プラグマティックな化学

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犬と鉄柱

 最近のニュースで、公園の鉄柱が突然倒れ、小学生の女子が重傷を負うという事件が報道された。その小学生本人はもちろん、ご家族には同情する。続報によると、市役所はその周りの土を分析して、「アンモニア性窒素を沢山検出した。」とのことである。
 報道機関はそれを受けて、尿中のアンモニアによって鉄管が腐食したという論調を打ち出していた。いくつか見たがどの報道機関も似たり寄ったりの論調だった。

 アンモニアで鉄が腐食するのだろうか。これは以前に調べたことがある。もちろん腐食には無関係である。水中では、鉄はアンモニアと錯イオンを作らない。これが銅だったら大いに関係がある。銅粉にアンモニア水を注ぎ、空気を吹き込みながら混ぜると、たちまち銅は酸化され錯イオンになる。

 鉄を錆びさせるのはもちろん酸化剤としての酸素だが、塩化物イオンの介在が大きなファクタだ。以前にも書いたが、鉄は塩化物イオンさえなければほとんど錆びない。海から100 km以上離れたところでは湿っぽくてもさびにくい。もちろん火山の近くで硫黄酸化物などがあるところはダメだ。
 
 その市役所の技官がどうしてアンモニアを調べたのかが不明である。当然尿に含まれる塩化物イオンの量を、調べるべきであった。発表するほうもするほうだが、それを真に受けて報道する方もどうかしている。
 日本の理科教育はほとんど意味がなさそうだ。

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ステンレス

 最近、エアコンを取り替えた。来てくれた工事の人と話をしたが、彼が一番驚いたのは、屋外で使う器具にはステンレスの部品を使うべきでないということだった。
 エアコンの本体は亜鉛引き鉄板(いわゆるトタンの類)が使ってある。それを組み立てるのにステンレスのネジが使ってある。見かけ上は高級感があるのだが、実のところ、それは本体の鉄板を錆びさせる元凶だ。亜鉛メッキがしてあるが、それが早く消耗する。どうしてこのネジを亜鉛引きの鉄ネジにしないのだろう。以前使っていたアメリカ製のエアコンは、そうなっていた。実際に長持ちする。
 日本製のエアコンは、技術革新が進むのが速く、実際に使われる時間が短いから、気が付かないのだろうか。

 エアコンを載せる架台が、新しいエアコンを載せるにはやや小さく、本体がはみ出ている。ネジも一部締められない。「ステンレスの針金で縛っておきましょう。」と言うので、それはやめてもらった。
「ステンレスを使うと、架台がすぐ錆びます。」と言うと、彼はしばらく口を開けて、黙っていた。そして、こう言った。
「確かにそうです。ステンレスと触っている金具がボロボロになります。どうしてですか。」
 それはステンレスを正極とする局部電池が形成されて、大切な鋼製の部品が腐食されてしまうのだということをいくつかの例を挙げて説明した。
 彼は、「知らなかった。どうしてそういう大切なことを、誰も教えられていないのだろう。この国の教育は間違っている。」と言った。「いや、絶対に壊れてはいけないもの、例えば造船とか橋梁の世界では教えられているはずです。でも、民生品は寿命が短いのでいいや、ということなのでしょうね。私も様々な電気メーカに手紙を出しましたが、ナシのつぶてです。建築業界も全くダメです。」と言うと彼は天を仰いだ。

 彼は研究熱心な人で、「それではアンテナの張線(TVアンテナなどを倒れないように支える針金)はステンレスが良いでしょう?金具をステンレスにすれば良いのでは。」
「いや、それは別の意味で最も良くない方法です。亜鉛引き鋼線を使うべきです。ステンレスは伸びるのですよ。」
「あっ、そうです。それは私も不思議だと思っていました。去年張った線が、今年になって調べに行くと緩んでいるのです。昔はこんなことはなかった。」
「ステンレスはいくらでも伸びます。毎年締めても同じことです。ステンレスのボルトもダメです。いくら締めても緩みますよ。」
「確かにそうです。緩みます。どうしてこんなことが放置されているのですか。」
「最初に言ったように、買替えまでの時間が短いということなのでしょうね。想定寿命が短くて、本体が錆びたり、アンテナが倒れたりすることがほとんどないからでしょう。それと見かけの問題もあるでしょうね。ステンレスは見かけが良いのです。」

