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私は朝から仕事の関係で神戸へ向かった。
帰ってきたのは、次の日の夕方。
二日間何も言わないで、いなくなったから、
にゃおんはどうしているだろうと、気にかかって、
ガラス戸に走り寄ってみた。
にゃおんの姿はなかった。。。
当然。。。だよね、でもやはり寂しさは隠せない。
今日も朝早くから、出かけなくてはならなくて、
ガラス戸を開けて見たけれど、にゃおんの気配なし。
さびしい。。。
夕方早く帰宅して、ガラス戸に駆け寄ると・・・
にゃおんの影。。。
私の足音を察知して、いつものような「ニャオン」コールが始まる。
たまらなくなって、ガラス戸をあける。
にゃおんはごろごろと嬉しそうに、喉を鳴らして擦り寄ってくる
もう随分前から、にゃおんは私の姿を見つけると喉を鳴らすようになった。
そして甘えたように、時々、私の指をかんだり、舐めたりするのだった。
←※私が苛めているのではありません。
にゃおんは触って欲しいのだ。。。
にゃおんの毛並みに触れて欲しいのだ。。。
優しく撫でられると目を細めて、本当にしあわせそうな様子で
まとわりつくように何度も体を摺り寄せてくる。
いっときだって、カラダが離れようものなら、
不安な顔でニャオンと鳴いて私の顔を見上げる。
寂しいんだね。。。
誰だってひとりぽっちはいやだもんね・・・。
そんな愛くるしいにゃおんの傍にできるものならばずっとついていてやりたい
その衝動に何度駆られたことだろう。。。
でも、そんなわけにいかないから。。。
私はまだこの手でにゃおんを抱き上げたことがない。。
にゃおんを家にあげたこともなかった。。
なぜって、それは、みるきー(愛犬:室内犬)への私のささやかな思いやりだった。。。
我が家にはかけがえのないみるきーがいる。
彼女のテリトリーを侵すことはできない。
とはいえ、、ガラス戸を締めようとすると、決まってかわいらし手を戸の隙間に入れて
閉めさせないようにするにゃおんの気持ちを考えると
たまらなく胸が痛んでならなかった。
やらなきゃならないことは山積している。
こうして撫でてやって小さなぬくもりに触れていると、
その場を離れがたい気持ちでいっぱいになってしまうけれど。。。
心を鬼にして、戸を閉めた。
にゃおんは切なく泣き続けた。。。
「ニャオ〜〜〜〜ン、ニャオ〜〜〜〜ン・・・」
こんなに日暮れ時にまでにゃおんが居座ることなんてなかった。
それなのに今日に限ってにゃおんはガラス戸の前から
離れようとしない。
いつまでもガラス越しにその姿が映っている。
たまらなく切なくなって、何度、戸の開け閉めを繰り返したことか・・・。
程なくして、けたたましい猫が争う声。
驚いて、ガラス戸を開ける。
どてっとした例のガーフィールドみたいな猫がこちらをじっと見ている。
にゃおんの姿がない。
あれ?
「にゃおんどこ?にゃおん?にゃおん?」
呼んでみたけれど反応なし。
にゃおんもいないのにどうしてこの猫はこちらの様子を伺って離れないの?
すると・・・
にゃおんの「フゥゥ〜〜〜」と威嚇する独特の声が渡り板の下から聞こえてきた。
にゃおんはこの下にいる!
慌てて板の下を覗くとにゃおんの小さく動く影。。。
動物は健気だ。。。
生きとし生けるもの全て、一生懸命生きている。
どんな生き物だってそうだ。
でも、初めて、ちいちゃなカラダで大きな猫に向かっているにゃおんを見て
そのふてぶてしい猫に「あっちへ行って!」という強い感情が生まれた。
と同時に、私は行動にでていた。
その猫の前にスリッパで降り立ったのだ。
ドン!
猫はその場を走り去った。
その猫だって生きている。
それが猫の社会なんだから、私が介入しちゃいけないのかもしれない。
そんな思いもよぎったけれど、その時の私にはどうしようもなかった・・・。
にゃおんを私は渡り板の下から引き出すと思いっきり撫でてやった。
でも小さなカラダは、小刻みに震えていた。
いつものゴロゴロも聞かれず、ずっと例の猫が去った方向を
見つめていた。
「もう大丈夫だよ・・・にゃおん。。。」
にゃおんを渡り板の上に下ろしたとき、なんと例のガーフィールドが
再びコチラを伺うように戻ってきたのだ。。。
にゃおんをすかさず手にして、私は、今度は迷うことなく
猫の前に飛び降りて、地団太を踏んで追い払った。
あなたに罪はないけれど、ごめん、と心で唱えつつ。。。
そして、もう一度にゃおんを渡り板に下ろして気付いた。
にゃおんの歩く様子がおかしい。。。
びっこをひいている。
三本の足で私の周りにまとわりついてくる。
どうしよう、どうしたらいい???
涙があふれてきた。
外は冷たい雨が降り始めて・・・
日はドップリ暮れてしまった。。。
にゃおんはひとりぽっち・・・
ひとりぼっちでこの雨の中、傷ついた足で、大きな敵とも
闘わなきゃならないんだ。。。
私に何ができる?
にゃおんに何がしてあげられる?
にゃおんの世界に入り込んだらにゃおんのためじゃないかもしれない。。。
でも傷ついて、怯えている子猫をこのまま放り出すことなんてできない・・・。
眠っていたみるきーが物音で目を覚ました。
私のベッドの上から外のガラス越しの私をジッと見つめている。
目は私に向けられたまま、まばたきすらしない。。。
しばらくそうして見つめていたがベッドから降りると、
ガラス戸前まで走り寄ってきた。
ガラス越しのみるきーと私とにゃおん・・・
みるきーはガラス戸の前で、しばらくたたずんでいたが、
私が部屋に戻りそうにないとわかると、
家族のいる部屋のほうへ走っていってしまった。。。
ごめん、みるきー。
私はみるきーまで傷つけてしまったね。
どうしたらいい、どうすべき???
にゃおんが私の横で安心して座る姿に余計涙が止まらなくなった。
だからといって、我が家に入れるわけにもいかない・・・
私はにゃおんの小さなカラダを撫でながら途方にくれてしまっていた・・・
「にゃおん。。。どうしよう・・・」
にゃおんに問いかけたからってにゃおんがどうできるわけでもない。。。
どのくらいの時間泣きながらにゃおんのカラダを撫でていたことだろう。
ただただ自分の非力が悲しかった。
どうしてやることもできない自分がもどかしくてならなかった。。。
寂しがり屋で、甘えん坊のにゃおん・・・。
温もりが欲しくて欲しくてたまらないにゃおん・・・
生きるためにひとりぼっちで闘っているにゃおん・・・
ごめんね、にゃおん。
でも私、おうちには入れてあげられないよ・・・。
ごめん、ごめんね、にゃおん・・・
ほんの少しばかり、その場を離れたその間に、にゃおんの姿は消えていた。。。
つづく…
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