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警察庁のまとめでは、わが国の平成20年中の自殺者は3万2249人であった。対前年比で2・6%減少したとはいえ、これで平成10年以来、11年連続で3万人を超えたことになる。本年度の自殺者は急速な景気の悪化にともない、おそらくこの数字を上回ることは間違いないと思われる。
男女別では男性が対前年比2・8%減の2万2831人、女性が前年比2・0%減の9418人。全体の約71%を男性が占めた。
1000人以上の自殺者が発見された都道府県は、東京が最多で2941人。以下、大阪(2128人)、神奈川(1818人)、北海道(1726人)、埼玉(1653人)、愛知(1555人)、千葉(1342人)、福岡(1311人)、兵庫(1298人)とつづく。最も少なかったのは、徳島の202人。以下、鳥取(212人)、佐賀(214人)である。月別では10月が3092人で最多。以下、3月が2939人、4月が2854人となっている。
警察庁は自殺に関する詳しい統計を毎年6月に発表しているが、自殺防止対策のために大まかな実数を4月に前倒して発表したらしい。
さて…、産経新聞のコラム【断層】に、民俗学者で札幌国際大学教授の大月隆寛氏が、“再浮上する「近代」”という記事を寄稿していた。以下は、大月氏と私(うしどし)の架空の会話である。
大月: 自殺大国といわれるわがニッポン。福井の東尋坊でも保護される人が増えているとか。そんな中、なぜかこのところ身投げや飛び込みがにわかに目につくような気が。報道の濃淡などの理由もあるでしょうが、都内でもよく電車や地下鉄が止まるのはみな何となくご存じでしょうし、鉄道関連の自殺はいや応なく身近な感じがする分、やはり気になります。
うしどし: 自殺したことがないから当てずっぽうのようなことしか話せないけれど、自殺をするのなら、普通は、容易で確実に、しかもできるだけ苦しまない方法を選ぶと思う。列車への飛び込みはその条件を満たしているのじゃないか。
大月: 少し前、問題になった硫化水素を発生させる自殺方法。おかげで関連の薬品が生産中止になったりしましたが、あれは比較的新しいやり方で、それに比べると、身投げやこの飛び込みはある意味古典、伝統的とさえ言える手口です。
うしどし: 警察庁は毎年自殺白書のような概要資料を発表している。自殺の動機などは調査されているが、どうも方法についてはまとめていないようだ。自殺の方法に目をつけるとはさすが民俗学者だ。
大月: それにしても、どうしていま、あえて鉄道なのか。思えば、同じ乗り物でも自動車を使った自殺は日本じゃ少数派で、使うにしても排ガスを引き込んだり練炭をたいたり、要は「個室」として使うのがせいぜい。ヤケクソの暴走の果てに激突、ないしは自爆、といった乗り物本来の派手なパターンはまずない。このへん、何か根深い理由があるような気もします。
うしどし: 自殺の方法については、流行のようなものがあると思うし、時代の影響を受けていることは確かだろう。大月氏の言うように自動車を激突させての自殺はわが国では少ないような気がするけれど、自殺者は、手軽で確実で苦しまない方法を好むと思う。自殺の方法がいくらでもある日本では、わざわざ自動車を走らせて激突したり、派手な死に方をする必要はないのだろう。
大月: ともあれ、速度と重量と質感、ついでに轟音(ごうおん)などもひっくるめて、「近代」を最も身近に、具体的に体現してくれるメディアが鉄道でした。ポストモダンだバブルだとうかれているうち、「近代」はしっかりひとめぐりして再び身近に浮上しているような面が、もしかしたらあるのかも。とすれば、タヌキが夜中に汽笛の物まねしながら走っていた、てな、開化期ならではの都市伝説の現代版も、すでにどこかでそっとささやかれているのかもしれません。
うしどし: 自動車だって近代の産物だぜ。でも、大月氏の言いたいことは少しわかる気がする。歴史は単純に後戻りすることはないだろうが、後戻りさせたいと願う雰囲気が、この国の為政者などに薄っすらと見られるものね。
