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貸しビデオ店で『西部の王者』という西部劇映画を見つけたので、
取り出してみたところ、
主演がジョエル・マックリーとモーリン・オハラと知り俄然、興味がわいた。
ぼくは少年時代からアメリカ映画にも関心を持ち、
新宿や渋谷の"小屋"に足を延ばしていた。
当時は西部劇の全盛時代で、主役級の俳優の何人かに惚れ込んだ。
男優ではジョエル・マックリーとランドルフ・スコット、
女優ではモーリン・オハラとヴァージニア・メイヨに指を屈する。
これらのスターは西部劇にばかり出ていたわけではないけれど、
とりわけ西部劇の出演作が長く心に残っている。
けれども『西部の王者』という作品に出ていたとは、ついぞ知らなかった。
で、初めてこの西部劇を自宅で鑑賞したわけで、
いろんな角度から感銘を受けた。
だいいち1944年(本邦公開は翌年)というから、あまりに古い。
なんと太平洋戦争の末期に作られていたのだ。
物語は原題『Buffalo Bill』で示すように、
伝説上の西武の勇者"バッファロー・ビル"コディの半生を描いたもの。
ジョエル・マックリー演じるバッファロー・ビルは、大西部の隅々まで熟知しており、
東部からやってきた上院議員の一行を助けるところから物語が始まる。
そこでその議員の愛娘モーリン・オハラと忽ち恋に陥るというわけ。
議員一行の訪問目的は、西部への鉄道敷設計画の促進にあり、
それを阻止しようとするインディアンとの抗争に発展していく。
その代表、シャイアン族とスー族との連合軍を相手にした大草原での決戦が壮大。
シャイアン族の首領を演じるのがアンソニー・クインで、
以前からコディとは友情を交わしていたが、対決せざるを得ない。
とまあそんな具合だが、この展開で目を引いたのは、
荒漠たる西部の地を鮮やかなカラー画像で見せている点だ。
製作された時代、そんな撮影・現像技術があったかどうか知らないが、
ビデオ技術の発達で見事に再生されたとしか思えない。
それで、コディは前記の一戦で英雄視されるにいたる反面、
新妻(オハラ)と赤子には東部に去られ、苦境に立つ。
その辺の細かい経緯は省くとして、英雄バッファロー・ビルは、
やがてロデオショーか何かで東部のビッグスターに変身していく。
そこがなんとも侘しいところだが、映画が作り物でない証しでもあろう。
監督はウィリアム・ウェルマンで、歯切れのいい作品に仕上げている。
それにアンソニー・クインの好演が光る。
偶然にもちょっと前、ジョン・スタージェス監督の『ガンヒルの決斗』を、
さるブロガー氏に薦められて鑑賞したばかり。
クインはカーク・ダグラスと対峙する親分を演じ、強烈な個性を発揮していた。
また、『西部の王者』ではトーマス・ミッチェルが脇を固めていた。
古い映画ファンには忘れがたいバイプレーヤーだ。
リンダ・ダーネルも出ており、これまた懐かしい女優。
それと必ずしも表面的ではないけれど、
先住民インディアンを温かい視点から描いているところがいい。
白人たちが西部の地に押し掛け的にやってきたことを、
先住民側の視座からも分かりやすく演出されているのだ。
こういう作品がもっと多く作られれば、
後に西部劇映画が衰退しなかっただろうにと思わせる。
そんなこんなで、わずか90分の映画にせよ、見どころ満載の古典的西部劇ではあった。
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