 彼は、「大変なことを知ってしまった。会社に帰って報告します。」と言った。うまく行くと良いのだけど、過去の筆者の経験から行くと、誰も気にしないのだろう。この国の教育は間違っていると彼は言ったが、全くその通りである。小学校からそれを教えないと直らないだろう。 

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局部電池

 最近は妙に忙しく、ブログの更新が途絶えていた。Pragmatic Chemistry のウェブサイトは相変わらず閉じたままだが、CDを作ってほしいという申し出は多く、買ってくださる生徒さんには感謝する。

 さて、オートレース(国際的な二輪車のレース)に関連する友人が遊びに来て、興味深いことを言う。あるメーカーのレース用のオートバイが約1000万円ほどするのだそうだ。最近は2000万円くらいのもあるそうだ。考えられる最高の材料と最高の技術を使って作るのだから、その価格は当然である。エンジンは水冷である。そのウォーター・ポンプはマグネシウムで、できていると言う。レースの間、持てばよいから、肉の厚さは最低限にしてある。

「軽くて硬いからね。薄いんだよ。厚さは1mmくらいなんだ。レースが終わったら水を抜いて乾かさなければならない。うっかりしてそのままにしておくと、ポンプ・ハウジング(ポンプの形をしている外側の部分)が溶けて穴が開くんだ。触るとね、くしゃとつぶれるんだよ。」
「つぶれたらどうするの?」
「しょうがないから、マグネシウムの塊から、機械で削り出すのだ。図面はあるから、コンピュータ制御の機械で彫り出すんだ。高いんだよ。」
「いくらぐらいするものかな。」
「5万円ではできないよ。」
というような会話だった。

 ポンプの羽根は鉄合金だ。冷却液は水溶液だから、中身があると冷却液を電解液とした局部電池ができる。鉄とつながっているマグネシウムが溶ける。そういえば、昔の電気温水器は鋳鉄の熱水タンクに保護用のマグネシウム棒が入っていた。5年に1度くらい取り換えていた。外したのを見ると、少し細くなっていた。その分は飲んでしまったり、風呂水になってしまったのだ。
 その後、マグネシウム棒を取り替えなくてもよいタイプになった。特殊ステンレスの電極を差し込み、それにプラスの電圧を掛ける。本体は鉄板製なのだが、それにマイナスの電圧を掛ける。するとマイナス極には電子が供給
されて還元サイドに傾く。ステンレス極は錆びないからそのままだ。電気が通じられている間は錆びない。これを電気防蝕という。
 さらにその後は、特殊なステンレス鋼で本体を作るようになった。普通のステンレスは使えない。水道の水には塩素が含まれているので、ステンレスの不働態膜を破壊するからだ。モリブデンとかニオブを含んだ高級なステンレスをつかう。この系統の合金は原発にも使われている。海水に耐えるステンレスが必要だからだ。

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防災訓練

 Pragmatic Chemistry のウェブサイトが見られなくなって、2月経つ。その間、様々な方から問い合わせを戴き、誠に申し訳なく思う。
 どうしてこうなってしまったのかということを簡単に書くと、システム作成者はGoogleが無料提供していたあるサーヴィスを使って、アップロードしていたのだそうだ。それが突然打ち切られたので、慌ててGoogleに、有料でもよいから提供してくれと頼んだが、長い間待たされて、結局「ダメ」という返事が来たのだ。
 ほかの方法はいくつかあるが、いったん契約すると、紙媒体の本を出版できなくなるものが多く、そうでないものを当たっている。まだ多少は時間がかかるようだ。お詫びする。
 紙の本は河合出版から来年夏をめどに出版されることが決まった。今年受験される方には間に合わないことが確定した。重ねてお詫びする。