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車で高速でぶっ飛ばしてクラッシュする衝撃にエロスを感じるというテーマを主題にした小説がありました。J.バラードの「クラッシュ」というやつで、映画にもなりましたが。もちろん、一歩間違えば死ぬんですが、テクノロジーと身体というものを考えさせる作品でしたね。この議論に関しては、遠藤徹の「ポスト・ヒューマンボディ」という書物が面白いです。その中に、「ジェットコースターの思想」「自己=事故:快楽としてのマシンクラッシュ」というエッセイがあるんです。ジェットコースターは、つまるところ「死」を擬似体験できる装置ですからね。実際ぶっ飛んで、死んじゃう場合もありますが。これをテーマにした、ハリウッドのB級映画もありました。自殺の方法論から、時代や文化を分析する試みは、あるようでないと思います。あまり、よいテーマとは言えませんけれど・・・
2009/4/13(月) 午前 1:44
NANAMIさんへ…『クラッシュ』というのはアメリカの小説ですか?「車で高速でぶっ飛ばしてクラッシュする衝撃にエロスを感じる」なんて、さながらわが国の「切腹」みたいですね。サンドラ・ブロック主演の『クラッシュ』という映画をヴィデオで見たことがありますが、NANAMIさんのおっしゃるものと違うようです。
2009/4/13(月) 午前 8:35
「クラッシュ」って、80年代あたりの映画ではなかったです?
あれ?パンクバンドの名前と混同してるかもしれまへん。いずれにせよ、サンドラ・ブロックが登場する以前のものだったような・・・曖昧な記憶。。
車を激突させる方が、根性いるのでは?。アクセル踏み込んで速度出してる途中で正気に戻ってしまい、自殺する気が失せるような。。
2009/4/13(月) 午後 7:19
うしどしさんがご覧になった「クラッシュ」は、人種問題を扱ったものじゃないですかね。私の言う「クラッシュ」は、ジョン・カーペンターが監督をしたもので、多分に性描写が露骨な為、確か成人映画あつかいされたものです。戦時中の特攻だって、ある意味自爆攻撃ですけれど、リサ・モリモトの「特攻」という映画を見ていて興味深かったのは、敵艦の方向に向かって飛んでいる最中、アメリカの敵機群と交戦状態になって、被弾した二人組みがいたんですね。敵機が去って、さてどうするかという段になって、そのまま飛び続けて敵機に激突することも出来たのですが、前に乗ってる人が、後ろの人に「おい、どうする」と訊いたら、後ろの人が「やめようか」と言ったので、そのまま近くの島に不時着したんだそうです。映画で証言しているわけですから、二人はまだ生きてるわけですが、あの場合、敵と交戦して、「我に返った」と言うか、突っ込むのがバカらしくなったということで、面白いと思いました。
2009/4/14(火) 午後 5:45
marieさんへ…『クラッシュ』という名の映画は、どうやら2本あるようですね。よほど頭に来ていないと、車のアクセルを踏み続けて激突させるのは難しいような気がします。それだけの根性があるのなら、なにも自殺する必要などないような気がしますね。
2009/4/14(火) 午後 9:35
NANAMIさんへ…私の観たのは人種問題が絡んでいました。確かアカデミー賞を貰っていたと思います。どうもNANAMIさんのおっしゃる『クラッシュ』とは違うみたいですね。特攻などの自爆攻撃は、ある種の興奮状態にあるか、宗教的動機がともなわなければできそうにないと思います。
2009/4/14(火) 午後 9:43
「クラッシュ」の作者、J.G.バラードが死去しました。
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_cul&k=20090420021981a
2009/4/20(月) 午後 11:25
NANAMIさんへ…そうですか。死とエロスについて、おもしろい考えをする人だったのでしょうね。
2009/4/21(火) 午後 1:47