボウルを濡らしておき、そこにフィルタをはめ込んで表から手で取る。多少のホコリは裏側からボウルに落ちる。あとでそれを洗えばよい。この方法は、室内でホコリを立てずにゴミを外す方法で、なかなかうまく機能する。長年やっているがこれに勝る方法はなかなか見つからない。掃除機に吸わせると、中のフィルターがすぐ詰まるし、ゴミの一部はフィルターを透過して撒き散らされる。濡れたものに吸い付かせるのは、最も簡単にして、確実な方法なのだ。
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 そのホコリには柔軟剤が浸透している。柔軟剤やリンスは陽イオン界面活性剤だ。繊維や我々の身体表面は負電荷を持っているから、陽イオン界面活性剤は吸い付けられて、その表面に膜を作る。この電荷による反発力がファンデルワールス力より大きければ、繊維同士の付着はさまたげられ、滑りが良くなる。即ち柔軟性を感じるようになる。また、髪の毛に着けば、毛の一本一本が、独立して運動できるようになり、さらさらとした感じを与える。さらにもう一つ大きな利点がある。微生物はその表面に負電荷を持つので、陽イオン界面活性剤が集中して覆いつくし、微生物は死んだり、活動が弱まる。夏に柔軟剤をたくさん使えば、汗臭さが抑えられる理屈は、これである。
 フィルタの裏から落ちたホコリはボウル表面の負電荷に吸着されるから全く飛び散らない。
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 問題はそのホコリが洗面台のボウルにくっついて、水で洗っても取れないことだ。非常によく付着している。そこで、石鹸を手の中で少し溶かしてそれを塗りつけると、あっという間に流れて取れる。正電荷が中和されてしまったからだ。おそらく石鹸が取り囲んで負電荷が優ったのだろう。

 乾燥機を動かすたびに、こんな遊びをして楽しんでいる。

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