|
12月9日の産経新聞の連載記事『土・日曜日に書く』の筆者は、モスクワ支局長の内藤泰朗(ないとうやすお)氏である。その内藤氏が、12月9日に【ロシアが欧米に復讐する日】というテーマで記事を書いている。内藤氏の意図は、肥大化するプーチン政権・大ロシア主義に警鐘を鳴らすことにあるが、私の目をひきつけたのはその記事に書かれていたある殺人犯のことであった。
記事によると、4年近く前、スイスで殺人を犯し受刑囚となり、やがて釈放された男の帰還を祝おうと、官製の愛国青少年団体「ナーシ(我らの仲間たち)」の若者たち数百人が、小雪まじりの12月の寒風の中、モスクワ南部のドモジェドボ空港花束を手に集まった。それはまるで、孤独な戦いを終え、満身創痍(そうい)で祖国に凱旋(がいせん)した英雄を出迎えるような異様な熱気に包まれていたらしい。
若者たちが出迎えた男は、ロシア南部・北オセチア共和国出身の建築家、ビターリー・カロエフ氏(57)である。彼は、2004年2月24日、スイスの航空管制官を殺害した。実は、事件に先立つ2002年7月、殺された管制官のミスでロシアの旅客機がドイツ上空で貨物機と接触し墜落する事故が起こっている。夏休みにスペインに向かう途中の子供52人を含む乗客乗員71人が死亡する惨事であった。その犠牲者の中にカロエフ氏の妻と2人の子供たちがいたのである。
カロエフ氏は ミスを犯した管制官の自宅を割り出し訪ねた。彼は子供たちが写った写真を見せ、管制官に謝罪を求めたが、拒否された。おそらく激しい言葉のやり取りがあったのだろう。逆上した彼は管制官を殺した。スイスの裁判所は2005年10月、殺人罪でカロエフ氏に8年の禁固刑を言い渡したが、2007年6月には「被告は事件当時、犯罪の責任を負う心理的能力が低下していた」として、執行猶予付きの5年3月に減刑した。カロエフ氏は11月13日、刑期終了を待たずに釈放された。
復讐を果たしたカロエフ氏はスイスの法により裁かれ、航空機事故の補償として受け取った15万ドル(約1700万円)を自分が殺害した管制官の遺族に養育費として贈り、謝罪した。彼はモスクワ到着後、死亡した家族が眠る故郷の墓に向かった。故郷ではやはり、英雄として迎えられたという。
内藤氏は、カロエフ氏やカロエフ氏を英雄扱いするロシアの民衆、プーチン政権に批判的である。内藤氏は言う----
殺害された被害者側の心情は除外されている。何につけ欧米側の非を唱え、ロシアの正義ばかりを主張する、強気で攻撃的な姿勢ばかりが目立つのだ。この「攻撃性」は、この事件に限ったことではない、ロシアの攻撃的な姿勢は、枚挙にいとまがない。「力こそすべて」「目的のためには手段を選ばず」といったソ連時代の武力外交的な価値観と伝統が、再び浮上しているように思える。
「復讐するは我にあり」は第74回直木賞を受賞した佐木隆三氏の作品だ。実在の連続殺人犯を題材にし、後に映画化されている。この題名になった言葉は、じつは新約聖書(ローマ人への手紙・第12章第19節)に出てくる。「悪に対して悪で報いてはならない。悪を行った者に対する復讐は神が行う」という意味なのだが、ナーシ流の解釈では、復讐する「我」は「神」ではない。だから、ロシアの欧米や日本に対する「復讐」が気がかりなのだ、と。
私はプーチン政権に好意は持っていない。だが、“日本に対する「復讐」”を気にするほど恐怖を感じることもない。今のところ、私には関係ないことだと高をくくっている。それよりも、内藤氏の記事を読んで、あらためて謝罪の難しさと外国人(大陸の人びと)の復讐心の強さを考えさせられた。大陸から離れた島国で、「月世界に住んでいる」などと気楽なことを言ってヌクヌク暮らしている私など、このような厳しい考えを身につけた人と一対一で対決したら、とうていかなわないだろう。
|
「罪を憎んで人を憎まず」こう思えたらいいんでしょうけどね。
私は・・・きっと無理でしょうね・・・。
2007/12/13(木) 午後 2:17
カロエフ氏自身は、この英雄扱いをどう思ってるんでしょうね。結構迷惑なんじゃないかなぁ。
2007/12/13(木) 午後 10:34
アオイさんへ。そう思えたらいいですね。でも、罪を憎めば、人を憎んでしまいそうです。
2007/12/14(金) 午前 6:29
けいよいさんへ。どうなんでしょうね。よくわかりません(^_^;)。
でも、カエロフ氏のような行為をする人は、今の日本では極めて稀ではないかなと思います。
2007/12/14(金) 午前 6:36
加害者に極刑を求める心理も「復讐」なんでしょうね。韓国映画の「復讐三部作」である「オールド・ボーイ」「親切なクムジャさん」を観ました。韓国は北朝鮮と緊張関係にあるからこんなテンションの高い復讐物がヒットするのかなと思いました。私は面白かったけど、日本ではほとんどヒットしなかったそうです。日本はテンション低い国なのかも。。。
2007/12/14(金) 午後 8:50
スターさんへ。韓国映画やドラマなどでよく「謝罪」や「責任」がどうのこうのといったシーンが見受けられますが、あれは大陸的な特徴に近いのかな?
近ごろは、ひところの熱狂的な韓国ブームも少し下火になってきましたね。飽きっぽいお国柄なんでしょうね。一対一で対決したら、私のような平均的日本人は、やはり韓国の人にはかなわないです。
2007/12/16(日) 午後 1:15
ロシアは、国歌がもとのソ連時代のものに戻って、強国意識捨てがたいものがあるようですね。記事中の、管制官を殺した男の話ですが、詳しくは分かりませんが、やはり謝罪して欲しかったのでしょうね。気持ちは分かります。しかし、これは個人の感情的問題から生じた殺人で、これを欧米だのロシアだの国家の問題に肥大化して論ずるのはどうなんでしょうか。ちなみに、管制官というのは相当に疲れる仕事で、続けて何時間も出来るようなものではなく、かなり細切れに交代するそうです。注意力が少しでも鈍ると大事故に繋がりかねませんからね。この場合、スイスの管制官がどのような勤務体制であったのかも気になります。確かアーサー・ヘイリーの小説に、管制官のミスで航空機事故が起こる話があったと思います。邦題は「大空港」だったと思います。彼は、現代文明と人災をテーマに作品を沢山書いたと思います。
2007/12/16(日) 午後 4:35
NANAMIさんへ。確かに、部分を単に拡大しても総体にはたどり着きませんね。個々人の問題を国民・国家の問題に拡大するのは産経の記者さんのよく使う手法です。しかし、一年半以上かけて、しかも外国にまで行って復讐を遂げたカロエフ氏の執念には驚嘆します。殺された管制官は、おそらく自分の行為を正当だったと主張したのでしょうね。私なら、簡単にあやまっているところです。
2007/12/16(日) 午後 6:08
犯人の男が一番悪いけど、管制官の男性も悪いよ。謝罪しろって言われたのに、謝罪せんかったんやけん。殺されて当然や。
2018/9/5(水) 午後 5:40 [ 名無し ]