 先日、防災訓練があった。3年に一度の大規模な訓練で、筆者は今年町内会長をしているので、少々忙しかった。その中で目を引いたのは、プールなどの水をガソリンエンジン付きのポンプでくみ上げ、半透膜を通して飲料水を作る装置(逆浸透という)である。中空糸というものを圧力を掛けて透過させ、清浄な水を作る。
 試しに飲んでみたら、プールの塩素臭も完全に抜けた、全く味の無い良い水である。当日、参加者に飲ませようとしたら、消防団員が制止する。
「殺菌剤を入れてないから、飲んだらダメです。」
「いや、出来立ての水は無菌です。飲んでもよいのです。」
「マニュアルには『殺菌剤を入れなければならない。』とあります。」
 消防団員は、「おなかが痛くなっても知りませんよ。」と言うので、大きな声で注意した。
「災害時にはこれを飲むのだ。殺菌剤は保存の時に使うものだ。君たちが理屈を勉強しておかないと、役に立たないではないか。消火訓練の時に、『どうせ消えませんよ。』と思ってやっているのか?」
 これは効いたようだ。



 水道の水には塩素が入れてある理由を考えたことがないだろうか。塩素は殺菌剤で、水道の末端まで届く濃度に設定されている。それがないと、停留している部分で水が腐る可能性がある。水道の水は逆浸透で作った水ほどきれいではない。多少の有機物も溶けている。それが細菌などによって腐敗することがあるのだ。
 翻って、逆浸透によって作られた水を考えてみよう。その中には何も含まれていない。腐らないのではないかと思われる方が多そうだが、水は良くても、実は容器に問題があるかもしれない。容器の中には埃、手垢などがあってそれが元になって腐敗する。だから次亜塩素酸ナトリウムなどを入れるのだ。
 すなわち出来立ての水はそのまま飲んでも、全く問題ない。

 水道の水をポリタンクに入れ、密栓して保存しても腐らない。ところが、純水をポリタンクに入れておくと、わずかに異臭がすることがある。タンクの中の何かが腐ったのだ。


 後で消防本部の防災担当の人と話をしたが、「よくわかりました。役立てます。」と言われた。
 マニュアルを読んでも、その背後にある意味をつかむのは難しいようだ。




 

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不思議な表示

 しばらくアメリカに行っていた。帰ってみるとPragmatic Chemistry のサイトが閲覧不能になっていた。
 その原因はいくつかあって、解決はそう簡単ではなく、開発者と協議中である。ご不便をおかけするが、今しばらくお待ちいただきたい。

 さて、最近目にした不思議な表示について書こう。
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 この手の金箔が入ったお菓子、食品をたまに見るが、その神経を疑う。金自体は消化もされずに排出されるから良いものの、金は希少金属で消耗品に使うものではないはずだ。それはさておき、この金箔の成分は不思議だ。銀と銅が入っているとある。その和は100%になるようだが、一般的にはそういうことは起こらない。何かの操作が施されているように思う。有効数字が多すぎる。他の成分がゼロということも考えにくい。金、銀、銅という言葉も怪しい。
 30年ほど前から、このような金箔入りの食品があるが、かねてより指摘されていることは、金そのものは問題ないが、他の元素が溶出するかもしれないということである。この数字を信ずる限り、銅は多少なりとも出るであろう。銅ならさほど問題になることもないが、本当に他のものは無いと言えるのであろうか。一般論であるが、ゼロである証明は難しい。
 
 この飴を食べてみた。とても美味しい。アメリカに土産に持って行ったら大評判で驚いた。100%ということを謳っている。しかしその表示は面白い。
イメージ 2



























 この文章を読んで、一瞬こちらの頭がおかしくなったのかと思い心配した。いろいろな人に聞いてみると、ワハハと大笑いする人や、「そりゃそうだろう、」と納得する人がいて、ずいぶん楽しめた。
 皆さんはどのように感じられたであろうか。

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