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年末さる大学の先生から電話、
「いま海外から人が来ていて、掛軸を修理してほしい、来ていただけますか?」
先生の部屋に行きますと、外国の方が二人、紹介されました。先生とその二人の会話はフランス語です。
先生に「フランスから来られたのですか」「いえいえイタリア人の建築家です。私はイタリア語話せないのでフランス語なの!」
彼の話では、自分の先生から預かった軸を修復してほしいということ。
「いいですよ」といいながら、軸を拝見。
上下に細い棒をつけた軸まがいで、紙表具です。作品は肖像画、大きな木版刷りで、明治32年の日にちが入っています。
「できますか、いくらくらいかかりますか?」
「きれいに直りますが、見積もりとしてはこのくらいですね」
「頼んだ先生からこれこれのお金預かりました。」
見積もりの五分の一ではないですか!
「先生に聞いてみます」
「イタリアですか」
「いえいえ、私の先生はイギリスの大学の教授です」
ということで、次の日、先生から電話、やはりあの値段でしてほしいそうです。
国際交流、日本文化の紹介ということで商売抜きでお引き受けしました。
暮れに仕立てして、お正月の間乾燥して、先日イギリスに送りました。
実は表具師は上等な裂をいっぱい持っています。得意先に一度使った裂は、またすぐに使えないので結構ストックされています。昔は裂を持ちすぎて倒産した表具屋もあるようです。我が工房にもずいぶん貯まっています。
その中から作品に見合う裂を探し出して表具しました。
これも表具の世界では、作品にあう、そして値段にあう裂を使います。たまたまその時高いが似合いの裂があって作って、将来同じ顧客が、あの裂であの値段でといわれると採算割れしてしまいます。馬子にも衣装といいますが、馬子には馬子の衣装を着せるのです。
ところが今回は海外に行きます。それも著名な大学、変なものを作れば日本の美や技術が問われてしまいます。ということでもっと採算度外視してしまいました。
(写真は所蔵の江戸から明治にかけての古裂帖)
ラグビーにイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド、フランス、イタリアが戦うシックスネーションズという北半球最高のリーグ戦があります。イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドはイギリスですから、今回はイギリスの方の軸をイタリア人が持ってきて、フランス語で話して、日本で仕立てました。おそまつ!
(今日はラグビートップリーグ、いよいよ最終戦優勝が決まります。ファンの神戸製鋼は4位以内を目指して戦います。がんばれ!)
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