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それもまたちいさな光/角田光代(著)
昨年末、どこかのラジオ局開局60周年とかで、
ラジオドラマ『それもまたちいさな光』がオンエアされ、
その後、小説版として、文庫のみで出されたものです。
巻末に、ディlレクター(?)小島慶子さんと作者との対談が掲載されていて
これが結構興味深い。
ラジオというものをほとんど聴いたことがない作者が
「ラジオが登場する作品」の依頼を受け、
それをいかに作品化していくか、というプロセスがよく分かります。
登場するのは3人の女性。それぞれ、今の生き方がある。
そのうちの一人、仁絵は幼馴染の雄大とずっと付かず離れずの仲を続けています。
あまりに親しすぎて恋心が芽生えず、
高校生のとき、雄大は別の女性と破滅的な恋愛をします。
。。。と、このあたりが、私が最近読んだ山田詠美さんの『学問』
の設定と似ている気がしますが、まぁ偶然でしょう。
すべての登場人物が、あるラジオパーソナリテイの
『毒にも薬にもならない』番組を聴いている、という共通点で結ばれます。
人数は少ないですが、群像劇のような。
それぞれに人生があり、パーソナリティの女性自身も
生身の人間として描かれます。
早朝に泥酔したままスタジオに辿り着き、
でも、番組開始時間になると、いきなりしゃんとして
喋り始める、みたいな。
3人の女性のうち最も年上の女性は
ずっと不倫関係を続けています。
その彼氏が死の病に罹り、こっそり見舞いに行った病床で
いまさら何を話すこともなく
枕元のラジオ番組を二人で静かに聴いている、というシーン。
ふーん、そんなものかもしれないな、と思いました。
ラジオと言えば、昔は受験勉強のお伴でしたが、
ラジオをほとんど聴かない作者が、ラジオの役割というものを洞察しているところに感心しました。
小説としてはいちおうハッピーエンドなのですが、
私は、本当にそれでいいのか?といささかの疑問も。
ラジオドラマらしく、さらっと流れるような小説でした。
文庫: 207ページ
出版社: 文藝春秋 (2012/5/10)
発売日: 2012/5/10
価格:480円
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文庫本チラ読み
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全身に紫色の瘤が出来、死亡する奇病が発生。
失踪した主婦の行方は?メフィスト賞受賞のホラーミステリー。
――「BOOK」データベースより――
2005年に出版された真梨幸子さんのデビュー作です。
タイトルを見て分かりますように、虫の話です。
それも寄生虫が引き起こす風土病。
罹患すると、全身に紫色の瘤が出来、精神錯乱を起こして死んでしまいます。
感染経路はどうやら性的接触らしい。
その描写がいかにも気持ち悪く、ホラーなんですが、
私には寄生虫よりも、登場人物の女性たちの
心の奥底のどろどろ、というか、嫉妬やら妬みやら欲望といったものが
どの頁にも溢れていて、暗澹たる気持ちになりました。
本当に女性ってみんなこうなんでしょうか。
それに、舞台となるマンションに住んでいる隣人たちのオバサン連中がたくさん登場するのですが、
だれとして好感の持てる登場人物がおらず
ラストには、相当のワルであることが発覚。
もうどうしようもありません。
あまりにたくさん登場するので、どのオバサンがどういうキャラだったか
読んでいるうちに混乱してきました。
最初は、平凡な主婦、麻美の一人称で語られているので
これは麻美が主人公だろう、と思って読んでいると、
それを書いたのは麻美本人じゃないかもしれない、
というあたりまでくると、これはもう叙述ミステリーなのですね。
いっそのこと、虫やホラーとは関連付けずに、
純粋なミステリーとして書いたほうがよかったかもしれませんね〜
文庫版の帯にもあるように、かなりエロい場面が頻繁にあり
不倫が横行しています。
舞台となってるのは眺望が売りの高層マンションだそうですが、
私はこんなどろどろした所には絶対住みたくないですっ
(2005年4月1日講談社より出版)
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九月が永遠に続けば(新潮文庫)
沼田まほかる(著)
去年「ユリゴコロ」以来、すっかり気になっていた沼田まほかるという人は
50歳代でこのデビュー作を書いたらしいです。
デビュー作というと、アイデアだけで、文章は読めないような作品も多いですが、
沼田まほかるは、その年齢だけあって熟練の域に達しています。
数少ない登場人物で、場面の動きも少なく、
なのに
みたいな小説です。
ホラー・サスペンス大賞を受賞したのですから、
事件があり、ドキドキハラハラさせられるのですが、
ただストーリーを追うのではなく、どこかにこの作者の人生観というか、
哲学のようなものが感じられます。
作者はたえず、どこか遠い場所・・・彼岸のような場所を見つめながら書いたような。。。
「BOOK」の紹介にもあるように、
事の発端は、高校生の息子の失踪から始まります。
語り手は、その母、41歳の佐知子です。
佐知子と、8年前に離婚した夫とその後妻。後妻の連れ子。
そして、佐知子と関係を持っていた年下の彼氏。
失踪した息子のガールフレンド、その父親。
登場人物はざっとこれくらいなのです。
これだけの人間の因縁というか、人間関係がそれはもう複雑で、
人間関係が蜘蛛の糸のように絡まりあっています。
彼らの不幸は、遠い昔の凄惨なレイプ事件が発端。
その事件そのものは陰惨極まりないものなのですが、
沼田氏は、そこをうまく抑え気味に表現しています。
それだからこそ、なお読み手の恐怖は募るわけですが。
40歳代の親たちの世代。
高校生の子供たちの世代。
双方が複雑に絡み、物語は意外なラストに収斂してゆきます。
ネタばれを避けるため、あまり言えませんが、
あのラストは、ある意味有り得ない、という気がします。
作者は、失踪した息子を含め、
若い登場人物を描くとき、とても大人びた人物として書いています。
高校生にして、早くも人生に絶望しているような子供たちです。
そこらへんが、作者が苦心した痕跡なのだと思いました。
子供たちも中年も、同じ地平に立って、
恋愛をし、欲望を持ち、そして全員が絶望しています。
あくまで女性目線での表現だし、
どちらかと言えば、重く粘着するような小説なので
明るくさっぱりと生きている読者には、嫌われる小説かもしれません。
私は面白かったです。
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