プラグマティックな化学

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 あと5年ほどすると、入試システムが変化することになっている。謳い文句は昔から決まっていて、入試では測りきれない能力をみるなどと言っている。果たして本当なのか、極めて疑わしい。

 筆者は長年予備校の講師をしていたので、人間の能力をみる力にはかなり長けていると思っている。事実、いろいろな場面で出会う人の人物評価は、大体当たっている。
 進学に際し、高校での内申書が大きな比重を占めるようになるそうだ。果たして高校の教師に内申力があるかということに関しては、経験上、半分ほどしか合格点を与えられない。

 生徒さんが高校の時のノートを持って質問に来た。書いてあることには目を疑うようなことがある。念の為、同一校の他の生徒のノートも借りて確かめるが、支離滅裂な説明がかなりの確率で存在する。化学を理解していない人が化学の教師をしているのだ。これは誇張ではなく、本当のことである。予備校が繁盛するのも当たり前である。そんな授業では試験には通らぬ。

 そんな教師が全権を握って内申書を書くというのは、ブラック・ジョークそのものである。AO入試というのも、単なる情実入試である。いかようにも判定できるのだ。寄付金の多い順に点数を付けても、バレることは無いだろう。
 文部科学省は、諸外国の実情を見て…などと書いているが、ウソである。筆者は若いころにアメリカに居た。当時の先生に後年会ったときに、日本の大学進学率について聞かれた。
1990年ころの数値は、45%ぐらいであった。そう答えると、
「大したものだ。日本もアメリカ並みになったね。ところで何%卒業するの?」
と聞かれた。
「その96%くらいでしょう。」と答えると、その先生は椅子から飛び上がって怒った。
「日本人がそんなに優秀なはずがない!」

 入試制度を変えて諸外国の真似をしたいなら、入れてから落とすシステムも導入すべきだ。ちなみにアメリカの卒業比率は入学生の半分以下である。

 企業の最先端で働いている昔の生徒さんに話を聞くと、私立大学の内部進学者の実力があまりにも低いので、困っているという。有名大学であっても全く駄目なのだそうだ。
 考えてみれば、一般入試で通りそうもないから、中学高校からその大学の付属学校に行くわけだ。その時点でもうダメと分かっているのだ。
 その企業での採用時に、AO入試合格者、内部進学者は申告させるようにしたらしい。

 大学入試には問題点も多少はあるのだが、一定水準以上の学生を確保するのに十分に役に立って来た制度なのだ。それを上っ面の真似をするために無くしてしまうというのは、日本の将来を危うくすると、筆者は考えている。

衣類乾燥機

 もう30年も前からのアイデアなのだが、どのメーカからも出ないので、発表してしまう。

 ほとんどの乾燥機は電熱で洗濯物を温めつつ、空気を送って水蒸気を外に運び出す。当然のことながら、煙突が無ければ、室内は暑くなり、湿気が充満する。鉄製品はさび、カビも生えるだろう。筆者の家は、煙突を付けているので、湿気は外に行くが、消費電力量が大きい。深夜電力を活用しているが、もっとうまい方法がある。

 風呂の残り湯の熱を使うのだ。洗濯物をよく遠心脱水すれば、浸み込んでいる水の量はかなり減る。手で絞ったものに比べると、一桁以上よく絞れている。それに熱を加えながら、真空ポンプでその空間を引くとどうなるだろう。温度は低くて良い。
 蒸気圧は温度のみの関数であるから、圧力を低くすると低い温度で沸騰することになる。

 風呂の残り湯をポンプで汲み上げて、洗濯物を入れるドラムの全周に循環させる。熱が供給されるので、水は気化し、真空ポンプに吸い取られる。
 熱を供給しなければ内部は冷え、凍るかも知れない。いわゆる真空凍結乾燥だ。凍らないように風呂の残り湯で温めているわけだ。排水は冷たくなっているだろう。

 筆者の計算では35℃の湯が150 Lあれば、4 kgの洗濯物を乾燥しても、まだ半分ほど余る。
 電力は喰うが、電熱方式ほどではない。真空ポンプの寿命が問題だ。ゴミを吸い込まないようにフィルターをどうするか、が一番の問題だ。

 理屈上は非常にうまく行って、省エネルギィである。どこかのメーカが開発してくれると嬉しい。

暑いですね

 暑さでどうかなりそうだ。庭の犬も熱中症になりかけたので、水で冷やした。散歩に出かける前と後は、十分に水を掛けて濡らしてやる。最初は嫌がっていても、このごろは嬉しそうにしている。どんなに暑くても湿度が100%でなければ、水が蒸発するので何とかなる。

 さて、親族が中東の某国に転勤することになった。最近経済的に発展している国である。出発に当たって、何か注意すべきことは無いかと問われたので、気候を調べると、とんでもない数値が出て来た。暑いのは分かるが、湿度が異常に高い。ひどい時は48℃、湿度100%とある。これには驚いた。沸かしたての風呂の蓋と水面との隙間みたいなものである。
 これでは生きていけない。

 体温より高い気温で飽和蒸気圧に達していれば、体表部では水の凝縮が起こり、蒸発熱が放出される。即ち、蒸し器の中のようなものだ。体温を下げるどころか、熱が外から供給されて、死に至る。
 久々にエントロピーのことを考えた。常温で水が蒸発するのはエントロピーが増大する方向(なるべく拡散してでたらめな状態になること)に向かうからだ。逆に行かせようとすると、どこかで大量のエネルギーを生み出し(その場所では燃焼などによりエントロピーが極端に増大する)、そのエネルギーである小さな空間のエントロピーを減少させる。これがエアコンなどの根本原理である。エントロピーを小さくできるのは人間だけである。人間がいなければ、この地球はごく自然にエントロピーが増大し、荒れ果てたものになるだろう。

 その国は、夏は人工的な環境の中でしか生活できないのだ。エアコンがあると言っても、その電力を作り出している発電設備は外国から買ったものだ。そのメンテナンスをしている人間も外国人が多いらしい。当然、発電設備は2系統以上あって、非常時に備えているとは思うが、すべて故障するということもありうる。
 そうなったらどうなるのだろう。メンテナンスをする人間が逃げ出してしまったら、住環境のエントロピーは増大する一方だ。 

 この話をしたら、非常に深刻な顔をした。「どうしたらよいですか。」と聞く。幸い彼は工学部出身者でエントロピーの話は分かる。
 生き延びる方法はないから、逃げるしかない。いつも冷凍庫に氷をたくさん作っておくこと。車のガソリンタンクはいつも満タンにしておくこと。それで空港まで行って、外国に逃げるしかないと言うと、急に晴ればれとした顔になった。

 考えてみれば、月世界の基地に住んでいるようなものだ。そこから出たら死んでしまう。何とも不合理なところに街を作ったものである。



 ブログの更新が滞っているのは良くないと、お叱りを受けた。定期的な発行を心掛ける。原則として月2回更新としたい。
 
 親しい土建屋の友人から質問があった。

 コンクリートを切る時、直径15 cm程度のダイヤモンドを付けたディスクで切るのだそうだ。厚さ 5 cm程度ならすぐ切れてしまう。ディスクもほとんど減らない。
 ところが鉄筋(直径9.5 mm)をついでに切ると、ダイヤモンドが減りやすいという。その理由が知りたいのだそうだ。

 硬さだけから言うと、コンクリートの中の石とか砂は二酸化ケイ素が主成分だから、かなり硬い。鉄筋はそれほどでもない。何か違うのかというと、それはダイヤモンドと反応するか、しないかである。
 摩擦熱で鉄は赤熱し、ダイヤモンドと接触する。すると、鉄と炭素は反応しやすくなる。こうしてダイヤモンドは化学的に消耗する。砥石でできたディスクで切れば、鉄筋はたちまち切断される。摩擦熱で酸素と反応して燃えるのと、こすれてどこかに飛んでいくのとの両方だ。

 水を掛けたらどうかとも聞かれたが、赤熱する時は水は消し飛んでいるからダメだろう。
水中に浸したらどうかとも聞かれたが、現実問題としては極めて難しい。水の中で高速回転すると水は飛んで行ってしまう。実際にやってみると、水中でも火花が散っているから同じだ。

 この問題は3年ほど前、名古屋工業大学でも出題されている。現場では知っておくべきことなのだろう。

海水は濁りにくい

 氷河を見に行った人から質問があった。それが海に向かって崩れ落ちる場所に行ったのだそうだ。
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 氷河に対して良い感想を持っている人は多いが、現物はとても汚い。土砂、木や草、時には人間まで入っている。
 拙著「プラグマティック化学」に、海水は土砂で濁りにくいという話を書いておいたのだが、現場は派手に濁っているそうだ。海水とは思えないほど白く濁り、本の記述は誤りではないかという質問だった。

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 これは海水ではないのである。氷河は陸氷であるから塩分はほとんどないだろう。それが海に崩れ落ちるので、そのあたりは氷のかけらで埋め尽くされている。氷は徐々に融けて水になるが、海水とは混じらない。
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 密度差で上の方に浮いている。即ち、そのあたりの海の表面は淡水であると言ってよいくらい薄いのである。海水の中で土砂(粘土と考えても間違いではない)はマグネシウムイオンにより沈降するのであるが、薄ければ沈まないであろう。

 教科書に書いてあることと、実際の場所にある条件は違うことに気が付かねばならない。これもプラグマティズムである。

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